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第2章

第37話:参議院議員選挙と自爆テロ

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 腹立たしい事に、悪い予想は的中した。
 別府駐屯地に戻ろうとした車列が攻撃された。
 また数多くの殉職者がでてしまった。

 テレビ局は、某国工作員の連続攻撃に、激しい非難の放送を繰り返した。
 某国が関与を否定したのは予想通りだった。
 冤罪を被せようとしていると、逆に非難してきたのも予想通りだった。

 首相には、リョクリュウがAIで合成した脅し動画を送った。
 首相の座を引き下ろされるのが嫌だったのだろう、弱腰な上に某国から賄賂を受けっていると噂のある首相が、緊急事態の布告をした。

 更に防衛出動と治安出動を同時に命じた。
 海上自衛隊は国境を守ろうと、臨戦態勢で次々と出港した。
 航空自衛隊は、領空を侵犯する者は警告なしに撃墜すると宣言して出撃した。

 陸上自衛隊は、某国の大使館と領事館を包囲しただけでなく、工作員がアジトにしている所と、反社の事務所を襲撃した。

 抵抗した者は容赦なく射殺した、自動小銃で攻撃してきたのだから当然だ。
 それに、宣戦布告もなく攻撃され、同じ釜の飯を食って苦しい訓練で共に汗を流した仲間を虐殺されたのだ、激怒するのは当然だ。

 俺は首相から玖珠駐屯地に閉じ籠っていいるように言われたが、臨時国会が召集されたのに、逃げ隠れしてはいられない。

 大政党の代表として、玖珠駐屯地の司令官に話して、東京まで送ってもらった。
 陸上自衛隊のヘリコプターや航空自衛隊の輸送機で移動する提案をされたが、山本五十六閣下が撃墜された失態を例に出して、車列で送ってくれるように頼んだ。

 開戦も辞さない覚悟の自衛隊が出撃したことで、傍若無人な某国にも日本の本気が伝わったのだろう。

 工作員のアジトが次々と摘発され、某国国籍の工作員だけでなく、日本に帰化した工作員まで次々と逮捕されたのも大きかったのだろう。

 某国は、今回の不幸な事件が国内の反日団体が勝手にやった事だと発表した。
 スケープゴートに、何百人もの民間人を逮捕した。
 指導者に逆らう少数民族を冤罪で逮捕する所が某国らしい。

 腹立たしい事に、実際に命じた政治家と軍人は1人も含まれていなかった。
 某国がどのような政治工作をしてきても関係ない。
 経済的な損失など知った事ではない、某国との国交断絶は何を犠牲にしても行う。

 我が国はA国の属国でしかないから、A国に強く命じられたら従うしかないが、内々の命令では従わない、表立って命じられない限り某国とは国交断絶する。

 俺と我が党の断固たる姿勢は、国民の圧倒的支持を受けた。
 某国の思想を妄信する一部の連中からは蛇蝎のように嫌われたが、今の流れは某国との対決だった。

 多くの自衛官と警察官が殉職したのだから、国民の怒りは当然なのだが、哀しい事に、彼らの殉職よりも犬達の死の方が国民受けした。

 主人である俺を守ろうと、多くの犬が某国工作員や反社構成員と戦い死んでいったことが、自衛官と警察官の殉職よりも国民を激怒させた。

 東京に戻った俺は、防衛省市ヶ谷庁舎に寝泊まりする事になった。
 防衛省市ヶ谷庁舎から国会議事堂に通う事になった。

 自衛隊の指揮命令中枢である中央指揮所が設置されているので、最悪の場合に備えるには防衛省市ヶ谷庁舎が最適だった。

 防衛省市ヶ谷庁舎と国会議事堂との往復は、陸上自衛隊の東部方面警務隊と警視庁のセキュリティポリスが共同して行ってくれた。

 某国との開戦も辞さない激しい交渉をしていても、参議院議員選挙は行われる。
 衆議院議員選挙なら、緊急時の対応ができなくなるので、某国と開戦の恐れがある時期には行えない。

 だが半数しか改選されない参議院議員選挙だと、内閣総理大臣が変わる事も内閣が機能不全になる事もないので、実施された。

 我が党に圧倒的な人気がある状態での選挙は、政権与党第一党も野党もやりたくなかったのだが、ここで選挙の延期などしたら、それこそ全国民を敵に回す。

 参議院議員選挙の結果は我が党の圧勝だった。

 1人区の32選挙区で全勝の32人当選。
 2人区の4選挙区で1人ずつ当選して4議席確保。
 3人区の4選挙区で2人ずつ当選して8議席確保。
 4人区の4選挙区で2人ずつ当選して8議席確保。
 6人区の1選挙区で3人が当選して3議席確保。
 選挙区だけで55議席を確保した。

 比例代表を選ぶ選挙では、実に80%の人が我が党に投票してくれた。
 比例単独の候補者を50人用意していたので、他党に議席を奪われる事もなく、40議席を確保する事ができた。

 選挙区と比例で、実に95議席も確保したのだ。
 半数改選なので、参議院の過半数を確保する事はできなかったが、国民の意思が我が党にある事は明らかだった。

 我が党が参議院の大坂移転、旧宮家の皇族復帰、宮家の京都御所常駐、IR導入を公約としていたので、惨敗した政権与党第一党と野党は従うしかなかった。

 某国の工作員によるテロ事件から開催されている臨時国会で、参議院の大坂移転、旧宮家の皇族復帰、宮家の京都御所常駐が可決された。

 参議院の大坂移転は、副都国会議事堂が完成しなければ移転できないが、2025年に行われた大阪・関西万国博覧会の会場だった舞洲跡地に、IRと一緒に建設する予定だ。

 旧宮家の皇族復帰は強制ではないので、賛同してくださった旧宮家だけ即日皇族に復帰して頂いた。

 各国の王族や首長を招いた大々的な儀式は後日行うとして、某国が皇族に対するテロを行う可能性もあるので、即日復帰していただいた。

 お住まいは京都御所、京都大宮御所、桂離宮、修学院離宮を御使いいただく事になったが、現代に合わせた改築を行う事を約束した。

 全てが順調だった、順調過ぎるくらい順調だった。
 油断していない心算だったが、油断してしまっていたのだろう。

 国会が閉会したら、直ぐに大分に戻るべきだった。
 リョクリュウのいる大分に戻るのが1番安全だったのだ。

 それなのに、防衛省の将官達に頼まれて、市ヶ谷に残ってしまった。
 横須賀で行われる観艦式に行ってしまった。
 陸上自衛隊と海上自衛隊が、合同で護ってくれるというので、油断してしまった。

 調子に乗って、1番頼りになる護衛犬の数を減らしてしまった。
 周辺の警戒を、自衛隊に委ねてしまった。

 ただ、そのお陰で自爆テロに巻き込まれる護衛犬が少なかったのは幸いだった。
 全護衛犬が側にいてくれたとしても、自爆テロを防ぐ事はできなかっただろう。
 
 高性能爆弾を腹に巻いて自爆テロを起こしたのは、事も有ろうに海上自衛隊の将官だったのだから、身体チェックも何もあったものではない。

 俺が即死を免れたのは、とっさにセキュリティポリスが盾になってくれたからだ。
 また優秀な警察官を殉職させてしまった。

 今回は自衛隊の将官による自爆テロだから、裏に某国がいたとしても、直接非難する事はできない。

 まだしぶとく活動している、某国から資金提供を受けているマスゴミの残党が、極右の俺だから自衛隊の将官に狙われたのだと、鬼の首を取ったよう騒ぐだろう。
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