異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全

文字の大きさ
上 下
47 / 58
第1章

第47話:再決戦

しおりを挟む
「無礼者、人間ごときが高貴な我の宮殿に入るな!
 殺せ、皆殺しにしろ!」

 四人は万全の準備を整えたつもりだったが、相手の本拠地には仕掛けが多かった。
 公爵屋敷の人間には見つからなかったが、地下に入った途端、プロウジェニタ・ヴァンパイアに侵入したのを見つけられてしまった。

 更に本拠地を見つけられたプロウジェニタ・ヴァンパイアは、四人には勝てないと判断して即座に逃げようとした。

「逃がすか!」
「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「「ピュアリフィケイション」」

 ライアンは、軍神テュールの加護による身体強化と、カインとアベルの完全同調身体強化魔術の力を使って、プロウジェニタ・ヴァンパイアの逃亡を防いだ。

 エマとカインとアベルは、プロウジェニタ・ヴァンパイアの下僕だと思われるレッサー・ヴァンパイアとインターミーディア・ヴァンパイアを浄化した。

 恐れていたほど眷属はいなかった。
 最悪の状況になっていなかった事に安堵しながら、レッサー・ヴァンパイアとインターミーディア・ヴァンパイアを浄化した。

「死ね!」

 ライアンは以前の戦いでスペシャル・グレイド・ヴァンパイアを滅ぼした銀製長剣を振るってプロウジェニタ・ヴァンパイアを滅ぼそうとした。
 最初に首を刎ねてから心臓を貫こうとしたのだが……

「アトマゼイション」

 ライアンの銀長剣がプロウジェニタ・ヴァンパイアの首を刎ねる前に、一瞬で姿が消えた、霧になってしまった。

 プロウジェニタ・ヴァンパイアの能力である霧化で、ライアンの攻撃が無効になってしまった。

 全く効果がなかったわけではなく、バラバラになったプロウジェニタ・ヴァンパイアの細胞の極一部は滅ぼせたが、ほとんどの細胞は攻撃から逃れた。

「エマ、カイン、アベル!」
「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「「ピュアリフィケイション」」

 ライアンは左手にも銀製の剣を握り、左右両剣で霧と化したプロウジェニタ・ヴァンパイアを斬り続けた。

 今回目の前で霧と化すプロウジェニタ・ヴァンパイアを見た事で、前回どうやって逃げたのかが分かったライアンだった。

 ヴァンパイアの不死性を考えれば、レッサー・ヴァンパイアでさえ普通の騎士や冒険者では滅ぼせないのを考えれば、プロウジェニタ・ヴァンパイアともなれば、細胞の一つでも残っていれば復活するのだと分かった。

 だが、今回は前回よりも有利だとライアンは思っていた。
 前回は広々とした大魔境で、風が少し吹いただけで細胞が広範囲に広がった。

 しかし今回は風の流れがほとんどない密閉された地下空間だ。
 上下左右が限られた狭い空間の中なのだ。
 エマ、カイン、アベルが浄化魔術を放つ空間がとても少なくて済む。

 霧と化した細胞が自力で動けないのなら、プロウジェニタ・ヴァンパイアがいたあたりに浄化魔術を放ち続ければ滅ぼす事ができる。

「俺は核がないか探しながら斬る、三人は魔力が半分になるまで浄化してくれ。
 ディース、予言を頼む」

「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「「ピュアリフィケイション」」
「まかせて、滅んだか逃げたか見るわ」

 ライアンは五感を研ぎ澄ませてプロウジェニタ・ヴァンパイアの核を探した。
 ヴァンパイアであろうと滅ぼせば魔力の宿った石、魔核が落ちる。
 斃した魔獣や眷属の強さに応じて、魔石から魔宝石までランク分けされている。

 村のダンジョンの地下一階に現れるスライムを斃した時に、百分の一の確率で落とされるドロップの一つに、極小の魔石がある。

 魔石よりも濃密な魔力が込められている美しい石は、魔晶石と呼ばれている。
 村のダンジョンでは魔晶石など落ちないが、大魔境でレベル上げをし始めた頃は、心臓の辺りから結構な大きさの魔晶石を手に入れられた。

 亜竜ダンジョンでレベル上げをするようになって、ベビー・サブ・ドラゴンからエルダー・ピュブレド・ドラゴンを斃せるようになって魔宝石がドロップするようになり、有力な非常用魔力を確保できるようになった。

 これまで灰にしたレッサー・ヴァンパイアが落とす魔核は小さな魔晶石だった。
 インターミーディア・ヴァンパイアが落とす魔核はそれなりの大きさの魔晶石で、ハイア・ヴァンパイアは大粒の魔晶石を落とした。

 スペシャル・グレイド・ヴァンパイアが小粒ながら魔宝石を落としていった。
 灰になって滅ぶヴァンパイアは確実に魔核を落としていく。

 だからプロウジェニタ・ヴァンパイアにも弱点になる魔核があるとライアンは考え、五感を総動員して霧化した細胞から魔核を探そうとした。
 核の部分の細胞だけはある程度集まっていると考えていたのだ。

「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「「ピュアリフィケイション」」

 エマ、カイン、アベルは味方撃ちを気にせずに浄化魔術を放ち続けた。
 悪神ロキの眷属以外には害がないので、味方に当たっても実害はない。
 むしろ身体がきれいになって水浴びも風呂も不要になる。

「エマ、頼む」

「ホーリー・エムパワーメント」
「「ピュアリフィケイション」」
「見えたわ、そこよ、そこにいるわ!」

 悪神ロキの眷属を滅ぼす聖なる力を右手の銀長剣と左手の銀剣に付与してもらったライアンは、ディースが予言してくれた空間を両剣で斬り裂いた。
 カインとアベルが完全同調した浄化をライアンの両剣に重ねるように放った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

魔法が使えない女の子

咲間 咲良
児童書・童話
カナリア島に住む九歳の女の子エマは、自分だけ魔法が使えないことを悩んでいた。 友だちのエドガーにからかわれてつい「明日魔法を見せる」と約束してしまったエマは、大魔法使いの祖母マリアのお使いで魔法が書かれた本を返しに行く。 貸本屋ティンカーベル書房の書庫で出会ったのは、エマそっくりの顔と同じエメラルドの瞳をもつ男の子、アレン。冷たい態度に反発するが、上から降ってきた本に飲み込まれてしまう。

【完結】魔法道具の預かり銀行

六畳のえる
児童書・童話
昔は魔法に憧れていた小学5学生の大峰里琴(リンコ)、栗本彰(アッキ)と。二人が輝く光を追って最近閉店した店に入ると、魔女の住む世界へと繋がっていた。驚いた拍子に、二人は世界を繋ぐドアを壊してしまう。 彼らが訪れた「カンテラ」という店は、魔法道具の預り銀行。魔女が魔法道具を預けると、それに見合ったお金を貸してくれる店だ。 その店の店主、大魔女のジュラーネと、魔法で喋れるようになっている口の悪い猫のチャンプス。里琴と彰は、ドアの修理期間の間、修理代を稼ぐために店の手伝いをすることに。 「仕事がなくなったから道具を預けてお金を借りたい」「もう仕事を辞めることにしたから、預けないで売りたい」など、様々な理由から店にやってくる魔女たち。これは、魔法のある世界で働くことになった二人の、不思議なひと夏の物語。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

マントを拾っただけなのに

右京之介
児童書・童話
ボクは公園の片隅で、丸まった赤い布のような物を見つけた。

処理中です...