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内政親愛編

16話

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「御子様、民を飢えさせない方法を教えてくださいませ!」

「皇帝陛下、無理を言わないでください。
 確かに私は神々の御子ではありますが、人に神々の知識の全てを教えるわけにはいかないのです。
 そのような事をすれば、私一人だけではなく、全ての人が天罰を受けるのです」

 新皇帝アリアンナは悔しかった。
 皇帝に位について一年、理想は神山よりも高く、慈愛の心は海よりも深かったが、惰弱な前皇帝の失政と内乱により、民は苦しんでいいた。
 特に不公平な体制による富の偏りが大きく、民は飢えに苦しんでいた。
 毎日歯噛みする思いで民を救おうとしていたが、理想は高くともアリアンナは天才ではないし、後見人の父リドワン太上皇は武断派であって内政家ではない。
 その武力は恐れられ、表面的には逆らわないものの、陰湿に非協力的な態度をとるので、改革は遅々として進まなかった。

「御子様、神々の知識がだめでも、人の知識があるのではありませんか。
 御子様なら、歴史に埋もれた多くの知識を御持ちなのではありませんか。
 その知識なら、神々も御怒りにならないのではありませんか。
 私の力だけではできない事でも、御子様の御力ならば可能なのではありませんか。
 どうか民のために御子様の知識と御力を御貸しください!」

 神々の御子クリスティアンは困っていた。
 神々はアリアンナが思っている以上に酷薄なのだ。
 人間が失敗作だと思えば、何の躊躇もなく簡単に滅ぼす。
 人類全体を滅ぼさなくても、文明を崩壊させ一からやり直させることは、過去何度も行われているのだ。

 すでにウォレス皇国は神々に目を付けられているのだ。
 悪しき元凶だと思われているのだ。
 今度何かあれば、ウォレス皇国に天災を起こし、民を皆殺しにする可能性が高く、迂闊に神々の怒りを買うような事はできない。

 だが同時に、クリスティアンはアリアンナを好ましく思っていた。
 民のために不眠不休で働くアリアンナを可愛く思っていた。
 できる事なら手助けしてやりたいと心底思っていた。
 だから本当は、すでにやれることとやれないことを考えていた。
 神々にも御伺いを立てて許可をもらっていた。

 問題はアリアンナが頑張りすぎる事だった。
 これ以上不眠不休が続くと、アリアンナが倒れてしまう。
 それが一番心配だった。
 だから何をどの程度どいう順番で教えるかで少し悩んでいたのだ。
 そして教えることを条件に、アリアンナを休ませようとも考えていた。
 充血した眼、青白くなってしまった顔色、痩せて細くなってしまった顎と手。

「分かった。
 教えてやろう。
 だが条件がある。
 それが守られない限り絶対に教えん!」
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