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第一章

第5話:喧嘩

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「おい、お前、今晩俺の部屋にこい、かわいがってやる。
 学院に告げ口したらどうなるか分かっているよな。
 お前の実家の事は分かっているんだからな」

 内面の下劣さが顔に現れている男が、私のお友達を脅かします。
 誰もいない所で脅すこともできるのに、他の生徒がいる前で公然と脅します。
 私のお友達に恥をかかせて、学院に残れないようにするつもりです。
 この下衆の親分であろう上級貴族が、遠くで嫌らしい笑みを浮かべています。
 私のお友達を本当に嬲り者にするのは、上級貴族の方かもしれません。
 何かあった時には、この下衆が身代わりで罰を受けるのでしょう。

「あら、学院のしきたりを蔑ろにするなんて、貴族のマナーを知らないのね。
 成り上がりの貴族はどうしようもないわね。
 それとも、よほど野蛮なお国なのかしら」

「何だとこの女郎、平民が貴族に逆らって生きて行けると思っているのか?」

 下衆な下級貴族が、私を脅してきました。
 平民のお友達達と一緒にいるので、私の事も平民だと思っています。
 これくらい馬鹿なら、平気で家名や国を明らかにするかもしれません。

「国も家名も名乗らないなんて、偽貴族に違いありません」

 私はお友達達を安心させる様に、笑顔を浮かべて周りに視線を向けました。

「何だとこの女郎、誰が偽貴族だ、俺様は正真正銘の貴族だ。
 ようし、俺様の国と家名を聞かせてやろうじゃないか。
 俺様は歴史あるジュディン王国でも由緒正しいカーク男爵家の者だ。
 家名を名乗った以上、名誉にかけて無礼を許さんからな。
 どこの国の平民だろうが、ぶち殺してやるからな」

 あら、あら、あら、愚か者が国と家名を名乗って喧嘩を売ってくれました。

「ああ、心配はいりませんよ、大丈夫ですよ」

 お友達達が心配してくれているようですから、安心するように声をかけました。
 それから馬鹿で下衆なカーク男爵家の者の相手をしてあげました。

「まあ、何て乱暴な言葉遣いなのかしら。
 とても歴史ある国の由緒正しい男爵家の方とは思えませんわ。
 それとも、最初からこちらを伺っているあの方に言わされているのかしら?
 どうやらあなたの寄り親というか、親分のようですね。
 正式に喧嘩を売ると言われるのなら、あの方の家名もうかがいたいモノですわね」

 私は食堂にいる全員に分かるように、黒幕の上級貴族を指差しました。
 これでもう逃げられれないと思います。
 ここで逃げても、学院内の噂からは逃れられません。
 学院に残る必要がなく、母国に逃げ帰る事ができるのなら話は違いますが。
 その時には、お友達の家族は私の台所領に逃げてきてもらいましょう。
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