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第2章

第29話:新たな目標

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「キヨシ、マスゴミを打倒してテレビの放映権は入札制になった。
 電波使用料が携帯電話会社の支払う金額と同じになるから、大幅な税収増になる。
 この成果を強調するだけで有言実行の党だと思われる。
 だが、次の目標がないと、党として活動を続ける理由がなくなる。
 何か新しい目標を掲げるのか?
 それとも、最初に言っていたように、これで党を解散するのか?」

「最初はテレビの放映権を入札制にできたら辞める心算だった。
 入札制にできなくても。携帯会社と同じ使用料にできれば十分だと思っていた。
 そもそもマスゴミに勝てるとは思っていなかった。
 殺される覚悟はしていたが、あれからは、内心ではリョクリュウが助けてくれると思っていたから、心が壊れて終わりになると思っていた」

「ふん、キヨシを殺させはしないし、心を壊させもしない。
 キヨシを無理矢理辞めさせるか、マスゴミの連中を皆殺しにしてやった。
 もうそんな必要は無くなったが、今の言い方だと、続けるのだな?」

「ああ、保護犬を引き取って猟犬にする事で鳥獣被害を減らせたので、他にもやれることがあるのではないかと思うようになった。
 大学や大学院が政策の立案に参加してくれるようになり、想像もしていなかったアイデアが出て来るような気がしてきた。
 何より政治が面白くなってきた」

「面白くなってきたと言うなら、我も手伝ってやる。
 だが、やるなら次の選挙も勝たねばならぬ。
 次の選挙で勝つためには、新たな目標が必要だ、それはどうする?」

「少子化や為替など、何とかしなければいけない問題は山のようにある。
 だが、やれるかどうかも分からない目標では、結果を出せない。
 確実に実現できる目標を掲げて、1つずつ実現していくべきだと思う」

「実現できる目標を掲げるのは良い事だ。
 だが、あまりのも簡単で、人々が気にもしていない目標では、意味がないぞ?
 実現させたら人々が喜んでくれる目標でなければ、何の意味もないぞ。
 どのような目標を掲げる気だ?」

「東京の一極集中を改め、地方分権を進める。
 副都を定めて、不要論もある参議院を副都に移動させる。
 臣籍降下した宮家を皇籍に復帰させ、復帰させてから生まれた子供にだけ皇位継承権を与え、関東大震災規模の大地震で東京が壊滅した場合に備えて、京都御所に住んでいただく」

「本当に実現できるのか?」

「できる、賛成してくれる党と連立を組むだけで実現できる。
 今の政権与党が賛成しないのなら、野党と組んで新たな政権を樹立する。
 我が党が協力した党が、政権与党になるのだから、反対はできん」

「今の政権与党第一党が野党と組んだらどうするのだ?
 それでも政権を維持できるであろう?」

「今の首相が、野党に首相の座を明け渡すと思うか?」

「ほう、数の少ない野党に首相の座を譲ると言うのか?」

「俺は首相の座が欲しい訳じゃない、自分の理想を実現したいだけだ。
 そもそも、俺が主要国の大統領や首相と互角に渡り合える訳がない。
 俺が首相になるのは国益に反する。
 まだ野党の腐れ党首が首相になった方がましだ。
 野党の連中は、与党第一党と組んでも首相の座は得られない。
 だが我が党と組めば、確実に首相の座が手に入る」

「その覚悟なら、どのような状況になろうと、必ず政権与党に成れるだろう。
 大概の言い分は通るだろうが、支援者の賛同は得られるのか?
 そもそも次の選挙で勝てる目標なのか?」

「それは俺も気になっている、兄貴とおじさんに相談してみる」

「それは良いが、党員全員にも次の目標を考えさせた方が良い。
 公表しなくてもいいが、キヨシに意見が言えるようにしておけ。
 学生インターンシップ研修生や社会人のボランティア政策スタッフを募集したんだ、採用するかしないかは別にして、献策できるようにしておけ」

「それは良い、もの凄く良い、俺が考えも及ばなかったアイデアがでてくるかもしれない、リョクリュウが俺に成り代わって募集してくれ。
 俺では皆のやる気を引き出す文章を考えられない。
 そもそも、皆の前で堂々と話せない」

「分かった、文面を考えて募集してやる。
 発表もAIで合成動画を創ってやるから、心配しなくていい。
 だがその前に、キヨシの想いを全部聞かせろ。
 キヨシの目標を基に、我が文面を考えてやる」

「それはとても助かる、誤解される文面になるかもしれないと、心配だったんだ」

「キヨシは想いが強いほど過激な文面になるから心配なのだ。
 我が過激にならないように直してやる、想いを吐き出せ」

「さっきも言ったが、心配なのは関東大震災規模の地震が東京を襲う事だ。
 東南海地震で富士山が噴火して、電波障害などを引き起こす事だ。
 あってはならない事だが、某国が東京を核攻撃する事だ。
 東京一極集中だと、それだけで日本が再起不能になってしまう。
 最初から東京壊滅も考慮した政治体制にしておけば、某国も核攻撃をしない。
 するとしても、2ケ所同時壊滅が必要になるから、ハードルがとても高くなる」

「また過激になっているが、まあ、いい、続けろ」

 「官公庁を地方に分散させると言いながら遅々として進まないが、参議院を大阪か京都に移したら、官公庁の分散も早まるだろう。
 これまでも、参議院枠と呼ばれる参議院議員の入閣があったが、通信が発達した今なら、閣僚が東京と地方に分かれていても十分話し合える。
 それに、東京が壊滅した時の為の参議院なら、大臣、副大臣、政務次官の3割は参議院議員から選ばないといけない。
 少なくとも副総理大臣は、参議院議員から選んで常設しなければいけなくなる。
 そうすれば、多くの参議院議員がこの案に賛成するだろう?」

「なるほど、東京から追い払われるのは腹立たしいが、誰か1人が必ず副総理大臣に成れ、閣僚の枠も大幅に増えるのなら、参議院議員の大半がキヨシの案に賛成するかもしれない」

「これは案でしかないのだが、東京に何かあった時の移転参議院なら、各省庁に1人は、参議院から副大臣か大臣政務官を任命しなければいけなくなる。
 単にこれだけなら衆議院議員の反発を受けるが、大臣政務官を2人体制にして、衆議院議員と参議院議員から1人ずつ選ぶようにすれば、賛成してくれるだろう?」

「それが支援者の心を捕らえられるかどうか、人間ではない我には分からん。
 先ずは党員に聞いてみればいい。
 余りにも多くの者が反対するようなら、キヨシの考えが少数意見なのだ。
 支持者の賛同を得られないような少数意見でも、どうしてもキヨシが進めたいというのなら、我だけでも協力してやろう。
 多くの人が望む政策と抱き合わせて実現させればよい。
 多くの人が望む政策は、ネットで投票してもらって、確認すればよい」

「そうだな、1番受けが良さそうなのは動物愛護だが、どの動物をどこまで人の手を加えて助けるかで、意見が分かれてしまう。
 安全なのは、犬と猫までに限定する事だろう。
 犬は成功したから次は猫なのだが、助ける匙加減が難しい」

「それは我が匿名で調べてやる」
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