13 / 58
第1章
第13話:フォレスト・ウルフ
しおりを挟む
エマのレベルが格段に上がった事で大量の荷物を運べるようになった。
ライアンとカインとアベルのレベルも少しだけ上がったので、その分だけ多くの荷物を運べるようになっていた。
前回はたった一晩の大魔境夜営だった。
だが今回は、二晩も大魔境で夜営する事になる。
運ばなければいけない荷物も多く重くなる。
そういう意味では、四人がレベルアップした事はとても大きかった。
多く重くなった荷物を持っても、前回よりも楽なくらいだった。
更にたった一度の冒険だったが、とても大きな経験となっていた。
前回の冒険で持っていけばよかったと思ったモノを用意できた。
狩ったアグーを持ち帰る時に有れば良かったと思った、天秤棒代わりに使える槍を四人全員が持っている。
槍を杖代わりにも使えるように、石突の部分も工夫してある。
敵、ロキの眷属や魔獣に不意を打たれたとしても、杖代わりに槍を持っていれば、抜剣するよりも早く槍を振るえる。
「無理をしなくても良いからな」
「俺たちが斃すから、発見と牽制をしてくれるだけで良いぞ」
「「「「「ウォン」」」」」
貴重な経験をして格段に強くなったのは四人だけではない。
猟犬見習たちも格段に強くなっている。
ダンジョンでの鍛錬でも、自分たちで魔獣を狩るのではなく、ライアンに誘導したり時間稼ぎをしたりする事が大事だと仕込まれている。
前回と同じ方向、同じ道なき道を進んでいるので、レベルアップしたのも有って、かなり早く東に進んでいた。
これほど順調に進めるのなら、前回よりも東に行った場所で夜営すべきかと、四人で話しながら歩いていた昼前。
「「「「「ウォン、ウォン、ウォン、ウォン、ウォン」」」」」
「うぉ~ん!」
「「「「「うぉ~ん!」」」」」
またしてもフォレスト・ウルフの群れに襲われた。
しかも今回はとんでもない数の群れに襲われた。
並の騎士団や冒険者クランでは全滅しかねない、九十四頭もの群だった。
「レベル上げの好機だ、エマは下がっていろ」
「任せましたわ」
「「俺たちにもレベル上げさせてくれ」」
「早い者勝ちだ!」
遠吠えを聞いたライアンの行動は早かった。
人並みにしか使えない槍を地に刺して、抜剣して遠吠えがした方に向かった。
フォレスト・ウルフの群れを率いるリーダーを狩って、経験値にする気だった。
普通は四頭から八頭で群れをつくる性質のフォレスト・ウルフが、リーダーの遠吠えに応えた数だけで三十頭を超えていたのだ。
それだけの群れを統率できるフォレスト・ウルフは、とんでもなくレベルが高く、斃せば多くの経験値を得られるとライアンは判断したのだ。
ライアンの考えた通りだった。
この群れの長は、普通ならフォレスト・ウルフを飼い慣らして従わせる、リーダー・ゴブリンを喰い殺すほど強かった。
ゴブリンの進化で言えば、リーダーやファイター級を超える強さを誇っていた。
時に1000kg級のウシ系魔獣ガウルを狩り、同じく1000kg級のイノシシ系魔獣ダエオドンを狩って喰らう、強大なフォレスト・ウルフだった。
あえて名付けるならファイター・フォレスト・ウルフだった。
ライアンは多くの経験値が稼げるとよろこんでいた。
とても成人前の少年とは思えない自信だったが、それだけの努力を重ねていた。
「運が悪かったと諦めろ!」
ライアンはファイター・フォレスト・ウルフが直率する、親衛隊とも言える、強いホブ・フォレスト・ウルフたちを軽々と斃して咆えた。
必要な事、正しい判断度と思い、自ら進んでエマのレベル上げを提案した。
エマがとんでもなく強くなった事を心からよろこんでいた。
一日でも早くアイリス様が解呪される事を願っていた。
それに間違いはないのだが、同時に焦りも感じていた。
常に横を歩いていたエマに置いて行かれた気がしていた。
何としてでも追いつきたい、そう思ってしまう心もあった。
軍神テュールの加護、身体強化されたライアンの剣は鋭く重い。
ファイター級にまで進化したフォレスト・ウルフが張る魔力防御を、軽々と打ち破って首を斬り飛ばす。
返す剣でファイター・フォレスト・ウルフの胸を骨ごと斬り裂き、心臓近くにある魔石を左手で取り出して自分の物とする。
先に斃していたホブ・フォレスト・ウルフの胸も斬り裂き、並のフォレスト・ウルフよりは大きく魔力量も多い魔石を確保する。
ライアンの狩りはそれだけでは終わらない。
まだ斃していないフォレスト・ウルフを皆殺しにして、経験値と魔石を手に入れるまで、狂戦士バーサーカーのように戦い続けた。
「ちぇ、八頭しか斃せなかった」
「俺もたった八頭だよ」
返り血を一滴も浴びずに、少し汗をかいただけのライアンが戻ってきたので、カインとアベルが文句を言う。
エマを守る事を優先しなければいけないので、ライアンのようにフォレスト・ウルフを追い回せなかったのだ。
とはいえ、ライアンが先手を打ってフォレスト・ウルフの群れに突っ込んだからこそ、九十四頭もの群に包囲飽和攻撃されなかったのだ。
「約束通り、神々の試練が終わったらカインとアベルのレベル上げに付き合う。
まずは神々の試練を達成するのが先だ」
「ありがとう、ライアン。
私たちだけレベルを上げてごめんさない、カイン、アベル」
「冗談だよ、四人で話し合った戦法だから文句はないよ」
「試練が終わったら美味しい魔獣をたくさん狩ろうぜ」
「それよりも、狩ったフォレスト・ウルフをどうする?」
「帰りじゃないから、金になると分かっていても持ち帰れないぜ?」
ライアンとカインとアベルのレベルも少しだけ上がったので、その分だけ多くの荷物を運べるようになっていた。
前回はたった一晩の大魔境夜営だった。
だが今回は、二晩も大魔境で夜営する事になる。
運ばなければいけない荷物も多く重くなる。
そういう意味では、四人がレベルアップした事はとても大きかった。
多く重くなった荷物を持っても、前回よりも楽なくらいだった。
更にたった一度の冒険だったが、とても大きな経験となっていた。
前回の冒険で持っていけばよかったと思ったモノを用意できた。
狩ったアグーを持ち帰る時に有れば良かったと思った、天秤棒代わりに使える槍を四人全員が持っている。
槍を杖代わりにも使えるように、石突の部分も工夫してある。
敵、ロキの眷属や魔獣に不意を打たれたとしても、杖代わりに槍を持っていれば、抜剣するよりも早く槍を振るえる。
「無理をしなくても良いからな」
「俺たちが斃すから、発見と牽制をしてくれるだけで良いぞ」
「「「「「ウォン」」」」」
貴重な経験をして格段に強くなったのは四人だけではない。
猟犬見習たちも格段に強くなっている。
ダンジョンでの鍛錬でも、自分たちで魔獣を狩るのではなく、ライアンに誘導したり時間稼ぎをしたりする事が大事だと仕込まれている。
前回と同じ方向、同じ道なき道を進んでいるので、レベルアップしたのも有って、かなり早く東に進んでいた。
これほど順調に進めるのなら、前回よりも東に行った場所で夜営すべきかと、四人で話しながら歩いていた昼前。
「「「「「ウォン、ウォン、ウォン、ウォン、ウォン」」」」」
「うぉ~ん!」
「「「「「うぉ~ん!」」」」」
またしてもフォレスト・ウルフの群れに襲われた。
しかも今回はとんでもない数の群れに襲われた。
並の騎士団や冒険者クランでは全滅しかねない、九十四頭もの群だった。
「レベル上げの好機だ、エマは下がっていろ」
「任せましたわ」
「「俺たちにもレベル上げさせてくれ」」
「早い者勝ちだ!」
遠吠えを聞いたライアンの行動は早かった。
人並みにしか使えない槍を地に刺して、抜剣して遠吠えがした方に向かった。
フォレスト・ウルフの群れを率いるリーダーを狩って、経験値にする気だった。
普通は四頭から八頭で群れをつくる性質のフォレスト・ウルフが、リーダーの遠吠えに応えた数だけで三十頭を超えていたのだ。
それだけの群れを統率できるフォレスト・ウルフは、とんでもなくレベルが高く、斃せば多くの経験値を得られるとライアンは判断したのだ。
ライアンの考えた通りだった。
この群れの長は、普通ならフォレスト・ウルフを飼い慣らして従わせる、リーダー・ゴブリンを喰い殺すほど強かった。
ゴブリンの進化で言えば、リーダーやファイター級を超える強さを誇っていた。
時に1000kg級のウシ系魔獣ガウルを狩り、同じく1000kg級のイノシシ系魔獣ダエオドンを狩って喰らう、強大なフォレスト・ウルフだった。
あえて名付けるならファイター・フォレスト・ウルフだった。
ライアンは多くの経験値が稼げるとよろこんでいた。
とても成人前の少年とは思えない自信だったが、それだけの努力を重ねていた。
「運が悪かったと諦めろ!」
ライアンはファイター・フォレスト・ウルフが直率する、親衛隊とも言える、強いホブ・フォレスト・ウルフたちを軽々と斃して咆えた。
必要な事、正しい判断度と思い、自ら進んでエマのレベル上げを提案した。
エマがとんでもなく強くなった事を心からよろこんでいた。
一日でも早くアイリス様が解呪される事を願っていた。
それに間違いはないのだが、同時に焦りも感じていた。
常に横を歩いていたエマに置いて行かれた気がしていた。
何としてでも追いつきたい、そう思ってしまう心もあった。
軍神テュールの加護、身体強化されたライアンの剣は鋭く重い。
ファイター級にまで進化したフォレスト・ウルフが張る魔力防御を、軽々と打ち破って首を斬り飛ばす。
返す剣でファイター・フォレスト・ウルフの胸を骨ごと斬り裂き、心臓近くにある魔石を左手で取り出して自分の物とする。
先に斃していたホブ・フォレスト・ウルフの胸も斬り裂き、並のフォレスト・ウルフよりは大きく魔力量も多い魔石を確保する。
ライアンの狩りはそれだけでは終わらない。
まだ斃していないフォレスト・ウルフを皆殺しにして、経験値と魔石を手に入れるまで、狂戦士バーサーカーのように戦い続けた。
「ちぇ、八頭しか斃せなかった」
「俺もたった八頭だよ」
返り血を一滴も浴びずに、少し汗をかいただけのライアンが戻ってきたので、カインとアベルが文句を言う。
エマを守る事を優先しなければいけないので、ライアンのようにフォレスト・ウルフを追い回せなかったのだ。
とはいえ、ライアンが先手を打ってフォレスト・ウルフの群れに突っ込んだからこそ、九十四頭もの群に包囲飽和攻撃されなかったのだ。
「約束通り、神々の試練が終わったらカインとアベルのレベル上げに付き合う。
まずは神々の試練を達成するのが先だ」
「ありがとう、ライアン。
私たちだけレベルを上げてごめんさない、カイン、アベル」
「冗談だよ、四人で話し合った戦法だから文句はないよ」
「試練が終わったら美味しい魔獣をたくさん狩ろうぜ」
「それよりも、狩ったフォレスト・ウルフをどうする?」
「帰りじゃないから、金になると分かっていても持ち帰れないぜ?」
10
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
【完結】魔法道具の預かり銀行
六畳のえる
児童書・童話
昔は魔法に憧れていた小学5学生の大峰里琴(リンコ)、栗本彰(アッキ)と。二人が輝く光を追って最近閉店した店に入ると、魔女の住む世界へと繋がっていた。驚いた拍子に、二人は世界を繋ぐドアを壊してしまう。
彼らが訪れた「カンテラ」という店は、魔法道具の預り銀行。魔女が魔法道具を預けると、それに見合ったお金を貸してくれる店だ。
その店の店主、大魔女のジュラーネと、魔法で喋れるようになっている口の悪い猫のチャンプス。里琴と彰は、ドアの修理期間の間、修理代を稼ぐために店の手伝いをすることに。
「仕事がなくなったから道具を預けてお金を借りたい」「もう仕事を辞めることにしたから、預けないで売りたい」など、様々な理由から店にやってくる魔女たち。これは、魔法のある世界で働くことになった二人の、不思議なひと夏の物語。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
スクナビコナの冒険―小さな神が高天原を追放されネズミとともに地上に落っこちてしまった件―
七柱雄一
児童書・童話
スクナビコナは人の手のひらに乗る程度の小さな体の神です。
またスクナビコナは日本神話に登場する神でもあるのですが、作者としては日本の神話などに関する予備知識があまりなくても、読み進められるように本作を書いていくことを心がけようと思っています。
まだまだ『アルファポリス』初心者の上に未熟者の作者ですが、一応プロを目指す方向でやっていくつもりでおります。
感想、ご指摘、批評、批判(もちろん誹謗、中傷のたぐいはご勘弁願いたいのですが)大歓迎でございます。
特に特定の読者層は想定しておらず、誰でも読めるものを目指した作品です。
また『小説家になろう』『カクヨム』でもこの小説を投稿しております。
ではぜひお楽しみください!
魔法が使えない女の子
咲間 咲良
児童書・童話
カナリア島に住む九歳の女の子エマは、自分だけ魔法が使えないことを悩んでいた。
友だちのエドガーにからかわれてつい「明日魔法を見せる」と約束してしまったエマは、大魔法使いの祖母マリアのお使いで魔法が書かれた本を返しに行く。
貸本屋ティンカーベル書房の書庫で出会ったのは、エマそっくりの顔と同じエメラルドの瞳をもつ男の子、アレン。冷たい態度に反発するが、上から降ってきた本に飲み込まれてしまう。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる