王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる

克全

文字の大きさ
上 下
2 / 8
第一章

第2話:嬲り者

しおりを挟む
「おい、おい、おい、そんなに慌てるなよ、どうせ最後は殺すんだからよ」
「そう、そう、そう、死体は何も話せないから大丈夫だよ」
「だれかが来たらそいつも殺しちまえばいいんだよ」
「女だった並べてやっちまおうぜ」
「「「「「ウッヘッヘッヘッヘ」」」」」

 殺すと言っては私を怖がらせ、直ぐ取り消して嬲り者にすると言っては怖がらせる、本当に性根の腐った連中ですね。
 せめて何か武器があればいいのですが、腑抜けの家臣達は自分達が逃げるのに精一杯で、武器一つ残していきませんでした。
 
「いい加減にしやがれ!
 俺は殺されるのはごめんだからな。
 さっさと殺して終わりにするぞ。
 それともあの方の逆鱗に触れて殺されたいのか」

「分かったよ、もったいないが殺すよ、殺す」

「じゃあ死体を回収していいだろ。
 死体をアジトに運び込んで愉しんでもいだろ」

「駄目だ、アジトがバレるとあの方に殺される。
 もう俺一人でやる。
 お前達はあの方の逆鱗に触れるがいい」

 こいつらの黒幕はよほど恐ろしい奴のようですね。
 先程までの緩んだ言動が一気に緊張感の満ちたモノになりました。
 もう覚悟を決めて大魔術を行使しなければいけませんね。

 ヒッィイイィイイイイン
 ドガッゴン。

「ギャアアアアア」

「ア・バオ・ア・クゥー!」

 私の愛馬アバオアクーが助けに来てくれました。
 家臣達が私を見捨てて逃げてしまったのに、屋敷にいたアバオアクーは私を助けにここまで駆けて来てくれました。
 こんなにうれしい事はありません。

「何をしている、それでもお前ら剣士か。
 脚だ、軍馬は脚を斬るんだよ」

「ア・バオ・ア・クゥー、逃げて」

 ギャツヒッィイイィイイイイン。

 ああ、ア・バオ・ア・クゥーの脚が、脚が斬り裂かれてしまいました。

「このままユルシュルを斬り殺せ。
 馬が来た以上助けが来るぞ。
 急いでやってしまうんだ」

 ヒッィイイィイイイイン。

 もういい、もういいのよ、ア・バオ・ア・クゥー。
 これ以上やったら貴方まで死んでしまうわ。
 もう脚が千切れかけているわ。

「姫様、助けに参りましたぞ、姫様」
「ウォオオオオオ」
「死ねぇえええええ」

 ロドリグ、サロモン、ヴィオレット!
 流行り病で寝込んでいたはずなのに、助けに来てくれたのですね。

「いでよ、肉を焼く猛き炎」

 なんで今、大した攻撃力のない初級の火魔法を使うの。

「いでよ、肉を焼く猛き炎」

 え、また、なんで。

 痛い、熱い、痛い、熱い、顔が、顔が痛くて熱い。

「いでよ、肉を焼く猛き炎」

「ひめさまぁああああ!
 おのれ、死にさらせ」

 助けて、助けてヴィオレット、顔が、顔が、私の顔が。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢の一度きりの魔法

夜桜
恋愛
 領地を譲渡してくれるという条件で、皇帝アストラと婚約を交わした公爵令嬢・フィセル。しかし、実際に領地へ赴き現場を見て見ればそこはただの荒地だった。  騙されたフィセルは追及するけれど婚約破棄される。  一度だけ魔法が使えるフィセルは、魔法を使って人生最大の選択をする。

さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます

夜桜
恋愛
 令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。  アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。

寡黙な侯爵令嬢が笑う時

夜桜
恋愛
「アイナ、婚約破棄する」 口数少ない侯爵令嬢・アイナはその時を待っていた。 彼はきっと沈黙するって――。

公爵令嬢の誕生日

夜桜
恋愛
 公爵令嬢アムールは、誕生日に宮中伯のアレクに呼び出された。彼のお屋敷に向かうと信じられないサプライズが待ち受けていた――。

いつもわたくしから奪うお姉様。仕方ないので差し上げます。……え、後悔している? 泣いてももう遅いですよ

夜桜
恋愛
 幼少の頃からローザは、恋した男性をケレスお姉様に奪われていた。年頃になって婚約しても奪われた。何度も何度も奪われ、うんざりしていたローザはある計画を立てた。姉への復讐を誓い、そして……ケレスは意外な事実を知る――。

伯爵サマからいただいた婚約指輪は売ってしまいましたわ

夜桜
恋愛
 令嬢ティアは、伯爵バルトと婚約を交わす。ダイヤの指輪を貰ったティアは、それを売ってしまう。その理由は……。

婚約指輪ごとわたしを捨てた伯爵サマ

夜桜
恋愛
 令嬢シアは、伯爵フレンに婚約破棄させられ、指輪ごと崖から突き落とされ――捨てられた。絶望と悲しみに暮れていると、手を差し伸べてくれる王子様が現れた。

その方は婚約者ではありませんよ、お姉様

夜桜
恋愛
マリサは、姉のニーナに婚約者を取られてしまった。 しかし、本当は婚約者ではなく……?

処理中です...