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第一章
第43話:報復
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アバディーン聖国歴元年4月23日、王都王城王宮、カーツ視点
この1カ月、アバディーン聖国も聖女ミユキ王国連合も順調だった。
使い魔を王の影武者にして支配している各国で、法律を大幅に改正した。
盟主となった聖女深雪様にふさわしい慈悲深い法律に変えた。
身分を完全になくす事はできなかったが、王侯貴族士族が身分を笠に着ては平民を殺す事はもちろん、過酷な税を課す事も禁止した。
平均6割、多い所で8割もの税を課していたのを、上限を5割とした。
更に作物の収穫量以外に人頭税や屋敷税を課すことも制限した。
不当な条件で人を雇っている者、必要以上の大きな屋敷を持つ者には、特別に人頭税や屋敷税を課しても良いが、普通の農民に課す事を規制した。
俺に大敗した王や国を舐めて、聖女深雪様と王の連名で新しくなった法律を守らない有力貴族や、舐めた態度を取る士族には、使い魔を送って厳しい罰を与えた。
具体的に言えば、領民を集めて公開拷問にかけた。
ちょっとの痛みに泣き叫び命乞いする情けない姿を領民に見せた。
領主としての威厳も畏怖も地に落ちるようにした。
その上で、国法と王国連合法を破った罪で犯罪者奴隷落ちにした。
嫡男を含む一族の中には無罪になった者もいるが、その殆どが大人しくなった。
法を破ったら、同じ様に罰せられると思ったからだ。
それと、まだ何もしていないが、聖女深雪様に敵意を持つ者、隙あらば新たな覇権を握りたいと思っている者、そんな連中には下級使い魔の見張りをつけた。
これまで通り、超特級までの使い魔を量産している。
聖女深雪様の守りを最優先にはしているが、それは超特級の使い魔に任せているので、特級以下の使い魔は自由に使える。
聖女深雪様が直接支配している事になっている、アバディーン聖国には特級使い魔を中心に上級使い魔が補うように守りを固めている。
各国の影武者王や影武者王族は、特級使い魔が変化しているが、国を守る中核は中級使い魔が担っている。
王国連合の加盟国に広く散らばり、叛乱を未然に防ぐとともに、平民が不当に傷つけられないように見張っているのは、数の多い下級使い魔だ。
比較的強力な上級使い魔を中心に、濃い密度で下級使い魔を展開させているのは、聖女ミユキ王国連合と非加盟国の国境線だった。
我が国に大敗を喫して弱っている加盟国に、何時隣国が侵攻して来るか分からないし、国として攻め込んで来なくても、山賊のフリをして国内を荒らすかもしれない。
実際に多くの賊を、使い魔たちが捕らえてくれている。
純粋な盗賊や山賊もいたが、半数以上が国や領主が派遣した軍だった。
偵察の意味もあったのだろうが、民を殺し財を奪おうとしたのは許せない!
「聖女深雪様、報復に王と王族を捕らえても宜しいですか?」
「私にそれを聞くのですか?」
「何事も実行する前に相談させていただく事になりましたから」
「……王国連合の加盟した王や王族と同じように、影武者に成り代わらせて、王国連合に加盟させる気ですか?」
「聖女深雪様が反対されなければ、そのようにするつもりです」
「その方が誰も傷つかずに済むのですか?」
「国境線に使い魔を派遣せずに放置していたら、多くの民が殺され、女は尊厳を奪われ、財貨を奪われていました。
そのような悪事を命じた王や王族、領主を捕らえないと、繰り返し行われます。
聖女ミユキ王国連合に加盟している国は、俺の使い魔が守りますが、そうでない国は、今も財貨を奪われ女は犯され抵抗する者は殺され続けています。
それでも良いと言われるのでしたら、加盟国の守りを固めるだけにします」
「そんな風に言われたら、影武者に入れ変えるなと言えなくなってしまいます。
分かりました、王国連合の民だけでなく、他の国の民も助けるために必要な事をやってください」
「はい、聖女深雪様の平和を愛する心、民の安寧を願う心を現実して見せます」
「私はそのような立派な考えをしている訳ではありません。
ただ、目の前にいる不幸な人を助けたいだけです。
ですが、そのためにカーツ様に負担をかけるのも嫌なのです。
私に手助けできる事はありませんか?
カーツ様が申される通り、毎日魔力を向上させる努力はしていますが、本当にそれだけで良いのですか?」
「十分でございます、聖女深雪様。
深雪様が魔力向上に努力されている鍛錬は、そのまま穀物促成に繋がっています。
鍛錬されるほど、何かあった時に民に下賜する備蓄食糧が増えるのです」
「一石二鳥になっているのですか?」
「はい、攻撃魔術や回復魔術などは、基礎となる魔力さえあれば大丈夫です。
エリア・ウィンド・トルネードやエリア・パーフェクト・ヒールの魔道具は持っておられますね?」
「はい、カーツ様が作ってくださった魔道具は肌身離さず持っています」
「ならば大丈夫です、何の問題もありません。
必要な時に魔力さえ加えてくだされば、魔術が発動します。
特に呪文を覚える必要もなければ、呪文を唱えるための時間も不要です。
気をつけなければいけないのは、覚悟だけです。
攻撃を放たなければいけない時は、ためらう事なく即座に攻撃してください」
「……分かりました、ためらわないようにします」
本当に大丈夫だろうか?
心優しい聖女深雪は、自分を殺そうとした者にまで慈愛を与えてしまいそうだ。
常に側にいる超特級使い魔に、聖女深雪に止められても、襲って来た者は即座に殺すように厳命しておこう。
この1カ月、アバディーン聖国も聖女ミユキ王国連合も順調だった。
使い魔を王の影武者にして支配している各国で、法律を大幅に改正した。
盟主となった聖女深雪様にふさわしい慈悲深い法律に変えた。
身分を完全になくす事はできなかったが、王侯貴族士族が身分を笠に着ては平民を殺す事はもちろん、過酷な税を課す事も禁止した。
平均6割、多い所で8割もの税を課していたのを、上限を5割とした。
更に作物の収穫量以外に人頭税や屋敷税を課すことも制限した。
不当な条件で人を雇っている者、必要以上の大きな屋敷を持つ者には、特別に人頭税や屋敷税を課しても良いが、普通の農民に課す事を規制した。
俺に大敗した王や国を舐めて、聖女深雪様と王の連名で新しくなった法律を守らない有力貴族や、舐めた態度を取る士族には、使い魔を送って厳しい罰を与えた。
具体的に言えば、領民を集めて公開拷問にかけた。
ちょっとの痛みに泣き叫び命乞いする情けない姿を領民に見せた。
領主としての威厳も畏怖も地に落ちるようにした。
その上で、国法と王国連合法を破った罪で犯罪者奴隷落ちにした。
嫡男を含む一族の中には無罪になった者もいるが、その殆どが大人しくなった。
法を破ったら、同じ様に罰せられると思ったからだ。
それと、まだ何もしていないが、聖女深雪様に敵意を持つ者、隙あらば新たな覇権を握りたいと思っている者、そんな連中には下級使い魔の見張りをつけた。
これまで通り、超特級までの使い魔を量産している。
聖女深雪様の守りを最優先にはしているが、それは超特級の使い魔に任せているので、特級以下の使い魔は自由に使える。
聖女深雪様が直接支配している事になっている、アバディーン聖国には特級使い魔を中心に上級使い魔が補うように守りを固めている。
各国の影武者王や影武者王族は、特級使い魔が変化しているが、国を守る中核は中級使い魔が担っている。
王国連合の加盟国に広く散らばり、叛乱を未然に防ぐとともに、平民が不当に傷つけられないように見張っているのは、数の多い下級使い魔だ。
比較的強力な上級使い魔を中心に、濃い密度で下級使い魔を展開させているのは、聖女ミユキ王国連合と非加盟国の国境線だった。
我が国に大敗を喫して弱っている加盟国に、何時隣国が侵攻して来るか分からないし、国として攻め込んで来なくても、山賊のフリをして国内を荒らすかもしれない。
実際に多くの賊を、使い魔たちが捕らえてくれている。
純粋な盗賊や山賊もいたが、半数以上が国や領主が派遣した軍だった。
偵察の意味もあったのだろうが、民を殺し財を奪おうとしたのは許せない!
「聖女深雪様、報復に王と王族を捕らえても宜しいですか?」
「私にそれを聞くのですか?」
「何事も実行する前に相談させていただく事になりましたから」
「……王国連合の加盟した王や王族と同じように、影武者に成り代わらせて、王国連合に加盟させる気ですか?」
「聖女深雪様が反対されなければ、そのようにするつもりです」
「その方が誰も傷つかずに済むのですか?」
「国境線に使い魔を派遣せずに放置していたら、多くの民が殺され、女は尊厳を奪われ、財貨を奪われていました。
そのような悪事を命じた王や王族、領主を捕らえないと、繰り返し行われます。
聖女ミユキ王国連合に加盟している国は、俺の使い魔が守りますが、そうでない国は、今も財貨を奪われ女は犯され抵抗する者は殺され続けています。
それでも良いと言われるのでしたら、加盟国の守りを固めるだけにします」
「そんな風に言われたら、影武者に入れ変えるなと言えなくなってしまいます。
分かりました、王国連合の民だけでなく、他の国の民も助けるために必要な事をやってください」
「はい、聖女深雪様の平和を愛する心、民の安寧を願う心を現実して見せます」
「私はそのような立派な考えをしている訳ではありません。
ただ、目の前にいる不幸な人を助けたいだけです。
ですが、そのためにカーツ様に負担をかけるのも嫌なのです。
私に手助けできる事はありませんか?
カーツ様が申される通り、毎日魔力を向上させる努力はしていますが、本当にそれだけで良いのですか?」
「十分でございます、聖女深雪様。
深雪様が魔力向上に努力されている鍛錬は、そのまま穀物促成に繋がっています。
鍛錬されるほど、何かあった時に民に下賜する備蓄食糧が増えるのです」
「一石二鳥になっているのですか?」
「はい、攻撃魔術や回復魔術などは、基礎となる魔力さえあれば大丈夫です。
エリア・ウィンド・トルネードやエリア・パーフェクト・ヒールの魔道具は持っておられますね?」
「はい、カーツ様が作ってくださった魔道具は肌身離さず持っています」
「ならば大丈夫です、何の問題もありません。
必要な時に魔力さえ加えてくだされば、魔術が発動します。
特に呪文を覚える必要もなければ、呪文を唱えるための時間も不要です。
気をつけなければいけないのは、覚悟だけです。
攻撃を放たなければいけない時は、ためらう事なく即座に攻撃してください」
「……分かりました、ためらわないようにします」
本当に大丈夫だろうか?
心優しい聖女深雪は、自分を殺そうとした者にまで慈愛を与えてしまいそうだ。
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