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第2章

第23話:ボランティア

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 夜遅くにようやく歓迎会を終えてビジネスホテルに向かった。
 ハニートラップかもしれない接待を断れた自分を誇りながら向かった。
 心身ともにヘトヘトに疲れていたので、夢も見ない爆睡だった。

 だが、色々と問題もあったが、昨日の歓迎会はとても有意義だった。
 相談した事の解決方法を教えてもらえたので、歓迎会に出た甲斐があった。

 俺が心配していたのは、東京に行っている間の犬の世話だった。
 補佐と警備をしてくれる党員達に頼む方法もあるが、それでは彼ら彼女らの負担が大き過ぎると思ったのだ。

 歓迎会を開いてくれた人の中に、地域のボランティア活動をしている人がいて、犬のお世話をするボランティアを募集すれば良いだけだと言ってくれたのだ。

 ボランティアとは言っても、純粋な気持ちの人ばかりが集まる訳ではない。
 党員達の支持者が、地区の実利を考えて手伝ってくれるのだろう。
 それでも、お世話してくれる人が確保できるのは助かる。

 俺が気持ちを強く持って、汚職にならないようにすれば良いだけの事だ。
 それに、地域の代表である議員は、地元、選挙区の為に働くのだ。
 地域の要望に応える事は恥でも犯罪でもない。

 朝5時に起きて、朝食ビッフェの時間までネットサーフィンした。
 犬のお世話ボランティアを教えてもらって、閃いた事があった。
 それが実現可能なのか、ネットで調べた。

 選挙権は国会議員選挙、都道府県知事選挙、都道府県会議員選挙、地町村長選挙、市町村会議員選挙の区別なく18歳で与えられる。

 一方被選挙権、立候補する権利は、衆議院議員で満25歳以上、参議院議員で満30歳以上、都道府県知事で満30歳以上、市区町村長で満25歳以上、市区町村議会議員で満25歳以上となっていた。

 高校生や大学生の議員を生み出す事は、法律上無理だった。
 ドイツのように、21歳の市議会議員を生み出す事は不可能だった。
 だが、博士課程に進んでいる大学院生なら、学生議員も不可能ではない。

 それに、25歳未満の高校生や大学生でも、政治に興味を持って学生インターンシップ研修生になるのは良い事ではないか?

 そう思って調べたが、マスゴミの批判を恐れてなのか、高校生をインターンシップ研修生として受け入れている国会議員や政党はなかった。

 誰もやっていないからこそ、やってみる価値があると思った。
 だが今は、勝手な思い込みで失敗すると多くの人に被害が出てしまう。
 事務長の兄貴と総務長のおじさん、党の幹部に相談してみた。

 高校生を含めた学生インターンシップ研修生を党や議員が受け入れる。
 社会人のボランティア政策スタッフを党や議員が受け入れる。

 報酬は交通費だけで、利益供与にならないようにする。
 党の強制ではなく、各議員が採用不採用を決めればいい。

 その日から毎晩歓迎会に出なければならず、とても忙しかった。
 犬のお世話をしてくれるボランティアの確保を最優先に、歓迎会に出席した。
 政治の興味のある学生や社会人のボランティアも募集した。

 九州を中心に、山口県と広島県と島根県までは足を延ばした。
 党員が来てくれという地区には、全て出席するように努力した。
 働きたくない、引き籠もりたいという心の声は捻じ伏せた。

 保健所、動物愛護センターの檻の中に閉じ込められている犬の目をしてしまったから、働きたくない、引き籠もりたいという心の声が小さくなった。

 働きたい訳でも人と交流したい訳でもない。
 見てしまった犬が殺される悪夢にうなされたくないだけだ。
 神経が細いので、気になる事があると必ず悪夢にうなされるのだ。

 歓迎会に出る順番は、事務長の兄貴と総務長のおじさん、党の幹部に決めてもらい、俺の恣意で決められないようにした。
 
 犬の世話をするボランティアがしっかりしたら、全国の党員の所を巡って、歓迎会に出席しなければいけない。

 保健所や動物愛護センターに行って、処分されそうになっている犬を引き取る行為と、犬の世話をしているのが、思っていた以上に評判が良かった。
 歓迎会に来てくれていた人だけでなく、ネット民にも大評判だった。

 政権与党第一党の国会議員や野党の国会議員が、そっくりそのままマネするくらい評判が良かったので、全党員が元祖は俺達だと動いたのだ。

 俺がやるのは、党員が保健所から引き取った犬を引き受ける事だ。
 匂いや遠吠えで、犬を引き取った党員が御近所から非難される前に、苦情の心配のない場所にある、俺の借家に引き取らないといけない。

 夜は歓迎会を巡っていたが、昼は引き取った犬のお世話と、新しい犬を引き取ることに重点を置いた活動をした。

 熊本県は殺処分を嫌っていて、保険所内で1年以上も動物を保護しているので、訪問するのは後回しにした。

 殺処分までの期限を明確にしている佐賀県の犬から助けるようにした。
 佐賀中部保健福祉事務所に、推定年齢2歳の柴犬、中型茶の雌が保護されていた。

 この子は警察犬になれるかもしれないので、 もし保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。

 鳥栖保健福祉事務所に、推定年齢2歳の柴犬、中型茶の雌が保護されていた。
 この子は警察犬になれるかもしれないので、 もし保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。

 次に長崎県で保護されている犬を引き取りに行った。
 県南保健所に、年齢の分からない、ビーグルの血が濃いと思われる、中型黒茶の雄雑種犬が保護されていた。

 警察犬にはなれそうになかったが、引き取る事にした。
 ただ、まだ保護されて2日だったので、もし保護者が現れたら返す事を約束した。

 県北保健所から長崎県動物管理所に移送収容されている犬に、ビーグルの血がとても濃いと思われる、中型茶黒白の雄雑種犬が保護されていた。
 警察犬にはなれるかどうか分からなかったが、引き取る事にした。

 長崎県動物管理所には、生後2カ月くらいの子犬が2頭収容されていた。
 1頭は野犬の子供で、皮膚病を患っているので、引き取るなら治療が必要だった。
 中型犬以上に成長しそうな黒茶の雌で、シェパードの血が流れていそうだった。

 全く人に馴れていなくて、触ることも撫でることも抱え上げることもできるが、
怖がって脱糞おもらしをしてしまうし、食餌も与えられない。

 もう1頭の子犬は、中型犬以上に成長しそうな茶の雄で、和犬の血が濃いように思われた。

 この子は引き取りたいという問い合わせがあるようなので、問い合わせしている人が心変わりした時は、動物管理所の基礎トレーニング終了後、ある程度大きくなってから引き取ると言っておいた。

 多分だが、野犬の子供だけを引き取る事になるだろうが、社会化が済んでから引き取った方が良いと思ったのだ。

 離島である対馬保健所にも、年齢の分からない、和犬の血が濃い、中型茶白の雄雑種犬が保護されていた。

 2カ月間も保護されているので、もう飼い主が引き取りに来るとは思われなかったが、もし保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。
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