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第一章
第38話:秘薬パーフェクトリカバリー
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「せめて効能だけでの聞かせてもらえませんか、バルド殿」
製薬ギルドのマスターが真剣な表情で聞いてくる。
俺の言葉に、よほどの薬だと思ったのだろう。
まあ、そう思い込ませるように、忍者スキルを使ったのだけどね。
問題があるとしたら、俺が用意している薬に対してどこまで執着するかだ。
俺を殺してでも目先の薬を手に入れようとするのか、それとも、犯罪に手を染めてでも、俺を拘束して薬を作り続けさせようとするかだ。
「マスターは伝説の快復魔術、パーフェクトリカバリーを知っていますか」
俺の言葉を聞いたマスターの表情が困惑に変わった。
俺が言いたい事、パーフェクトリカバリーを作れるという謎かけに、拭い難い不信感を持ったのだろう。
それは当然の反応で、シスターに出会う前の俺なら同じ反応をしていた。
実際に目の前で見ていなければ、そんな魔術があるとは絶対に信じなかった。
まして同じ効果を表す薬が作れるなんて、絶対に信じなかっただろう。
「ええ、知っていますよ、伝説にはある魔術ですからね」
話しているうちに、マスターの表情と口調が諦めに変わっていった。
俺が取引を断るために、わざと大嘘をついたと思っているのだ。
その気持ちは分かる、痛いほどわかるぞ、マスター。
素直に諦めてくれるのなら、このまま嘘つきだと思われて別れた方がいい。
軍資金が補給したい状況でなく、ワイバーン山脈を越えるための隠し街道を見つけたい状況でなければ、そうしていただろう。
「我が家にはその魔術を薬にする秘術が伝わっているのですよ。
ただ、単なる製薬スキルだけでは作る事ができないので、色々なスキル持ちを抱えるか、必要な素材を作ってもらって仕入れなければいけません。
その素材を作るための原料も結構特殊なモノなのです。
この魔境ではなかなか手に入らないので、一個しか作れませんでした。
ただし、効果は俺の命を懸けて保証しますよ。
マスターは疑っているようですが、製薬職人として信用は大切ですからね。
大金貨十枚を払ってくれるお客さんがいるのなら利益折半で売ってもいいですよ」
マスターがもの凄く悩んでいるのが手に取るように分かる。
俺の話しは信じられないが、もし本当なら莫大な利益が手に入るのだ。
今回は仕入れ値を差し引いて折半だから、利益は大金貨四枚半だ。
だが普通にビシュケル王国から大量に輸入できれば、仕入れ値や途中の経費、入出国の税金を差し引いても、薬一個で同じだけの利益が手に入る。
いや、効果を確認したあとなら、交渉次第で金貨百枚でも買いたい客がいるはず。
「分かった、私にできる範囲で買いたい人がいるか聞いてみよう。
だが、そのためにはそれなりの時間がかかる。
その間はここに残ってもらえないだろうか、バルド殿」
「残念ですが、それはちょっと無理な話ですね。
急いで実家に帰らなければいけないので、王都を経由してワイバーン山脈添いの街や村を回って、街道の修復ができないか確認する予定なのです。
ついでに隠し街道がないかも確認して、隠し街道がなければ、イェシュケ皇国とグリンガ王国を経由してビシュケル王国に戻る予定なのです。
ここに長居する余裕などないのです」
「だったらどうだろう、私も王都の方が金払いのいいお客さんに伝手が多い。
王都とワイバーン山脈添いの村や街の何処にいるのか教えてくれないか。
大金貨十枚を払ってもいいお客さんを確保できたら、直ぐに連絡するよ」
「分かりました、王都で使う宿が決まったら連絡します」
製薬ギルドのマスターが真剣な表情で聞いてくる。
俺の言葉に、よほどの薬だと思ったのだろう。
まあ、そう思い込ませるように、忍者スキルを使ったのだけどね。
問題があるとしたら、俺が用意している薬に対してどこまで執着するかだ。
俺を殺してでも目先の薬を手に入れようとするのか、それとも、犯罪に手を染めてでも、俺を拘束して薬を作り続けさせようとするかだ。
「マスターは伝説の快復魔術、パーフェクトリカバリーを知っていますか」
俺の言葉を聞いたマスターの表情が困惑に変わった。
俺が言いたい事、パーフェクトリカバリーを作れるという謎かけに、拭い難い不信感を持ったのだろう。
それは当然の反応で、シスターに出会う前の俺なら同じ反応をしていた。
実際に目の前で見ていなければ、そんな魔術があるとは絶対に信じなかった。
まして同じ効果を表す薬が作れるなんて、絶対に信じなかっただろう。
「ええ、知っていますよ、伝説にはある魔術ですからね」
話しているうちに、マスターの表情と口調が諦めに変わっていった。
俺が取引を断るために、わざと大嘘をついたと思っているのだ。
その気持ちは分かる、痛いほどわかるぞ、マスター。
素直に諦めてくれるのなら、このまま嘘つきだと思われて別れた方がいい。
軍資金が補給したい状況でなく、ワイバーン山脈を越えるための隠し街道を見つけたい状況でなければ、そうしていただろう。
「我が家にはその魔術を薬にする秘術が伝わっているのですよ。
ただ、単なる製薬スキルだけでは作る事ができないので、色々なスキル持ちを抱えるか、必要な素材を作ってもらって仕入れなければいけません。
その素材を作るための原料も結構特殊なモノなのです。
この魔境ではなかなか手に入らないので、一個しか作れませんでした。
ただし、効果は俺の命を懸けて保証しますよ。
マスターは疑っているようですが、製薬職人として信用は大切ですからね。
大金貨十枚を払ってくれるお客さんがいるのなら利益折半で売ってもいいですよ」
マスターがもの凄く悩んでいるのが手に取るように分かる。
俺の話しは信じられないが、もし本当なら莫大な利益が手に入るのだ。
今回は仕入れ値を差し引いて折半だから、利益は大金貨四枚半だ。
だが普通にビシュケル王国から大量に輸入できれば、仕入れ値や途中の経費、入出国の税金を差し引いても、薬一個で同じだけの利益が手に入る。
いや、効果を確認したあとなら、交渉次第で金貨百枚でも買いたい客がいるはず。
「分かった、私にできる範囲で買いたい人がいるか聞いてみよう。
だが、そのためにはそれなりの時間がかかる。
その間はここに残ってもらえないだろうか、バルド殿」
「残念ですが、それはちょっと無理な話ですね。
急いで実家に帰らなければいけないので、王都を経由してワイバーン山脈添いの街や村を回って、街道の修復ができないか確認する予定なのです。
ついでに隠し街道がないかも確認して、隠し街道がなければ、イェシュケ皇国とグリンガ王国を経由してビシュケル王国に戻る予定なのです。
ここに長居する余裕などないのです」
「だったらどうだろう、私も王都の方が金払いのいいお客さんに伝手が多い。
王都とワイバーン山脈添いの村や街の何処にいるのか教えてくれないか。
大金貨十枚を払ってもいいお客さんを確保できたら、直ぐに連絡するよ」
「分かりました、王都で使う宿が決まったら連絡します」
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