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第1章
第44話:村長と村長婦人のレベル上げ
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プロウジェニタ・ヴァンパイアを滅ぼした四人は一時間で村に戻った。
余りの早さに全村民が驚き、猜疑心が強く欲深い連中は本当にヴァンパイアを滅ぼしたのか疑っていたが、それを口にするほど馬鹿でもなかった。
四人の強さが桁外れな事くらいは分かっていた。
プロウジェニタ・ヴァンパイアどころかレッサー・ヴァンパイアすら滅ぼせないとしても、自分たちよりも強い事くらいは分かっていた。
四人に逆らって殺されたくはないので、黙って話を聞いた。
聞いたが、彼らにとっては腹立たしい事だった。
一度手に入れられるかもしれないと思った村が、四人に支配されていった。
村長は表向き自警団長のマクシムを村長代理としたが、実際に村を仕切っているのは成人ですらないカインとアベルだった。
「マクシムさん、親父、しっかりしてくれ」
「その程度の魔鳥なら一撃で狩ってくれないと!」
四人は戻って直ぐにレベル上げを再開させたのだ。
村ダンジョンに封じた魔獣や魔鳥をマキシムとヴィクトーに狩らせた。
村長に忠誠を使う者を優先してレベル上げした。
「他の人たちは見張りの順番さえ守ってくれたらいいよ」
「そうそう、深くなったダンジョンで自由に狩りしてくれていいよ」
村長の移住に抵抗した者たちは、レベル上げこそ手伝ってもらえなかったが、ダンジョンでの狩りを禁じられるような事はなかった。
差別ではなく区別されているだけなのだが、元々欲深く性格の悪い連中だ。
自分たちの悪意や叛意を棚に上げて逆恨みした。
自分たちが悪かったのも間違っているのも知っているのに、復讐する事が正当だと自分の心すら騙して、同類と集まって陰口を言い、機会を待っていた。
「ティトゥワン様、無理されなくて大丈夫ですよ」
「今のティトゥワン様の歳ならファイア・ボールを撃てれば十分優秀ですよ」
「でも姉上様は、私の歳にはもっと凄い聖治癒術を使っておられたのだろう?」
「エマは治癒神エイルの加護を受けているから比べちゃダメですよ」
「ティトゥワン様が比べるなら同じ男で加護のない村長ですよ」
「だけど……ライアンも私と同じ歳には凄かったと聞いている」
「ライアンも軍神テュールの加護持ちだから比べちゃダメですよ」
「ティトゥワン様は村長と同じくらいでは嫌なのですか?」
「そんな事はない、そんな事はないけど……凄いと言われたい……」
「だったら、神々の加護がなくても強くなれる魔術師になりませんか?」
「魔術なら俺たちが教えてあげられますよ」
「本当か、私の魔術を教えてくれるのか?!」
「年長者が年少者を守り教えるのが子供会ですからね」
「最年長者として教えられる事は全部教えますよ」
★★★★★★
「父上様、母上様、その程度で疲れていては民に示しがつきませんよ!」
カインとアベルが旧村に残って色々やっている時、エマとライアンは亜竜ダンジョンで村長と村長婦人のレベル上げを再開していた。
もうこの世界最強人類といえるエマとライアンが、悪神ロキが直接攻撃してきた時に備えて、レベル上げと連携戦闘術の訓練をしつつ、ついでに村長と村長婦人のレベル上げも行っていた。
既に村長と村長婦人は、悪意ある村人たちどころか、カインとアベルがレベル上げしたマキシムとヴィクトーが熟睡している所を不意討ちしても、魔力防御層を突破されないくらい強くなっている。
それでも、完璧主義な所のあるライアンと、両親を心から愛している内心が繊細なエマは、もっとレベルを上げておかないと心配だと、何百回も蘇生術を使うほど厳しいレベル上げを行った。
「ディース、悪神ロキは次の眷属を送ってきていない?」
エマが予言精霊ディースに確認する。
四人がアリアラ王国の王都でプロウジェニタ・ヴァンパイアを滅ぼしてから十日過ぎたが、毎日何度も確かめてしまう繊細なエマだった。
「大丈夫よ、レベルが上がって予言の精度も正確になったからはっきりと言えるわ。
ロキはまだ眷属を送ろうとしていないわ。
何か考えているかもしれないけれど、眷属に指示は出していなわ」
「ありがとう、だったらもう少しレベル上げしても大丈夫よね?」
「大丈夫だとは思うけれど、少しは休憩していいんじゃないの?
エマのレベルが更に上がったし、お母さんのレベルも予定よりも格段に上がったのでしょう?」
「ええ、母上様のレベルも私のレベルも上がったわ。
お陰で母上様の自己治癒力も私の聖浄化術も強化されたから、一度聖浄化術を使ったら、母上様の身体が腐るのが凄く遅くなったわ。
でもまだ完全ではないの、ゆっくりだけれど腐ってくるの」
エマとディースは、レベル上げのためにエルダー・ピュブレド・ドラゴンを斃しながら、今後について話している。
激烈なレベル上げに何百回も死んでいる父親と母親は、我が娘ながらどれほど余裕があるんだ、非常識なくらい強くなってしまったと内心で頭を抱えていた。
「なあ、エマ、そろそろセント・エンシェント・ドラゴンの所に話をしに行くか?
それとも、カインとアベルを見倣って、エマとアイリス様が完全同調する事で、悪神ロキの呪いを解けるか試すか?」
「え、今なんて言ったの?」
「だから、純血種のセント・エンシェント・ドラゴンの所に行って血と鱗をもらうか、エマとアイリス様が完全同調すれば解呪できるのか試すのかと聞いている」
余りの早さに全村民が驚き、猜疑心が強く欲深い連中は本当にヴァンパイアを滅ぼしたのか疑っていたが、それを口にするほど馬鹿でもなかった。
四人の強さが桁外れな事くらいは分かっていた。
プロウジェニタ・ヴァンパイアどころかレッサー・ヴァンパイアすら滅ぼせないとしても、自分たちよりも強い事くらいは分かっていた。
四人に逆らって殺されたくはないので、黙って話を聞いた。
聞いたが、彼らにとっては腹立たしい事だった。
一度手に入れられるかもしれないと思った村が、四人に支配されていった。
村長は表向き自警団長のマクシムを村長代理としたが、実際に村を仕切っているのは成人ですらないカインとアベルだった。
「マクシムさん、親父、しっかりしてくれ」
「その程度の魔鳥なら一撃で狩ってくれないと!」
四人は戻って直ぐにレベル上げを再開させたのだ。
村ダンジョンに封じた魔獣や魔鳥をマキシムとヴィクトーに狩らせた。
村長に忠誠を使う者を優先してレベル上げした。
「他の人たちは見張りの順番さえ守ってくれたらいいよ」
「そうそう、深くなったダンジョンで自由に狩りしてくれていいよ」
村長の移住に抵抗した者たちは、レベル上げこそ手伝ってもらえなかったが、ダンジョンでの狩りを禁じられるような事はなかった。
差別ではなく区別されているだけなのだが、元々欲深く性格の悪い連中だ。
自分たちの悪意や叛意を棚に上げて逆恨みした。
自分たちが悪かったのも間違っているのも知っているのに、復讐する事が正当だと自分の心すら騙して、同類と集まって陰口を言い、機会を待っていた。
「ティトゥワン様、無理されなくて大丈夫ですよ」
「今のティトゥワン様の歳ならファイア・ボールを撃てれば十分優秀ですよ」
「でも姉上様は、私の歳にはもっと凄い聖治癒術を使っておられたのだろう?」
「エマは治癒神エイルの加護を受けているから比べちゃダメですよ」
「ティトゥワン様が比べるなら同じ男で加護のない村長ですよ」
「だけど……ライアンも私と同じ歳には凄かったと聞いている」
「ライアンも軍神テュールの加護持ちだから比べちゃダメですよ」
「ティトゥワン様は村長と同じくらいでは嫌なのですか?」
「そんな事はない、そんな事はないけど……凄いと言われたい……」
「だったら、神々の加護がなくても強くなれる魔術師になりませんか?」
「魔術なら俺たちが教えてあげられますよ」
「本当か、私の魔術を教えてくれるのか?!」
「年長者が年少者を守り教えるのが子供会ですからね」
「最年長者として教えられる事は全部教えますよ」
★★★★★★
「父上様、母上様、その程度で疲れていては民に示しがつきませんよ!」
カインとアベルが旧村に残って色々やっている時、エマとライアンは亜竜ダンジョンで村長と村長婦人のレベル上げを再開していた。
もうこの世界最強人類といえるエマとライアンが、悪神ロキが直接攻撃してきた時に備えて、レベル上げと連携戦闘術の訓練をしつつ、ついでに村長と村長婦人のレベル上げも行っていた。
既に村長と村長婦人は、悪意ある村人たちどころか、カインとアベルがレベル上げしたマキシムとヴィクトーが熟睡している所を不意討ちしても、魔力防御層を突破されないくらい強くなっている。
それでも、完璧主義な所のあるライアンと、両親を心から愛している内心が繊細なエマは、もっとレベルを上げておかないと心配だと、何百回も蘇生術を使うほど厳しいレベル上げを行った。
「ディース、悪神ロキは次の眷属を送ってきていない?」
エマが予言精霊ディースに確認する。
四人がアリアラ王国の王都でプロウジェニタ・ヴァンパイアを滅ぼしてから十日過ぎたが、毎日何度も確かめてしまう繊細なエマだった。
「大丈夫よ、レベルが上がって予言の精度も正確になったからはっきりと言えるわ。
ロキはまだ眷属を送ろうとしていないわ。
何か考えているかもしれないけれど、眷属に指示は出していなわ」
「ありがとう、だったらもう少しレベル上げしても大丈夫よね?」
「大丈夫だとは思うけれど、少しは休憩していいんじゃないの?
エマのレベルが更に上がったし、お母さんのレベルも予定よりも格段に上がったのでしょう?」
「ええ、母上様のレベルも私のレベルも上がったわ。
お陰で母上様の自己治癒力も私の聖浄化術も強化されたから、一度聖浄化術を使ったら、母上様の身体が腐るのが凄く遅くなったわ。
でもまだ完全ではないの、ゆっくりだけれど腐ってくるの」
エマとディースは、レベル上げのためにエルダー・ピュブレド・ドラゴンを斃しながら、今後について話している。
激烈なレベル上げに何百回も死んでいる父親と母親は、我が娘ながらどれほど余裕があるんだ、非常識なくらい強くなってしまったと内心で頭を抱えていた。
「なあ、エマ、そろそろセント・エンシェント・ドラゴンの所に話をしに行くか?
それとも、カインとアベルを見倣って、エマとアイリス様が完全同調する事で、悪神ロキの呪いを解けるか試すか?」
「え、今なんて言ったの?」
「だから、純血種のセント・エンシェント・ドラゴンの所に行って血と鱗をもらうか、エマとアイリス様が完全同調すれば解呪できるのか試すのかと聞いている」
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