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第一章

9話

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「急ぎカロジェロを呼んでください。
 内密で話さなければならないことげできました!」

 ベルニカは本当に役立ってくれます。
 ベルニカが情報を届けてくれなかったら、大事になったかもしれません。

「何事でございますか、乙女!?」

「ベルニカから密書が届きました。
 モンザ王国が強襲を図っているそうです」

「なんですと!
 乙女を殺すというのですか?!」

「いえ、殺すのではなく、拉致するつもりのようです。
 もっとも私を護ろうとする者は容赦なく殺すでしょう。
 アメリア皇国の邪魔が入る前に、断じて行うつもりのようです」

「ベルニカ殿からの連絡という事は、アメリア皇国からの情報とかんがえてよいのでしょうか?」

「そうですね。
 アメリア皇国も私がモンザ王国の手に落ちるのを防ぎたいのでしょう」

「……我が国の斥候からはそのような情報は入っておりません……」

「しかたありませんよ。
 我が国のような弱小国が送り込める斥候の数と、大陸一強大なアメリア皇国が送り込める斥候の数は、桁が二つ三つ違うのです。
 使える工作資金も桁が二つ三つ違います。
 そんな事は最初から分かっていたことです。
 だからこそベルニカにアメリア皇国に行ってもらったのです。
 それも斥候の一つですよ。
 ベルニカがちゃんと別ルートで情報を集めてきてくれたではありませんか」

「さすがは乙女!
 我らのような凡夫とは違います。
 分かりました。
 凡夫は凡夫にできる仕事をさせていただきます。
 乙女の周囲は親衛隊や近衛隊が護ってくれていますが、それ以外の場所、市中に入りこんだ時点で捕縛するよう努力いたします」

「ええ、そうしてください。
 ですが我々がこの情報を掴んだことを、モンザ王国に知られたくはありません。
 表向きはアメリア皇国の皇族が来られるから、警戒するという事にしてください」

「なんと!
 皇族が我が国に来られるのですか?!」

「ええ、モンザ王国を牽制するためでしょうが、正式な手続き前に、皇族がお忍びで入国されるそうです。
 正直ここまでアメリア皇国が真剣に秘宝を信じているとは思いませんでした。
 ですがこれは好機です。
 アメリア皇室と縁を結ぶことができれば、我が国は安泰です。
 屋敷の手配に万全を尽くしてください」

「承りました」

 やれやれ。
 しかし問題もありますね。
 秘宝なんかないのですから、それが分かった時のアメリア皇室の反応です。
 怒るのか安堵するのか?
 皇国にとっては、秘宝が存在する方が都合がいいのか?
 それとも、秘宝がない方が都合がいいのか?
 その辺もしっかり確認しなければなりません。

「敵襲!
 敵襲だ!
 乙女を護れ!」
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