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本編
犬山城戦
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『田楽城』
翌日早々に義直は出陣し田楽城に向かい、そして北外山城跡に入って修築を始めた。北外山城は元々織田与四郎信安の持城だったが、廃嫡にしようとした長男・信賢に居城の岩倉城から追放されてしまった。その後で信賢も永禄元年(1558年)の浮野の戦いに敗れ、まもなく織田伊勢守家は滅亡したため、信安も尾張に復帰する機会を失ってしまい、その後自然と廃城となっていたのだ。
北外山城に守備と修築の為の兵を残し、同じく廃城になっていた蟹清水砦に入って修築を始めた。
次に、織田伊勢守家滅亡後捨て置かれていた岩倉城に入った。岩倉城は標高10mの低い台地上に築かれた平城で、東西約104・南北169mの規模だが、早くも荒れていたので守備と修築の兵を置く事になった。
義直が岩倉城で休息していると、重吉城の尾藤源内重吉・重房親子が降伏臣従の挨拶にやって来た。その後も近隣の豪族が次々と降伏臣従の挨拶にやって来た。
「義直様、御初に御目にかかります、真清田神社の宮司を務めさせて頂いている、関成重と申します。」
「宮司殿ですか? 一宮城の城主と聞いておりましたが。」
「義直様、成重殿は真清田神社と社領を守る為に、一宮城を築かれ武将として戦われているのです。」
「なるほど、大爺様の話で得心がいきました、ですが今後はどうされるのですか?」
「どうと申されますが、何の事でございましょうか?」
「宮司として真清田神社と社領の保護を求めておられるのか、武将・一宮城の城主として仕える心算か、何方を願っておられるのですか。」
「両方ではいけませんか?」
「それは何故です?」
「実は苅安賀城の浅井信八郎信広殿とは、度々領地の境界を巡って争いがあるのです、宮司としてだけでは、信広殿が功名を重ねたら不利になるのではないかと恐れております。」
「大爺様、そのような事になるのですか?」
「実際に浅井信八郎信広殿が功名を重ねられたら、所領に関しては優遇せねばなりません、それが主君の努めでございます。」
「なるほど、成重殿に心配はもっともなものなのですね。」
「はい、それに大爺様調べた範囲では、成重殿は熱田神宮の大宮司の力を借りてこの地に移り住み、真清田神社の宮司となったと言う事です。散々義直様に盾突いた熱田湊の大将との縁が強いので、武将として働いて忠誠を示さねば、攻め滅ぼされつと思っておられるのでしょう。なあ成重殿。」
「はい、直平殿の申される通りです、忠誠を示さねば後がないと思っております。」
「左様か、ならば尾張を統一する戦の間に忠誠を証明してくれ。」
「はい、必ずや我が武勇と忠誠をご覧いただきます。」
「義直に降伏臣従した国衆」
坂田城・陸田市左衛門
陸田城・陸田市左衛門・知行260貫文
稲島城・木全忠澄
中島城・中島蔵人
苅安賀城・浅井信八郎信広
毛受城・浅井玄蕃
宮後城・安井弥兵衛尉重幸
一宮城・関成重
東西が約50m、南北が約90mの縄張りで。
四方に幅約3・6メートル程の堀をめぐらし土塁でお城の周辺を囲んでいる。
義直は岩、倉城で1日をかけて周辺国衆と会談し人質を受け入れた。国衆の中には信長にも人質を出していた者も多い、だから人質等何の当てにもならない。必要に迫られたら何時でも切り捨てる、それがたとえ嫡男や母親であろうともだ。
義直は、翌日早々岩倉城を出陣して楽田城を囲んだ。楽田城は東西約72m・南北約97mの規模で二重の堀に囲まれ、1558年日本初の望楼型天守閣が建てらている。代々楽田織田家の居城で、当代の城主は織田寛貞(織田忠寛の父)だが、あっさり降伏臣従を誓った。
次に小口城を囲んだ。小口城は犬山城主の織田信清配下の中島豊後守が守っていたが、中島豊後守は城を捨てて犬山城主に逃亡した。
その後義直は羽黒城の梶原景義を囲もうとするが、梶原景義は囲まれる前に城を出て降伏臣従の挨拶にやって来た。
「景義殿よくぞ参られた、こちらにおられるのが義直様じゃ。」
「御初に御目にかかります、羽黒城主の梶原景義と申します。これからは忠誠を尽させて頂きますので、よろしくお願い申し上げます。」
「私が義直です、これからの働きに期待しています。」
「それで景義殿、城と所領のことだが、所領は今まで通りなのだが城は犬山城を落とすまで明け渡して頂く。」
「そんな! なにとぞそれは御勘弁いただきたい。」
「なあにそれ程の時間はかからぬよ、これだけの軍勢に攻められれば犬山城など1日も持つまい、遅くとも10日の内に城はお返しいたすよ。」
「いや、しかしながら・・・・・」
「景義殿! 忠誠を示すよい機会ですぞ。」
「はい、承りました。」
義直は翌朝早々に犬山城に攻め掛かったが、あっさりと犬山城は落城した。実は信清の家老・和田定利と中島豊後守が、直虎配下の白拍子の閨房術で篭絡されており、義直の攻撃にあわせて城門を開いて義直軍を城に引き込んだのだ。仕方なく織田信清は、美濃の斎藤家を頼って逃亡した。
犬山城・織田信清は美濃逃亡。
小口城・中島豊後守は裏切り義直家臣になる。
羽黒城・梶原景義・羽黒三千石、降伏して義直家臣になる。
鵜沼城・大沢治郎左衛門、美濃斉藤家の家臣だが義直に内通中。
翌日早々に義直は出陣し田楽城に向かい、そして北外山城跡に入って修築を始めた。北外山城は元々織田与四郎信安の持城だったが、廃嫡にしようとした長男・信賢に居城の岩倉城から追放されてしまった。その後で信賢も永禄元年(1558年)の浮野の戦いに敗れ、まもなく織田伊勢守家は滅亡したため、信安も尾張に復帰する機会を失ってしまい、その後自然と廃城となっていたのだ。
北外山城に守備と修築の為の兵を残し、同じく廃城になっていた蟹清水砦に入って修築を始めた。
次に、織田伊勢守家滅亡後捨て置かれていた岩倉城に入った。岩倉城は標高10mの低い台地上に築かれた平城で、東西約104・南北169mの規模だが、早くも荒れていたので守備と修築の兵を置く事になった。
義直が岩倉城で休息していると、重吉城の尾藤源内重吉・重房親子が降伏臣従の挨拶にやって来た。その後も近隣の豪族が次々と降伏臣従の挨拶にやって来た。
「義直様、御初に御目にかかります、真清田神社の宮司を務めさせて頂いている、関成重と申します。」
「宮司殿ですか? 一宮城の城主と聞いておりましたが。」
「義直様、成重殿は真清田神社と社領を守る為に、一宮城を築かれ武将として戦われているのです。」
「なるほど、大爺様の話で得心がいきました、ですが今後はどうされるのですか?」
「どうと申されますが、何の事でございましょうか?」
「宮司として真清田神社と社領の保護を求めておられるのか、武将・一宮城の城主として仕える心算か、何方を願っておられるのですか。」
「両方ではいけませんか?」
「それは何故です?」
「実は苅安賀城の浅井信八郎信広殿とは、度々領地の境界を巡って争いがあるのです、宮司としてだけでは、信広殿が功名を重ねたら不利になるのではないかと恐れております。」
「大爺様、そのような事になるのですか?」
「実際に浅井信八郎信広殿が功名を重ねられたら、所領に関しては優遇せねばなりません、それが主君の努めでございます。」
「なるほど、成重殿に心配はもっともなものなのですね。」
「はい、それに大爺様調べた範囲では、成重殿は熱田神宮の大宮司の力を借りてこの地に移り住み、真清田神社の宮司となったと言う事です。散々義直様に盾突いた熱田湊の大将との縁が強いので、武将として働いて忠誠を示さねば、攻め滅ぼされつと思っておられるのでしょう。なあ成重殿。」
「はい、直平殿の申される通りです、忠誠を示さねば後がないと思っております。」
「左様か、ならば尾張を統一する戦の間に忠誠を証明してくれ。」
「はい、必ずや我が武勇と忠誠をご覧いただきます。」
「義直に降伏臣従した国衆」
坂田城・陸田市左衛門
陸田城・陸田市左衛門・知行260貫文
稲島城・木全忠澄
中島城・中島蔵人
苅安賀城・浅井信八郎信広
毛受城・浅井玄蕃
宮後城・安井弥兵衛尉重幸
一宮城・関成重
東西が約50m、南北が約90mの縄張りで。
四方に幅約3・6メートル程の堀をめぐらし土塁でお城の周辺を囲んでいる。
義直は岩、倉城で1日をかけて周辺国衆と会談し人質を受け入れた。国衆の中には信長にも人質を出していた者も多い、だから人質等何の当てにもならない。必要に迫られたら何時でも切り捨てる、それがたとえ嫡男や母親であろうともだ。
義直は、翌日早々岩倉城を出陣して楽田城を囲んだ。楽田城は東西約72m・南北約97mの規模で二重の堀に囲まれ、1558年日本初の望楼型天守閣が建てらている。代々楽田織田家の居城で、当代の城主は織田寛貞(織田忠寛の父)だが、あっさり降伏臣従を誓った。
次に小口城を囲んだ。小口城は犬山城主の織田信清配下の中島豊後守が守っていたが、中島豊後守は城を捨てて犬山城主に逃亡した。
その後義直は羽黒城の梶原景義を囲もうとするが、梶原景義は囲まれる前に城を出て降伏臣従の挨拶にやって来た。
「景義殿よくぞ参られた、こちらにおられるのが義直様じゃ。」
「御初に御目にかかります、羽黒城主の梶原景義と申します。これからは忠誠を尽させて頂きますので、よろしくお願い申し上げます。」
「私が義直です、これからの働きに期待しています。」
「それで景義殿、城と所領のことだが、所領は今まで通りなのだが城は犬山城を落とすまで明け渡して頂く。」
「そんな! なにとぞそれは御勘弁いただきたい。」
「なあにそれ程の時間はかからぬよ、これだけの軍勢に攻められれば犬山城など1日も持つまい、遅くとも10日の内に城はお返しいたすよ。」
「いや、しかしながら・・・・・」
「景義殿! 忠誠を示すよい機会ですぞ。」
「はい、承りました。」
義直は翌朝早々に犬山城に攻め掛かったが、あっさりと犬山城は落城した。実は信清の家老・和田定利と中島豊後守が、直虎配下の白拍子の閨房術で篭絡されており、義直の攻撃にあわせて城門を開いて義直軍を城に引き込んだのだ。仕方なく織田信清は、美濃の斎藤家を頼って逃亡した。
犬山城・織田信清は美濃逃亡。
小口城・中島豊後守は裏切り義直家臣になる。
羽黒城・梶原景義・羽黒三千石、降伏して義直家臣になる。
鵜沼城・大沢治郎左衛門、美濃斉藤家の家臣だが義直に内通中。
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