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第一章
第2話:魑魅魍魎・ダウンシャー公爵フランシス視点
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「ああ、ご無事でようございました、貴男。
本当に、本当に心配致しましたのよ。
貴男が助かって本当によかったですわ。
この国の支柱である貴男に何かあったら、ダウンシャー公爵家どころかヒルフォード王家まで傾いてしまいます」
しらじらしい女だ、悪女というのはこのような女の事を言うのだろう。
自分で創ったキャラクターだが、実在して目の前にいると腹が立つ。
いや、それどころか俺の妻だと言うのだから、正直吐き気がする。
俺、ダウンシャー公爵の正室でシェリルとアリスと言う二人の娘を生んでいるが、妹のアリスの方はジェラルド侯爵フレデリックとの不義の子だ。
俺が創りだしたキャラクターと設定だから全部知っているのだ
「ああ、そうだな、可愛い娘を残して死ぬわけにはいかない。
何があろうと生き残ってやる。
草の根分けても今回の件の証拠を探し出して黒幕をぶち殺す」
「まあ、黒幕なんて、貴男を妬んだブランデル男爵の仕業ではないのですか。
そのように疑り深くなされては公爵としての威厳を損ないます。
いえ、それよりも体に障ります」
メアリーは自分に疑いを向けられるのが怖いのだろうな。
全て知られているという事にまだ気がついていないようだ。
前のダウンシャー公爵は善良な分、陰湿で巧妙な悪意には鈍感だった。
そう設定してしまったのは俺だが今は俺と融合した事で猜疑心が強くなっている。
いや、それ以前にこの世界の設定もキャラクターもを全部知っている。
もう誰に騙されることもなく、殺される可能性も極端に低い。
「心配してくれてありがとう、メアリー。
だがこれはダウンシャー公爵殺害未遂事件だ。
いい加減な調査など絶対にできない。
ましてメアリーが言うようにヒルフォード王家転覆を企む策謀の一環なら、なおさら徹底した調査が必要だ。
ここは女子供が口出しする事ではない。
メアリーはもう下がっていなさい」
「……はい、申し訳ありません、貴男」
さて、問題は俺が死ななかった事でゲームの設定になかったルートに入った事だ。
これからは想像もつかない事が起きてしまう可能性がある。
モブと呼ばれるキャラクターと設定もしていないのに存在する使用人が怖い。
この世界はゲームの設定とキャラクターだけで営まれているわけではない。
この世界を実在させるために俺の知らないモノが色々と生み出されてる。
そいつらが俺の味方なのか敵なのかが全く分からない。
何より俺とダウンシャー公爵が融合した事で決まった性格や感情が困るのだ。
「シェリルを呼んでくれ、話しておかなければいけない事がある」
俺が創り出してしまった可哀想なキャラクターのシェリル。
ダウンシャー公爵が殺された後でメアリーとアリスに陥れられ、極悪人として断罪されて王太子との婚約も破棄され、さらに国外追放刑になる。
いや、それだけではなく刺客を放たれて無残な死を迎えてしまう。
極端な設定にする事で購買意欲を高めようとしたのだが、俺はその事に罪悪感を持っていたようだ。
それに妻に裏切られてた事とアリスが不義の子だと知ったダウンシャー公爵の意識が加わり、シェリルに対する父性愛が半端のないモノになっている。
自分はもちろんシェリルも幸せにしなければいられない気分なのだ。
本当に、本当に心配致しましたのよ。
貴男が助かって本当によかったですわ。
この国の支柱である貴男に何かあったら、ダウンシャー公爵家どころかヒルフォード王家まで傾いてしまいます」
しらじらしい女だ、悪女というのはこのような女の事を言うのだろう。
自分で創ったキャラクターだが、実在して目の前にいると腹が立つ。
いや、それどころか俺の妻だと言うのだから、正直吐き気がする。
俺、ダウンシャー公爵の正室でシェリルとアリスと言う二人の娘を生んでいるが、妹のアリスの方はジェラルド侯爵フレデリックとの不義の子だ。
俺が創りだしたキャラクターと設定だから全部知っているのだ
「ああ、そうだな、可愛い娘を残して死ぬわけにはいかない。
何があろうと生き残ってやる。
草の根分けても今回の件の証拠を探し出して黒幕をぶち殺す」
「まあ、黒幕なんて、貴男を妬んだブランデル男爵の仕業ではないのですか。
そのように疑り深くなされては公爵としての威厳を損ないます。
いえ、それよりも体に障ります」
メアリーは自分に疑いを向けられるのが怖いのだろうな。
全て知られているという事にまだ気がついていないようだ。
前のダウンシャー公爵は善良な分、陰湿で巧妙な悪意には鈍感だった。
そう設定してしまったのは俺だが今は俺と融合した事で猜疑心が強くなっている。
いや、それ以前にこの世界の設定もキャラクターもを全部知っている。
もう誰に騙されることもなく、殺される可能性も極端に低い。
「心配してくれてありがとう、メアリー。
だがこれはダウンシャー公爵殺害未遂事件だ。
いい加減な調査など絶対にできない。
ましてメアリーが言うようにヒルフォード王家転覆を企む策謀の一環なら、なおさら徹底した調査が必要だ。
ここは女子供が口出しする事ではない。
メアリーはもう下がっていなさい」
「……はい、申し訳ありません、貴男」
さて、問題は俺が死ななかった事でゲームの設定になかったルートに入った事だ。
これからは想像もつかない事が起きてしまう可能性がある。
モブと呼ばれるキャラクターと設定もしていないのに存在する使用人が怖い。
この世界はゲームの設定とキャラクターだけで営まれているわけではない。
この世界を実在させるために俺の知らないモノが色々と生み出されてる。
そいつらが俺の味方なのか敵なのかが全く分からない。
何より俺とダウンシャー公爵が融合した事で決まった性格や感情が困るのだ。
「シェリルを呼んでくれ、話しておかなければいけない事がある」
俺が創り出してしまった可哀想なキャラクターのシェリル。
ダウンシャー公爵が殺された後でメアリーとアリスに陥れられ、極悪人として断罪されて王太子との婚約も破棄され、さらに国外追放刑になる。
いや、それだけではなく刺客を放たれて無残な死を迎えてしまう。
極端な設定にする事で購買意欲を高めようとしたのだが、俺はその事に罪悪感を持っていたようだ。
それに妻に裏切られてた事とアリスが不義の子だと知ったダウンシャー公爵の意識が加わり、シェリルに対する父性愛が半端のないモノになっている。
自分はもちろんシェリルも幸せにしなければいられない気分なのだ。
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