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第1章
第16話:兵力増強
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天文16年9月27日:三河大浜城:前田慶次15歳視点
奥村次右衛門が上手くやってくれたお陰で、大浜城主に成れた!
周囲の領地も全て俺の物と認められ、5000貫高の領主と成った!
少々負担が重い気もするが、その分家中の席次が上がるので仕方がない。
ただ、550貫だった扶持が500貫に減らされた。
500貫は、織田信秀が井ノ口の戦いの褒美にくれた分だからこれまで通りだが、信長の家臣分の50貫は大浜城主となると同時になくなった。
奥村次右衛門は苦笑いしていたが、俺だったら殺し合いになっている。
殺し合いは大げさだが、間違いなく罵り合いにはなっていた。
褒美をケチる主君には誰もついて来ないぞ!
俺だったら、大浜城と福釜城の掛け合いで喧嘩になっていただろう。
これからも信長との交渉は奥村次右衛門に任せよう。
俺と信長は性格が似ているのか、言い合いになってしまう事が多い。
大浜城主になったのは良いが、人質となる妻は那古野城に住ませないといけない!
妻に会う為には大切な大浜城から離れなければならない!
しかたない事とはいえ、妻との愛が間遠くなってしまった!
こればかりは、小なりとはいえ城持ち領主になったのだからしかたがない。
俺だって、降伏臣従した者や他国から召し抱えた者からは人質を取る。
現に与力から直臣にした甲賀衆には人質を出すように命じた。
甲賀衆が那古野城下に住まわせていた人質は、大浜城に移住させた。
家臣を住ませる家がなかったので、大浜城の縄張りを広げて新しい曲輪を造った。
それと、地続きに攻めて来る敵を警戒して、高浜に新たな城を築く事にした。
以前から高浜には守りを強くするための壕と土塁を造っていた。
入り江と川と自然お濠として利用していた。
そこに柵と加えて小屋を建て、高浜城とした。
高浜城代を誰にするかは真剣に悩んだ。
荒子の義祖父がつけてくれた譜代衆に差をつけるのは、諍いの元になる。
兄の滝川一益が家臣になってくれていたら城代にできたのだが、兄にも誇りがあるから信長の家臣に残った。
長く考えるのは苦手なので、荒子の義祖父に相談した。
義祖父は即座に妻の実父を助太刀に送ってくれた。
妻には実父と義父がいる。
義父は義祖父の嫡男なのだが、子供がいないのだ。
そこで義祖父の三男、義父の次弟、前田安勝の娘、百合を養女とした。
俺は、その百合に婿入りして前田を名乗る事になった。
だから、俺には前田利久と前田安勝という2人の義父がいる。
荒子前田家の嫡男である前田利久は、荒子を離れて大浜に来る事は難しい。
だが三男の前田安勝義父なら簡単に荒子を離れられる。
俺の義父が城代なら誰も文句を言えないし、逆らわない。
荒子譜代の連中も甲賀衆も、同輩が抜擢されるよりも素直に従う。
やっぱり難しい事は義祖父に相談するに限る。
義祖父が送ってくれた荒子譜代は、一律100貫の扶持とした。
全員を足軽組頭にして、50人の足軽を指揮させた。
軍馬も貸し与えて、騎馬武者とした。
甲賀衆19人は、信長の直臣から俺の家臣に格が下がる事も考えて、一律200貫の扶持にした。
軍馬は自分で買うように命じたが、直ぐに買うと高値を吹っ掛けられるので、しばらくの間は俺が買い集めた軍馬を貸す事にした。
彼らが短時間で200貫扶持の騎馬武者に立身出世した事で、甲賀から新たな地侍子弟を集める事ができた。
前回は信長の家臣、近習として甲賀者を召し抱えた。
だが今回は、俺の家臣、素っ破や乱波として召し抱える。
だから技量によって5貫文から20貫文と扶持が変わった。
それと、質は悪いが、足軽が随分と集まった。
戦に勝てる強い武将の元には人が集まるのだと思い知った。
これまで集めるのに苦労した足軽があっという間に集まった。
信長の影響が強い場所だけでなく、三河、美濃、近江からも集まった。
素っ破や乱波としては使えない甲賀者は足軽として召し抱えた。
何の役にも立たない、壕を掘り土塁を築くくらいしかできない者は、1日玄米6合だけ扶持する足軽にした。
「気をつけろよ、松平や今川はもちろん、斉藤や織田の手の者も入り込むぞ」
義祖父が浮かれていた俺に現実を思い知らせてくれた。
2度目の人生では前世のように調子に乗ってはいけない、そう自分に言い聞かせていたはずなのに、浮かれて落とし穴に落ちる所だった。
「ありがとうございます、義祖父殿がつけてくださった譜代衆と、父が大丈夫だと言ってくれた甲賀者に調べさせます」
俺は気を引き締め直して家臣を統制する事にした。
「若、そんなに心配する事はありません。
若が毎日されている鍛錬を見れば、裏切る者などいません。
誰かが送り込んだ者も、睨みつけてやれば翌日には逃げていなくなります」
まさかとは思ったが、奥村次右衛門の言う事は本当だった。
甲賀衆が疑わしいと言う者を睨みつけたら、本当に翌日にはいなくなっていた。
家臣に与える扶持だが、他所は年に一度収穫後に渡す事が多い。
だが急に成り上がった俺には蓄えがないので、日払いになっている。
200貫文の甲賀衆には1日564文渡している。
100貫文の荒子譜代には1日283文渡している。
最下級の足軽には1日3文か玄米6合を渡している。
「若、那古野の殿から出陣せよとの命でございます!」
高浜城で義父殿を助けているはずの姉崎勘右衛門が、やって来るなり叫ぶ。
城外で兵を調練していてよかった。
「どういう事だ?」
「古渡の大殿が急に出陣すると申されたそうでございます!
高浜でも出陣の準備をしております。
若も急ぎ兵を纏めて那古野に駆け付けられよ!」
「那古野に行くのは俺だけで良い、義父殿には領地を守って頂く。
急ぎ高浜に戻って義父殿に伝えよ」
奥村次右衛門が上手くやってくれたお陰で、大浜城主に成れた!
周囲の領地も全て俺の物と認められ、5000貫高の領主と成った!
少々負担が重い気もするが、その分家中の席次が上がるので仕方がない。
ただ、550貫だった扶持が500貫に減らされた。
500貫は、織田信秀が井ノ口の戦いの褒美にくれた分だからこれまで通りだが、信長の家臣分の50貫は大浜城主となると同時になくなった。
奥村次右衛門は苦笑いしていたが、俺だったら殺し合いになっている。
殺し合いは大げさだが、間違いなく罵り合いにはなっていた。
褒美をケチる主君には誰もついて来ないぞ!
俺だったら、大浜城と福釜城の掛け合いで喧嘩になっていただろう。
これからも信長との交渉は奥村次右衛門に任せよう。
俺と信長は性格が似ているのか、言い合いになってしまう事が多い。
大浜城主になったのは良いが、人質となる妻は那古野城に住ませないといけない!
妻に会う為には大切な大浜城から離れなければならない!
しかたない事とはいえ、妻との愛が間遠くなってしまった!
こればかりは、小なりとはいえ城持ち領主になったのだからしかたがない。
俺だって、降伏臣従した者や他国から召し抱えた者からは人質を取る。
現に与力から直臣にした甲賀衆には人質を出すように命じた。
甲賀衆が那古野城下に住まわせていた人質は、大浜城に移住させた。
家臣を住ませる家がなかったので、大浜城の縄張りを広げて新しい曲輪を造った。
それと、地続きに攻めて来る敵を警戒して、高浜に新たな城を築く事にした。
以前から高浜には守りを強くするための壕と土塁を造っていた。
入り江と川と自然お濠として利用していた。
そこに柵と加えて小屋を建て、高浜城とした。
高浜城代を誰にするかは真剣に悩んだ。
荒子の義祖父がつけてくれた譜代衆に差をつけるのは、諍いの元になる。
兄の滝川一益が家臣になってくれていたら城代にできたのだが、兄にも誇りがあるから信長の家臣に残った。
長く考えるのは苦手なので、荒子の義祖父に相談した。
義祖父は即座に妻の実父を助太刀に送ってくれた。
妻には実父と義父がいる。
義父は義祖父の嫡男なのだが、子供がいないのだ。
そこで義祖父の三男、義父の次弟、前田安勝の娘、百合を養女とした。
俺は、その百合に婿入りして前田を名乗る事になった。
だから、俺には前田利久と前田安勝という2人の義父がいる。
荒子前田家の嫡男である前田利久は、荒子を離れて大浜に来る事は難しい。
だが三男の前田安勝義父なら簡単に荒子を離れられる。
俺の義父が城代なら誰も文句を言えないし、逆らわない。
荒子譜代の連中も甲賀衆も、同輩が抜擢されるよりも素直に従う。
やっぱり難しい事は義祖父に相談するに限る。
義祖父が送ってくれた荒子譜代は、一律100貫の扶持とした。
全員を足軽組頭にして、50人の足軽を指揮させた。
軍馬も貸し与えて、騎馬武者とした。
甲賀衆19人は、信長の直臣から俺の家臣に格が下がる事も考えて、一律200貫の扶持にした。
軍馬は自分で買うように命じたが、直ぐに買うと高値を吹っ掛けられるので、しばらくの間は俺が買い集めた軍馬を貸す事にした。
彼らが短時間で200貫扶持の騎馬武者に立身出世した事で、甲賀から新たな地侍子弟を集める事ができた。
前回は信長の家臣、近習として甲賀者を召し抱えた。
だが今回は、俺の家臣、素っ破や乱波として召し抱える。
だから技量によって5貫文から20貫文と扶持が変わった。
それと、質は悪いが、足軽が随分と集まった。
戦に勝てる強い武将の元には人が集まるのだと思い知った。
これまで集めるのに苦労した足軽があっという間に集まった。
信長の影響が強い場所だけでなく、三河、美濃、近江からも集まった。
素っ破や乱波としては使えない甲賀者は足軽として召し抱えた。
何の役にも立たない、壕を掘り土塁を築くくらいしかできない者は、1日玄米6合だけ扶持する足軽にした。
「気をつけろよ、松平や今川はもちろん、斉藤や織田の手の者も入り込むぞ」
義祖父が浮かれていた俺に現実を思い知らせてくれた。
2度目の人生では前世のように調子に乗ってはいけない、そう自分に言い聞かせていたはずなのに、浮かれて落とし穴に落ちる所だった。
「ありがとうございます、義祖父殿がつけてくださった譜代衆と、父が大丈夫だと言ってくれた甲賀者に調べさせます」
俺は気を引き締め直して家臣を統制する事にした。
「若、そんなに心配する事はありません。
若が毎日されている鍛錬を見れば、裏切る者などいません。
誰かが送り込んだ者も、睨みつけてやれば翌日には逃げていなくなります」
まさかとは思ったが、奥村次右衛門の言う事は本当だった。
甲賀衆が疑わしいと言う者を睨みつけたら、本当に翌日にはいなくなっていた。
家臣に与える扶持だが、他所は年に一度収穫後に渡す事が多い。
だが急に成り上がった俺には蓄えがないので、日払いになっている。
200貫文の甲賀衆には1日564文渡している。
100貫文の荒子譜代には1日283文渡している。
最下級の足軽には1日3文か玄米6合を渡している。
「若、那古野の殿から出陣せよとの命でございます!」
高浜城で義父殿を助けているはずの姉崎勘右衛門が、やって来るなり叫ぶ。
城外で兵を調練していてよかった。
「どういう事だ?」
「古渡の大殿が急に出陣すると申されたそうでございます!
高浜でも出陣の準備をしております。
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