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第一章

8話

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「乙女、モンザ王国の使者が国に戻りました」

「攻めてくると思いますか?」

「現在集まってくる情報では諦めたようです。
 ベルニカ殿がよく働いてくれております。
 アメリア皇国は我が国への皇族派遣を前向きに検討してくれています」

「そう、それはよかったわ。
 これからも情報収集に力を注いでください。
 ベルニカに追加資金を送ってください」

「承りました」

 カロジェロの見解は私と一致しています。
 モンザ王国はアメリア皇国を恐れたのでしょう。
 そしてアメリア皇国はモンザ王国を警戒したのでしょう。
 アメリア皇国とモンザ王国が正面から戦えば、アメリア皇国が圧勝します。
 ですが二国は国境を接しているわけではありません。
 アメリア皇国がモンザ王国に攻め込むためには、最低二カ国を通過する必要がありますから、そう簡単に開戦を決断する事はできません。

 ですが絶対に不可能というわけではありません。
 アメリア皇国がその気になれば、間にある国を併合することも難しくはないですし、強圧的に出れば軍の通過は簡単に許可されるでしょう。
 問題は危機感と必要性です。
 モンザ王国が秘宝を手に入れた時の危険度と、アメリア皇国が秘宝を必要としているかの問題です。

 私の十六年間の努力と風盗賊団の御陰で、多くの国が秘宝の存在を真剣に検討しだしました。
 前世のようにモンザ王国だけが妄信しているわけではありません。
 その状態でベルニカがアメリア皇国に入って運動してくれたので、アメリア皇国は重要度の低い皇族を私の婿に送る気になってくれています。

 私が傾国の美女ならば、こんな苦労はないのです。
 ただ微笑むだけで、皇位継承権の低い皇族を婿に迎えられたでしょう。
 いえ、私が歴史に登場するような傾国の美女ならば、皇帝の愛妾となって、ファルン王国を助けてもらえたでしょう。

 ですが私は並の女です。
 ブスではないと思いますが、美人とは言えません。
 性格は悪くないと思いますが、性格がよくても皇帝を籠絡することなど無理です。
 美女だという嘘の情報を流して有利な条約を結んでも、実際にあってブスだと分かれば条約を解消されてしまいます。
 最悪皇帝を偽ったとその場で処刑されてしまいます。

 誠意をもって地道に国交を重ねるしかないのですが、ベルニカがよくやってくれています。
 武に誇りを持つ皇国貴族や士族と剣で友情を結び、国際条約を有利に導いてくれています。
 私の個人資金からも追加資金を送りましょう。
 公式に伝えられない情報があるかもしれません。

「乙女!
 ベルニカ殿から密書が届いております!」
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