少年騎士

克全

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第一章

第44話:前将軍の騎士団。

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 私が前将軍を拝命してから30日が経ちました。
 我が国は鉄と鈦と銹の名産地となり、仕入れに訪れる商人の馬車が列をなしている状態です。

 私たち3人は、冒険者と王都民の試験を最初の5日で終えました。
 確実に完全殺ができると思われる、領地の民は王都に呼びませんでした。
 王家の金儲けよりも領地の安全を優先したのです。

 領地の民が金儲けを優先する性格なら呼び寄せていました。
 ですが彼らは、実力があるのにダンジョン騎士への叙勲を断り、領地に戻って猟師や農民をしているような者達です、強制的などできません。

 それに、我がグリフィス騎士領にいても結構な収入があります。
 ダンジョンと違って狩り過ぎると減ってしまいますが、魔境で狩れる魔獣の素材はお金にも食料にもなるのです。

 領民は諦めましたが、冒険者と王都民は積極的に配下に加えました。
 ダンジョン騎士に叙勲して、私、前将軍直属としました。

 左右の将軍配下だったダンジョン騎士は、それほど有望な者がいなかった事もあり、叔父と叔母たち5人しか引き抜きませんでした。
 そのお陰か、左右の将軍との仲は悪くありません。

 ただ、3人の将軍の中で私が1番多くの騎士を抱える事になってしまいました。
 これまでのダンジョン騎士が、物理的に強い者を優先的に叙勲していた事もあり、冒険者や王都民に魔術や神聖術の才能が有る者が多かったのです。

 更に、我が国の産業構造が歪だった事も影響しています。
 主産業がダンジョンで手に入る銭、鉄、鈦を加工した武器や防具の輸出でした。

 その銭、鉄、鈦がこれまで以上に手に入るだけでなく、銹まで結構な量手に入るようになったので、王家王国の財政は以前の数万倍です。

 それも、集めてくる騎士に全く報酬を払わずにすむのです。
 最低限の能力があればダンジョン騎士に叙勲しようと考えて当然です。

 左将軍配下のダンジョン騎士が、2名補充されて50騎。
 右将軍配下のダンジョン騎士が、3名補充されて50騎。
 前将軍、私の配下となったダンジョン騎士が250騎。

 今のところ、左右の将軍とは争っていません。
 私がほとんど王城に行かず、ダンジョンに籠っているからでしょう。

 配下の騎士たちも、勤務日も公休日もダンジョンに籠っています。
 私が5倍もの兵力を有していることが実感できていないのでしょうが……
 いずれ妬み嫉みの感情が生まれるのは確実です。

 ですが、その時はその時と割り切りました!
 最悪の状況になったら、莫大な富を担いで他国に逃げればいいのです。
 ダンジョンがある国なら、もろ手を挙げて歓迎してくれでしょう。

 それに、それなりの解決策は考えています。
 私の騎士団を5分割すればいいのです。

 ソフィア、アーサー、5人の叔父叔母たちの誰かを将軍にすればいいのです。
 そうすれば、王国は7個騎士団350騎士となります。

「前将軍閣下、今日勤務日の騎士と荷役が揃いました」

 私が勝手に副将軍格と考えている叔父上が声をかけてきました。
 勤務日の騎士125騎と荷運び600人ほどが集まっています。
 600人もの荷運びがいるのも私の所為です。

 私たち3人が手に入れる武器が多いのもありますが、それよりも我が国の冒険者体制がガラリと変わってしまったのです。

 まず、物理的に強い冒険者からダンジョン騎士に叙勲されていた過去があります。
 そこに私が、魔術と神聖術で能力のある冒険者をダンジョン騎士に叙勲しました。

 残っている冒険者は、低レベルのアンデット系モンスターを倒すのすら、苦労するようになってしまったのです。

 彼らに残された道は、今新たに作られている城壁用の石材やレンガを主な収入にして、たまに手に入る銭貨幣で細々と暮らすのが1つ。

 もう1つが、ダンジョン騎士に叙勲された元の仲間にすがって、公休日に一緒に狩りをするかになってしまったのです。

 元の仲間と狩りをするのは、ダンジョン騎士にも利点があります。
 自分の属性で倒せないモンスターを倒してもらえるのです。

 ですが、どうせパーティーを組むのなら、同じダンジョン騎士同士で属性を補い合う方が効率的に稼げます。

 この状況に、残された冒険者たちが可愛そうになりました。
 気の良い人たちが多く、本当にわずかな日数ですが、良くしてもらいました。
 だから、残された冒険者たちを荷運びに雇ったのです。

「私から話す注意は何時もと同じですが、決してダンジョンを軽く見ない事!
 階を上下する時は、どうしてもモンスターが現れます。
 自分の実力よりも深く潜る者は、モンスターを倒せる人たちと同行する事!」

「「「「「はい」」」」」

「銹剣が落ちる階層は、私を含む8人で運びます。
 鈦剣が落ちる階層は、専任の者に運ばせます。
 鉄の階層や銭の階層も同じです。
 自分の実力に合わせた階層以上に深く潜らない事、いいですね?!」

「「「「「はい!」」」」」

 最初は1人の人間にダンジョンと王城を往復させていました。
 ですがそれだと、必ず護衛が必要になります。

 同じように荷物を担ぎますが、狩りに専念する人以外にも、その階層で勝てる荷運びが必要になります。

 なので、物理的にその階層で勝てるか逃げられるかする者たちに、荷物を継いで運んでもらう事にしました。

 銭階層でしか運べない人の能力も考えて、背負子の重さを60kgとか70kgにしようかと思いましたが、それは考え直しました。
 宝物の積み直しは、弱い人にしてもらう事にしました。

 200kgとか300㎏運べる人は、自分が責任を持てる階層を、重い荷物持って全力で駆け抜けてもらいます。

 次の階層にいる人が、上に積んである武器を下ろして自分が運べる重さにします。
 例えば、私たちが銹武器を鈦階層まで運びます。

 鈦階層専用の人が、軽くした背負子を担いで鉄階層まで行き、後は鉄階層の荷運びに任せます。

 この方法を使いだしてから、効率的に荷運びができるようになりました。
 特に、比較的数が多い鉄階層で戦える者が、銭階層から王城まで往復する時間を無駄にしなくてもよくなりました。

 問題は銹階層や鈦階層で戦える者が少な過ぎる点です。
 私を含めた少人数で買っては運びしなければいけません。
 ですが、それでも、銹武器を手に入れた方が利益が多いのです。

「ねえ、私たち、銹階層で狩るより鈦階層で狩った方が効率的じゃない?」

「そんな事はありませんよ。
 数で言えば鈦階層の方が数多く狩れますが、金額的には銹階層の方が高いです」

 ソフィアとアーサーが何時ものじゃれ合いを始めました。
 小腹が減ってきたのかもしれません。

「そんなの分かっているわよ、武器を背負子に乗せて運ぶのが面倒なの!
 それに、もうお金は使い切れないくらい溜まっているわ。
 今はお金よりも経験値が大切よ、こんな食べられないモノを狩らせられるなら、レベルアップしないとやってられないわ」

「レベルアップ優先でも、ここの方が効率的なのではありませんか?
 鈦階層よりも銹階層の方が、早く強くなっている気がします」

 確かに、私もそう感じていたから、ここで狩りをすると事にしたのです。
 実際問題、私たちはどれくらい強くなったのでしょうか?
 もっと深い階層まで行けると思いますが、どうすべきでしょう?

「ソフィア、アーサー、ちょっと休憩しよう。
 王都の外に造り始めた新しい城壁の件で話がある」
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