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第1章

浦和記念 浦和競馬場グルメ3 焼きそば 浦和グルメ3 南欧料理

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浦和競馬場:パドック

「太郎君、花子ちゃん、今日も元気な馬を小さな声で教えてね」

「いいよぉ~」

「花子もいいよぉ~」

 今日も夜明けとともに太郎君と花子ちゃん起こされ、昨日大量に買ったパンを朝食にして腹ごしらえをした。北海道で買った日持ちのするスイーツや御菓子は後回しにして、昨日買ったパンから食べたのだ。

 今日は浦和競馬場最大の競走、統一JPNⅡクラスの重賞レース「浦和記念」が開催される日だ。昨日一昨日に比べて多くの人でにぎわっており、4人そろってパドック・フードコート・馬券売り場を、30分間隔の競走ごとに移動するのは難しかった。

 そこで移動するのは俺1人と決めて、太郎君と花子ちゃん、綾香さんには基本パドックに居続けてもらうことにした。何故なら馬券を買うべき元気な馬は、パドックで太郎君と花子ちゃんに見てもらうしかない。見て判断さえしてもらえれば、綾香さんに伝えて俺に携帯で連絡してもらえればいいのだ。

 ネット投票だけなら、俺もパドックに居続けることが出来る。だが現金投票もするとなると、大行列が起きた場合、投票締め切り時間に間に合わない可能性すらあるのだ。





「焼きそば買って来たよ」

「わぁ~い、焼きそば大好きぃ~」

「花子も焼きそば大好きぃ~」

「勝也さんありがとうございます、ネットで観て食べて見たかったんです」

「隠し味に唐辛子が効きているから、太郎君と花子ちゃんには辛すぎるかもしれないね。もし辛かったら、朝買っておいたジュースを飲むんだよ」

「分かったぁ~」

「花子も分かったぁ~」

 混雑する競馬場内を移動して現金で馬券を購入し、フードコートの行列具合を確認しながら、パドックに戻れる時間を考え、ようやく浦和競馬場名物の焼きそばを買う事が出来たのだ。

 行列中に聞くともなしに聞いた話では、昨日食べた黄色いカレーは、明治生まれの祖母のレシピをもとに作っているそうで、浦和競馬開場以来変わらない味なんだそうだ。仙台に江戸後期から蕎麦屋を開業している親戚がいて、現店主の祖母がその店に修行に行ってカレーのレシピを習得したそうだ。なんと、うどん粉から練って作っていると言う話だ

 地方競馬華やかなりしころ、座席数の少ない浦和競馬場では、片手で持って食べる事のできるおにぎりや串カツ・焼き鳥が主力商品となったのだろう。他の競馬場ではあまり聞かない、マグロカツやマグロの細巻もその影響だろうし、おにぎりが美味しく多くの店で扱われているのもその影響かもしれない。

 焼きそばもそうなのだが、店によって値段も微妙に違えば味も違う。ネットでは辛いと評判だったが、それが俺が買った店の焼きそばとは限らない。

焼きそば:320円×4=1280円

 結局トイレの時間以外は、太郎君も花子ちゃんも綾香さんもパドックから動かずにいてくれた。怪我をした輓馬を助けてあげたいと言う思いがヒシヒシと伝わり、いい加減な所で辞めれない気がしてきた。

 行列の所為で、パドックで馬を見てからでは買えない可能性があった浦和記念も、綾香さんが太郎君と花子ちゃんの見立てを携帯で教えてくれてた。そのお陰で、余裕を持って馬券を買う事が出来た。

 そして売り上げが多い浦和記念だけは1投票1万円で買い、その他のレースは昨日と同じように1投票1000円で買った。御蔭で現金投票もネット投票も、816万7300円勝つことが出来た。

ネット投票:816万7300円
現金投票 :816万7300円

「お腹空いたぁ~」

「花子もお腹空いたぁ~」

「今日は3人に無理をさせてしまいましたね」

「いえ、馬を助けるために頑張るのは当然の事です」

「お馬さん助けるぅ~」

「花子もお馬さん助けるのぉ~」

「フランス料理食べるぅ~」

「花子もフランス料理食べるぅ~」

「太郎君、花子ちゃん、昨日調べていたのはフランス料理と言うよりは南欧料理だよ」

「それなぁにぃ~」

「花子もしらない~」

「おじさんも違いわよく分からないや」

「分からない~」

「花子もおじさんも分からない~」

「まあ今日食べて見ればわかるさ、綾子さん行きましょうか」

「はい」

 浦和競馬場から、さいたま市緑区太田窪の住宅街にある店まで行った。

タクシー代:730円

 前もって予約していた事もあり、入って直ぐに前菜が出て来た。基本はスープ、サラダ、魚料理、肉料理の順に出て来た。だが完全なお任せではなく、大人2人子供2人で美味しい物を少しづつ食べたいからと、ネットで調べたメニューを事前に予約しておいたのだ。

「メニュー表」
グリーンサラダ       :650円×1=650円
トマトとモッツァレラのサラダ:750円×1=750円
生ハムと大根のサラダ    :500円×1=500円
本日のおすすめ前菜     :600円
前菜の盛り合わせ      :950円×4=3800円
若鶏のグリル        :950円×1=950円
ペンネのグラタン      :650円×1=650円
コーンポタージュ      :400円×4=1600円
小エビのドリア       :750円×1=750円
鮮魚のムニエル       :1250円×1=1250円
ハンバーグのトマト煮    :900円×1=900円
ポークカツレツ       :1150円×1=1150円
和牛のステーキ       :1850円×1=1850円
特製ビーフシチュー     :1450円×1=1450円
魚介のリゾット       :1350円
ピッツア各種        :1050円×1=1050円
パスタ各種
自家製スイーツ盛り合わせ  :400円×4=1200円
マードレエンジョイ!コース :2500円
ソフトドリンク       :300円×4=1200円

小計:2万1276円

「美味しかったぁ~」

「花子も美味しかったぁ~」

「スィーツ愉しみぃ~」

「花子もスィーツ愉しみぃ~」

「本当に美味しかったです、でも量が多くて、さすがにスィーツはお持ち帰りさせてもらう事になっちゃいました」

「そうですね、張り切って注文しすぎちゃてましたね」

タクシー代:730円

 お店でタクシーを読んでもらって、ホテルまで帰って来たのだが、浦和競馬場で碌に食べれなかったとはいえ、注文していた料理の量が多すぎた。4人でほぼ同じ量を分けて食べた事を考えれば、太郎君と花子ちゃんの食欲は驚嘆に値する。

 もっとも俺の想像通り、俺と綾香さんの食欲が反映しているのなら、全く同じ量を食べても当然だろう。多分だが、太郎君と花子ちゃん自身の食欲に加えて、俺と綾香さんの深層心理の食欲が影響しているのだろう。

 それはそれとして、ホテルに帰った俺達4人はめいめいお風呂に入り、ゆっくりと体を休めながら明日晩飯を食べに行くところをネットで探した。明日から二泊するホテルは既に予約してあるから、明朝にはこのホテルを引き払う事になる。

 先週東京競馬場に来た時に泊まったマンションタイプのホテルが、狭いながらも俺達4人には凄く過ごし易かったから、今回も早くからあそこを予約しておいたのだ。簡易だがキッチンもあるから、浦和競馬場で買い過ぎた料理も温め直して食べることが出来る。




「はい、鈴木です、もしもし」

「お父さん、私です」

「綾香か?! 綾香なんだな?!」

「はい」

「無事でよかった! 俺が悪かった、全部俺の責任だ、これからは綾香のやりたいようにやればいい、愚かな俺はもう一切口出しなどせん、だから帰って来てくれ」

「お父さん、私死ぬつもりで家を出ました」

「綾香!」

「でも助けて下さった人がいて、自殺を延期しました」

「綾香! 俺が悪かったんだ、俺の身勝手と愚かさが綾香を傷つけてしまった。だがもう2度と同じ過ちは犯さない、だから自殺するなんて言わないでくれ!」

「今直ぐ死ぬのは止めました、助けて下さった方にお礼をするまでは死ねません。だからお父さんにお願いしたい事があるんです」

「分かった、分かったから自殺するなんてもう2度と言わないでくれ」

(おなた、綾香なんですか? 綾香なんですね! 代わって下さい! あなたではまた綾香を追い込んでしまいます)

(待ってくれ、今大切な所なんだ、綾香に自殺を思い止まってもらわないといけないんだ! 先ずは俺に詫びさせてくれ、頼む!)

「お父さん、心の整理がついたら、どこか落ち着いて話せる場所で会えると思います。でも今は、お父さんの顔を見るのも嫌なんです」

「分かっている、それは十分分かっている。俺のしでかした事は、そう言われて当然の事だ」

「でも恩人の方が困っておられる事があるので、それがお父さんに解決出来る事だと分かって、私がお父さんに会えるだけの心の整理がついたら、その時はまた連絡します」

「そうか、今直ぐ自殺すると言う事はないのだ? 綾香は自殺しないと約束してくれるのだな?」

「お父さんなんかと約束などしません! お父さんと約束するくらいなら、悪魔と契約するわ!」

「すまん! 俺が悪かった! 俺に約束を口にする資格などなかった、だから興奮しないでくれ、お願いだから落ち着いてくれ!」

(あなた! いったい何を言ってんですか! これ以上綾香を傷つけてどう言う心算ですか! あなたに人間として何か言う資格なんてありません! さっさと代わって下さい」

「おい、こら、まだ話の途中なんだ、いま」

「綾香! お母さんですよ、綾香! お願いだから声を聞かせておくれ! 今までお父さんの言い成りだったお母さんが悪かったの、お母さんと一緒に家をでましょう! これからはお母さんがずっと一緒にいるわ、だからお母さんに声を聞かせて頂戴!」
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