異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全

文字の大きさ
上 下
44 / 58
第1章

第44話:村長と村長婦人のレベル上げ

しおりを挟む
 プロウジェニタ・ヴァンパイアを滅ぼした四人は一時間で村に戻った。
 余りの早さに全村民が驚き、猜疑心が強く欲深い連中は本当にヴァンパイアを滅ぼしたのか疑っていたが、それを口にするほど馬鹿でもなかった。

 四人の強さが桁外れな事くらいは分かっていた。
 プロウジェニタ・ヴァンパイアどころかレッサー・ヴァンパイアすら滅ぼせないとしても、自分たちよりも強い事くらいは分かっていた。

 四人に逆らって殺されたくはないので、黙って話を聞いた。
 聞いたが、彼らにとっては腹立たしい事だった。
 一度手に入れられるかもしれないと思った村が、四人に支配されていった。

 村長は表向き自警団長のマクシムを村長代理としたが、実際に村を仕切っているのは成人ですらないカインとアベルだった。

「マクシムさん、親父、しっかりしてくれ」
「その程度の魔鳥なら一撃で狩ってくれないと!」

 四人は戻って直ぐにレベル上げを再開させたのだ。
 村ダンジョンに封じた魔獣や魔鳥をマキシムとヴィクトーに狩らせた。
 村長に忠誠を使う者を優先してレベル上げした。

「他の人たちは見張りの順番さえ守ってくれたらいいよ」
「そうそう、深くなったダンジョンで自由に狩りしてくれていいよ」

 村長の移住に抵抗した者たちは、レベル上げこそ手伝ってもらえなかったが、ダンジョンでの狩りを禁じられるような事はなかった。

 差別ではなく区別されているだけなのだが、元々欲深く性格の悪い連中だ。
 自分たちの悪意や叛意を棚に上げて逆恨みした。

 自分たちが悪かったのも間違っているのも知っているのに、復讐する事が正当だと自分の心すら騙して、同類と集まって陰口を言い、機会を待っていた。

「ティトゥワン様、無理されなくて大丈夫ですよ」
「今のティトゥワン様の歳ならファイア・ボールを撃てれば十分優秀ですよ」

「でも姉上様は、私の歳にはもっと凄い聖治癒術を使っておられたのだろう?」

「エマは治癒神エイルの加護を受けているから比べちゃダメですよ」
「ティトゥワン様が比べるなら同じ男で加護のない村長ですよ」

「だけど……ライアンも私と同じ歳には凄かったと聞いている」

「ライアンも軍神テュールの加護持ちだから比べちゃダメですよ」
「ティトゥワン様は村長と同じくらいでは嫌なのですか?」

「そんな事はない、そんな事はないけど……凄いと言われたい……」

「だったら、神々の加護がなくても強くなれる魔術師になりませんか?」
「魔術なら俺たちが教えてあげられますよ」

「本当か、私の魔術を教えてくれるのか?!」

「年長者が年少者を守り教えるのが子供会ですからね」
「最年長者として教えられる事は全部教えますよ」

 ★★★★★★

「父上様、母上様、その程度で疲れていては民に示しがつきませんよ!」

 カインとアベルが旧村に残って色々やっている時、エマとライアンは亜竜ダンジョンで村長と村長婦人のレベル上げを再開していた。

 もうこの世界最強人類といえるエマとライアンが、悪神ロキが直接攻撃してきた時に備えて、レベル上げと連携戦闘術の訓練をしつつ、ついでに村長と村長婦人のレベル上げも行っていた。

 既に村長と村長婦人は、悪意ある村人たちどころか、カインとアベルがレベル上げしたマキシムとヴィクトーが熟睡している所を不意討ちしても、魔力防御層を突破されないくらい強くなっている。

 それでも、完璧主義な所のあるライアンと、両親を心から愛している内心が繊細なエマは、もっとレベルを上げておかないと心配だと、何百回も蘇生術を使うほど厳しいレベル上げを行った。

「ディース、悪神ロキは次の眷属を送ってきていない?」

 エマが予言精霊ディースに確認する。
 四人がアリアラ王国の王都でプロウジェニタ・ヴァンパイアを滅ぼしてから十日過ぎたが、毎日何度も確かめてしまう繊細なエマだった。

「大丈夫よ、レベルが上がって予言の精度も正確になったからはっきりと言えるわ。
 ロキはまだ眷属を送ろうとしていないわ。
 何か考えているかもしれないけれど、眷属に指示は出していなわ」

「ありがとう、だったらもう少しレベル上げしても大丈夫よね?」

「大丈夫だとは思うけれど、少しは休憩していいんじゃないの?
 エマのレベルが更に上がったし、お母さんのレベルも予定よりも格段に上がったのでしょう?」

「ええ、母上様のレベルも私のレベルも上がったわ。
 お陰で母上様の自己治癒力も私の聖浄化術も強化されたから、一度聖浄化術を使ったら、母上様の身体が腐るのが凄く遅くなったわ。
 でもまだ完全ではないの、ゆっくりだけれど腐ってくるの」

 エマとディースは、レベル上げのためにエルダー・ピュブレド・ドラゴンを斃しながら、今後について話している。

 激烈なレベル上げに何百回も死んでいる父親と母親は、我が娘ながらどれほど余裕があるんだ、非常識なくらい強くなってしまったと内心で頭を抱えていた。

「なあ、エマ、そろそろセント・エンシェント・ドラゴンの所に話をしに行くか?
 それとも、カインとアベルを見倣って、エマとアイリス様が完全同調する事で、悪神ロキの呪いを解けるか試すか?」

「え、今なんて言ったの?」

「だから、純血種のセント・エンシェント・ドラゴンの所に行って血と鱗をもらうか、エマとアイリス様が完全同調すれば解呪できるのか試すのかと聞いている」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

命がけの投票サバイバル!『いじめっ子は誰だゲーム』

ななくさ ゆう
児童書・童話
見知らぬ教室に集められたのは5人のいじめられっ子たち。 だが、その中の1人は実はいじめっ子!? 話し合いと投票でいじめっ子の正体を暴かない限り、いじめられっ子は殺される!! いじめっ子を見つけ出せ! 恐怖の投票サバイバルゲームが今、始まる!! ※話し合いタイムと投票タイムを繰り返す命がけのサバイバルゲームモノです。 ※モチーフは人狼ゲームですが、細かいルールは全然違います。 ※ゲーム参加者は小学生~大人まで。

【完結】お試しダンジョンの管理人~イケメンたちとお仕事がんばってます!~

みなづきよつば
児童書・童話
異世界ファンタジーやモンスター、バトルが好きな人必見!  イケメンとのお仕事や、甘酸っぱい青春のやりとりが好きな方、集まれ〜! 十三歳の女の子が主人公です。 第1回きずな児童書大賞へのエントリー作品です。 投票よろしくお願いします! 《あらすじ》 とある事情により、寝泊まりできて、働ける場所を探していた十三歳の少女、エート。 エートは、路地裏の掲示板で「ダンジョン・マンション 住み込み管理人募集中 面接アリ」というあやしげなチラシを発見する。 建物の管理人の募集だと思い、面接へと向かうエート。 しかし、管理とは実は「お試しダンジョン」の管理のことで……!? 冒険者がホンモノのダンジョンへ行く前に、練習でおとずれる「お試しダンジョン」。 そこでの管理人としてのお仕事は、モンスターとのつきあいや、ダンジョン内のお掃除、はては、ゴーレムづくりまで!? おれ様イケメン管理人、ヴァンと一緒に、エートがダンジョンを駆けまわる! アナタも、ダンジョン・マンションの管理人になってみませんか? *** ご意見・ご感想お待ちしてます! 2023/05/24 野いちごさんへも投稿し始めました。 2023/07/31 第2部を削除し、第1回きずな児童書大賞にエントリーしました。 詳しくは近況ボードをご覧ください。

わたしの師匠になってください! ―お師匠さまは落ちこぼれ魔道士?―

島崎 紗都子
児童書・童話
「師匠になってください!」 落ちこぼれ無能魔道士イェンの元に、突如、ツェツイーリアと名乗る少女が魔術を教えて欲しいと言って現れた。ツェツイーリアの真剣さに負け、しぶしぶ彼女を弟子にするのだが……。次第にイェンに惹かれていくツェツイーリア。彼女の真っ直ぐな思いに戸惑うイェン。何より、二人の間には十二歳という歳の差があった。そして、落ちこぼれと皆から言われてきたイェンには、隠された秘密があって──。

がきあみ ―閻魔大王がわたしたちに運命のいたずらをした―

くまの広珠
児童書・童話
「香蘭ちゃん、好きだよ。ぼくが救ってあげられたらいいのに……」 クラスメイトの宝君は、告白してくれた直後に、わたしの前から姿を消した。 「有若宝なんてヤツ、知らねぇし」 誰も宝君を、覚えていない。 そして、土車に乗ったミイラがあらわれた……。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 『小栗判官』をご存知ですか? 説経節としても有名な、紀州、熊野古道にまつわる伝説です。 『小栗判官』には色々な筋の話が伝わっていますが、そのひとつをオマージュしてファンタジーをつくりました。 主人公は小学六年生――。 *エブリスタにも投稿しています。 *小学生にも理解できる表現を目指しています。 *話の性質上、実在する地名や史跡が出てきますが、すべてフィクションです。実在の人物、団体、場所とは一切関係ありません。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

スクナビコナの冒険―小さな神が高天原を追放されネズミとともに地上に落っこちてしまった件―

七柱雄一
児童書・童話
 スクナビコナは人の手のひらに乗る程度の小さな体の神です。  またスクナビコナは日本神話に登場する神でもあるのですが、作者としては日本の神話などに関する予備知識があまりなくても、読み進められるように本作を書いていくことを心がけようと思っています。  まだまだ『アルファポリス』初心者の上に未熟者の作者ですが、一応プロを目指す方向でやっていくつもりでおります。  感想、ご指摘、批評、批判(もちろん誹謗、中傷のたぐいはご勘弁願いたいのですが)大歓迎でございます。  特に特定の読者層は想定しておらず、誰でも読めるものを目指した作品です。  また『小説家になろう』『カクヨム』でもこの小説を投稿しております。  ではぜひお楽しみください!

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...