異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全

文字の大きさ
上 下
21 / 58
第1章

第21話:予言精霊ディース

しおりを挟む
 神々の隠された悪行を知り、敵は悪神ロキだけではないと分かった。
 余りのショックに、村人たちは自暴自棄になりそうだった。
 だがそんな村の雰囲気をエマが一変させた。

「神々が昔から人を争わせて楽しんでいたというのでしたら、私たちが何を考えようと何をしようと何も変わりません。
 これからも大魔境の魔獣と悪神ロキの眷属が襲ってくるのです。
 これからも愛する家族を守るために精一杯戦うだけです。
 私はこれまでと変わる事無く母上様を助けるために戦います。
 貴方方も、愛する家族のために精一杯戦ってください」

「エマの言う通りだ、俺には神々の考えなどどうでも良い。
 父さんを助けてくれたアイリス様を助けられたらそれで良い。
 その為にテュール神の加護が必要なら使わせてもらう、それだけだ」

 エマに続いてライアンが堂々と言い切った。
 その言葉にアイリスに助けられた人たちは命の恩を思い出した。

 以前から神々が悪意を持って人と接しているなら、真実を知ったからといって、何一つ変わらないと思った。

「分かった、その通りだ、神々が何を考えようと、人をどう扱おうと、精一杯生きて行くしかない、俺もこれまで通りアイリス様に命を恩を返す」

 ライアンの父親、自警団長のマクシムも言い切った。

「そうだな、それが人の道だ」
「人に味方する神がいるなら、その方を敬うだけだ」
「魔獣や眷属と戦わせるために力を与えると言うのなら、もらえば良い」
「そうだな、もらわずに殺されたらバカみたいだ」

 村人たちの心が、アイリスを助けるという目的にひとつになった。
 これまでも協力し合っていたが、どこか神に頼る気持ちがあった。
 だが今は、神を利用する気でいた。

「いいじゃない、神々を利用する気になったのね。
 だったら良い事を教えてあげる、特定の神に祈ってから魔術を使う事で、必要な魔力が少なくなって、破壊力も大きくなるのよ」

 精霊がエマに話しかけてきた。
 大魔境で最初に話しかけてきた、精霊たちの長とは違う精霊が話しかけてきた。
 
「本当か、それが本当なら、今まで魔術が使えなかった俺でも魔術が使えるようになるのか?」

「う~ん、それはやってみなければ分からないわ。
 でも、貴男、軍神テュールの加護を受けているのでしょう?」

「ああ、受けている」

「特定の神に気に入られれば気に入られるほど、他の神に嫌われるのよ。
 だから、他の神の影響が強い属性の魔術は使い難くなるの」

「だったら、加護を受けていない俺たちはどうだ?」
「色んな神の魔術を効果的に使えるのか?」

「ええ、使えるわよ。
 ただ、使う魔術が偏って一柱の神を頼り過ぎると、その神の加護を受ける事があるから、そうなると、これまで使えていた魔術が使えなくなる事もあるわ」

「ひぇえええええ、それは怖いな」
「だったら、危険のない時に、普段使わない属性の魔術を使えばいいよな?」

 カインとアベルが、貴重な話を教えてくれた精霊に話しかける。

「貴重な話を聞かせていただき、ありがとうございます。
 あなたの名前を聞かせていただけますか?」

 エマが精霊の名前をたずねたのは、自分の状況で何ができるのか、聖治癒術以外の魔術を使う方法がないか知りたかったからだ。

「私はアールヴよ、精霊族の中では魔術について一番詳しいから、何でも聞いて」

「貴女だけ狡いわよ、私だって人の役に立つんだから。
 私はディース、予言ができる特別な精霊よ」

 だが、他の精霊が口を挟んで来たから聞けなくなってしまった。
 いや、もっと大切な事が聞きたくなって飛んでしまった。

「予言ができるのですか?!
 だったら、母上様が助かるかどうか予言してください」

「……ごめんなさい、神々が介入している事は予言しても結果が変わってしまうの。
 あいつら、自分の欲望のままに世界の理まで変えるのよ、ひどすぎない?!」

「そうですか、それでは仕方ありませんね……」

「ああ、でも、はっきりしている事もあるわ。
 悪神ロキは神々の中でも特に性格が悪いから、必ず襲ってくるわ」

 予言精霊ディースの言葉は何の意味もなかった。
 悪神ロキが眷属を使って襲ってくる事は、誰にも分かっていた事だ。

「いや、そんな事分かり切っているから」
「襲ってこないと思う方がおかしいから」

「うっ、だったらもっとはっきりとした予言をしてあげる。
 悪神ロキの眷属は今晩も襲ってくるわ」

「「「「「今晩だと?!」」」」」

 四人は平気で精霊たちと話していたが、他の村人はひと言も発する事なく、黙って聞いていたのだが、新たな予言を聞いて思わず驚きの言葉を吐いた。

「予言精霊ディース、それは、村を襲うと言う事か?
 それとも、俺たち四人を襲うと言う事か?」

「ちょっと待って、また見てみるから。
 ……他の神々の介入もなさそうだし、ロキの執念も全く衰えていないわ。
 エマよ、ロキが狙っているのはエマよ」

「だったら、私が村を出たら、村は安全という事ね?」

「また聞くの、神々が介入している未来を見るのは疲れるのよ!」

「私たちの役に立ってくれると約束しましたよね?
 今日はこれで最後の質問にするから、もう一度だけ見てちょうだい」

「ディース、見てあげて、エマは私たちの恩人なのよ」

 精霊の長が後押しした。

「分かったわよ、見るわよ、見れば良いんでしょう」

 四人だけでなく、村人全員が息をするのも忘れて予言を待った。
 その予言次第で、エマの未来が決まってしまうのだ。

「分かったわ、エマが村を出たら、ロキは眷属に追いかけさせるわ。
 でも、これは今予言した事だから、また変わるかもしれないわ。
 ロキは本当に性格が悪いから、狙った相手が強敵だと、大切な人を人質に取ってでも勝とうとするの。
 以前には、狙った相手を苦しめるために、先に家族を殺した事があるわ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

スクナビコナの冒険―小さな神が高天原を追放されネズミとともに地上に落っこちてしまった件―

七柱雄一
児童書・童話
 スクナビコナは人の手のひらに乗る程度の小さな体の神です。  またスクナビコナは日本神話に登場する神でもあるのですが、作者としては日本の神話などに関する予備知識があまりなくても、読み進められるように本作を書いていくことを心がけようと思っています。  まだまだ『アルファポリス』初心者の上に未熟者の作者ですが、一応プロを目指す方向でやっていくつもりでおります。  感想、ご指摘、批評、批判(もちろん誹謗、中傷のたぐいはご勘弁願いたいのですが)大歓迎でございます。  特に特定の読者層は想定しておらず、誰でも読めるものを目指した作品です。  また『小説家になろう』『カクヨム』でもこの小説を投稿しております。  ではぜひお楽しみください!

【1章完】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。

山姥(やまんば)

野松 彦秋
児童書・童話
小学校5年生の仲良し3人組の、テッカ(佐上哲也)、カッチ(野田克彦)、ナオケン(犬塚直哉)。 実は3人とも、同じクラスの女委員長の松本いずみに片思いをしている。 小学校の宿泊研修を楽しみにしていた4人。ある日、宿泊研修の目的地が3枚の御札の昔話が生まれた山である事が分かる。 しかも、10年前自分達の学校の先輩がその山で失踪していた事実がわかる。 行方不明者3名のうち、一人だけ帰って来た先輩がいるという事を知り、興味本位でその人に会いに行く事を思いつく3人。 3人の意中の女の子、委員長松本いずみもその計画に興味を持ち、4人はその先輩に会いに行く事にする。 それが、恐怖の夏休みの始まりであった。 山姥が実在し、4人に危険が迫る。 4人は、信頼する大人達に助けを求めるが、その結果大事な人を失う事に、状況はどんどん悪くなる。 山姥の執拗な追跡に、彼らは生き残る事が出来るのか!

異世界桃太郎 ~桃から生まれし英雄 伝説への道~

bekichi
児童書・童話
ある村の川辺に不思議な光を放つ巨大な桃が流れ着き、名門貴族の令嬢・桃花姫の屋敷近くで発見される。桃花姫は好奇心から桃を割らせ、中から元気な少年・桃太郎が現れる。桃太郎は桃花姫に育てられ、村人に愛されるが、自身の出自に疑問を持つ。ある日、伝説の英雄についての古文献を見つけ、自身の出自を探るために旅に出ることを決意する。桃花姫の監視を逃れ、船頭の翔平の助けを借りて夜に村を抜け出し、未知の世界へ旅立つ。旅中、困難に直面しながらも、特別な運命を持つことを理解し、自己発見と出自を知る旅を続ける。

GREATEST BOONS+

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...