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第1章
第12話:夜盗
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天文16年2月9日:三河幡豆郡鳥羽川:前田慶次15歳視点
織田信長は総計8組240兵もの足軽を送ってくれた。
甲賀の者を徒士侍に雇って18人も送ってくれた。
だがこれ以上の兵を集めるのは銭が厳しいと、青山与三右衛門が臭わせた。
そこで俺が独自で足軽と徒士侍を雇う事にした。
甲賀の者は誇りがあるので俺には仕官しないだろうが、平民は別だ。
明日餓死するかもしれない平民は、飯さえ与えれば集まる。
信長が送ってきた足軽と徒士侍の飯は、信長の責任で賄われる。
俺個人の家臣、騎馬武者、徒士侍、足軽の飯は俺の責任だ。
とはいっても、大浜城を手に入れた時に残されていた米がある。
俺個人の扶持は550貫とかなり多いが、黒雲雀の種をつける牝馬をたくさん買ったから、あまり残っていない。
秋になれば550貫与えられる。
そう割り切って商人に借金する方法もあるが、前世から借金は大嫌いだ。
借りるくらいなら吉良領を襲って略奪した方が良い。
だが今は、余計ない争いを起こす訳にはいかなかった。
海賊大将になると決めたから、舟を奪うまでは敵を警戒させたくない。
鳥羽川周辺は大浜城からかなり離れていて、対峙している西条吉良家ではなく東条吉良家の城だが、油断して舟を奪い損ねたら次の機会がないかもしれない。
「三郎様、自前で足軽を雇いたいから魚を買ってください」
俺は信長に魚を売る事にした。
唐に高く売れる物は津島商人に売るが、そうでない魚は信長に売りつける。
信長も、国境の城には少しでも多くの兵が必要なのは分かっている。
これまで商人から買っていた魚を俺から買うだけで、兵力が増えるのだ。
ちゃんと理由を話せば、俺から魚を買ってくれると思っていた。
思っていた通り魚を買ってくれるようになった。
だがただ買うのではなく、俺から買った魚に利をつけて家臣に売りつけた。
信長は俺よりも銭に厳しいようだ。
1日6文の銭があれば6合の玄米が買えて、足軽を1人雇える。
足軽を束ねる組頭を新たに召し抱えるならそれなりの扶持を与えなといけないが、俺の足軽なら荒子譜代の連中に指揮させればいい。
「大浜で獲れた魚を那古野城などで売る」
鰯2匹:1文
大あじ:2文
鰹 :40文
若魚子:4文(ブリの幼魚)
いなだ:10文(ブリの手前、関西ではハマチ)
鯛 :20文(20cm)
鯛 :30文(30cm)
鯛 :60文(50cm)
最初は漁の仕方が分からず、あまり魚が獲れなかった。
魚介類を信長に売りつけた、なけなしの銭で足軽を集めた。
ふと子供の頃に読んだマンガを思い出して、それを試してみた。
沖にでた小舟に海面を叩かせて、網や浜に魚を追い込んだ。
網の大きさや数に限りがあるので、砂浜に入り江を作って魚を追い込んだ。
1日中何度も追い込み漁をやった。
夜ケ浦と油ケ淵の両方で何度も何度も追い込み漁をやった!
高額で買い取ってくれる大きな魚は、数を獲るのが難しい。
だがイワシの群れだと、多ければ数十億、少ない群でも数万匹がいる。
その内の1割でも1分でも砂浜に追い込めれば、莫大な銭になる!
びっくりするくらい多くのイワシが獲れた!
砂浜に入り江を造ったのが良かったのか、10万匹以上のイワシが獲れた!
大きくて脂が乗っているイワシ優先して売ったが、全部は売れなかった。
信長だけでなく、伝手の有る国人地侍領民の全てに売って回ったが、全てのイワシを売る事はできなかった。
売れなかったイワシは一夜干しにした。
雨が降った時の為に、漁が上手く行かなかった時の為に、一夜干しにした。
新鮮なイワシも美味かったが、一夜干しも美味かった!
ただ、追い込み漁は思っていた以上にたくさんの魚が獲れた。
雨の日で漁ができなくても、有り余る一夜干しは売り切れなかった。
余りにもたくさんのイワシが獲れるので、腐らせるのが問題になった。
「一夜干しが日持ちしないのなら、完全に干しきってしまえ。
冬で干しきれないのなら、焼いて焼干しにしてしまえ!」
そうなのだ、山間部で新鮮な魚が手に入らない地域の人は焼干しした魚を食べる。
焼干しした魚を買って食べていたのは、俺自身が実体験している。
俺の住む地域だと、キスの焼干しとカツオの生節が良く食べられていた。
ここでも勉強不足を反省する事になった。
本枯れ鰹節の作り方を覚えていたら、大浜の特産品にできたのだ!
だが、反省ばかりしていても何にもならない。
反省している時間があったら何かでいる事がないか考えるのだ!
「次右衛門、魚の長持ちさせる方法が無いか調べてくれ。
魚を田畑の肥料にする方法があると聞いた事がある、それも調べてくれ」
俺は1番頼りにしている奥村次右衛門に聞いてみた。
「分かりました、荒子の大殿に聞いてみます。
私達では調べられる事に限りがありますが、大殿なら伝手が多くあります」
「そうだな、義祖父殿を頼るのが1番だな」
毎日大量の取れる魚を長持ちさせる方法、腐らして無駄にしない方法は、ひとまずこれで考えるのを止める。
なんと、1日で12貫文もの魚が売れた!
その12貫文を使って、尾張と三河から集められるだけ足軽を集めて、鳥羽川の河口にある湊を襲う準備した。
夜も漁をするようにして、襲撃日の夜に沖に出ていても、油ケ淵の向かいにいる吉良家の連中に疑われないようにした。
信長に貸し与えられた足軽は大浜城に残して西条吉良家と松平家の奇襲に備えた。
足軽達の指揮は、甲賀衆以外の同心徒士侍に任せた。
徒士侍だけでは不安だったので、荒子の義祖父を頼った。
義祖父は喜んで大浜城の留守を預かってくれた。
お陰で安心して鳥羽川の湊を襲う事ができた。
29艘の小舟は順調に夜の三河沖を東に進んだ。
誰にも見つからずに鳥羽川の河口沖に辿り着いた。
小舟を安全に航海させるには、1艘に5人前後しか乗せられなかった。
総人数150人で湊を襲い舟と網を奪わないといけない。
普通なら不可能なのだが、事前に滝川一益と甲賀衆が侵入してくれていた。
激しい戦になる事を覚悟していた。
いや、半ば期待していたのだが、全く気付かれる事無く舟と網を盗めた。
喉から手が出るほど欲しかった、戦船を手に入れる事ができた!
「前田水軍」
小早船 : 1艘(32丁櫓)
小早船 : 1艘(26丁櫓)
優良小舟: 6艘(10丁櫓)
優良小舟:19艘(1丁櫓)
鈍重小舟:29艘(1丁櫓)
織田信長は総計8組240兵もの足軽を送ってくれた。
甲賀の者を徒士侍に雇って18人も送ってくれた。
だがこれ以上の兵を集めるのは銭が厳しいと、青山与三右衛門が臭わせた。
そこで俺が独自で足軽と徒士侍を雇う事にした。
甲賀の者は誇りがあるので俺には仕官しないだろうが、平民は別だ。
明日餓死するかもしれない平民は、飯さえ与えれば集まる。
信長が送ってきた足軽と徒士侍の飯は、信長の責任で賄われる。
俺個人の家臣、騎馬武者、徒士侍、足軽の飯は俺の責任だ。
とはいっても、大浜城を手に入れた時に残されていた米がある。
俺個人の扶持は550貫とかなり多いが、黒雲雀の種をつける牝馬をたくさん買ったから、あまり残っていない。
秋になれば550貫与えられる。
そう割り切って商人に借金する方法もあるが、前世から借金は大嫌いだ。
借りるくらいなら吉良領を襲って略奪した方が良い。
だが今は、余計ない争いを起こす訳にはいかなかった。
海賊大将になると決めたから、舟を奪うまでは敵を警戒させたくない。
鳥羽川周辺は大浜城からかなり離れていて、対峙している西条吉良家ではなく東条吉良家の城だが、油断して舟を奪い損ねたら次の機会がないかもしれない。
「三郎様、自前で足軽を雇いたいから魚を買ってください」
俺は信長に魚を売る事にした。
唐に高く売れる物は津島商人に売るが、そうでない魚は信長に売りつける。
信長も、国境の城には少しでも多くの兵が必要なのは分かっている。
これまで商人から買っていた魚を俺から買うだけで、兵力が増えるのだ。
ちゃんと理由を話せば、俺から魚を買ってくれると思っていた。
思っていた通り魚を買ってくれるようになった。
だがただ買うのではなく、俺から買った魚に利をつけて家臣に売りつけた。
信長は俺よりも銭に厳しいようだ。
1日6文の銭があれば6合の玄米が買えて、足軽を1人雇える。
足軽を束ねる組頭を新たに召し抱えるならそれなりの扶持を与えなといけないが、俺の足軽なら荒子譜代の連中に指揮させればいい。
「大浜で獲れた魚を那古野城などで売る」
鰯2匹:1文
大あじ:2文
鰹 :40文
若魚子:4文(ブリの幼魚)
いなだ:10文(ブリの手前、関西ではハマチ)
鯛 :20文(20cm)
鯛 :30文(30cm)
鯛 :60文(50cm)
最初は漁の仕方が分からず、あまり魚が獲れなかった。
魚介類を信長に売りつけた、なけなしの銭で足軽を集めた。
ふと子供の頃に読んだマンガを思い出して、それを試してみた。
沖にでた小舟に海面を叩かせて、網や浜に魚を追い込んだ。
網の大きさや数に限りがあるので、砂浜に入り江を作って魚を追い込んだ。
1日中何度も追い込み漁をやった。
夜ケ浦と油ケ淵の両方で何度も何度も追い込み漁をやった!
高額で買い取ってくれる大きな魚は、数を獲るのが難しい。
だがイワシの群れだと、多ければ数十億、少ない群でも数万匹がいる。
その内の1割でも1分でも砂浜に追い込めれば、莫大な銭になる!
びっくりするくらい多くのイワシが獲れた!
砂浜に入り江を造ったのが良かったのか、10万匹以上のイワシが獲れた!
大きくて脂が乗っているイワシ優先して売ったが、全部は売れなかった。
信長だけでなく、伝手の有る国人地侍領民の全てに売って回ったが、全てのイワシを売る事はできなかった。
売れなかったイワシは一夜干しにした。
雨が降った時の為に、漁が上手く行かなかった時の為に、一夜干しにした。
新鮮なイワシも美味かったが、一夜干しも美味かった!
ただ、追い込み漁は思っていた以上にたくさんの魚が獲れた。
雨の日で漁ができなくても、有り余る一夜干しは売り切れなかった。
余りにもたくさんのイワシが獲れるので、腐らせるのが問題になった。
「一夜干しが日持ちしないのなら、完全に干しきってしまえ。
冬で干しきれないのなら、焼いて焼干しにしてしまえ!」
そうなのだ、山間部で新鮮な魚が手に入らない地域の人は焼干しした魚を食べる。
焼干しした魚を買って食べていたのは、俺自身が実体験している。
俺の住む地域だと、キスの焼干しとカツオの生節が良く食べられていた。
ここでも勉強不足を反省する事になった。
本枯れ鰹節の作り方を覚えていたら、大浜の特産品にできたのだ!
だが、反省ばかりしていても何にもならない。
反省している時間があったら何かでいる事がないか考えるのだ!
「次右衛門、魚の長持ちさせる方法が無いか調べてくれ。
魚を田畑の肥料にする方法があると聞いた事がある、それも調べてくれ」
俺は1番頼りにしている奥村次右衛門に聞いてみた。
「分かりました、荒子の大殿に聞いてみます。
私達では調べられる事に限りがありますが、大殿なら伝手が多くあります」
「そうだな、義祖父殿を頼るのが1番だな」
毎日大量の取れる魚を長持ちさせる方法、腐らして無駄にしない方法は、ひとまずこれで考えるのを止める。
なんと、1日で12貫文もの魚が売れた!
その12貫文を使って、尾張と三河から集められるだけ足軽を集めて、鳥羽川の河口にある湊を襲う準備した。
夜も漁をするようにして、襲撃日の夜に沖に出ていても、油ケ淵の向かいにいる吉良家の連中に疑われないようにした。
信長に貸し与えられた足軽は大浜城に残して西条吉良家と松平家の奇襲に備えた。
足軽達の指揮は、甲賀衆以外の同心徒士侍に任せた。
徒士侍だけでは不安だったので、荒子の義祖父を頼った。
義祖父は喜んで大浜城の留守を預かってくれた。
お陰で安心して鳥羽川の湊を襲う事ができた。
29艘の小舟は順調に夜の三河沖を東に進んだ。
誰にも見つからずに鳥羽川の河口沖に辿り着いた。
小舟を安全に航海させるには、1艘に5人前後しか乗せられなかった。
総人数150人で湊を襲い舟と網を奪わないといけない。
普通なら不可能なのだが、事前に滝川一益と甲賀衆が侵入してくれていた。
激しい戦になる事を覚悟していた。
いや、半ば期待していたのだが、全く気付かれる事無く舟と網を盗めた。
喉から手が出るほど欲しかった、戦船を手に入れる事ができた!
「前田水軍」
小早船 : 1艘(32丁櫓)
小早船 : 1艘(26丁櫓)
優良小舟: 6艘(10丁櫓)
優良小舟:19艘(1丁櫓)
鈍重小舟:29艘(1丁櫓)
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