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第2章

第33話:生体販売禁止

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 リョクリュウが鍛えてくれた護衛犬は、完璧な仕事をしてくれた。
 襲撃してきた反社の手先の腕を噛み砕き、喉を咬み千切ってくれた。
 警察犬訓練士の中にはけがした人もいたが、死者は出さなかった。

 マスゴミが力を持っていたら、俺を反社に殺させるようにしただろう。
 犯人を咬み殺した犬を叩いて、護衛犬を使えなくしただろう。

 だが今のマスゴミには力がなく、ネット民が主人を守った護衛犬を絶賛してくれるので、処分しろという極少数の意見は圧殺される。

 ただ、護衛犬は反社の銃撃など恐れなかったが、善良な警察犬訓練士志望者が、反社に銃撃されて平気でいられるはずがない。
 恐怖の余り辞職を申し出たので、黙って受理した。

 他の役目に就ける方法もあるが、相手は極悪非道な反社だ。
 俺の側にいない、党の役職員や家族を狙う可能性もある。
 他の役職に就けて九州に戻したとしても、そこで殺される可能性もあるのだ。

 仕方がないので、改めの護衛犬を扱う人間を募集した。
 反社から狙われる仕事だと知った上で応募する者を探した。
 上手く護衛犬を扱えなくてもいい、護衛犬の邪魔さえしなければ良い。

 応募してくれたのは、元自衛官と元警察官だけだった。
 元警察官は、反社と通じている可能性があるので、無条件で不採用とした。

 天下り先のパチンコ企業が反社の舎弟企業ばかりなのだから、当然だ。
 今回もパチンコ企業の社長を始めとした多くの役員が逮捕されているのだ。

 元自衛官を護衛犬のパートナーに選ぶしかないのだが、前歴を調べて反社と関係が無いか調べなければならない。

 直ぐには選べないので、人手が足らない間は警視庁から人手を借りた。
 1度襲われてからセキュリティポリスの人数が増えたが、自動小銃で武装した10人以上の襲撃者がいるのだ、少々の増員で人手が足りるはずがない。

 何より、護衛犬がいなかったら、セキュリティポリスも殺されていた。
 彼らだって死にたい訳ではない、護衛犬を使いこなす事は生死にかかわる。

 武装した軍人が相手でも、命懸けで主人を護る犬がいるのなら、利用したいと思うのは当然の事だ。

 警視庁は、セキュリティポリス以外の警察官を護衛犬のパートナーに送ってきた。
 多くが現役機動隊員で、警察官の中でも猛者と呼べる者達だった。

 彼らは俺のマイクロバスに乗って移動先に先行し、護衛犬達を活用する。
 彼らが国会議事堂や議員会館の安全を確かめてから、俺は車を降りる。

 当然事だが、反社の襲撃は1度では終わらなかった。
 何度も何度も繰り返して襲って来た。

 携帯式対戦車ロケット弾発射器、俗にバズーカと呼ばれる武器を使って、遠距離から俺を殺そうとしたが、警察犬を使って周辺を警備してくれていた警官が発見してくれたので、事なきを得た。

 これ以降、俺を送り迎えする防弾車両が変わった。
 これまでは、サミットなどで外国に要人に使う旧型のBMW7シリーズを使っていたのだが、自衛隊が96式装輪装甲車3台を使って送り迎えしてくれる事になった。

 マスゴミが力を持っていたら、とんでもないバッシングの嵐になっていただろうが、今では見る影もないくらい力を失っている。

 それどころか、ネットを中心に韓国マフィア化した反社に対する批判が盛り上がり、壊滅政策を求める署名運動にまで発展している。

 野党の中には、韓国マフィアを残そうとする組織もあるが、これまでは陰から助けてくれていた与党第一党内の協力者が、全員除名されて議員ではなくなっている。

 反社に協力していた、特定の思想に凝り固まった野党は、同じ思想に凝り固まった同志マスゴミの協力がなくなり、逆にネット民の執拗な調査により、これまでの犯罪を暴かれて家から出られなくなった。

 自衛隊が96式装輪装甲車3台を使って送り迎えしてくれるようになったが、それでも反社の襲撃は止むことなく続いた。

 警察の威信がかかっているからか、ローラー作戦で周辺に潜む反社の刺客を摘発してくれた。

 再び携帯式対戦車ロケット弾発射器を持っていた者が逮捕された。
 重機関銃で96式装輪装甲車の装甲を撃ち抜こうとする襲撃者もいたが、護衛犬が見つけて咬み殺してくれた。

 96式装輪装甲車に送り迎えされる俺を殺すには、携帯式対戦車ロケット弾発射器や重機関銃以外だと、擲弾発射器で対戦車擲弾を発射するしかない。
 大きな武器を持ち歩くので、どうしても目立つのだ。

 反社は備蓄してあった元折れ式、回転弾倉式、小銃装着式の擲弾発射器を襲撃者に持たせて、何度も襲って来た。

 反社の執拗な襲撃に、首相を始めとした全国会議員が恐怖した。
 今はまだ、国会議事堂と議員会館の往復時にしか襲撃されないが、このままでは国会議事堂や議員会館が襲撃され、自分達が巻き込まれるかもしれないと恐怖した。

 早急に国会を終わらせて、俺と離れて安全を確保したいと思ったのだろう。
 俺が提出した議案は全て最短で可決された。

 質問する者すら現れず、ろくに審議もされず、原案のまま可決された。
 俺はその状況を利用して、実現したい政策を全部提出した。
 
 俺の個人的な考えで提出した議案ではなく、党の目標として約束した議案もいくつかあるが、今回可決されたのは動物愛護に関係する議案がとても多かった。

 最も話題になったのが、ペットショップなどで生体販売を禁止する法律と、動物虐待を禁止する法律だった。

 違反した者は、これまでの常識では考えられないくらい厳しい罰を受ける。
 普通なら民業圧迫を理由に絶対に可決されない法律だが、今回は違った。
 ペットショップやブリーダーに反社の構成員や準構成員が数多くいたのだ。

 動物を劣悪な環境に閉じ込め、子供産む道具として扱う。
 子供が産めなくなったら捨てるから、保健所が税金を使って処分するしかない。
 そのような行為をしている反社構成員ブリーダーが数多くいたのだ。

 そんなブリーダーから動物を仕入れて販売する、反社構成員が経営するペットショップが多い事も、一連の捜査で明らかになっていたのだ。

 更に反社構成員が経営するペットショップが、ワシントン条約で売買が禁止されている絶滅危惧種を密輸して、資金源としている事まで明らかになっていた。

 もっと腹立たしかったのは、反社が経営する風俗店のホストやキャパ嬢が、複数のお客さんに反社ペットショプの動物をねだり買ってもらうのだ。

 複数のお客さんが同じ動物を買わされるのだ。
 自分が買ってやったと思っている動物が、実は数十人もの客が買っているのだ。
 しかも適当な頃合で死んだことにして、遠方の反社ペットショップに移すのだ。

 余りにも悪質な内容と、思い当たる事のある客たちが次々と警察に相談した事で、捜査がペットショップから多くに風俗店に広まった。

 反社撲滅作戦の一環として、風俗店にも徹底した捜査が行われた。
 警察や検察に加えて、国税局査察部も地域の税務署と連携して強制捜査に入った。

 その余波を受けたのは、反社以外が経営を行っていたペットショップと風俗店だったが、国民から圧倒的な支持を受けた撲滅運動には逆らえなかった。

 動物は、厳しい審査を受けて許可されたブリーダーからしか買えなくなった。
 ペットショップにいた動物は、買い手がつかない場合は公営の動物園か保健所で保護され、厳しい審査に合格した人に引き渡される事になった。
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