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第2章

第30話:補欠選挙と政治団体

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「廣さんが倒れた」

 信兄貴から連絡があって、党の結成からずっと助けてくれてきた、廣おじさんが倒れた事を知った。

 歓迎会と狩りの予定を取り消して、直ぐに大阪に戻りたかったが、連絡をくれた信兄貴が、戻って来るなと強く言った。

 政治家になった以上、約束を守れと言われてしまった。
 以前のような、何時でも辞める気でいたのなら見舞いを優先できたが、政治家を続ける気になった以上、支援者との約束は簡単に破れない。

 泣く泣く宇佐市に残って約束を守る事にした。
 ただ、信兄貴と廣おじさんに週休三日をお願いしてしばらくたっていた。
 30日後にはなるが、丸1日休みの日がある。

 廣おじさんが重病でなかったら、会いに行った時に退院祝い、快気祝いを渡す事になってしまうが、その方が良い。

 ただ、総務会長の廣おじさんが倒れた事で、見難い後継者争いが始まっていた。
 俺に知られないように、陰で争っている心算なのだろうが、側にいる者がネットにリークするので直ぐ耳に入った。

 俺だけなら見逃していたかもしれないが、リョクリュウがネットを監視してくれているので、絶対に見逃さない。

 ここで俺が怒りに任せて正義感に憑りつかれた批判をしたら、欲だけで集まっている党は空中分解していただろう。

 それでなくても、党員は欲にまみれて独自で動いている。
 政権与党第一党も、党員を引き抜こうと暗躍している。
 野党第一党も、党員を引き抜こうと暗躍しているのだ。

 だが、リョクリュウが俺に成り代わって文面を考えてくれる。
 追い詰めすぎることなく、利もちらつかせて、上手に言う事を聞かせる。

 何時空中分解するか分からない党内の役職よりも、政権与党第一党への移籍も考えられる、副大臣や大臣政務官の役職を欲しがるように誘導する。

 リョクリュウのお陰で、総務会長の廣おじさんは、交代ではなく休養となり、総務会長代行も俺が信頼する人になった。

 長年経理会社の社長をしていた親父の従弟が数週間前に現役を退いたので、党に入って総務会長代行を務めてくれるように、リョクリュウがお願いしてくれた。

 リョクリュウは、いつの間にかAIによる合成映像制作の達人になっていたようで、俺の映像を合成制作して徳兄貴を説得してくれていた。

 いや、俺が信頼している数少ない親戚、元教師の孝兄貴も説得して、政調会長代理にしてくれていた。

 リョクリュウの政治力は剛腕と言うしかない。
 九州を中心とした多くの大学と協力を体制を築いた事で、有能な学生インターンシップ研修生と社会人のボランティア政策スタッフが党に入った。

 彼らを事務局、総務局、政策調整局に入れるという理由で、無能な政治家から実権を取り上げると同時に、俺の信頼する者に実権を与えたのだ。

 生活が苦しかった優秀なポスドクを党の職員に採用して、大学の臨時講師と兼業できるようにした。

 党の職員と言っても、ネットやサーバーを駆使してリモートで仕事ができるように、リョクリュウが色々とやってくれていた。

 色々としか言えないのは、俺では具体的にどうやってくれたか分からないからだが、九州から北海道までのどこに居ようと、党職員として働けるようにした。

 事務局:事務長の信兄貴以下ポスドク10人
 総務局:総務長の廣おじさん、総務会長代行の徳兄貴以下ポスドク10人。
 政策調整局:政調会長代理の孝兄貴以下ポスドク20人。

 給料を渡すポスドク以外にも、現役の大学教授、准教授、講師、助教、助手、大学院生、大学生が学生インターンシップ研修生や社会人のボランティア政策スタッフとして3局の仕事をしてくれている。

 権力欲だけの無能な政治家は実務を取り上げられ、窓際になる。
 議員の立場を笠にきて圧力をかけたりしたら、俺の怒りに触れて党から除名され、次の選挙では対抗候補を立てられて落選するのが明らかだから、小さくなっている。

 幸いな事に、廣おじさんは俺が大阪に戻れる30日をまたずに退院した。
 俺が退院祝いを持って大阪に戻った時には、少し痩せてはいたがとても元気になっていた。

 リョクリュウがAIで合成した俺の動画とメールで党員を操ってくれたので、党内の結束が著しく高まった。

 俺を追い落として党を乗っ取ろうとしていた国会議員は、裏で動いていた政権与党第一党の実力者と共にネットにさらされた。

 野党第一党と組んで俺を追い落として党を乗っ取り、野党と連立政権を築こうとしていた奴もネットにさらされた。

 両名と政権与党第一党の黒幕と野党第一党の黒幕は、辞職して選挙で禊を行わないとどうにもならないくらい、ネットで叩かれた。

 政権与党第一党も野党第一党も、俺達に協力して黒幕を辞職に追い込んでくれた。
 政権与党第一党も野党第一党も、マスゴミを叩き潰して莫大な電波使用料を徴収し、国民から圧倒的な支持を得るようになった俺を敵に回せなかったのだ。

 辞職した4つの議席を巡って補欠選挙が行われたが、4選挙区とも我が党から立候補した人がダブルスコアをつけて圧勝した。
 これで衆議院は152議席となった。

 急な選挙だったので、ポスドクや大学院生を落下傘候補にできなかったので、選挙区内に住んでいる、前回の選挙で落選した者を立候補させた。
 県会議員選挙や市会議員選挙で落選した者が圧勝したのだから笑える。

 現役の都道府県会議員や市町村会議員には、もの凄い励みになった。
 何かあったら国会議員に成れる現実が目の前に現れたのだ。
 問題は候補者選んでもらえるか、選んでもらえないかだけだった。

 今回も複数の候補者がいた場合は、党への寄付金額で候補者が決められた。
 次の選挙で国会議員へのクラスアップを狙う者達は、俺に気に入られようと頑張ったし、来年に迫った参議院議員選挙に向けて、選挙資金集めに奔走した。

 だが、違法な方法や道義的に許されない方法で資金集めはできない。
 そんな事をしたら、次の選挙で候補者に選ばれなくなる。
 立候補したい者は掃いて捨てるほどいるのだ。次は屑を排除する。

 今は他党に所属している、あるていどの選挙地盤をもつ都道府県会議員や市町村会議員も、党内に現役国会議員がいたら立候補できない。

 我が党に移る事で国会議員になれるのなら平気で移籍する。
 選挙資金も、他党から都道府県会議員や市町村会議員に当選しているなら、ある程度は持っている。

 そんな連中が何十人も俺に会いに来るのだから、次の選挙で国会議員を目指している、我が党の都道府県会議員や市町村会議員が焦るのもしかたがない。

 追い詰められた、資金力の乏しい我が党の都道府県会議員や市町村会議員は、党3局に頭を下げて、合法的に政治資金を集める方法を相談した。

 3局は相談して、政治家1人1人に政治団体を作る事を指導した。
 政治資金を集めるための、特定パーティー開催団体を設立させた。

 政策の主義主張を書いた電子書籍の販売収入、政治資金を集めるために作ったアカウントの動画収入を管理するための、資金管理団体を設立させた。

 国会議員はもちろん、都道府県会議員と市町村会議員も、主となる選挙事務所のある都道府県の選挙管理委員会に届けてして、特定パーティー開催団体を設立した。
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