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第1章
第51話:獅子奮迅
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天文20年1月27日:伊豆荒井城:前田上総介利益19歳視点
「我こそは三河大浜の黒鬼、前田上総介が家臣、青鬼三輪青馬益興なり!
我と思わん者は掛かって来い!」
織田信長勢の先陣、その中でも先駆けを命じられた青鬼が叫んだそうだ。
信長の野郎、俺が義祖父殿に送った兵、2000に先陣を命じやがった!
立っている者は仏でも使えと言うが、やり過ぎだろう!
六角定頼と六角義賢の親子は、越前の朝倉義景と陣代の朝倉宗滴に話をつけて、六角からの独立を画策していた浅井久政を先陣に、美濃に侵攻してきた。
朝倉家が六角家と手を結んだのは、朝倉義景の叔母が土岐頼武の正室として嫁いでいて、斎藤道三の横暴を許せなったのが表の理由だと、奥村次右衛門が言っていた。
朝倉家の裏の理由は、当主の朝倉義景が19歳にもなるのに頼りない事、陣代の朝倉宗滴が75歳と高齢な事、宗滴に代わる陣代がいない事だそうだ。
以前にも朝倉家は織田信秀と組んで、越前で庇護していた先々代土岐家当主の土岐頼純を支援するために、美濃に攻め込んでいる。
六角家の事情は、六角定頼の娘が土岐頼芸の正室として嫁いでいる。
表の理由としているのは、揖斐北方城に籠城している土岐頼芸と娘を助け、美濃を土岐家の手に取り戻す事だ。
本当の侵攻理由は、俺の武功が大きいと奥村次右衛門が言っていた。
織田信長の家臣である俺が、今川義元と北条氏康を討ち破り三河、遠江、駿河、伊豆を切り取った。
信長自身も尾張を統一して、美濃の郡を次々と切り取っていく。
このまま何の手も打たなければ、美濃を併合して強大になった織田家が近江に攻め込んで来るので、その前に全力で叩こうしているのだそうだ。
だから万全の準備を整えて攻め込んで来た。
冬の雪をものともせず、北伊勢、大和、伊賀の兵力を遊撃に使って攻めてきた。
遊撃軍は、美濃と尾張の織田勢に夜討ち朝駆けを仕掛けて後方を混乱した。
浅井勢11000、六角勢25000もの大軍を動員してきた。
近江から攻め込んで来た本軍だけで36000兵もの大軍だった。
六角勢が勝つと判断した美濃の国人地侍が揖斐北方城に集まった。
信長は、斎藤道三が籠城する稲葉山城に抑えの兵を残して迎撃に向かった。
稲葉山城と尾張に抑えの兵を置いた信長は、20000兵を率いていた。
信長は、歴史に疎い俺でも名前だけは知っている、関ヶ原で浅井勢を迎え討った。
信長は関ヶ原から美濃府中に抜ける隘路に陣を布いたそうだ。
浅井勢を散々叩かせた後で青鬼を後退させて、釣られた浅井勢を陣に誘い込んだ。
歴史に詳しくない俺でも知っている、鉄砲の三段撃ちをここでやりやがった!
鰯漁と鯨狩りで莫大な銭を手に入れた信長は、3000の鉄砲を手に入れていた。
鉄砲で一方的に叩かれて、根性が挫けて逃げ出した浅井勢を青鬼に追撃させる。
多くの褒美を与えると約束して、首を取らせずに殺せと命じた。
身代金目的の生け捕りも乱暴取りも禁じた徹底ぶりだ。
それが幸いしたのか、浅井勢の総大将、浅井久政が殺されていたそうだ。
合戦後の戦場掃除で、屍を晒しているのが発見されたそうだ。
まだまだ兵力で上回る六角勢だが、六角定頼と六角義賢の親子は老練だった。
とんでもない数の鉄砲を備えた信長の陣は近づかなかった。
養老の方にある脇道を抜けて信長の背後に出ようとした。
信長は、極端に足軽が多い自軍がとても弱い事を良く知っている。
俺も散々奥村次右衛門に注意されている。
信長や俺という大将が勝ち続けているから勢いがあるだけで、普通に戦わせたら、3人がかりでないと美濃の兵士に勝てない弱兵だと。
信長は急いで陣を払って撤退した。
だが、浅井勢がそうであったように、背後を追撃される時が1番被害がでる。
撤退戦の殿を務める者が討死するのはその為だ。
信長は、養老から背後に回ろうとする六角勢に、青鬼をぶつけた。
多くの弓足軽と長柄足軽の組をつけたとはいえ、浅井勢との戦いで消耗した青鬼に、2000の少数で25000の六角勢を防ぐように命じた。
更に信長は、浅井勢を撃退した陣に佐久間信盛を入れて敵の追撃を防いだ。
佐久間信盛は信長が気を許せる数少ない家臣だ。
だから多くの鉄砲足軽組を預けられるし、殿も任せられる。
「我こそは三河大浜の黒鬼、前田上総介が家臣、青鬼三輪青馬益興なり!
六角の卑怯者共、命のいらない者は掛かって来い!」
青鬼は獅子奮迅の戦いで六角勢を防ぎ続けた。
六角勢が国人地侍ごとの備えだったので、当主を討ち取れば霧散する。
当主が討ち取られた国人勢は、その後に指揮を受け継ぐ嫡男や陣代がいない限り、六角家の当主であっても戦わせることができない。
それ以前に無理矢理戦わされていた領民兵が逃げてしまう。
信長は、青鬼と佐久間信盛の奮戦で六角の侵攻を何とか抑え込んだ。
六角勢は雪の深い南宮山や菩提山を登って迂回しようとはしなかった。
関ケ原を確保して、信長の勢いを止められれば良いと考えたようだ。
これで稲葉山に籠城している斎藤道三が降伏する事はなくなった。
揖斐北方城の土岐頼芸にも多くの国人地侍が集まった。
今はこれで十分なのだろう。
雪が融ければ山を越えて青鬼達の背後に回る事ができる。
北伊勢、大和、伊賀の国人地侍が尾張に入って焼き討ちや乱暴取りを続けている。
このままでは信長の武名が地に落ち、集められる兵力も年貢も減っていく。
だが信長も黙ってはいない、反攻に向けて三河と遠江の国人地侍にも動員をかけているし、志摩水軍と佐治水軍を使って鉄砲や武器を買い集めている。
俺と駿河伊豆の国人地侍を呼ばないのは、信長の意地だそうだ。
「我こそは三河大浜の黒鬼、前田上総介が家臣、青鬼三輪青馬益興なり!
我と思わん者は掛かって来い!」
織田信長勢の先陣、その中でも先駆けを命じられた青鬼が叫んだそうだ。
信長の野郎、俺が義祖父殿に送った兵、2000に先陣を命じやがった!
立っている者は仏でも使えと言うが、やり過ぎだろう!
六角定頼と六角義賢の親子は、越前の朝倉義景と陣代の朝倉宗滴に話をつけて、六角からの独立を画策していた浅井久政を先陣に、美濃に侵攻してきた。
朝倉家が六角家と手を結んだのは、朝倉義景の叔母が土岐頼武の正室として嫁いでいて、斎藤道三の横暴を許せなったのが表の理由だと、奥村次右衛門が言っていた。
朝倉家の裏の理由は、当主の朝倉義景が19歳にもなるのに頼りない事、陣代の朝倉宗滴が75歳と高齢な事、宗滴に代わる陣代がいない事だそうだ。
以前にも朝倉家は織田信秀と組んで、越前で庇護していた先々代土岐家当主の土岐頼純を支援するために、美濃に攻め込んでいる。
六角家の事情は、六角定頼の娘が土岐頼芸の正室として嫁いでいる。
表の理由としているのは、揖斐北方城に籠城している土岐頼芸と娘を助け、美濃を土岐家の手に取り戻す事だ。
本当の侵攻理由は、俺の武功が大きいと奥村次右衛門が言っていた。
織田信長の家臣である俺が、今川義元と北条氏康を討ち破り三河、遠江、駿河、伊豆を切り取った。
信長自身も尾張を統一して、美濃の郡を次々と切り取っていく。
このまま何の手も打たなければ、美濃を併合して強大になった織田家が近江に攻め込んで来るので、その前に全力で叩こうしているのだそうだ。
だから万全の準備を整えて攻め込んで来た。
冬の雪をものともせず、北伊勢、大和、伊賀の兵力を遊撃に使って攻めてきた。
遊撃軍は、美濃と尾張の織田勢に夜討ち朝駆けを仕掛けて後方を混乱した。
浅井勢11000、六角勢25000もの大軍を動員してきた。
近江から攻め込んで来た本軍だけで36000兵もの大軍だった。
六角勢が勝つと判断した美濃の国人地侍が揖斐北方城に集まった。
信長は、斎藤道三が籠城する稲葉山城に抑えの兵を残して迎撃に向かった。
稲葉山城と尾張に抑えの兵を置いた信長は、20000兵を率いていた。
信長は、歴史に疎い俺でも名前だけは知っている、関ヶ原で浅井勢を迎え討った。
信長は関ヶ原から美濃府中に抜ける隘路に陣を布いたそうだ。
浅井勢を散々叩かせた後で青鬼を後退させて、釣られた浅井勢を陣に誘い込んだ。
歴史に詳しくない俺でも知っている、鉄砲の三段撃ちをここでやりやがった!
鰯漁と鯨狩りで莫大な銭を手に入れた信長は、3000の鉄砲を手に入れていた。
鉄砲で一方的に叩かれて、根性が挫けて逃げ出した浅井勢を青鬼に追撃させる。
多くの褒美を与えると約束して、首を取らせずに殺せと命じた。
身代金目的の生け捕りも乱暴取りも禁じた徹底ぶりだ。
それが幸いしたのか、浅井勢の総大将、浅井久政が殺されていたそうだ。
合戦後の戦場掃除で、屍を晒しているのが発見されたそうだ。
まだまだ兵力で上回る六角勢だが、六角定頼と六角義賢の親子は老練だった。
とんでもない数の鉄砲を備えた信長の陣は近づかなかった。
養老の方にある脇道を抜けて信長の背後に出ようとした。
信長は、極端に足軽が多い自軍がとても弱い事を良く知っている。
俺も散々奥村次右衛門に注意されている。
信長や俺という大将が勝ち続けているから勢いがあるだけで、普通に戦わせたら、3人がかりでないと美濃の兵士に勝てない弱兵だと。
信長は急いで陣を払って撤退した。
だが、浅井勢がそうであったように、背後を追撃される時が1番被害がでる。
撤退戦の殿を務める者が討死するのはその為だ。
信長は、養老から背後に回ろうとする六角勢に、青鬼をぶつけた。
多くの弓足軽と長柄足軽の組をつけたとはいえ、浅井勢との戦いで消耗した青鬼に、2000の少数で25000の六角勢を防ぐように命じた。
更に信長は、浅井勢を撃退した陣に佐久間信盛を入れて敵の追撃を防いだ。
佐久間信盛は信長が気を許せる数少ない家臣だ。
だから多くの鉄砲足軽組を預けられるし、殿も任せられる。
「我こそは三河大浜の黒鬼、前田上総介が家臣、青鬼三輪青馬益興なり!
六角の卑怯者共、命のいらない者は掛かって来い!」
青鬼は獅子奮迅の戦いで六角勢を防ぎ続けた。
六角勢が国人地侍ごとの備えだったので、当主を討ち取れば霧散する。
当主が討ち取られた国人勢は、その後に指揮を受け継ぐ嫡男や陣代がいない限り、六角家の当主であっても戦わせることができない。
それ以前に無理矢理戦わされていた領民兵が逃げてしまう。
信長は、青鬼と佐久間信盛の奮戦で六角の侵攻を何とか抑え込んだ。
六角勢は雪の深い南宮山や菩提山を登って迂回しようとはしなかった。
関ケ原を確保して、信長の勢いを止められれば良いと考えたようだ。
これで稲葉山に籠城している斎藤道三が降伏する事はなくなった。
揖斐北方城の土岐頼芸にも多くの国人地侍が集まった。
今はこれで十分なのだろう。
雪が融ければ山を越えて青鬼達の背後に回る事ができる。
北伊勢、大和、伊賀の国人地侍が尾張に入って焼き討ちや乱暴取りを続けている。
このままでは信長の武名が地に落ち、集められる兵力も年貢も減っていく。
だが信長も黙ってはいない、反攻に向けて三河と遠江の国人地侍にも動員をかけているし、志摩水軍と佐治水軍を使って鉄砲や武器を買い集めている。
俺と駿河伊豆の国人地侍を呼ばないのは、信長の意地だそうだ。
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