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第一章
第1話:謀殺・ダウンシャー公爵フランシス視点
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人生で初めて感じるあまりにも激しい痛みに思わず目が覚めた。
焼灼感と表現すべきなのか、焼け溶けた鉄を口から胃に無理矢理流し込まれたような、とてつもない痛みに声も出なかった。
眼の前に眼玉が飛び出さんばかりに驚く男の顔がある。
「なんだ、死んだはずだぞ、なぜ生き返る!」
眼の前の男の言葉が耳に入ったとたん、激烈な頭痛と心痛に襲われた。
脳が沸騰するような何とも表現しようのない頭痛。
頭が割れる、いや、内部から破裂するかと思われるような頭痛だ。
心が圧し潰されそうな哀しみに満ちた痛み。
愛する人、心から信用信頼していた人に、友だと思っていた人に裏切られ、毒を盛られて殺されかけたことに対する心痛だった。
「エディ、よくも俺を裏切ったな!」
これは俺が口にした言葉じゃない。
この身体の元の持ち主が発した魂の叫びだ。
まだ激烈な痛みと吐き気に襲われているのは仕方がない。
俺とダウンシャー公爵フランシスの記憶と知識、心と感情が融合していない。
人格と表現すべきなのか、自分が混沌としてしまっている。
「死ね、このまま死んでしまえ!」
ブランデル男爵エディが懐から短剣を取り出した。
ダウンシャー公爵フランシスの幼馴染だった男。
主治医で親友だと思っていた男。
公爵と男爵という身分を離れて友人になれたと思っていた男。
その男に毒を盛られ殺されかけ、今度は短剣で刺殺されそうになっている。
ダウンシャー公爵の怒りと哀しみは察して余りある。
ダウンシャー公爵は誇り高き貴族だ。
騎士としての個人の実戦歴もあれば、公爵として大軍の指揮経験もある。
いざという時に備えて騎士としての鍛錬も続けている。
暗殺、毒殺に備えて毒耐性も鍛えていた。
だがそれを全て知った親友が、確実に殺そうと調合した毒薬を飲まされた。
俺が融合した事で死の淵から蘇ったが、身体は確実に猛毒に蝕まれている。
身体を上手く動かすことができず、剣が腹部に吸い込まれそうになる。
「舐めるな!」
ダウンシャー公爵には気合しか残されていなかった。
猛毒の影響で身体に全く力が入らないのだ。
実戦を生き延びてきた騎士としての威圧感しか残されていなかった。
だがブランデル男爵も必死だったのだろう。
ヒルフォード王国一の名門公爵家の当主を殺そうとしたのだ。
失敗したら生まれて来た事を後悔する激烈な拷問の末に処刑されることになる。
全てを白状させられた後で一族一門皆殺しにされる事になる。
この時俺はようやく全てを思い出していた。
これが俺の作った乙女ゲームの世界だという事に。
何とか俺とダウンシャー公爵の融合が上手くいって記憶と知識が繋がった。
自分に何ができるかも理解した。
だが完全に融合できていない事で、ダウンシャー公爵の激情が奔流となって魔力となりブランデル男爵に放たれてしまった。
焼灼感と表現すべきなのか、焼け溶けた鉄を口から胃に無理矢理流し込まれたような、とてつもない痛みに声も出なかった。
眼の前に眼玉が飛び出さんばかりに驚く男の顔がある。
「なんだ、死んだはずだぞ、なぜ生き返る!」
眼の前の男の言葉が耳に入ったとたん、激烈な頭痛と心痛に襲われた。
脳が沸騰するような何とも表現しようのない頭痛。
頭が割れる、いや、内部から破裂するかと思われるような頭痛だ。
心が圧し潰されそうな哀しみに満ちた痛み。
愛する人、心から信用信頼していた人に、友だと思っていた人に裏切られ、毒を盛られて殺されかけたことに対する心痛だった。
「エディ、よくも俺を裏切ったな!」
これは俺が口にした言葉じゃない。
この身体の元の持ち主が発した魂の叫びだ。
まだ激烈な痛みと吐き気に襲われているのは仕方がない。
俺とダウンシャー公爵フランシスの記憶と知識、心と感情が融合していない。
人格と表現すべきなのか、自分が混沌としてしまっている。
「死ね、このまま死んでしまえ!」
ブランデル男爵エディが懐から短剣を取り出した。
ダウンシャー公爵フランシスの幼馴染だった男。
主治医で親友だと思っていた男。
公爵と男爵という身分を離れて友人になれたと思っていた男。
その男に毒を盛られ殺されかけ、今度は短剣で刺殺されそうになっている。
ダウンシャー公爵の怒りと哀しみは察して余りある。
ダウンシャー公爵は誇り高き貴族だ。
騎士としての個人の実戦歴もあれば、公爵として大軍の指揮経験もある。
いざという時に備えて騎士としての鍛錬も続けている。
暗殺、毒殺に備えて毒耐性も鍛えていた。
だがそれを全て知った親友が、確実に殺そうと調合した毒薬を飲まされた。
俺が融合した事で死の淵から蘇ったが、身体は確実に猛毒に蝕まれている。
身体を上手く動かすことができず、剣が腹部に吸い込まれそうになる。
「舐めるな!」
ダウンシャー公爵には気合しか残されていなかった。
猛毒の影響で身体に全く力が入らないのだ。
実戦を生き延びてきた騎士としての威圧感しか残されていなかった。
だがブランデル男爵も必死だったのだろう。
ヒルフォード王国一の名門公爵家の当主を殺そうとしたのだ。
失敗したら生まれて来た事を後悔する激烈な拷問の末に処刑されることになる。
全てを白状させられた後で一族一門皆殺しにされる事になる。
この時俺はようやく全てを思い出していた。
これが俺の作った乙女ゲームの世界だという事に。
何とか俺とダウンシャー公爵の融合が上手くいって記憶と知識が繋がった。
自分に何ができるかも理解した。
だが完全に融合できていない事で、ダウンシャー公爵の激情が奔流となって魔力となりブランデル男爵に放たれてしまった。
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