40 / 44
第一章
第40話:駆け引き
しおりを挟む
アバディーン王国歴101年1月10日、新穀倉地帯、深雪視点
「カーツ様、今思いだしたのですが、私は聖女の術しか使えなかったと思うのです」
「ああ、それですか、まだ説明していませんでしたね」
「ああ、良かった、本当に以前は聖女の術しか使えなかったのですね?
戻して頂いた記憶がおかしいのかと心配だったのです」
「無用な心配をおかけしてしまった事、心から謝らせていただきます」
「いえ、謝って頂く必要はありません。
全て私の事を思ってやって下さったのでしょう?」
「確かに私利私欲ではなく、聖女深雪様を心配する余りにやった事です。
ですが、それは私の個人的な考えに過ぎません。
全て聖女深雪様のお気持ちを聞いてから行うべきでした」
「良いんです、本当にもう良いんです、だから原因だけ教えてくれませんか?」
「分かりました、2度と同じ失敗はしません。
何かする時は必ず聖女深雪様に確認させていただきます。
種豚チャールズ王太子に婚約破棄追放を言われる前と後で、聖女深雪様の使える魔術が格段に増えて強くなったのは、地球の神々の加護です」
「地球の神々が加護を下さったのですか?!」
「はい、この世界の神々は、本来自分たちがやらなければいけない、世界の管理を精霊にやらせていたのです。
しかも、その精霊の管理もやっていませんでした。
その所為で、神々の間で厳しく禁止されている、異世界間の魂移動、異世界間召喚を精霊がやったのです」
「異世界召喚はそれほど酷い行いだったのですね?!」
「はい、ただ、腐敗獣による被害にはどの世界も困っておりました。
この世界の神々があまりにも未熟で、自らの手で腐敗獣を斃せないので、地球の神々は腐敗獣討伐までは厳しい抗議は行わない事にしていたのです。
ですがそれは、聖女深雪がこの世界の人間社会でそれなりの地位を与えられる事、腐敗獣討伐の正統な報酬を得られるという前提でした。
それが、種豚チャールズ王太子の愚行で履行されなくなりました。
それも、その愚行に神々が世界管理を代行させていた精霊が加担していました。
激怒された地球の神々は、この世界の神々に厳重な抗議を行うと共に、聖女深雪様と俺に多くの加護と魔力を与えてくださったのです」
「そうなのですね、だから急に多くの魔術が使えるようになったのですね?」
「はい、はっきり言って、この世界の精霊は極悪人です。
欲に目が眩んで、卑怯下劣なベンジャミン王の言い成りになって、召喚する聖女深雪が聖女の術しか使えないようにしたのです。
邪魔になった時に、簡単に殺せるようにです」
「……そうですか、カーツ様が厳しい罰を与えるのもしかたありませんね」
「いえ、それは私も同じ事です。
私も全て知った上で、聖女深雪様を利用したのです。
この世界に生きる全ての命を守るためとはいえ、ベンジャミン王の悪事をみのがしたのです。
いえ、この世界の生きる命の為ということ自体が言い訳ですね」
「いえ、カーツ様がいてくださったから、守ってくださったから、私は生き残る事ができたのです、気に病む事は何もありません」
「そう言ってくださるのは有難いですが、犯した罪が無くなる訳ではありません。
俺は自分か犯した罪を背負って生きて行きます。
犯した罪を償うために生きて行きます。
その最初が、聖女深雪様の記憶を消して地球に戻って頂く事だったのですが、またしても罪を犯してしまいました。
聖女深雪様の意思を無視して、勝手に記憶を消してしまいました」
「そうですね、辛く苦しく哀しい思い出は多かったですが、全く何も良い思い出がなかった訳ではありません。
絶対に忘れたくない、大切な記憶もありました。
もう2度と勝手に記憶を消さないでください」
「やりません、もう2度と同じ過ちは繰り返しません」
「だったらもう良いです、過去の事よりもこれからの事を考えましょう」
「ありがとうございます、どうすれば良いのですか?」
「私と一緒にこの国を良くしてください。
身勝手な理由でこの世界に召喚され、利用されるのは嫌でした。
ですが、聖女としてこの世界を救う事には誇りを感じていました。
とてもやりがいのある役目だと思っていました。
でいればこれからも、やりがいのある、誇りが持てる役目を続けたいです。
ですが、地球に戻ったら、そんな役目にはつけません。
努力すれば、何か公共の役目に就けるかもしれませんが、この世界に残る方が重要な役目に就けると思うのです」
「確かに、この世界に残られた方が、世界を変えるような重要な役目に就けます。
ですが、先ほどのように、小悪人につけ狙われて嫌な思いもします。
この村では、あれ1人でしたが、重要な役目に就くほど、数も増え程度も悪くなり、聖女深雪様の繊細な心では辛過ぎる日々になります」
「確かに辛い思いをする事でしょう。
ですが、それでも、この世界を良くできるのならしかたがない事です。
それに、カーツ様が手伝ってくださるのですよね?」
「もちろんでございます、聖女深雪様。
この命尽きるまで、聖女深雪様の付き従い、お手伝いさせていただきます」
やった、これでずっとカーツ様と一緒にいられます!
「カーツ様、今思いだしたのですが、私は聖女の術しか使えなかったと思うのです」
「ああ、それですか、まだ説明していませんでしたね」
「ああ、良かった、本当に以前は聖女の術しか使えなかったのですね?
戻して頂いた記憶がおかしいのかと心配だったのです」
「無用な心配をおかけしてしまった事、心から謝らせていただきます」
「いえ、謝って頂く必要はありません。
全て私の事を思ってやって下さったのでしょう?」
「確かに私利私欲ではなく、聖女深雪様を心配する余りにやった事です。
ですが、それは私の個人的な考えに過ぎません。
全て聖女深雪様のお気持ちを聞いてから行うべきでした」
「良いんです、本当にもう良いんです、だから原因だけ教えてくれませんか?」
「分かりました、2度と同じ失敗はしません。
何かする時は必ず聖女深雪様に確認させていただきます。
種豚チャールズ王太子に婚約破棄追放を言われる前と後で、聖女深雪様の使える魔術が格段に増えて強くなったのは、地球の神々の加護です」
「地球の神々が加護を下さったのですか?!」
「はい、この世界の神々は、本来自分たちがやらなければいけない、世界の管理を精霊にやらせていたのです。
しかも、その精霊の管理もやっていませんでした。
その所為で、神々の間で厳しく禁止されている、異世界間の魂移動、異世界間召喚を精霊がやったのです」
「異世界召喚はそれほど酷い行いだったのですね?!」
「はい、ただ、腐敗獣による被害にはどの世界も困っておりました。
この世界の神々があまりにも未熟で、自らの手で腐敗獣を斃せないので、地球の神々は腐敗獣討伐までは厳しい抗議は行わない事にしていたのです。
ですがそれは、聖女深雪がこの世界の人間社会でそれなりの地位を与えられる事、腐敗獣討伐の正統な報酬を得られるという前提でした。
それが、種豚チャールズ王太子の愚行で履行されなくなりました。
それも、その愚行に神々が世界管理を代行させていた精霊が加担していました。
激怒された地球の神々は、この世界の神々に厳重な抗議を行うと共に、聖女深雪様と俺に多くの加護と魔力を与えてくださったのです」
「そうなのですね、だから急に多くの魔術が使えるようになったのですね?」
「はい、はっきり言って、この世界の精霊は極悪人です。
欲に目が眩んで、卑怯下劣なベンジャミン王の言い成りになって、召喚する聖女深雪が聖女の術しか使えないようにしたのです。
邪魔になった時に、簡単に殺せるようにです」
「……そうですか、カーツ様が厳しい罰を与えるのもしかたありませんね」
「いえ、それは私も同じ事です。
私も全て知った上で、聖女深雪様を利用したのです。
この世界に生きる全ての命を守るためとはいえ、ベンジャミン王の悪事をみのがしたのです。
いえ、この世界の生きる命の為ということ自体が言い訳ですね」
「いえ、カーツ様がいてくださったから、守ってくださったから、私は生き残る事ができたのです、気に病む事は何もありません」
「そう言ってくださるのは有難いですが、犯した罪が無くなる訳ではありません。
俺は自分か犯した罪を背負って生きて行きます。
犯した罪を償うために生きて行きます。
その最初が、聖女深雪様の記憶を消して地球に戻って頂く事だったのですが、またしても罪を犯してしまいました。
聖女深雪様の意思を無視して、勝手に記憶を消してしまいました」
「そうですね、辛く苦しく哀しい思い出は多かったですが、全く何も良い思い出がなかった訳ではありません。
絶対に忘れたくない、大切な記憶もありました。
もう2度と勝手に記憶を消さないでください」
「やりません、もう2度と同じ過ちは繰り返しません」
「だったらもう良いです、過去の事よりもこれからの事を考えましょう」
「ありがとうございます、どうすれば良いのですか?」
「私と一緒にこの国を良くしてください。
身勝手な理由でこの世界に召喚され、利用されるのは嫌でした。
ですが、聖女としてこの世界を救う事には誇りを感じていました。
とてもやりがいのある役目だと思っていました。
でいればこれからも、やりがいのある、誇りが持てる役目を続けたいです。
ですが、地球に戻ったら、そんな役目にはつけません。
努力すれば、何か公共の役目に就けるかもしれませんが、この世界に残る方が重要な役目に就けると思うのです」
「確かに、この世界に残られた方が、世界を変えるような重要な役目に就けます。
ですが、先ほどのように、小悪人につけ狙われて嫌な思いもします。
この村では、あれ1人でしたが、重要な役目に就くほど、数も増え程度も悪くなり、聖女深雪様の繊細な心では辛過ぎる日々になります」
「確かに辛い思いをする事でしょう。
ですが、それでも、この世界を良くできるのならしかたがない事です。
それに、カーツ様が手伝ってくださるのですよね?」
「もちろんでございます、聖女深雪様。
この命尽きるまで、聖女深雪様の付き従い、お手伝いさせていただきます」
やった、これでずっとカーツ様と一緒にいられます!
5
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
リバコーン公爵家の長女ソフィアは、全貴族令嬢10人の1人の聖獣持ちに選ばれたが、その聖獣がこれまで誰も持ったことのない小さく弱々しいトカゲでしかなかった。それに比べて側室から生まれた妹は有名な聖獣スフィンクスが従魔となった。他にもグリフォンやペガサス、ワイバーンなどの実力も名声もある従魔を従える聖女がいた。リバコーン公爵家の名誉を重んじる父親は、ソフィアを正室の領地に追いやり第13王子との婚約も辞退しようとしたのだが……
王立聖女学園、そこは爵位を無視した弱肉強食の競争社会。だがどれだけ努力しようとも神の気紛れで全てが決められてしまう。まず従魔が得られるかどうかで貴族令嬢に残れるかどうかが決まってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる