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第二章
第24話:方針転換
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やはり守るだけではどうにもなりません。
最低でも、今いる村人を自給自足させられるだけの耕作地が必要です。
天井まで頑丈な大理石で覆った村で、そんな事は不可能です。
ただ、父上が考えられたように、最悪の状況を想定した避難場所は必要です。
地下壕を拡張して住み易くするだけでなく、これまでは地上の避難所としていた、本丸に当たる部分を大理石で覆い、拡大強化して竜対策とします。
「母上、村の強化が終わったら、山頂部の竜を狩るか魅了するかします」
「狩ると言うのは分かりますが、魅了というのはどう言う事です?」
「まだ試した事はないのですが、魔法の中には、人間や動物を自分の配下として強制的に働かせるモノがあるのです。
俺に使えるかどうかは試してみなければ分かりませんし、相手の強さによって魅了できる相手とできない相手がいるかもしれませんが、挑戦してみます」
「危険ではありませんか?」
「大丈夫です。
効果がなければ、全力で逃げますから。
俺が全力で逃げたら、誰も追いつけません」
「それは知っていますが、この山の上はまだ何も分かっていません。
お父様でさえ、地竜森林の開拓では多くの犠牲を出したのです。
貴男も油断してはいけません」
「はい、十分気をつけます。
絶対に死傷するような危険なマネはしません」
俺に魅了の魔法が使えるかどうかは分かりません。
試した事がないので、やってみなければ分かりません。
別にできなくてもいいのです。
駄目なら山頂部の竜を含めて皆殺しにすればいいのです。
全滅させる事はできなくても、数が減れば下りてこないでしょう。
「魅了」
「俺の言う事を聞け、魅了」
「チャーム」
「神と精霊の名のもとに俺の配下になりなさい、チャーム」
「インチャーンティド」
「俺の魔力を分け与えてやるから配下になれ、インチャーンティド」
「エンチャンテッド」
「俺の生血を分け与えるから配下になれ、エンチャンテッド」
「アトラクション」
「お前達の望む物を与えるから俺の配下になれ、アトラクション」
俺はあらゆることを試しました。
日本語、英語、この世界の言葉を色々組み合わせて試しました。
最初から竜を相手に試したりはしません。
村の少し上に住んでいる大岩蜥蜴、一角羚羊、大角鹿などで試しました。
俺は自分の価値を知っていますから、命を無駄遣いしたりはしません。
時間をかけてしっかりと検証してから標高をあげて行きました。
それで分かったのは、爬虫類よりも哺乳類の方が魅了し易かった事です。
単独で暮らしている種族よりも、群れを作る種族の方が魅了しやすかったです。
「お前達の望む物を与えるから俺の配下になれ、ファサネイト」
ファサネイトだけでも魅了できますが、望む物を与えると言う説明を入れた方が、強い猛獣や魔獣、竜まで魅了する事ができると分かりました。
言葉が分かるほどではありませんが、何となく魅了した従魔の望む物が分かるようになりました。
「母上、家畜にできる猛獣や魔獣を魅了できましたので、一旦連れて戻りました。
竜共の喰われてしまった家畜の代わりにしてください」
「まあ、以前ディドが言っていた、高価に売れる素材が取れる猛獣や魔獣なの?」
「はい、この通り、大岩蜥蜴、一角羚羊、大角鹿、雪豹、雪狼、赤茶熊です。
母上や各村の村長に絶対服従するように命じておきます。
大岩蜥蜴、雪豹、雪狼、赤茶熊は村の防衛に使ってください。
一角羚羊と大角鹿は、素材を取るようにしてください」
「本当に大丈夫なのね?」
「はい、大丈夫です。
俺も一日に一度は下りてきます。
下りて来てこいつらがちゃんと従っているか確認します。
魅了も重ね掛けして絶対に逆らわないようにします。
だから安心してください」
魔法を隠さずにすむようになって、やりたい放題できるようになりました。
魅了魔法で魔獣や猛獣を使い魔にできるようになっただけではありません。
何より、どこにでも直ぐに行けるようになりました。
今はまだ転移やワープと言われる魔法は確かめていません。
ゲートや長距離縮地も試していません。
飛行や飛翔のような空を飛ぶ魔法も試していません。
そんな魔法を使わなくても、身体強化魔法で全力疾走するだけで、領内に点在する砦や村の端から端まで、二十分もあれば行けます。
往復でも四十分もかかりません。
「ディド、無理してはいけません。
魔力を使い過ぎていると、最悪の状況に対処できませんよ」
「大丈夫です、母上。
これだけやっても、直ぐに魔力が回復します。
使わない方が魔力が無駄になってもったいないです」
「ディドは規格外ですね。
ディドが嘘をついて無理をしているとは思っていません。
ですが、それでも、母親というのは心配なのですよ。
休んでいる姿も見せるようにしてください」
「申し訳ありませんでした。
母上の親心にも配慮させていただきます」
母上の無償の愛情に心が温かくなります。
姉上達も、言葉は違いますが心配してくれています。
ステファーニア姉上などは、軽くポカポカ叩く事で愛情を表現してくれます。
ジュリエット姉上は、少し意地悪なお願いをしてくる独特の愛情表現です。
「ディド、他の村では運搬用の家畜が不足していると聞きました。
従魔にしたモノ達を代わりに使えませんか?
赤茶熊なら、かなりの荷物を積んだ荷車を牽けるのではありませんか?
一角羚羊と大角鹿なら、山羊の代わりに荷物を運べるのではありませんか?」
「試してみましょう」
三日ほど山頂部と村々の間を往復していると、母上が他の村の窮状を憂いて、使い魔の利用を提案されました。
確かに、駄載獣の代わりを急いで集めなければいけません。
ラクダなどの家畜を大量購入した前とあまり違わないのですが、一度便利になったので、以前の不便な状態には不足を覚えてしまうのでしょう。
俺は毎日魅了を重ね掛けしながら、俺の代理となる主人を指定しました。
基本は元々駄載獣の世話をしていた者です。
ただ今回は、相手を男に限りました。
塩分の含んだ小便を飲ますことで主従関係を結ばせるからです。
イヌイットやエスキモーは、自分の尿を飲ませる事でトナカイを馴致し、最終的に家畜にまでしたとテレビで見た事もありますし、資料を読んだ事もあります。
山羊や羊で試して成功していますから、野生の猛獣や魔獣が相手でも、魅了に重ねて効果を表してくれる事でしょう。
山羊や駄馬に使っていた荷鞍や荷籠は、一角羚羊と大角鹿に使いました。
輓馬や駱駝が牽いていた荷車は、赤茶熊に牽いてもらいました。
彼らの餌は、竜が踏み荒らした畑の作物が幾らでもあります。
再び太陽に向かって立ち起った麦や植物は、大事に育てます。
ですが、そのまま枯れてしまう麦やジャガイモもあるのです。
そのような植物と、元々畑の肥えさせるため、家畜の餌とするために育てていたクローバーを、草食の一角羚羊と大角鹿に餌にしました。
雑食の赤茶熊には、それに加えて竜に喰い散らかされた家畜の残り、俺がアイテムボックスに入れているモノを与えました。
肉食の雪狼や雪豹には、アイテムボックスの死肉だけを与えました。
地竜森林からは、鹹水に漬けられた肉か、鹹水に漬けてから乾燥させた保存用の干肉か送られてくるのですが、これをそのまま使うと塩分が強すぎるのです。
人間でも、塩抜きするか調味料として少量の肉を粥や雑炊に加えるかです。
副食として主食に添えて食べているのです。
幾ら使える水が増えたとは言っても、無駄に使えるほどではありません。
二百頭近くの一角羚羊、大角鹿、赤茶熊を魅了して駄載獣の代わりにする事で、ようやく領内の輸送が元に戻りました。
村の防御も俺が全力を発揮する事で、竜に襲われる前の状態に戻りました。
いえ、俺が全力を発揮したので、遥かに強い防御力になりました。
雪狼に雪豹と赤茶熊が加わる事で、索敵能力も以前よりも強固になりました。
「母上、村の事はもう大丈夫です。
明日から本格的に竜の魅了を始めます」
最低でも、今いる村人を自給自足させられるだけの耕作地が必要です。
天井まで頑丈な大理石で覆った村で、そんな事は不可能です。
ただ、父上が考えられたように、最悪の状況を想定した避難場所は必要です。
地下壕を拡張して住み易くするだけでなく、これまでは地上の避難所としていた、本丸に当たる部分を大理石で覆い、拡大強化して竜対策とします。
「母上、村の強化が終わったら、山頂部の竜を狩るか魅了するかします」
「狩ると言うのは分かりますが、魅了というのはどう言う事です?」
「まだ試した事はないのですが、魔法の中には、人間や動物を自分の配下として強制的に働かせるモノがあるのです。
俺に使えるかどうかは試してみなければ分かりませんし、相手の強さによって魅了できる相手とできない相手がいるかもしれませんが、挑戦してみます」
「危険ではありませんか?」
「大丈夫です。
効果がなければ、全力で逃げますから。
俺が全力で逃げたら、誰も追いつけません」
「それは知っていますが、この山の上はまだ何も分かっていません。
お父様でさえ、地竜森林の開拓では多くの犠牲を出したのです。
貴男も油断してはいけません」
「はい、十分気をつけます。
絶対に死傷するような危険なマネはしません」
俺に魅了の魔法が使えるかどうかは分かりません。
試した事がないので、やってみなければ分かりません。
別にできなくてもいいのです。
駄目なら山頂部の竜を含めて皆殺しにすればいいのです。
全滅させる事はできなくても、数が減れば下りてこないでしょう。
「魅了」
「俺の言う事を聞け、魅了」
「チャーム」
「神と精霊の名のもとに俺の配下になりなさい、チャーム」
「インチャーンティド」
「俺の魔力を分け与えてやるから配下になれ、インチャーンティド」
「エンチャンテッド」
「俺の生血を分け与えるから配下になれ、エンチャンテッド」
「アトラクション」
「お前達の望む物を与えるから俺の配下になれ、アトラクション」
俺はあらゆることを試しました。
日本語、英語、この世界の言葉を色々組み合わせて試しました。
最初から竜を相手に試したりはしません。
村の少し上に住んでいる大岩蜥蜴、一角羚羊、大角鹿などで試しました。
俺は自分の価値を知っていますから、命を無駄遣いしたりはしません。
時間をかけてしっかりと検証してから標高をあげて行きました。
それで分かったのは、爬虫類よりも哺乳類の方が魅了し易かった事です。
単独で暮らしている種族よりも、群れを作る種族の方が魅了しやすかったです。
「お前達の望む物を与えるから俺の配下になれ、ファサネイト」
ファサネイトだけでも魅了できますが、望む物を与えると言う説明を入れた方が、強い猛獣や魔獣、竜まで魅了する事ができると分かりました。
言葉が分かるほどではありませんが、何となく魅了した従魔の望む物が分かるようになりました。
「母上、家畜にできる猛獣や魔獣を魅了できましたので、一旦連れて戻りました。
竜共の喰われてしまった家畜の代わりにしてください」
「まあ、以前ディドが言っていた、高価に売れる素材が取れる猛獣や魔獣なの?」
「はい、この通り、大岩蜥蜴、一角羚羊、大角鹿、雪豹、雪狼、赤茶熊です。
母上や各村の村長に絶対服従するように命じておきます。
大岩蜥蜴、雪豹、雪狼、赤茶熊は村の防衛に使ってください。
一角羚羊と大角鹿は、素材を取るようにしてください」
「本当に大丈夫なのね?」
「はい、大丈夫です。
俺も一日に一度は下りてきます。
下りて来てこいつらがちゃんと従っているか確認します。
魅了も重ね掛けして絶対に逆らわないようにします。
だから安心してください」
魔法を隠さずにすむようになって、やりたい放題できるようになりました。
魅了魔法で魔獣や猛獣を使い魔にできるようになっただけではありません。
何より、どこにでも直ぐに行けるようになりました。
今はまだ転移やワープと言われる魔法は確かめていません。
ゲートや長距離縮地も試していません。
飛行や飛翔のような空を飛ぶ魔法も試していません。
そんな魔法を使わなくても、身体強化魔法で全力疾走するだけで、領内に点在する砦や村の端から端まで、二十分もあれば行けます。
往復でも四十分もかかりません。
「ディド、無理してはいけません。
魔力を使い過ぎていると、最悪の状況に対処できませんよ」
「大丈夫です、母上。
これだけやっても、直ぐに魔力が回復します。
使わない方が魔力が無駄になってもったいないです」
「ディドは規格外ですね。
ディドが嘘をついて無理をしているとは思っていません。
ですが、それでも、母親というのは心配なのですよ。
休んでいる姿も見せるようにしてください」
「申し訳ありませんでした。
母上の親心にも配慮させていただきます」
母上の無償の愛情に心が温かくなります。
姉上達も、言葉は違いますが心配してくれています。
ステファーニア姉上などは、軽くポカポカ叩く事で愛情を表現してくれます。
ジュリエット姉上は、少し意地悪なお願いをしてくる独特の愛情表現です。
「ディド、他の村では運搬用の家畜が不足していると聞きました。
従魔にしたモノ達を代わりに使えませんか?
赤茶熊なら、かなりの荷物を積んだ荷車を牽けるのではありませんか?
一角羚羊と大角鹿なら、山羊の代わりに荷物を運べるのではありませんか?」
「試してみましょう」
三日ほど山頂部と村々の間を往復していると、母上が他の村の窮状を憂いて、使い魔の利用を提案されました。
確かに、駄載獣の代わりを急いで集めなければいけません。
ラクダなどの家畜を大量購入した前とあまり違わないのですが、一度便利になったので、以前の不便な状態には不足を覚えてしまうのでしょう。
俺は毎日魅了を重ね掛けしながら、俺の代理となる主人を指定しました。
基本は元々駄載獣の世話をしていた者です。
ただ今回は、相手を男に限りました。
塩分の含んだ小便を飲ますことで主従関係を結ばせるからです。
イヌイットやエスキモーは、自分の尿を飲ませる事でトナカイを馴致し、最終的に家畜にまでしたとテレビで見た事もありますし、資料を読んだ事もあります。
山羊や羊で試して成功していますから、野生の猛獣や魔獣が相手でも、魅了に重ねて効果を表してくれる事でしょう。
山羊や駄馬に使っていた荷鞍や荷籠は、一角羚羊と大角鹿に使いました。
輓馬や駱駝が牽いていた荷車は、赤茶熊に牽いてもらいました。
彼らの餌は、竜が踏み荒らした畑の作物が幾らでもあります。
再び太陽に向かって立ち起った麦や植物は、大事に育てます。
ですが、そのまま枯れてしまう麦やジャガイモもあるのです。
そのような植物と、元々畑の肥えさせるため、家畜の餌とするために育てていたクローバーを、草食の一角羚羊と大角鹿に餌にしました。
雑食の赤茶熊には、それに加えて竜に喰い散らかされた家畜の残り、俺がアイテムボックスに入れているモノを与えました。
肉食の雪狼や雪豹には、アイテムボックスの死肉だけを与えました。
地竜森林からは、鹹水に漬けられた肉か、鹹水に漬けてから乾燥させた保存用の干肉か送られてくるのですが、これをそのまま使うと塩分が強すぎるのです。
人間でも、塩抜きするか調味料として少量の肉を粥や雑炊に加えるかです。
副食として主食に添えて食べているのです。
幾ら使える水が増えたとは言っても、無駄に使えるほどではありません。
二百頭近くの一角羚羊、大角鹿、赤茶熊を魅了して駄載獣の代わりにする事で、ようやく領内の輸送が元に戻りました。
村の防御も俺が全力を発揮する事で、竜に襲われる前の状態に戻りました。
いえ、俺が全力を発揮したので、遥かに強い防御力になりました。
雪狼に雪豹と赤茶熊が加わる事で、索敵能力も以前よりも強固になりました。
「母上、村の事はもう大丈夫です。
明日から本格的に竜の魅了を始めます」
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※小説家になろう様にも掲載しています。
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