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第2章

第31話:参議院議員候補者

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 AIで合成した動画で俺に成り代わったリョクリュウが中心となって、党3局のポスドクと研修生とボランティアが、党の目標を作ってくれていた。

 分厚く分かり難いマニュフェストも作ってくれているが、選挙に勝つための分かりやすくて確実に実現できる、目標も作ってくれていた。

 俺は猟犬を率いて全国の鳥獣被害地域を巡った。
 現地の国会議員、都道府県会議員、市町村会議員が開いてくれる歓迎会に参加して記念写真を取り、政治資金集めにも協力した。

 前回の選挙に出て落選した候補者や、新人として立候補したいと名乗り出た人の開いてくれる歓迎会にも参加して、人柄を確認して回った。

 次の衆議院選挙はもちろん、同時に行われる統一地方選挙で選ばれる、都道府県や市区町村の首長、都道府県会議員や市町村会議員の候補者を選んだ。

 特に都道府県や市区町村の首長候補を誰にするかは重要だった。
 今回は全ての首長選挙に候補者を立てる予定だった。
 ある程度の数の首長を、我が党から当選させたかった。

 ただ、確実に勝てる候補を選ぶのか、党の代表として相応しい人間を選ぶのか、俺自身に迷いがあり、党員にも多くの意見があった。

 現実主義の党員もいれば、理想主義の党員もいて、意見がまとまらない状態が続いていたが、選挙の1年前までには決めなくはならない。

 だが次の統一地方選までは3年以上もあり、無理に決めてしまうよりは、時間をかけて話し合う方が良いと、リョクリュウと考えが一致した。

 ただ、参議院議員選挙までは半年となっていたので、その候補者は早急に選ばなければならなかった。

 任期6年で3年ごとに半数が改選される参議院議員選挙では、選挙区で74議席と比例代表50議席が争われる。

 この選挙に、前回の統一地方選挙で当選した、都道府県や市区町村の首長、都道府県会議員、市町村会議員が立候補したら、党は首長と議員の席を失う。

 辞職した議員の補欠選挙で勝っても負けても、任期を全うしなかったという道義的な責任が問われることになり、候補者も党も傷を負う事になる。

 そこで、党としては都道府県や市区町村の首長、都道府県会議員、市町村会議員を辞職しての参議院議員選挙立候補を禁じた。

 他党の都道府県会議員、市町村会議員を辞職して我が党から立候補したいという者も多数いたが、認めなかった。

 我が党員の辞職を道義的な責任から認めなかったのに、お世話になった党に後ろ足で砂をかけるような連中を候補者にするわけがない。

 社会人のボランティア政策スタッフとして、党や国会議員の政策立案に協力してくれるようになった、有能な教授や准教授を候補者にはできない。
 国公立の教授や准教授、常勤講師や常勤助手は兼業を禁止されているのだ。

 職を辞して立候補してくれるのなら全力で支援するが、研究が大好きな教授や准教授が参議院議員選挙に出るはずもない。

 かといって、選挙に有利だからと言って、タレントを候補者に立てる気もない。
 最初の選挙では、マスゴミを叩くのが最優先で、その為に必要な力を得ようと、選挙に勝つ事だけを考えていた。

 だが今は、理想を実現するために選挙に勝つのだ。
 後で毒が回るような候補者で勝っても意味がない。
 いや、意味がないどころか害になる。

 リョクリュウと相談を重ねて、臨時講師で糊口をしのいでいたポスドク、党の3局に雇った優秀な人材を候補者にした。

 彼らなら、万が一落選しても党の職員に戻れば良いだけだ。
 一度落選したとしても、何度でも出馬できる。
 
 出馬が決まったら、全国の選挙区から出馬できるように、転居してもらわなければならないが、中には大学での研究を続けたくて辞退する者もいた。

 そんな人たちは、次の衆議院議員選挙か統一地方選挙で出馬してもらう事にして、候補者がいない選挙区は、その地方にある大学院のポスドクをスカウトした。

 日本中のどの選挙区にも、我が党の国会議員や都道府県会議員、市町村会議員がいるので、彼らの案内で大学に行って交渉した。

 俺にまともな交渉はできないの、実際の交渉は案内役の地元議員がやってくれる。
 俺は笑顔を振りまいて握手するだけだ。

 良くも悪くも俺の名前と顔は日本中に売れている。
 俺の顔と名前を知らない日本人はいない。

 国が派遣してくれるセキュリティポリスに護られないと、何時誰に襲われるか分からいくらい、多方面に恨みを買っている。

 特にマスゴミ関係者やその家族からは、まさに親の仇、子供の仇として狙われているので、護衛犬と一緒でなければ何所にも行けない。

 党員となった警察犬訓練士を目指す人たちが、リョクリュウが訓練した護衛犬を率いて周囲にいてくれないと、何時襲撃されるか分からない。

 警備予定を組のはといぇも面倒だったが、実際に訪問出来たら後は楽だった。
 九州を中心とした大学大学院の教授や准教授が、日本中の大学大学院に俺と党を推薦してくれたので、交渉は楽だった。

 教授や准教授の中には、親しい教授や准教授に直接交渉して、有能だが大学で常勤職を得られていない、ポスドクを紹介してくれる者がいた。

 紹介してもらったポスドクには、リョクリュウがAIで合成した俺の動画を送って心を掴み、党の職員に採用した。

 採用したうえ、仕事はリモートワークにして候補者がいない選挙区に転居させた。
 その地域の国会議員、都道府県会議員、市町村会議員について選挙区を周らせた。

 どぶ板選挙ではないが、国会議員、都道府県会議員、市町村会議員が築いた後援会員の支援が得られるように、地元の手伝いをさせた。

 我が党の定番になっている保健所と動物愛護センター周りをさせて、保護犬や保護猫を引き取らせて、動物好きをアピールさせた。

 鳥獣被害を受けている山間部を周らせて、猟友会と一緒に加害獣退治をする動画を撮って投稿させた。

 そんな参議院議員選挙の候補者を支援するため、 俺もできるだけ狩りに同行して、仲良く一緒に加害獣駆除をしている動画を撮って投稿した。

 こういう地道な活動を重ねるだけでなく、実現可能な大きな目標も発表して、参議院議員選挙までに実現させる事にした。

 その上に、支援してくれているネット民が大きな協力をしてくれた。
 有力な対抗候補になりそうな、現役参議院議員の犯罪や疑惑を調べ上げて、ネットにさらしてくれたのだ。

 これにより政権与党第一党や野党の現役参議院議員は、激しい批判が渦巻く逆風の中で出馬するしかなかった。
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