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第一章
蛇の弥五郎14
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「またですか」
「はい。
またです」
七右衛門は正直うんざりしていした。
前回の冤罪事件では、無実の人間を陥れた御用聞きは磔獄門になっている。
手柄欲しさにそれを黙認した同心は切腹を申し渡されていた。
上司だった与力は、召し放ちとなって与力の地位を失っている。
火付け盗賊改め方長官は、御役御免になっている。
それほどの罰を受けた先達がいると言うのに、また無実の人間を陥れて捕えたと言うのだ!
「誰の組ですか?」
「渡辺孝と言う者の組だ」
神使は、相手が大名であろうと大身旗本であろうと気にしない。
神使が言葉を選ぶのは、稲荷神が認めた人間だけだ。
文が丁寧な言葉を選ぶのは、河内屋善兵衛と妻のみほ、それに七右衛門だけ。
次期河内屋当主である、大阪の両替商、河内屋徳太郎も歯牙にもかけていない。
河内屋徳太郎に才能がなければ、河内屋は瞬く間に傾くだろう。
「また証拠を集めてくれるのですか?」
「すでにある程度は集めています
必要ならもっと集めましょう」
前回の冤罪事件は七右衛門が真犯人を捕まえて解決しました。
火付け盗賊改めを憎んでいる江戸の町民は、七右衛門を褒め称えました。
手柄とは認められましたが、幕閣は苦々しくも思っています。
長谷川平蔵が活躍していた頃なら違っていたのでしょうが、火付け盗賊改めの母体である御先手組の多くでは、逆恨みしている者すらいるのです。
「いや、また真犯人を捕まえた方がいいですね。
冤罪で捕まっている者が、牢死と偽って殺される可能性もあります」
「手の者に見張らせいますから、その時は直ぐに分かります。
殺された直後にねじ込む事もできますよ」
七右衛門は驚いていた。
文がこのような不人情を口にするとは思ってもいなかったのだ。
「私を試しているのですか?
何の罪もない人が殺されるの待つことなどできません」
「さすが神様が選んだ人間です。
文が気にいるのも分かります」
七右衛門はまたも驚愕していた。
相手が文だと思い込んでいた。
姿形が文と全く同じなのだ。
今でも信じられない思いだったが、神使ならば可能かもしれないと思い直し、確認する事にした。
「貴女は文ではなかったのですか?」
「私達は元が狐です。
化けるのは得意中の得意です」
「そうなのですね。
ですがもう止めて下さい。
いくら神使殿であろうと、化かされて試されるのは気分が悪いです。
それくらいなら、もう加護などお返しいたします」
「いや、それは申し訳なかった。
もう二度とこのような事はせぬ。
だから許して欲しい」
調子に乗った神使は慌てて謝った。
稲荷神お気に入りの人間を化かして嫌われたとなると、稲荷神の怒りを買って神使の地位を剥奪されるかもしれないのだ。
「はい。
またです」
七右衛門は正直うんざりしていした。
前回の冤罪事件では、無実の人間を陥れた御用聞きは磔獄門になっている。
手柄欲しさにそれを黙認した同心は切腹を申し渡されていた。
上司だった与力は、召し放ちとなって与力の地位を失っている。
火付け盗賊改め方長官は、御役御免になっている。
それほどの罰を受けた先達がいると言うのに、また無実の人間を陥れて捕えたと言うのだ!
「誰の組ですか?」
「渡辺孝と言う者の組だ」
神使は、相手が大名であろうと大身旗本であろうと気にしない。
神使が言葉を選ぶのは、稲荷神が認めた人間だけだ。
文が丁寧な言葉を選ぶのは、河内屋善兵衛と妻のみほ、それに七右衛門だけ。
次期河内屋当主である、大阪の両替商、河内屋徳太郎も歯牙にもかけていない。
河内屋徳太郎に才能がなければ、河内屋は瞬く間に傾くだろう。
「また証拠を集めてくれるのですか?」
「すでにある程度は集めています
必要ならもっと集めましょう」
前回の冤罪事件は七右衛門が真犯人を捕まえて解決しました。
火付け盗賊改めを憎んでいる江戸の町民は、七右衛門を褒め称えました。
手柄とは認められましたが、幕閣は苦々しくも思っています。
長谷川平蔵が活躍していた頃なら違っていたのでしょうが、火付け盗賊改めの母体である御先手組の多くでは、逆恨みしている者すらいるのです。
「いや、また真犯人を捕まえた方がいいですね。
冤罪で捕まっている者が、牢死と偽って殺される可能性もあります」
「手の者に見張らせいますから、その時は直ぐに分かります。
殺された直後にねじ込む事もできますよ」
七右衛門は驚いていた。
文がこのような不人情を口にするとは思ってもいなかったのだ。
「私を試しているのですか?
何の罪もない人が殺されるの待つことなどできません」
「さすが神様が選んだ人間です。
文が気にいるのも分かります」
七右衛門はまたも驚愕していた。
相手が文だと思い込んでいた。
姿形が文と全く同じなのだ。
今でも信じられない思いだったが、神使ならば可能かもしれないと思い直し、確認する事にした。
「貴女は文ではなかったのですか?」
「私達は元が狐です。
化けるのは得意中の得意です」
「そうなのですね。
ですがもう止めて下さい。
いくら神使殿であろうと、化かされて試されるのは気分が悪いです。
それくらいなら、もう加護などお返しいたします」
「いや、それは申し訳なかった。
もう二度とこのような事はせぬ。
だから許して欲しい」
調子に乗った神使は慌てて謝った。
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