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第1章
第23話:夜討ち朝駆け
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天文17年3月20日:三河三谷津:前田慶次16歳視点
織田信秀が吝嗇なのも惚けているのも分かっていた。
どれほど武功を立てても碌に褒美をもらえない事は分かっていた。
だから何の褒美も与えられなくても、腹が立っただけだ。
暴れてぶち殺そうと思うほどでの怒りはなかった。
ただ、織田弾正忠家の譜代衆がこれ以上何か言ったら、我慢できずに皆殺してしまうかもしれない。
そう思ったから、急いで本陣を離れた。
織田信秀に仕えている譜代衆は、織田信長に仕えている譜代衆よりも質が悪い!
今川勢の人質を義元に買い取らせるために、太原雪斎や朝比奈泰能の側仕えを解放して駿河に行かせた。
岡崎城の東側まで来て、人質以外何も手に入れずに帰るのは勿体ない。
だから以前から狙っていた形原津に向かった。
形原津には28丁櫓の小早船1艘と22丁櫓の小早船1艘があった。
8丁櫓の優良な小舟が4艘と鈍重な1丁櫓の小舟が14艘あった。
その全てを奪って大浜に向かわせた。
邪魔になる身分の低い人質は一緒に大浜に送った。
逃がしたくないくらい身分の高い人質は、そのまま連れて次の湊に向かおうとしたのだが、今川が形原城に派遣した奥平貞友が邪魔してきた。
「我こそは今川家でその人ありと言われる奥平久兵衛貞友なり!
盗人働きをする卑怯者は誰だ!」
「我こそは三河大原の黒鬼、前田慶次利益なり!
太原雪斎と朝比奈泰能に続いて生け捕りを望むか、かかって来い!」
軽く叩いて奥平貞友を生け捕りにした。
形原城と領地は惜しいが、家臣の命を懸けて落としても信秀に奪われるだけ。
大原城に持って帰れる物以外は捨て置く。
そのまま海岸線を東に馬を駆けさせて、竹谷津の船を奪う。
竹谷津には20丁櫓の小早船1艘があった。
14丁櫓の優良な小舟が6艘と、鈍重な1丁櫓の小舟が15艘あった。
その全てを奪って大浜に向かわせた。
ここでも竹谷城には手出ししない心算だったのだが……
「盗み働きとは卑怯なり、名を名乗れ!」
城から立派な鎧を着た武将が兵を率いて現れた。
「我こそは三河大原の黒鬼、前田慶次利益なり!
小豆坂で今川勢を破り、太原雪斎と朝比奈泰能を生け捕りにした余勢を駆って奥平貞友も生け捕りにして、今川方の湊を襲い、船を奪っているところだ。
船以外に用はない、命が惜しかったら城に戻れ」
「黙れ、敵を前にして逃げ隠れする武将が何所にいる!
我こそは竹谷松平家4代目当主、與二郎清善なり!」
襲って来たら仕方がない、戦いたくはないが、軽くたたいて捕虜にする。
本人だけでなく付き従ってきた将兵も生け捕りにして捕虜にする。
少しでも身代金になれば良い。
新たな人質を連れて更に東に向かう。
甲賀衆が調べてくれた話では、上の郷城主で三河鵜殿家の惣領、鵜殿長持の弟が守る不相城と三谷津がある。
今川に属する武将の中でもかなりの大身なのが鵜殿家らしい。
一族合わせれば5000貫文をこえる領地を治めていると言う。
そんな事が簡単に調べられるくらい有名な一族だ。
その鵜殿一族が使う湊なので、それなりの戦船があった。
38丁櫓の小早船1艘と34丁櫓の小早船1艘があった。
18丁櫓の優良な小舟が4艘と12丁櫓の優良な小舟が4艘あった。
鈍重な1丁櫓の小舟も18艘あった。
本当にもう人質などいらないと思っていたのだが、また現れた。
「まて、このまま生きて帰れると思っているのか?!
盗人働きをする者は、古来より釜茹での刑と決まっている!」
「もう良いから、これ以上人質がいても交渉が面倒だから。
見逃してやるから城の中で震えていろ!
「おのれ、俺を誰だと思っている!?
三河の鵜殿一族でも武勇の誉れ高い、不相城の鵜殿次郎長成だぞ!」
「名乗りを上げられたら仕方がない、相手をしてやる。
我こそは三河大原の黒鬼、前田慶次利益なり!
井ノ口で織田弾正忠の命を救う殿を務め、大浜では織田三郎の初陣を助けて城を奪い、落城寸前の本宿城を救って松平勢を壊滅させた!
そして今、小豆坂で今川勢を一万を破り、太原雪斎と朝比奈泰能に続いて生け捕りにし、形原津と竹谷津の戦船を奪って回ってきた。
もう一度言う、命が惜しかったら城に逃げ帰れ!」
「黙れ、武将の風上にも置けない盗人働きが!」
喚きながら突っ込んで来た鵜殿次郎を軽く叩いて生け捕りにする。
残っている将兵に命じて、鵜殿次郎の家臣も生け捕りにする。
十分な身代金を払える家族がいない奴は、奴隷にして売ってしまえば良い。
逃げられてもいい、海に落ちて死んでもいい雑兵を、船に乗せて大浜に送る。
狙っていた船と網は全部手に入れられたので満足だ。
今川義元か家族が大金を払いそうな者だけは、自分で大浜まで連れて行く。
「間違っても逃げようと思うなよ!
逃げようとしても殺さないが、利き腕を砕いて二度と戦えなくするぞ!
生き延びて恥を雪ぐ気でいるなら素直に従え!
今川義元のために生き延びて、これからも働く気概のある者は逃げるな!
分かったな?!」
本気で脅して逃げないようにした。
臥薪嘗胆、復仇の機会を狙う気概のある者なら逃げない。
滅し奉公、今川義元に為に生き延びて働こうとする者も逃げないだろう。
今川義元や一族が見捨てて身代金を払わなくても良い。
そうなったら、義元の評判が落ちて調略がしやすくなると次右衛門が言っていた。
「前田水軍」
小早船 : 1艘(38丁櫓)
小早船 : 1艘(34丁櫓)
小早船 : 1艘(32丁櫓)
小早船 : 1艘(28丁櫓)
小早船 : 1艘(26丁櫓)
小早船 : 1艘(22丁櫓)
小早船 : 1艘(20丁櫓)
優良小舟: 4艘(18丁櫓)
優良小舟: 6艘(14丁櫓)
優良小舟: 4艘(12丁櫓)
優良小舟: 6艘(10丁櫓)
優良小舟: 4艘(8丁櫓)
優良小舟:19艘(1丁櫓)
鈍重小舟:76艘(1丁櫓)
織田信秀が吝嗇なのも惚けているのも分かっていた。
どれほど武功を立てても碌に褒美をもらえない事は分かっていた。
だから何の褒美も与えられなくても、腹が立っただけだ。
暴れてぶち殺そうと思うほどでの怒りはなかった。
ただ、織田弾正忠家の譜代衆がこれ以上何か言ったら、我慢できずに皆殺してしまうかもしれない。
そう思ったから、急いで本陣を離れた。
織田信秀に仕えている譜代衆は、織田信長に仕えている譜代衆よりも質が悪い!
今川勢の人質を義元に買い取らせるために、太原雪斎や朝比奈泰能の側仕えを解放して駿河に行かせた。
岡崎城の東側まで来て、人質以外何も手に入れずに帰るのは勿体ない。
だから以前から狙っていた形原津に向かった。
形原津には28丁櫓の小早船1艘と22丁櫓の小早船1艘があった。
8丁櫓の優良な小舟が4艘と鈍重な1丁櫓の小舟が14艘あった。
その全てを奪って大浜に向かわせた。
邪魔になる身分の低い人質は一緒に大浜に送った。
逃がしたくないくらい身分の高い人質は、そのまま連れて次の湊に向かおうとしたのだが、今川が形原城に派遣した奥平貞友が邪魔してきた。
「我こそは今川家でその人ありと言われる奥平久兵衛貞友なり!
盗人働きをする卑怯者は誰だ!」
「我こそは三河大原の黒鬼、前田慶次利益なり!
太原雪斎と朝比奈泰能に続いて生け捕りを望むか、かかって来い!」
軽く叩いて奥平貞友を生け捕りにした。
形原城と領地は惜しいが、家臣の命を懸けて落としても信秀に奪われるだけ。
大原城に持って帰れる物以外は捨て置く。
そのまま海岸線を東に馬を駆けさせて、竹谷津の船を奪う。
竹谷津には20丁櫓の小早船1艘があった。
14丁櫓の優良な小舟が6艘と、鈍重な1丁櫓の小舟が15艘あった。
その全てを奪って大浜に向かわせた。
ここでも竹谷城には手出ししない心算だったのだが……
「盗み働きとは卑怯なり、名を名乗れ!」
城から立派な鎧を着た武将が兵を率いて現れた。
「我こそは三河大原の黒鬼、前田慶次利益なり!
小豆坂で今川勢を破り、太原雪斎と朝比奈泰能を生け捕りにした余勢を駆って奥平貞友も生け捕りにして、今川方の湊を襲い、船を奪っているところだ。
船以外に用はない、命が惜しかったら城に戻れ」
「黙れ、敵を前にして逃げ隠れする武将が何所にいる!
我こそは竹谷松平家4代目当主、與二郎清善なり!」
襲って来たら仕方がない、戦いたくはないが、軽くたたいて捕虜にする。
本人だけでなく付き従ってきた将兵も生け捕りにして捕虜にする。
少しでも身代金になれば良い。
新たな人質を連れて更に東に向かう。
甲賀衆が調べてくれた話では、上の郷城主で三河鵜殿家の惣領、鵜殿長持の弟が守る不相城と三谷津がある。
今川に属する武将の中でもかなりの大身なのが鵜殿家らしい。
一族合わせれば5000貫文をこえる領地を治めていると言う。
そんな事が簡単に調べられるくらい有名な一族だ。
その鵜殿一族が使う湊なので、それなりの戦船があった。
38丁櫓の小早船1艘と34丁櫓の小早船1艘があった。
18丁櫓の優良な小舟が4艘と12丁櫓の優良な小舟が4艘あった。
鈍重な1丁櫓の小舟も18艘あった。
本当にもう人質などいらないと思っていたのだが、また現れた。
「まて、このまま生きて帰れると思っているのか?!
盗人働きをする者は、古来より釜茹での刑と決まっている!」
「もう良いから、これ以上人質がいても交渉が面倒だから。
見逃してやるから城の中で震えていろ!
「おのれ、俺を誰だと思っている!?
三河の鵜殿一族でも武勇の誉れ高い、不相城の鵜殿次郎長成だぞ!」
「名乗りを上げられたら仕方がない、相手をしてやる。
我こそは三河大原の黒鬼、前田慶次利益なり!
井ノ口で織田弾正忠の命を救う殿を務め、大浜では織田三郎の初陣を助けて城を奪い、落城寸前の本宿城を救って松平勢を壊滅させた!
そして今、小豆坂で今川勢を一万を破り、太原雪斎と朝比奈泰能に続いて生け捕りにし、形原津と竹谷津の戦船を奪って回ってきた。
もう一度言う、命が惜しかったら城に逃げ帰れ!」
「黙れ、武将の風上にも置けない盗人働きが!」
喚きながら突っ込んで来た鵜殿次郎を軽く叩いて生け捕りにする。
残っている将兵に命じて、鵜殿次郎の家臣も生け捕りにする。
十分な身代金を払える家族がいない奴は、奴隷にして売ってしまえば良い。
逃げられてもいい、海に落ちて死んでもいい雑兵を、船に乗せて大浜に送る。
狙っていた船と網は全部手に入れられたので満足だ。
今川義元か家族が大金を払いそうな者だけは、自分で大浜まで連れて行く。
「間違っても逃げようと思うなよ!
逃げようとしても殺さないが、利き腕を砕いて二度と戦えなくするぞ!
生き延びて恥を雪ぐ気でいるなら素直に従え!
今川義元のために生き延びて、これからも働く気概のある者は逃げるな!
分かったな?!」
本気で脅して逃げないようにした。
臥薪嘗胆、復仇の機会を狙う気概のある者なら逃げない。
滅し奉公、今川義元に為に生き延びて働こうとする者も逃げないだろう。
今川義元や一族が見捨てて身代金を払わなくても良い。
そうなったら、義元の評判が落ちて調略がしやすくなると次右衛門が言っていた。
「前田水軍」
小早船 : 1艘(38丁櫓)
小早船 : 1艘(34丁櫓)
小早船 : 1艘(32丁櫓)
小早船 : 1艘(28丁櫓)
小早船 : 1艘(26丁櫓)
小早船 : 1艘(22丁櫓)
小早船 : 1艘(20丁櫓)
優良小舟: 4艘(18丁櫓)
優良小舟: 6艘(14丁櫓)
優良小舟: 4艘(12丁櫓)
優良小舟: 6艘(10丁櫓)
優良小舟: 4艘(8丁櫓)
優良小舟:19艘(1丁櫓)
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