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第一章
第15話:マナーは辛いよ
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魔力の売り先がないのなら、自分たちのために使いたいです。
明日のダンジョン狩りに備えて革袋に魔術水を入れておくのも良いでしょう。
ですが、その程度では寝て回復する魔力よりも少な過ぎます。
「魔力を多く使うには、聖水を作っておいた方が良いですかね?」
「そうね、もったいないのは嫌だものね」
「僕も魔力を無駄にするのは嫌です」
「そうなると、聖水を入れるガラス瓶が必要になりますが、余計な出費になるかもしれませんよ?」
「村に持ち帰ったら何かに使えるし、余計にはならないわよ」
「そうですよ、ハリー様。
それに、明日ガラス瓶入りの聖水として売っても良いのではありませんか?」
私も2人の言う事が正しいと思ったので、受付に行って聖水を入れるのに丁度いいガラス瓶を買ってきました。
冒険者組合では、所属する冒険者のために色々と工夫してくれています。
宝物と品物を物々交換できる制度もその1つです。
ガラス瓶は、作るのに必要な水晶を倍渡せば交換してもらえます。
1番小さな水晶瓶には5ccの聖水が入ります。
交換するには水晶が15g必要になります。
普通の交換は倍の10gなのですが、蓋をするコルクの料金が入るのです。
30gの水晶1つでも2つのガラス瓶と交換してもらえます。
3人それぞれ50この水晶を渡して100個の水晶瓶を手に入れました。
その全てに神聖術で作った聖水を入れました。
ですが、それでも有り余る魔力を使い切れません。
他に何も方法が思い浮かばないので、食べながら考える事にしました。
「スネ肉のシチューとロースステーキ、リンゴ酒と黒パンもちょうだい」
ソフィアはよほどお腹が空いていたのでしょう、昨晩の倍近く食べる気です。
魔力は、使った分だけ体力が失われるので仕方がありません。
「僕も同じ物を下さい」
アーサーもお腹が空いたのですね。
お金を残そうとして、ちゃんと食べないようなら注意する気でしたが、そんな心配は必要なかったですね。
「私は厚切りベーコンと鳥の丸焼きをください。
飲み物はリンゴ酒、ライ麦パンもお願いします」
僕たち3人は先に飲み物とパンの代金を払って現物を受け取ります。
テーブルでチビチビと食べながら肉が焼けるのを待つのです。
宿賃についている堅パンとスープは、食堂のおばちゃんが、12歳に子に公平に分けてくれることになっています。
「よう、今日も随分と稼いだんだって?」
情報収集で仲良くなったおじさん冒険者が話しかけてきました。
内心の優しさに比べて顔つきが怖い冒険者が多い中で、飛び抜けて優しい顔なので、多くの駆け出しが相談しているのを、たった2日の間に何度も見ました。
「はい、両親や祖父母が鍛えてくれたお陰です」
「それは良かったな、だけで済めば俺も話しかけずにすんだんだが……」
「私たち、何か問題でも起こしました?」
「問題ではない、マナーが悪かったわけではない。
いや、ハリー殿が騎士家の次期当主なら、マナーの問題になるかもしれない」
「マナーに問題があるのならはっきりと言ってください。
直すべき事なら、直ぐに止めますから」
「そうかい、これは受付に確認してもらえば分かる事なんだが、今年の12歳は人数が多いらしくて、1番安い部屋が足らないらしいんだ」
「あ、なるほど、安い部屋に泊まれない12歳がいるのですね?」
「ああ、それで、稼ぎの良い君にはもっと良い部屋に移るか、組合以外がやっている宿に移ってもらいたいのだ」
「ダンジョン以外でも稼いでいますし、嫌とは言えませんね。
念の為に受付に確認させていただきますが、悪く思わないでください」
「いや、普通なら12歳に言うような事じゃないから、確認するのは当然だ。
これも古株のマナーなんで悪く思わないでくれ」
そう言うと、おじさん冒険者は仲間のいるテーブルに戻って行きました。
私は口にした通り受付に確認に行きましたが、おじさんの言う通りでした。
受付のお姉さんにも、明日の朝には私たちに事情を話して、もっと高い部屋に移ってもらう心算だったと言われました。
更に言えば、私たちくらい稼げる冒険者は、組合が運営する簡易宿舎を出て、もっと居心地の良い宿に泊まるそうです。
「明日の宿代を返されてしまいました。
受付には信用できる宿を紹介されましたが、それで良いですか?」
「それで良いんじゃない。
組合もハリーが騎士家の跡取りだと知っているのだから、問題の有る宿を紹介したりしないわよ」
「そうですね、組合がグリフィス騎士家を怒らせるような事はしないと思います。
ただ、部屋の確認だけはしておいた方が良いと思います」
2人が賛成してくれましたので、組合が紹介してくれた、鈦級冒険者が泊まるような宿に移る事にしました。
そんな高級宿に泊まるとなると、支払いも大鈦貨以上になります。
田舎でも王都でも同じなのですが、物を買うときは、買う側が売る側が求める貨幣を用意するのがマナーです。
今回は私たちが宿に支払う小鈦貨を用意しておかなければいけません
本当は鉄級冒険者が泊まるような組合の部屋にしたかったです。
ですが、組合の宿に泊まりたい鉄級が、12歳のために外に泊まっていると言われると、ぼろ儲けしている私たちは黙るしかありません。
「換金をお願いします」
冒険者以外が、王都の商店で換金すると、5%の手数料を取られます。
ですがダンジョンで宝物を手に入れる冒険者だけは、組合で手数料なしです。
私たち3人はそれぞれ手持ちの宝物を換金しました。
私は水晶156個を大銭貨3枚と小銭貨9枚に交換しました。
小銭貨270枚を小鈦貨1枚と大銭貨7枚に交換しました。
小鉄貨320枚を小鈦貨2枚と大鉄貨2枚に交換しました。
大銭貨100枚を小鈦貨5枚と交換しました。
大鉄貨200枚を小鈦貨20枚と交換しました。
小鈦貨が20枚あれば、小銹貨1枚か大鈦貨2枚に交換できます。
ですが普通に暮らしていて小銹貨や大鈦貨を使う事は滅多にありません。
王侯貴族が浪費した時に使うか、冒険者が優秀な武器や防具が欲しくて、銹貨や鈦貨で造ってもらう時だけです。
「やったね、これで鈦貨武器に1歩近づいたわ!」
明日のダンジョン狩りに備えて革袋に魔術水を入れておくのも良いでしょう。
ですが、その程度では寝て回復する魔力よりも少な過ぎます。
「魔力を多く使うには、聖水を作っておいた方が良いですかね?」
「そうね、もったいないのは嫌だものね」
「僕も魔力を無駄にするのは嫌です」
「そうなると、聖水を入れるガラス瓶が必要になりますが、余計な出費になるかもしれませんよ?」
「村に持ち帰ったら何かに使えるし、余計にはならないわよ」
「そうですよ、ハリー様。
それに、明日ガラス瓶入りの聖水として売っても良いのではありませんか?」
私も2人の言う事が正しいと思ったので、受付に行って聖水を入れるのに丁度いいガラス瓶を買ってきました。
冒険者組合では、所属する冒険者のために色々と工夫してくれています。
宝物と品物を物々交換できる制度もその1つです。
ガラス瓶は、作るのに必要な水晶を倍渡せば交換してもらえます。
1番小さな水晶瓶には5ccの聖水が入ります。
交換するには水晶が15g必要になります。
普通の交換は倍の10gなのですが、蓋をするコルクの料金が入るのです。
30gの水晶1つでも2つのガラス瓶と交換してもらえます。
3人それぞれ50この水晶を渡して100個の水晶瓶を手に入れました。
その全てに神聖術で作った聖水を入れました。
ですが、それでも有り余る魔力を使い切れません。
他に何も方法が思い浮かばないので、食べながら考える事にしました。
「スネ肉のシチューとロースステーキ、リンゴ酒と黒パンもちょうだい」
ソフィアはよほどお腹が空いていたのでしょう、昨晩の倍近く食べる気です。
魔力は、使った分だけ体力が失われるので仕方がありません。
「僕も同じ物を下さい」
アーサーもお腹が空いたのですね。
お金を残そうとして、ちゃんと食べないようなら注意する気でしたが、そんな心配は必要なかったですね。
「私は厚切りベーコンと鳥の丸焼きをください。
飲み物はリンゴ酒、ライ麦パンもお願いします」
僕たち3人は先に飲み物とパンの代金を払って現物を受け取ります。
テーブルでチビチビと食べながら肉が焼けるのを待つのです。
宿賃についている堅パンとスープは、食堂のおばちゃんが、12歳に子に公平に分けてくれることになっています。
「よう、今日も随分と稼いだんだって?」
情報収集で仲良くなったおじさん冒険者が話しかけてきました。
内心の優しさに比べて顔つきが怖い冒険者が多い中で、飛び抜けて優しい顔なので、多くの駆け出しが相談しているのを、たった2日の間に何度も見ました。
「はい、両親や祖父母が鍛えてくれたお陰です」
「それは良かったな、だけで済めば俺も話しかけずにすんだんだが……」
「私たち、何か問題でも起こしました?」
「問題ではない、マナーが悪かったわけではない。
いや、ハリー殿が騎士家の次期当主なら、マナーの問題になるかもしれない」
「マナーに問題があるのならはっきりと言ってください。
直すべき事なら、直ぐに止めますから」
「そうかい、これは受付に確認してもらえば分かる事なんだが、今年の12歳は人数が多いらしくて、1番安い部屋が足らないらしいんだ」
「あ、なるほど、安い部屋に泊まれない12歳がいるのですね?」
「ああ、それで、稼ぎの良い君にはもっと良い部屋に移るか、組合以外がやっている宿に移ってもらいたいのだ」
「ダンジョン以外でも稼いでいますし、嫌とは言えませんね。
念の為に受付に確認させていただきますが、悪く思わないでください」
「いや、普通なら12歳に言うような事じゃないから、確認するのは当然だ。
これも古株のマナーなんで悪く思わないでくれ」
そう言うと、おじさん冒険者は仲間のいるテーブルに戻って行きました。
私は口にした通り受付に確認に行きましたが、おじさんの言う通りでした。
受付のお姉さんにも、明日の朝には私たちに事情を話して、もっと高い部屋に移ってもらう心算だったと言われました。
更に言えば、私たちくらい稼げる冒険者は、組合が運営する簡易宿舎を出て、もっと居心地の良い宿に泊まるそうです。
「明日の宿代を返されてしまいました。
受付には信用できる宿を紹介されましたが、それで良いですか?」
「それで良いんじゃない。
組合もハリーが騎士家の跡取りだと知っているのだから、問題の有る宿を紹介したりしないわよ」
「そうですね、組合がグリフィス騎士家を怒らせるような事はしないと思います。
ただ、部屋の確認だけはしておいた方が良いと思います」
2人が賛成してくれましたので、組合が紹介してくれた、鈦級冒険者が泊まるような宿に移る事にしました。
そんな高級宿に泊まるとなると、支払いも大鈦貨以上になります。
田舎でも王都でも同じなのですが、物を買うときは、買う側が売る側が求める貨幣を用意するのがマナーです。
今回は私たちが宿に支払う小鈦貨を用意しておかなければいけません
本当は鉄級冒険者が泊まるような組合の部屋にしたかったです。
ですが、組合の宿に泊まりたい鉄級が、12歳のために外に泊まっていると言われると、ぼろ儲けしている私たちは黙るしかありません。
「換金をお願いします」
冒険者以外が、王都の商店で換金すると、5%の手数料を取られます。
ですがダンジョンで宝物を手に入れる冒険者だけは、組合で手数料なしです。
私たち3人はそれぞれ手持ちの宝物を換金しました。
私は水晶156個を大銭貨3枚と小銭貨9枚に交換しました。
小銭貨270枚を小鈦貨1枚と大銭貨7枚に交換しました。
小鉄貨320枚を小鈦貨2枚と大鉄貨2枚に交換しました。
大銭貨100枚を小鈦貨5枚と交換しました。
大鉄貨200枚を小鈦貨20枚と交換しました。
小鈦貨が20枚あれば、小銹貨1枚か大鈦貨2枚に交換できます。
ですが普通に暮らしていて小銹貨や大鈦貨を使う事は滅多にありません。
王侯貴族が浪費した時に使うか、冒険者が優秀な武器や防具が欲しくて、銹貨や鈦貨で造ってもらう時だけです。
「やったね、これで鈦貨武器に1歩近づいたわ!」
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