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第1章
第19話:精霊たち
しおりを挟む「ねえ、ねえ、ねえ、何をそんなに急いでいるの?」
村に急いで戻る四人の前に数多くの精霊が現れた。
遥か昔、神代には人と共に暮らしていたと言われる精霊たち。
だが、人の我欲を嫌って姿を隠したと言われていた。
そんな精霊がエマに話しかけた。
エイル神の加護を受けているエマは、精霊にも好かれるのかもしれない。
「母上様の呪いを解きたいの、だから急いでいるの」
走る速さを緩めずにエマが返事をした。
「ふぅ~ん、母上様がそんなに大切なの?」
「ええ、大切よ、精霊は母親を大切に思わないの?」
「精霊は自然と生まれるから母親も父親もいないわ。
だから母親や父親を大切に思う気持ちは分からないの」
「精霊には友達や恋人はいないの?」
「恋人はいないけれど友達はいるわ」
「友たちは大切に思うの?」
「うん、思うわよ」
「その友達が呪いにかけられたら、助けたいと思う?」
「うん思うわよ」
「だったら想像して、私にとっては友達よりも母上様の方が大切なの。
そんな大切な母上様が呪いをかけられたから、どうしても助けたいの」
「どうしても助けたいの、だったら手助けするから私たちの願いも聞いてよ」
「本当に私たちを手伝えるの?
私の母上様に呪いをかけたのは悪神なのよ?」
「ロキ、ロキが相手なら私たちと同じよ。
私たちを襲っているのもロキの手先なの」
「レッサー・ヴァンパイアが襲ってくるの?」
「レッサー・ヴァンパイアが相手なら、数が少ないから飛んで逃げられえるの。
でも、数の多いヴァンパイア・バットが相手だと逃げきれない事があるの。
年を経た子たちなら智慧で逃げられるんだけれど、現れたばかりの子はまだ智慧が少ないから、逃げきれない事が多いの」
「ちょっと待って、友達と相談するわ、どうしたらいいと思う?」
「どれだけ手伝ってもらえるか分からないから、当てにしない方が良い。
だが、見捨てるのもかわいそうだし、人の道に外れる。
ただ今はアイリス様を助けるのが最優先だ。
村に匿ってやるのでいいんじゃないか」
「そうだね、この大きさで空も飛べるなら、村に居ても邪魔にならない」
「いっそダンジョンに匿ったら?」
「聞いていた、一緒に来るなら匿ってあげるわよ?」
「貴方たちの村は安全なの、ダンジョンの中は安全なの?」
「家の村では精霊を襲ったりしないわ。
私は村長の娘だから、その立場で貴方たちを匿うと約束するわ。
ダンジョンに関しては、奥に入らなければ安全よ。
人間が行き交えるくらいの階段部分には、モンスターが現れないの。
そこで暮らすなら、ヴァンパイア・バットが襲って来る事もないわ。
貴方たち精霊が人と一緒でも良いと言うなら、私の家でもいいわよ」
「分かったわ、一緒に行くわ、みんな、この人たちについて行くわよ」
エマと話していた精霊がリーダーだったようで、精霊が一斉に集まってきた。
完全な人型の精霊は少なく、多くは小さな火の玉や蛍火のようだった。
多くの精霊が食べられて幼くなったというのが実感された。
「やだ、虫よ、虫が集まってきたわ」
少々の虫では驚かない大魔境育ちのエマが言った。
湿地帯に入ってしまったようで、小型から大型まで、吸血虫が集まってきた。
悪神ロキの眷属なら簡単に聖浄化できるのだが、普通の魔蟲なので効果がない。
効率は悪いが、魔術や体術で斃すしかない。
そんな魔蟲を食べようと、小型から中型の鳥が集まってきた。
小型の鳥を狙う大型の鳥や、魔鳥まで集まってきてしまった。
知恵のある魔獣ならエマやライアンを襲ったりしないのだが、この世界の魔鳥も頭が悪いので、相手の強さに関係なく襲ってくる。
エマは、レベルが上がった身体能力を駆使して剣を振るい、襲ってくる魔鳥を空中で次々と斬り捨てて行く。
ライアンも、ファイター・フォレスト・ウルフたちを斃して著しく上がったレベルと身体強化を駆使して、魔鳥を寄せ付けることなく空中で斬り殺す。
カインとアベルも、エマやライアンほどではないが、村の周囲では遭遇する事のない強い魔獣と戦ってレベルを上げていた。
特にゴブリンを数多く斃した事で、村の大人たち以上に強くなっていた。
その強くなった身体を駆使して、襲ってくる魔鳥を斬り殺していた。
エマやライアンほど華麗でも完璧でもないが、上手く防具を使って最小限のケガに留めながら、安全確実に魔鳥を斬り殺していた。
「もったいないよな、持ち帰れたら食べられるのに」
「ダンジョンでドロップする肉より美味いはずだよな」
「それを言うな、俺だって持ち帰りたいんだ」
「悪いけれど今回は諦めて、次はインターミーディア・ヴァンパイアが襲ってくる可能性が高いから、万全の状態で迎え討ちたいわ」
「分かっているよ、言っただけだよ」
「そうそう、単なる愚痴だから聞き流してよ」
「村の大人たちが美味しい魔獣を狩ってくれていると良いんだが」
「それは無理な話だよ」
「アイリス様がいない状態では、最低限の獲物しか狩れないよ」
「狩りよりも前に、新しい防壁を完成させないと、村が滅んでしまうわ。
どうしても美味しい肉が食べたいのなら、一度村に戻ってから狩りをする?」
「そこまでしなくてもいいよ、それよりも球根が本物かどうかが大切だよ」
「村についたら急いで身を清めて神々に報告しないと」
「球根が本物だったら、他の部分が高値で売れる。
そうなったら領都の美味しい菓子を買って来てもらおう。
子供会の年少組に食べさせてあげたい」
「そうね、美味しいお菓子を食べさせてあげたいわね」
村に急いで戻る四人の前に数多くの精霊が現れた。
遥か昔、神代には人と共に暮らしていたと言われる精霊たち。
だが、人の我欲を嫌って姿を隠したと言われていた。
そんな精霊がエマに話しかけた。
エイル神の加護を受けているエマは、精霊にも好かれるのかもしれない。
「母上様の呪いを解きたいの、だから急いでいるの」
走る速さを緩めずにエマが返事をした。
「ふぅ~ん、母上様がそんなに大切なの?」
「ええ、大切よ、精霊は母親を大切に思わないの?」
「精霊は自然と生まれるから母親も父親もいないわ。
だから母親や父親を大切に思う気持ちは分からないの」
「精霊には友達や恋人はいないの?」
「恋人はいないけれど友達はいるわ」
「友たちは大切に思うの?」
「うん、思うわよ」
「その友達が呪いにかけられたら、助けたいと思う?」
「うん思うわよ」
「だったら想像して、私にとっては友達よりも母上様の方が大切なの。
そんな大切な母上様が呪いをかけられたから、どうしても助けたいの」
「どうしても助けたいの、だったら手助けするから私たちの願いも聞いてよ」
「本当に私たちを手伝えるの?
私の母上様に呪いをかけたのは悪神なのよ?」
「ロキ、ロキが相手なら私たちと同じよ。
私たちを襲っているのもロキの手先なの」
「レッサー・ヴァンパイアが襲ってくるの?」
「レッサー・ヴァンパイアが相手なら、数が少ないから飛んで逃げられえるの。
でも、数の多いヴァンパイア・バットが相手だと逃げきれない事があるの。
年を経た子たちなら智慧で逃げられるんだけれど、現れたばかりの子はまだ智慧が少ないから、逃げきれない事が多いの」
「ちょっと待って、友達と相談するわ、どうしたらいいと思う?」
「どれだけ手伝ってもらえるか分からないから、当てにしない方が良い。
だが、見捨てるのもかわいそうだし、人の道に外れる。
ただ今はアイリス様を助けるのが最優先だ。
村に匿ってやるのでいいんじゃないか」
「そうだね、この大きさで空も飛べるなら、村に居ても邪魔にならない」
「いっそダンジョンに匿ったら?」
「聞いていた、一緒に来るなら匿ってあげるわよ?」
「貴方たちの村は安全なの、ダンジョンの中は安全なの?」
「家の村では精霊を襲ったりしないわ。
私は村長の娘だから、その立場で貴方たちを匿うと約束するわ。
ダンジョンに関しては、奥に入らなければ安全よ。
人間が行き交えるくらいの階段部分には、モンスターが現れないの。
そこで暮らすなら、ヴァンパイア・バットが襲って来る事もないわ。
貴方たち精霊が人と一緒でも良いと言うなら、私の家でもいいわよ」
「分かったわ、一緒に行くわ、みんな、この人たちについて行くわよ」
エマと話していた精霊がリーダーだったようで、精霊が一斉に集まってきた。
完全な人型の精霊は少なく、多くは小さな火の玉や蛍火のようだった。
多くの精霊が食べられて幼くなったというのが実感された。
「やだ、虫よ、虫が集まってきたわ」
少々の虫では驚かない大魔境育ちのエマが言った。
湿地帯に入ってしまったようで、小型から大型まで、吸血虫が集まってきた。
悪神ロキの眷属なら簡単に聖浄化できるのだが、普通の魔蟲なので効果がない。
効率は悪いが、魔術や体術で斃すしかない。
そんな魔蟲を食べようと、小型から中型の鳥が集まってきた。
小型の鳥を狙う大型の鳥や、魔鳥まで集まってきてしまった。
知恵のある魔獣ならエマやライアンを襲ったりしないのだが、この世界の魔鳥も頭が悪いので、相手の強さに関係なく襲ってくる。
エマは、レベルが上がった身体能力を駆使して剣を振るい、襲ってくる魔鳥を空中で次々と斬り捨てて行く。
ライアンも、ファイター・フォレスト・ウルフたちを斃して著しく上がったレベルと身体強化を駆使して、魔鳥を寄せ付けることなく空中で斬り殺す。
カインとアベルも、エマやライアンほどではないが、村の周囲では遭遇する事のない強い魔獣と戦ってレベルを上げていた。
特にゴブリンを数多く斃した事で、村の大人たち以上に強くなっていた。
その強くなった身体を駆使して、襲ってくる魔鳥を斬り殺していた。
エマやライアンほど華麗でも完璧でもないが、上手く防具を使って最小限のケガに留めながら、安全確実に魔鳥を斬り殺していた。
「もったいないよな、持ち帰れたら食べられるのに」
「ダンジョンでドロップする肉より美味いはずだよな」
「それを言うな、俺だって持ち帰りたいんだ」
「悪いけれど今回は諦めて、次はインターミーディア・ヴァンパイアが襲ってくる可能性が高いから、万全の状態で迎え討ちたいわ」
「分かっているよ、言っただけだよ」
「そうそう、単なる愚痴だから聞き流してよ」
「村の大人たちが美味しい魔獣を狩ってくれていると良いんだが」
「それは無理な話だよ」
「アイリス様がいない状態では、最低限の獲物しか狩れないよ」
「狩りよりも前に、新しい防壁を完成させないと、村が滅んでしまうわ。
どうしても美味しい肉が食べたいのなら、一度村に戻ってから狩りをする?」
「そこまでしなくてもいいよ、それよりも球根が本物かどうかが大切だよ」
「村についたら急いで身を清めて神々に報告しないと」
「球根が本物だったら、他の部分が高値で売れる。
そうなったら領都の美味しい菓子を買って来てもらおう。
子供会の年少組に食べさせてあげたい」
「そうね、美味しいお菓子を食べさせてあげたいわね」
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