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第1章

第11話:訴訟準備

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 移住候補の家は思っていた以上に奇麗で、住み心地が良さそうだった。
 汲み取り便所を覚悟していたが、とてもきれいな水洗便所だった。

 更に紹介文には記載されていなかったが、農作業小屋があった。
 少し古いが、家から少し山に入った場所に農作業小屋が有って、リョクリュウの専用の住居に使えそうだった。

 不動産会社のはからいで、移住候補先の家主さんとネットを通じて色々と話をさせてもらったが、心配していたペットの室内飼育は簡単に許可してもらえた。
 ただし、当たり前の事だが、賃貸の場合は原状回復を約束する事になった。

 移住候補先の区長さんとも話をさせてもらえた。
 農作業についても色々と教えてくださるそうだ。
 ただ、自分では作れないので、農地は誰かに貸したいとお願いした。

 農地の賃料を無料にすると、後で問題になるかもしれない。
 かといって、お金を払ってまで農地を借りたい人もいないそうだ。

 そこで、出来た農作物の何割かを貰えればいいという契約を、1年ごとに更新する事になった。

 人間が食べるのではなく、リョクリュウ用なので、見た目などどうでも良かったので、出荷できないような野菜から順にもらう事になった。

 不動産会社の担当者の方が凄く親切で、人間との付き合い、交渉が苦手な俺はとても助かった。

 担当の人がいてくれる間に、家の中と周囲を携帯で撮影した。
 農作業小屋と、そこに行くまでの敷地内農道も撮影した。

 担当者と別れてから山中を撮影して、リョクリュウが自由に出歩ける森がどんな様子なのか記録した。

 撮影しては直ぐに非公開の内部投稿をして、リョクリュウが移住先の様子を確認できるようにした。

 リョクリュウなら1人でもネットサーフィンできる。
 夜も出歩けない今の状況だと、1日中ネットを見ているはずだ。

 移住候補先の撮影が終わり、地域の主だった人とも顔をつなげたので、生まれ育った地域に帰る事にした。

 帰りも安全を最優先して、休憩と仮眠を頻繁に入れて運転した。
 絶対に交通事故だけは起こさないように、細心の注意を払った。
 余裕をもった予定を組んでいたので、何の問題もなく家に帰りつけた。

「シャ」

 玄関を開けて二階に上がると、リョクリュウが挨拶してくれた。
 モニターから視線を外さずに挨拶するのが、リョクリュウらしかった。
 斜め後ろから観ると、俺が内部投稿した引っ越し候補先の動画だった。

 本当なら直ぐに大好きな小説を読んで書いて投稿したかった。
 だが、その前に、自分がやった事の後始末をしなければいけなかった。
 自殺する場所を探しに行くと投稿した責任をとらなければいけなかった。

 自殺する場所を探しに行って、良い場所が見つかったと投稿した。
 場所は秘密だが、死ぬ気になったらそこに行くと書いて投稿した。
 同時に、非常識な取材を続ける連中を晒した。

 借りたコンパクトカーには、最新式の広角録画付きドライブレコーダーを複数つけてもらっていたので、後をつけ回す腐れ外道の顔がはっきり写っていた。

 後をつけ回した連中が所属している会社、フリーなら取材を依頼したテレビ局、新聞社、雑誌社を特定して欲しいとお願い投稿した。

 留守中の自宅敷地に無許可で入り込み、玄関や勝手口を開けて入り込もうとした連中、格子窓のついた小窓から中を録画しようとしていた連中の顔も晒した。

 腐れ外道共も、自宅や整骨院の外側に設置した防犯カメラには気を付けていたようだが、整骨院内部から外を撮影する防犯カメラには気がつかなかった。

 更に自分家や整骨院に設置した監視カメラだけでなく、向かいに住む家族にも協力してもらった録画映像があった。

 向かいの家の家長は1年年長の幼馴染で、ある程度なら頼みを聞いてもらえる間柄だった。

 道を挟んだ向かい側にある駐車場には、元々防犯カメラが設置されていて、腐れ外道どもの不法侵入を撮影してくれていた。

 東隣奥の家族とは、今は亡き両親が親しくしていた。
 お願いして、自宅に侵入しようとする腐れ外道共を撮影してもらっていた。

 向かいの家の兄貴には自宅正面にある玄関などを撮影した動画をもらい、東隣奥の人には自宅裏にある勝手口などを撮影した動画を証拠としてもらった。

 全ての記録を晒したうえで、不法侵入と集団窃盗未遂で訴えた。
 訴えるにあたり、放映権を独占する巨大企業を相手に勝つためには、巨額の訴訟費用が必要だが、それだけのお金がないと投稿した。

 単に不法侵入と集団窃盗未遂で訴えるのではなく、放映権を悪用する反社企業であり、放映権を独占するのは独占禁止法違反であると投稿した。

 放映権を入札制にするために、政府も訴えたいと投稿した。
 その為の費用を支援して欲しいと投稿した。
 クラウドファンディングで訴訟費用を援助して欲しいと投稿した。

 その日の内に反応があって、応援してくれる人が増え、クラウドファンディング先を教えてくれたのはもちろん、動画が異常にバズり、小説のPVも跳ね上がった。

 直接投げ銭などで資金援助する余裕のない人が、動画を繰り返し再生したり、小説のPVを増やしたりして、訴訟費用の足しにしようとしてくれた。

 翌日になると、九州某県まで俺をつけ回した者はもちろん、不法侵入と窃盗未遂の連中の正体が次々と突き止められ、ネットにさらされた。

 所属する企業名はもちろん、社長や役員の顔と住所、メールアドレスや電話番号までネットにさらされ、とんでもない数の抗議が行われた。

 不法侵入をしようとしたテレビ番組のスポンサーをしていた某自動車会社は、スポンサーを降りるという緊急発表を行った。

 単に降りるだけでなく、犯罪行為を行って企業イメージを著しく損なったテレビ局に対して、損害賠償の訴訟を行うと発表した。

 俺の訴訟に対しても全面的に協力するとして、手に入る証拠は全て提出し、訴訟費用も全て肩代わりすると発表した。

 某自動車会社に追随するように、テレビ番組のスポンサーをしていた全企業が、スポンサーから降りると発表した。

 俺の自宅に不法侵入して窃盗未遂を繰り返したのは、1番組の取材クルーだけではなく、4テレビ局15番組もあった。

 新聞社や雑誌社の記者もいたので、広告を掲載していた企業が、犯罪行為を行って企業イメージを著しく損なったので、損害賠償の訴訟を行うと発表した。

 マスゴミの連中は、赤信号みんなで渡れば怖くない、ではないが、一緒にやればどのような犯罪も摘発されないと思っていたようだ、選民意識も甚だしい。

 テレビ局、新聞社、雑誌社は常套手段で逃げようとした。
 下請けの製作会社や、フリーの記者がやった事で、遺憾だと言って誤魔化そうとしたが、そんな子供だましで、これだけ踏み付けにされて黙っている気はない。

 勝てる可能性は少ないが、テレビ局、新聞社、雑誌社を反社会組織に認定するように訴えると投稿した。

 特に放映権を独占するテレビ局は、その力を使って企業を脅迫し、スポンサー料という体裁でみかじめ料を集めていると訴える投稿をした。

 テレビ局、新聞社、雑誌社が多くの企業を独占禁止法違反で訴えたのと同じように、自分達も独占禁止法違反を改め、放映権を入札すべきだと訴える投稿をした。
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