23 / 31
第二章櫻井龍騎視点
21話
しおりを挟む
正直勉強は大変でした。
近衛騎兵連隊は通常の軍務もとても厳しいのです。
それに加えて、現役の優秀な中学生以上の勉強を覚えなければならないのです。
勉強だけに集中できる中学生に勝る必要があるのです。
血尿が出るほど大変でした。
「櫻井伍長、御使命だ」
「しかし軍曹殿。
前回も自分が参加させていただきました。
こういう事は、公平に全員が参加できるようにするものだと、以前軍曹殿や曹長殿から教えていただいております」
「確かにそう言った。
だが、物事には表と裏がある。
護衛する特命全権大使から、強く望まれれば例外もあるのだ」
誘拐未遂事件とそれに続く一連の騒動で、俺は一躍有名人になってしまいました。
俺に会いたいと言う面会依頼が数多く舞い込んできたのはまだいいのですが、特命全権大使から信任状捧呈式に指名されるようになったのには、心から困りました。
上官や同僚から妬まれてしまったのです。
まあ、馬鹿にならない金が絡むので仕方がありません。
特命全権大使が信任状を宮城に届ける時には、大使館から宮城まで馬車でやってきますが、その護衛を近衛騎兵連隊が務めるのです。
そして護衛を務めた将兵には、特命全権大使から心付けが渡されます。
役得があるのですから、誰もがこの任務に当たる事を願っています。
当たっても全て同じと言う訳ではありません。
特命全権大使が平民か貴族であるかで、護衛の人数が違います。
当然心付けの金額も変わります。
貴族でも、男爵か公爵で護衛の人数が違ってきます。
心付けの額は雲泥の差になります。
欧州列強の公爵が渡してくれる心付けは、二等兵には年収に匹敵する額なのです。
公平であるべき利得のある任務に、俺だけが毎回参加するのです。
妬み嫉みがあって当然です。
当然なのですが、それでなくても会津出身で敵が多いのです。
勉強で一杯一杯なのです。
頭を抱えたくなりました。
「まあ、お前は真面目過ぎる。
もうちょっと融通を利かせろ。
皆より利得が多いと悩むくらいなら、全部散在してしまえ」
「え?
どう言う事ですか?」
「もらった心付けを使えと言っているんだ。
何も連隊全員に奢る必要はない。
自分の中隊か小隊だけでいい。
もらった心付け全部を菓子かサイダーに使ってしまえ」
「ありがとうございます、軍曹殿!
悩みが解決しました。
相談させて頂いて助かりました!」
「連隊長閣下も心配しておられる。
もっと世間ずれしろよ」
「了解いたしました!」
軍曹殿の助言通りに、もらった心付け全部を散在すると、妬み嫉みが少なくなりました。
特命全権大使によって金額が全然違うし、休日に中隊全員で外に出ることもできないので、任務の帰りにたばこや日本酒、甘納豆やようかんを買って兵舎に戻り、護衛任務に参加できなかった仲間に勝って帰りました。
額が少なく、一袋の甘納豆を分けて食べたり、サイダーや日本酒を回し飲むのが、逆に連帯感を友情を育んでくれました。
近衛騎兵連隊は通常の軍務もとても厳しいのです。
それに加えて、現役の優秀な中学生以上の勉強を覚えなければならないのです。
勉強だけに集中できる中学生に勝る必要があるのです。
血尿が出るほど大変でした。
「櫻井伍長、御使命だ」
「しかし軍曹殿。
前回も自分が参加させていただきました。
こういう事は、公平に全員が参加できるようにするものだと、以前軍曹殿や曹長殿から教えていただいております」
「確かにそう言った。
だが、物事には表と裏がある。
護衛する特命全権大使から、強く望まれれば例外もあるのだ」
誘拐未遂事件とそれに続く一連の騒動で、俺は一躍有名人になってしまいました。
俺に会いたいと言う面会依頼が数多く舞い込んできたのはまだいいのですが、特命全権大使から信任状捧呈式に指名されるようになったのには、心から困りました。
上官や同僚から妬まれてしまったのです。
まあ、馬鹿にならない金が絡むので仕方がありません。
特命全権大使が信任状を宮城に届ける時には、大使館から宮城まで馬車でやってきますが、その護衛を近衛騎兵連隊が務めるのです。
そして護衛を務めた将兵には、特命全権大使から心付けが渡されます。
役得があるのですから、誰もがこの任務に当たる事を願っています。
当たっても全て同じと言う訳ではありません。
特命全権大使が平民か貴族であるかで、護衛の人数が違います。
当然心付けの金額も変わります。
貴族でも、男爵か公爵で護衛の人数が違ってきます。
心付けの額は雲泥の差になります。
欧州列強の公爵が渡してくれる心付けは、二等兵には年収に匹敵する額なのです。
公平であるべき利得のある任務に、俺だけが毎回参加するのです。
妬み嫉みがあって当然です。
当然なのですが、それでなくても会津出身で敵が多いのです。
勉強で一杯一杯なのです。
頭を抱えたくなりました。
「まあ、お前は真面目過ぎる。
もうちょっと融通を利かせろ。
皆より利得が多いと悩むくらいなら、全部散在してしまえ」
「え?
どう言う事ですか?」
「もらった心付けを使えと言っているんだ。
何も連隊全員に奢る必要はない。
自分の中隊か小隊だけでいい。
もらった心付け全部を菓子かサイダーに使ってしまえ」
「ありがとうございます、軍曹殿!
悩みが解決しました。
相談させて頂いて助かりました!」
「連隊長閣下も心配しておられる。
もっと世間ずれしろよ」
「了解いたしました!」
軍曹殿の助言通りに、もらった心付け全部を散在すると、妬み嫉みが少なくなりました。
特命全権大使によって金額が全然違うし、休日に中隊全員で外に出ることもできないので、任務の帰りにたばこや日本酒、甘納豆やようかんを買って兵舎に戻り、護衛任務に参加できなかった仲間に勝って帰りました。
額が少なく、一袋の甘納豆を分けて食べたり、サイダーや日本酒を回し飲むのが、逆に連帯感を友情を育んでくれました。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
婚約者の心の声が聞こえるようになったけど、私より妹の方がいいらしい
今川幸乃
恋愛
父の再婚で新しい母や妹が出来た公爵令嬢のエレナは継母オードリーや義妹マリーに苛められていた。
父もオードリーに情が移っており、家の中は敵ばかり。
そんなエレナが唯一気を許せるのは婚約相手のオリバーだけだった。
しかしある日、優しい婚約者だと思っていたオリバーの心の声が聞こえてしまう。
”またエレナと話すのか、面倒だな。早くマリーと会いたいけど隠すの面倒くさいな”
失意のうちに街を駆けまわったエレナは街で少し不思議な青年と出会い、親しくなる。
実は彼はお忍びで街をうろうろしていた王子ルインであった。
オリバーはマリーと結ばれるため、エレナに婚約破棄を宣言する。
その後ルインと正式に結ばれたエレナとは裏腹に、オリバーとマリーは浮気やエレナへのいじめが露見し、貴族社会で孤立していくのであった。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
悪役令嬢の嫁、貰ってしまいました!
西藤島 みや
恋愛
アリアス侯爵は苦悩していた。はっきり言って妻が怖いのだ。
美しく、完璧で、できないことのない有能な妻の元に婿に行ったものの、ヒロインのことを諦めきれないでいる。しかも、それがどうやら妻にもバレていて、ヒロインは冷たくされているらしい。
いつかは絶対断罪してやる!…今は怖いからできないけど。
悪役令嬢もの?ですが、主人公は元クズ王子です。二度いいます。クズですし、ヒロインさんはかなり遣り手です。
転生でもやり直しでもない、きっちり悪役令嬢の新妻と、クズ侯爵がもだもだするだけのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる