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第三章
第77話:我儘放題
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俺の急速醸造は成功しました。
十石甕の三割程度ですが、割と酒精の強い柿酒パシモン・ワインが完成しました。
ここなら古参の譜代家臣や民しかいないので、炎竜が来ても大丈夫でしょう。
俺はワープを使って炎竜が果樹園を作っている東竜山脈に行きました。
まるで子供がプラモデルを作るように、夢中になって果樹園を作っている炎竜に話しかけました。
「炎竜様、俺の秘術魔法で酒を早く造る事ができました。
試飲していただきたいのですが、大丈夫ですか?」
「なに、そんな魔法があるのなら、もっと早く造れ!」
「やった事がなかったので、色々試していたのです。
もう一度成功するかどうかも分かりません。
まずはできた酒を試飲していただいて、美味しいかどうか確認してください。
それによって作っていただく果樹園の品種が変わります。
不味い酒になる果樹など増やしたくないでしょう?」
「ふん、当然だ、不味い酒の材料など絶対に増やさん。
不味い果物は人間が食え。
美味しい酒になる果物は余の物だ!」
「それはまた後日相談させていただきます。
どれもこれも美味しい酒になるようだと、少しずつでも人間に分けていただかないと、酒が造れなくなりますから」
「くっ、ああ言えばこう言いおって!
わかった、わかった、分かった。
酒造りに必要な人間には分けてやる。
それより試飲だ、さっさと試飲させろ!」
ギャアギャア喚く炎竜を引き連れて、柿酒を造った三の村に戻りました。
「この村の柿ではこの量が精一杯でした。
炎竜様の口に合うなら、次の果樹園は柿にして頂きます」
「ふん、ワインになるブドウが一番だぞ!
な、う、うまい、甘くて風味が強くて柿の渋みも心地いい!
こんな美味い酒を飲んだのは百万年生きて来て初めてだぞ!」
「お口に合ったようで何よりです」
「造れ、もっと造れ、造らないと暴れるぞ!
ここで暴れたら酒が造れなくなるから、前に行った国で暴れ回るぞ!」
このやろう、好き勝って言いやがって!
おっと、いけません、言葉遣いが悪くなってしまいました。
父上や母上が悪し様に罵られないように、常に丁寧な言葉遣いをするのです。
前世の荒い方言が出ないように、心に思う段階から丁寧な言葉で考えるのです。
「分かりましたが、その為には大量の柿が必要です。
柿にも品種があって、酒にした時に味が変わるかもしれません。
間違って他の品種が混じらないように、炎竜様の果樹園は一品種にしましょう。
木の数も、十石甕九つが余裕で満杯になる本数にしましょう」
「ふむ、俺専用の酒を造る果樹園か。
混じり物のない、一品種の果物だけで造る酒の方が美味いのか?」
「それも造ってみなければ分かりません。
もし品種を混ぜた方が美味しいのなら、造った後でブレンドすればいいのです。
何事も造って試飲してみなければ決められません」
「うむ、うむ、うむ、そうだな、試飲しなければ決められんな。
だったらお前の望む通り、柿だけの果樹園を作ってやろう。
その代わり、直ぐに造るのだぞ!」
「分かっております、直ぐに造らせていただきます。
ですが、造っていただくのは果樹園だけではありませんよ。
炎竜様が直ぐに試飲できるように設計した酒蔵も十石甕も造っていただきます」
「分かっている、いちいち五月蠅い!
今直ぐ造ってやるから、必要な種と苗木を渡せ!」
俺は、促成成長させるのに一番魔力と工程が必要な種を渡した。
「これが富有柿、こっちが次郎柿、最後が西条柿です。
さっき言った条件で果樹園を作ってください」
「くどい!
何度も同じ事を言うな!
余は人間のような馬鹿ではない!
一度聞いた事は絶対に忘れぬ!
お前こそ自分の言った事を忘れるな!」
「はい、分かっております。
炎竜様が次に造ってくださる果樹園に、柿を集める人間を運んできます。
俺ももう一度同じ魔法が使えるか色々試してみます。
酒ができましたら、先ほどのようにお呼びします。
できるだけ沢山の果樹園と酒蔵を作っていてください」
「何が何でも成功させろ!
失敗したらこの前行った国の人間、半分は殺してやるからな!」
「そのような事にならないように頑張らせていただきます」
俺はまた連邦から働き手を連れてきました。
食糧を渡すと言えば、幾らでも集まってきます。
最低限の食糧を渡している我が家の民でもそうなのです。
暴君に統治されている地では、今も餓死者凍死者が絶えないでしょう。
炎竜様と言う目立つ脅威がありますから、他国他領の民も助けられますよね?
炎竜の酒に対する情熱、執着は異常ですね。
たった一時間で、東竜山脈三千メートル付近に、延々と続く柿園を作りました。
手前までは延々と続くブドウ園でしたから、笑ってしまいますね。
炎竜が完全に見えなくなるまでは、連邦民を連れて行けません。
気絶される程度なら良いのですが、心臓麻痺でも起こされたら大変ですから。
時間を潰す方法など幾らでもあります。
飢えた人達ですから、重労働の前に腹一杯食べてもらいます。
前先に連れてきた連邦民が働いている果樹園では、炎竜の魔術でたわわに実った果実を収穫してもらう事もできます。
俺もやる事が沢山あります。
人手を集めるだけでなく、ブドウでワインを造っておくのです。
これまではこの世界で普通に流通している品種でワインを造っていました。
生食用のブドウなら、俺の味記憶で強引に魔術改良できました。
ですが、下戸でほとんど酒を飲んだ事のないので、酒類は再現できないのです。
完全な想像で作るにしても、アルコール濃度が高くフルーティーなワインと強引に思うしかないのです。
それでは美味しいワインが造れないくらい分かっています。
俺だって、ブドウが生食用とワイン用で品種が違う事くらい知っています。
ブドウ農家だった大叔父が密造ワインを造っていましたが、幼い頃にひと舐めしてギブアップしてしまいました。
だから俺にはワイン用のブドウが再現できません。
今本領地に有るブドウは、俺が食べた事のある品種ばかりです。
大叔父が作っていた品種と、自分で買って食べた事のある品種ばかりです。
あるのは地元では本ブドウと呼んでいた甲州ブドウ。
大叔父はこれで造ったワインが一番美味しいと言っていました。
他には市場に出荷するのに都合がよかった種なしデラウェア。
美味しくなる季節が夏休みなので、観光ブドウとして主力商品だったマスカット・ベリー・A。
甘くて美味しくなるのに、気候風土的に色が乗らなかった巨峰。
最低限の色は乗ってくれますが、本当の濃い色にならなかったピオーネ。
買って食べて感動する美味しさだった岡山の温室栽培マスカット。
マスカットには及ばなかったですが、そこそこ美味しいかったネオマスカット。
そしてとっておきが、出荷ブドウにも観光ブドウにも適さず、地元では廃れてしまったキャンベラ!
味は甲州ブドウが一番好きでしたが、香りは断然キャンベラの方が上でした。
お盆時にひと房仏壇に供えているだけで、広いブドウ農家の屋敷中に何とも言えない好い香りが広がるのです。
この八品種でワインを造ってみます。
どれほどのワインができるか分かりませんが、挑戦してみます。
「まだか、まだ酒ができないのか?!
余はもう十個以上の果樹園を作ってやったのだぞ!
グズグズしていると公言通り人間を殺しに行くぞ!」
十石甕の三割程度ですが、割と酒精の強い柿酒パシモン・ワインが完成しました。
ここなら古参の譜代家臣や民しかいないので、炎竜が来ても大丈夫でしょう。
俺はワープを使って炎竜が果樹園を作っている東竜山脈に行きました。
まるで子供がプラモデルを作るように、夢中になって果樹園を作っている炎竜に話しかけました。
「炎竜様、俺の秘術魔法で酒を早く造る事ができました。
試飲していただきたいのですが、大丈夫ですか?」
「なに、そんな魔法があるのなら、もっと早く造れ!」
「やった事がなかったので、色々試していたのです。
もう一度成功するかどうかも分かりません。
まずはできた酒を試飲していただいて、美味しいかどうか確認してください。
それによって作っていただく果樹園の品種が変わります。
不味い酒になる果樹など増やしたくないでしょう?」
「ふん、当然だ、不味い酒の材料など絶対に増やさん。
不味い果物は人間が食え。
美味しい酒になる果物は余の物だ!」
「それはまた後日相談させていただきます。
どれもこれも美味しい酒になるようだと、少しずつでも人間に分けていただかないと、酒が造れなくなりますから」
「くっ、ああ言えばこう言いおって!
わかった、わかった、分かった。
酒造りに必要な人間には分けてやる。
それより試飲だ、さっさと試飲させろ!」
ギャアギャア喚く炎竜を引き連れて、柿酒を造った三の村に戻りました。
「この村の柿ではこの量が精一杯でした。
炎竜様の口に合うなら、次の果樹園は柿にして頂きます」
「ふん、ワインになるブドウが一番だぞ!
な、う、うまい、甘くて風味が強くて柿の渋みも心地いい!
こんな美味い酒を飲んだのは百万年生きて来て初めてだぞ!」
「お口に合ったようで何よりです」
「造れ、もっと造れ、造らないと暴れるぞ!
ここで暴れたら酒が造れなくなるから、前に行った国で暴れ回るぞ!」
このやろう、好き勝って言いやがって!
おっと、いけません、言葉遣いが悪くなってしまいました。
父上や母上が悪し様に罵られないように、常に丁寧な言葉遣いをするのです。
前世の荒い方言が出ないように、心に思う段階から丁寧な言葉で考えるのです。
「分かりましたが、その為には大量の柿が必要です。
柿にも品種があって、酒にした時に味が変わるかもしれません。
間違って他の品種が混じらないように、炎竜様の果樹園は一品種にしましょう。
木の数も、十石甕九つが余裕で満杯になる本数にしましょう」
「ふむ、俺専用の酒を造る果樹園か。
混じり物のない、一品種の果物だけで造る酒の方が美味いのか?」
「それも造ってみなければ分かりません。
もし品種を混ぜた方が美味しいのなら、造った後でブレンドすればいいのです。
何事も造って試飲してみなければ決められません」
「うむ、うむ、うむ、そうだな、試飲しなければ決められんな。
だったらお前の望む通り、柿だけの果樹園を作ってやろう。
その代わり、直ぐに造るのだぞ!」
「分かっております、直ぐに造らせていただきます。
ですが、造っていただくのは果樹園だけではありませんよ。
炎竜様が直ぐに試飲できるように設計した酒蔵も十石甕も造っていただきます」
「分かっている、いちいち五月蠅い!
今直ぐ造ってやるから、必要な種と苗木を渡せ!」
俺は、促成成長させるのに一番魔力と工程が必要な種を渡した。
「これが富有柿、こっちが次郎柿、最後が西条柿です。
さっき言った条件で果樹園を作ってください」
「くどい!
何度も同じ事を言うな!
余は人間のような馬鹿ではない!
一度聞いた事は絶対に忘れぬ!
お前こそ自分の言った事を忘れるな!」
「はい、分かっております。
炎竜様が次に造ってくださる果樹園に、柿を集める人間を運んできます。
俺ももう一度同じ魔法が使えるか色々試してみます。
酒ができましたら、先ほどのようにお呼びします。
できるだけ沢山の果樹園と酒蔵を作っていてください」
「何が何でも成功させろ!
失敗したらこの前行った国の人間、半分は殺してやるからな!」
「そのような事にならないように頑張らせていただきます」
俺はまた連邦から働き手を連れてきました。
食糧を渡すと言えば、幾らでも集まってきます。
最低限の食糧を渡している我が家の民でもそうなのです。
暴君に統治されている地では、今も餓死者凍死者が絶えないでしょう。
炎竜様と言う目立つ脅威がありますから、他国他領の民も助けられますよね?
炎竜の酒に対する情熱、執着は異常ですね。
たった一時間で、東竜山脈三千メートル付近に、延々と続く柿園を作りました。
手前までは延々と続くブドウ園でしたから、笑ってしまいますね。
炎竜が完全に見えなくなるまでは、連邦民を連れて行けません。
気絶される程度なら良いのですが、心臓麻痺でも起こされたら大変ですから。
時間を潰す方法など幾らでもあります。
飢えた人達ですから、重労働の前に腹一杯食べてもらいます。
前先に連れてきた連邦民が働いている果樹園では、炎竜の魔術でたわわに実った果実を収穫してもらう事もできます。
俺もやる事が沢山あります。
人手を集めるだけでなく、ブドウでワインを造っておくのです。
これまではこの世界で普通に流通している品種でワインを造っていました。
生食用のブドウなら、俺の味記憶で強引に魔術改良できました。
ですが、下戸でほとんど酒を飲んだ事のないので、酒類は再現できないのです。
完全な想像で作るにしても、アルコール濃度が高くフルーティーなワインと強引に思うしかないのです。
それでは美味しいワインが造れないくらい分かっています。
俺だって、ブドウが生食用とワイン用で品種が違う事くらい知っています。
ブドウ農家だった大叔父が密造ワインを造っていましたが、幼い頃にひと舐めしてギブアップしてしまいました。
だから俺にはワイン用のブドウが再現できません。
今本領地に有るブドウは、俺が食べた事のある品種ばかりです。
大叔父が作っていた品種と、自分で買って食べた事のある品種ばかりです。
あるのは地元では本ブドウと呼んでいた甲州ブドウ。
大叔父はこれで造ったワインが一番美味しいと言っていました。
他には市場に出荷するのに都合がよかった種なしデラウェア。
美味しくなる季節が夏休みなので、観光ブドウとして主力商品だったマスカット・ベリー・A。
甘くて美味しくなるのに、気候風土的に色が乗らなかった巨峰。
最低限の色は乗ってくれますが、本当の濃い色にならなかったピオーネ。
買って食べて感動する美味しさだった岡山の温室栽培マスカット。
マスカットには及ばなかったですが、そこそこ美味しいかったネオマスカット。
そしてとっておきが、出荷ブドウにも観光ブドウにも適さず、地元では廃れてしまったキャンベラ!
味は甲州ブドウが一番好きでしたが、香りは断然キャンベラの方が上でした。
お盆時にひと房仏壇に供えているだけで、広いブドウ農家の屋敷中に何とも言えない好い香りが広がるのです。
この八品種でワインを造ってみます。
どれほどのワインができるか分かりませんが、挑戦してみます。
「まだか、まだ酒ができないのか?!
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