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第一章
第7話:果物
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冒険者組合で食べられる最低限の食事と言えば決まっています。
食べられる期限が切れそうになった保存用の堅パンと、同じく食べられる期限が切れそうになった保存用の塩干肉を戻したスープです。
申し訳程度の痛む寸前の野菜がスープに入っていますが、野菜の甘みや美味しさなど全く感じられません。
パンや肉だけ食べていると身体が壊れてしまいます。
長期の戦争で酷い結果が出たので、誰もが理解している事です。
ですが、新鮮で美味しい果物や野菜はとても高いのです。
ここが魔境の近くなら、珍しい果物であろうと実力で手に入れられます。
冒険者組合や領主家に税を納めたら、残りは自分の物です。
ですが王都では、戦いや狩りの実力があっても、果物や野菜は手に入りません。
何故なら、王都周辺の森は全て持ち主かいるからです。
王家や国、貴族の領地になっているのです。
果物1つでも勝手に持ち出したら、殺されても文句は言えません。
だから王都では新鮮な果物がとても高いのです。
干した果物や野菜は比較的マシですが、それでも田舎者の僕たちからすれば、とても高いのに美味しくないので、お金を出して買うのが嫌になる食べ物です。
「もったいない気がするけれど、毎日1つは食べろと言われたし、買っていくか?」
「えぇえええええ、家から持って来た奴がまだあるし、今日はいいじゃない?」
僕が冒険者組合の食堂に張り出されているメニューを見ながら言うと、ソフィアが露骨に嫌そうな顔をして反対します。
僕だって好きで買おうと言っている訳ではありません。
『1日1個は果物を喰えと』とお婆様に言いつけられているので仕方ないのです。
「確かにまだ持って来た干柿は残っているよ。
でもある程度残っているうちに買い足しておかないと、ダンジョンから帰れなくなった時に飢え死にしちゃうよ」
「ハリー様の言われる事もソフィアの言う事も、どちらも間違っていないと思う。
今日深く潜る予定なら、長持ちする干した果物は買っておいた方が良い。
そこそこの深さで狩るのなら、まだ買い足さなくて良いと思う」
アーサーに言われてソフィアが言葉に詰まってしまいました。
昨晩、ソフィア自身ができるだけ深く潜りたいと言っていたのです。
本気で挑戦するのなら、非常食は買い足しておかなければいけないのです。
「不味い食べ物にお金を払うのは嫌よ。
今日の狩りしだいで高い物でも買えるようになるでしょうけど、それでも不味い物にお金を払うのは嫌だわ」
ソフィアはその続きを口にしなかったけれど、言いたいことは分かっています。
ただ、口約束でもちゃんと形にしておいた方が良いです。
僕たちだけならこのままでも良いけれど、今後新しい人間をパーティーに加える時の事を考えたら、約束事は形にする癖をつけておいた方が良いのです。
「じゃあ決まりだね、昨日話し合った以上に慎重に潜る事。
稼ぎよりも命を優先する、これは絶対だからね」
「分かったわよ、命大事にで行くわ」
1度口にしたら必ず約束を守ってくれるのもソフィアの良い所です。
「うん、みんなを見捨てて逃げるような事はしたくないからね」
アーサーらしい言い方ですね。
口ではこんな事を言っているけれど、絶対に友達を見捨てたりはしません。
この5年の付き合いで良く分かっています。
命懸けの狩場でアーサーほど信用できる人間は滅多にいません。
その分、身勝手な真似は絶対に許さない厳しい所もあるのです。
朝食も晩御飯と同じ古い堅パンと味のほとんどしない塩干肉を戻したスープ。
それに家から持って来た干柿で朝食を済ませます。
手早く食べたら受付のお姉さんに今からダンジョンに潜ると申請します。
昨日と同じように浅い階は素通りしました。
昨日よりも潜る時間が早かったから、3階にも空いた狩場がありました。
ですが昨晩の約束通り、9階まで一気に潜りました。
「ここで始めるよ」
9階でも10階に下りる階段の手前を狩場に決めました。
階段の場所も狩場も頭の中に叩き込んであります。
3人とも必ず生きて帰ると家族に約束しているのです。
事前にできる準備は思いつく限り完璧にすませてあります。
父上と母上、お爺様とお婆様も知っている限りの事を伝授してくれました。
「今日は私が囮をするわ」
ソフィアが1番後ろから言い切りました。
言いながら1番前に出てきました。
ダンジョンの騎士や冒険者にならないのなら、何でもできた方が良いのです。
新鮮で美味しい魔境の恵みと共に暮らす気なら、何でもできないといけません。
「分かったけど、気をつけて」
「僕たちが外す可能性も忘れないで」
「分かっているわよ、油断して死ぬほど馬鹿な事はないからね」
ソフィアが言葉通り、四方八方に注意しながら境界線を出入りします。
現れたモンスターに最速の突きを繰り出し続けます。
僕たちも投石でモンスターを瞬殺し続けます。
予定通り、9回で10回戦って10階に下りました。
ゴブリンが1回宝物を落としましたが、幸先悪く石材とレンガでした。
浅い階なら城壁や家を使う材料として持ち帰る人もいますが、僕たちは持ち帰る気になりません。
10階でも10回戦ってから11階に下りました。
ここでやっとゴブリンが持ち帰りたくなる宝物を落として行きました。
大鉄貨3枚と小銭貨15枚です。
ダンジョンの常識通り、深い階ほど落とす宝物が良くなります。
1kgの鋳造製剣を造ってもらおうと思えば、製作費込みで2kgの鉄貨を手に入れなければいけません。
僕たち3人は、それぞれの家にある鉄剣を持って来られましたが、貧しい家の子は棍棒で12歳の実戦を始めなければいけないのです。
そんな状態だからこそ、ダンジョンには守らなければいけないマナーがあります。
12階、13階、14階と順調に潜れています。
15階、16階、17階も問題ありません。
10階より深くなるとアメーバーが出てこなくなります。
ホーンラビットも滅多に出なくなります。
ゴブリンはこれまで通り3頭出ますが、アメーバーとホーンラビットが出なくなった分、スケルトンが3体出るようになります。
僕たち3人は比較的人型を相手にするのが苦手です。
魔境での狩りで人型を相手にする事は滅多にないからです。
ダンジョンの浅い階層に湧くモンスターの中ではもっと強いと言われている、アングリィシープやアングリィゴートを狩る方が楽なくらいです。
「正確に急所を狙って、1度で当たらなければ直ぐに剣に切り替えて」
念の為に言いましたが、アーサーが投石で狙いを外す事などありません。
空を縦横無尽に飛ぶ小鳥すら百発百中のアーサーです。
急所が小さくても、動きの遅いスケルトンを討ち漏らしたりはしません。
それは僕も同じですから、19階までのモンスターは全て瞬殺です。
ですが瞬殺できたのはここまでです。
20階からは冒険者の数以上のモンスターが出てきます。
「ここからが本番だよ、気を引き締めて行こう!」
食べられる期限が切れそうになった保存用の堅パンと、同じく食べられる期限が切れそうになった保存用の塩干肉を戻したスープです。
申し訳程度の痛む寸前の野菜がスープに入っていますが、野菜の甘みや美味しさなど全く感じられません。
パンや肉だけ食べていると身体が壊れてしまいます。
長期の戦争で酷い結果が出たので、誰もが理解している事です。
ですが、新鮮で美味しい果物や野菜はとても高いのです。
ここが魔境の近くなら、珍しい果物であろうと実力で手に入れられます。
冒険者組合や領主家に税を納めたら、残りは自分の物です。
ですが王都では、戦いや狩りの実力があっても、果物や野菜は手に入りません。
何故なら、王都周辺の森は全て持ち主かいるからです。
王家や国、貴族の領地になっているのです。
果物1つでも勝手に持ち出したら、殺されても文句は言えません。
だから王都では新鮮な果物がとても高いのです。
干した果物や野菜は比較的マシですが、それでも田舎者の僕たちからすれば、とても高いのに美味しくないので、お金を出して買うのが嫌になる食べ物です。
「もったいない気がするけれど、毎日1つは食べろと言われたし、買っていくか?」
「えぇえええええ、家から持って来た奴がまだあるし、今日はいいじゃない?」
僕が冒険者組合の食堂に張り出されているメニューを見ながら言うと、ソフィアが露骨に嫌そうな顔をして反対します。
僕だって好きで買おうと言っている訳ではありません。
『1日1個は果物を喰えと』とお婆様に言いつけられているので仕方ないのです。
「確かにまだ持って来た干柿は残っているよ。
でもある程度残っているうちに買い足しておかないと、ダンジョンから帰れなくなった時に飢え死にしちゃうよ」
「ハリー様の言われる事もソフィアの言う事も、どちらも間違っていないと思う。
今日深く潜る予定なら、長持ちする干した果物は買っておいた方が良い。
そこそこの深さで狩るのなら、まだ買い足さなくて良いと思う」
アーサーに言われてソフィアが言葉に詰まってしまいました。
昨晩、ソフィア自身ができるだけ深く潜りたいと言っていたのです。
本気で挑戦するのなら、非常食は買い足しておかなければいけないのです。
「不味い食べ物にお金を払うのは嫌よ。
今日の狩りしだいで高い物でも買えるようになるでしょうけど、それでも不味い物にお金を払うのは嫌だわ」
ソフィアはその続きを口にしなかったけれど、言いたいことは分かっています。
ただ、口約束でもちゃんと形にしておいた方が良いです。
僕たちだけならこのままでも良いけれど、今後新しい人間をパーティーに加える時の事を考えたら、約束事は形にする癖をつけておいた方が良いのです。
「じゃあ決まりだね、昨日話し合った以上に慎重に潜る事。
稼ぎよりも命を優先する、これは絶対だからね」
「分かったわよ、命大事にで行くわ」
1度口にしたら必ず約束を守ってくれるのもソフィアの良い所です。
「うん、みんなを見捨てて逃げるような事はしたくないからね」
アーサーらしい言い方ですね。
口ではこんな事を言っているけれど、絶対に友達を見捨てたりはしません。
この5年の付き合いで良く分かっています。
命懸けの狩場でアーサーほど信用できる人間は滅多にいません。
その分、身勝手な真似は絶対に許さない厳しい所もあるのです。
朝食も晩御飯と同じ古い堅パンと味のほとんどしない塩干肉を戻したスープ。
それに家から持って来た干柿で朝食を済ませます。
手早く食べたら受付のお姉さんに今からダンジョンに潜ると申請します。
昨日と同じように浅い階は素通りしました。
昨日よりも潜る時間が早かったから、3階にも空いた狩場がありました。
ですが昨晩の約束通り、9階まで一気に潜りました。
「ここで始めるよ」
9階でも10階に下りる階段の手前を狩場に決めました。
階段の場所も狩場も頭の中に叩き込んであります。
3人とも必ず生きて帰ると家族に約束しているのです。
事前にできる準備は思いつく限り完璧にすませてあります。
父上と母上、お爺様とお婆様も知っている限りの事を伝授してくれました。
「今日は私が囮をするわ」
ソフィアが1番後ろから言い切りました。
言いながら1番前に出てきました。
ダンジョンの騎士や冒険者にならないのなら、何でもできた方が良いのです。
新鮮で美味しい魔境の恵みと共に暮らす気なら、何でもできないといけません。
「分かったけど、気をつけて」
「僕たちが外す可能性も忘れないで」
「分かっているわよ、油断して死ぬほど馬鹿な事はないからね」
ソフィアが言葉通り、四方八方に注意しながら境界線を出入りします。
現れたモンスターに最速の突きを繰り出し続けます。
僕たちも投石でモンスターを瞬殺し続けます。
予定通り、9回で10回戦って10階に下りました。
ゴブリンが1回宝物を落としましたが、幸先悪く石材とレンガでした。
浅い階なら城壁や家を使う材料として持ち帰る人もいますが、僕たちは持ち帰る気になりません。
10階でも10回戦ってから11階に下りました。
ここでやっとゴブリンが持ち帰りたくなる宝物を落として行きました。
大鉄貨3枚と小銭貨15枚です。
ダンジョンの常識通り、深い階ほど落とす宝物が良くなります。
1kgの鋳造製剣を造ってもらおうと思えば、製作費込みで2kgの鉄貨を手に入れなければいけません。
僕たち3人は、それぞれの家にある鉄剣を持って来られましたが、貧しい家の子は棍棒で12歳の実戦を始めなければいけないのです。
そんな状態だからこそ、ダンジョンには守らなければいけないマナーがあります。
12階、13階、14階と順調に潜れています。
15階、16階、17階も問題ありません。
10階より深くなるとアメーバーが出てこなくなります。
ホーンラビットも滅多に出なくなります。
ゴブリンはこれまで通り3頭出ますが、アメーバーとホーンラビットが出なくなった分、スケルトンが3体出るようになります。
僕たち3人は比較的人型を相手にするのが苦手です。
魔境での狩りで人型を相手にする事は滅多にないからです。
ダンジョンの浅い階層に湧くモンスターの中ではもっと強いと言われている、アングリィシープやアングリィゴートを狩る方が楽なくらいです。
「正確に急所を狙って、1度で当たらなければ直ぐに剣に切り替えて」
念の為に言いましたが、アーサーが投石で狙いを外す事などありません。
空を縦横無尽に飛ぶ小鳥すら百発百中のアーサーです。
急所が小さくても、動きの遅いスケルトンを討ち漏らしたりはしません。
それは僕も同じですから、19階までのモンスターは全て瞬殺です。
ですが瞬殺できたのはここまでです。
20階からは冒険者の数以上のモンスターが出てきます。
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