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第一章
第30話:誘因2
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アバディーン王国歴100年11月20日、新穀倉地帯、カーツ公子視点
(御主人様、シルソー王国が攻め込んでまいりました)
西側の国境を見張らせていた特級使い魔が報告してきた。
(予定通り国内の奥深くまで誘い込め)
(承りました、御主人様、予定通り奥深くに引きずり込みます。
ベンジャミン王が敵に味方しておりますが、殺しますか?)
(今はまだ殺さなくて良い。
シルソー王国に賠償金を払わせるまで、殺す必要はない。
できれば国王も国内奥深くにまで誘い込め。
それが無理でも、絶対に死傷させるな)
(はい、御主人様の仰せのままに)
俺の予定通り、ベンジャミン王はシルソー王国に逃げ込んだ。
シルソー王国は我が国を併合しようとベンジャミン王を旗頭にした。
人口3000万人のシルソー王国はほぼ我が国と同じ国力を持っている。
聖女深雪がこれ以上傷つかないようにするには、我が国、アバディーン王国内だけが平和で平等では駄目なのは分かっている。
この世界の全てが平和で平等でないと、聖女深雪は地球に戻っても胸を痛める。
強制的に地球に戻しても、この世界の不幸と不平等を嘆き悲しむのが分かっているから、安心してもらってから帰っていただく。
1番心配なのは、聖女深雪を無理矢理地球に戻してから、辛く哀しい記憶が蘇ってしまう事だ。
俺の手出しができない地球で聖女深雪の記憶が戻ってしまったら、どれほど嘆き悲しんでいても手を差し伸べる事ができない。
それが分かっているから、この世界を正して良くする。
少なくとも聖女深雪が安心できる程度にはこの世界を正す。
その状態を見せてから聖女深雪を地球に送り帰す。
問題は、聖女深雪の心の清らかさだ。
何の大義名分もなく、俺から隣国に攻め込むわけにはいかない。
だから、隣国から攻め込むように餌をまいたのだ。
最初からその心算だったわけではない。
聖女深雪の持つ、この世界の辛く哀しい記憶を消してから地球に帰す予定だった。
だが、聖女深雪の慈悲の心は俺の想像をはるかに超えていた。
単なる戦闘力では、俺は聖女深雪よりも上だろう。
だが、心の広さと強さはでは、俺は聖女深雪の足元にも及ばない。
そんな聖女深雪が安心して地球に帰れる状態にまでこの世界を変化させる。
(アバディーン王国軍のフリをして、国内奥深くまで誘い込め)
(((((はい!)))))
毎日食べられるだけ食べて、それを素材に魔力を高め血を造った
造った血を使い魔に与えて特級使い魔にまで成長進化させた。
それだけでなく、新たな下級使い魔もたくさん創り出した。
中級以上の使い魔には俺の血を与えなければいけないが、下級の使い魔なら魔力と魔法陣、核となる鳥獣と虫がいれば良い。
下級使い魔であろうと、無理矢理徴募された兵士が相手なら、万余の軍が相手でも1体で全滅させられるだけの戦闘力がある。
いや、並の騎士や徒士も同じだ。
万余の騎士や徒士がいても1体で全滅させてくれる。
問題は、並の人間を超える超人や亜人が敵軍にいる場合と、殺す事が許されない状況、今のような制限のある場合だ。
我が国に侵攻してきた軍は、1兵も死傷させる事なく、王都近くにまで誘い込まなければならない。
我が国、アバディーン王国と国境を接している国は、全て国内に誘い込んで逆侵攻の大義名分を手に入れなければいけない。
特にアバディーン王国よりも版図も広く人口も多い、大国インチャイラ王国が一方的に攻め込むようにしなかればいけない。
金や食糧なら幾らでも作り出せるが、失われた命を補う事ができない。
だから、民を殺させる事なく、王都近くにまで誘い込まなければならない。
都市や街の防衛は、圧倒的な実力がある上級から特級の使い魔に任せた。
隣国の軍を王都近くにまで誘い込むのは、上級精霊に匹敵する下級使い魔にまかせたが、とても上手くやってくれた。
下級使い魔は、シルソー王国軍10万兵に上手く負けたフリを演じてくれた。
シルソー王国の将軍は、追撃して戦果を拡大しようと考えたようで、周囲の都市や村を放置して国の中央部に誘い込まれてくれた。
どれだけ補給線が伸びても、我が国の都市や村から略奪すれば大丈夫だと考えているのだろう。
ベンジャミン王は、俺の事を恐れているのか、国内に侵攻する軍には同行しなかったが、これにはひと悶着あった。
10万兵を任された将軍は、旗頭でもあり人質でもあるベンジャミン王を、剣で脅してでも同行させようとしたのだ。
だが、死ねない永劫の生き地獄を経験しているベンジャミン王は、俺に敵対するくらいなら将軍に殺された方が楽だと考えたのだろう。
無理矢理連れて行くなら隙を見て死ぬと言い切った。
強行して本当に死なれてしまったら、我が国侵攻の大義名分が無くなってしまう。
それどころか、将軍が亡命した王を殺した事になる。
そんな事になったら、シルソー王国の正義を誰も信じなくなる。
将軍は、渋々ベンジャミン王を自国の王都に戻した。
少人数の護衛だけで国境周辺に置いて行くのが危険なのは誰にでも分かる。
種豚には分からなくても、普通の将軍なら、ベンジャミン王を殺して、アバディーン王国侵攻の大義名分を失わそうとする者がいる事くらい分かる。
殺さずに誘拐拉致する事ができれば、手に入れた国がアバディーン王国侵攻の大義名分を手に入れられる。
シルソー王国は大義名分を失い、即刻撤退するか、悪名を背負うのを覚悟で侵攻を続けなければいけなくなる。
その時に厳しい処分をされるのは、ベンジャミン王を奪われた将軍となる。
将軍がベンジャミン王を厳重な護衛をつけて自国の王都に送るのは当然だった。
(御主人様、シルソー王国が攻め込んでまいりました)
西側の国境を見張らせていた特級使い魔が報告してきた。
(予定通り国内の奥深くまで誘い込め)
(承りました、御主人様、予定通り奥深くに引きずり込みます。
ベンジャミン王が敵に味方しておりますが、殺しますか?)
(今はまだ殺さなくて良い。
シルソー王国に賠償金を払わせるまで、殺す必要はない。
できれば国王も国内奥深くにまで誘い込め。
それが無理でも、絶対に死傷させるな)
(はい、御主人様の仰せのままに)
俺の予定通り、ベンジャミン王はシルソー王国に逃げ込んだ。
シルソー王国は我が国を併合しようとベンジャミン王を旗頭にした。
人口3000万人のシルソー王国はほぼ我が国と同じ国力を持っている。
聖女深雪がこれ以上傷つかないようにするには、我が国、アバディーン王国内だけが平和で平等では駄目なのは分かっている。
この世界の全てが平和で平等でないと、聖女深雪は地球に戻っても胸を痛める。
強制的に地球に戻しても、この世界の不幸と不平等を嘆き悲しむのが分かっているから、安心してもらってから帰っていただく。
1番心配なのは、聖女深雪を無理矢理地球に戻してから、辛く哀しい記憶が蘇ってしまう事だ。
俺の手出しができない地球で聖女深雪の記憶が戻ってしまったら、どれほど嘆き悲しんでいても手を差し伸べる事ができない。
それが分かっているから、この世界を正して良くする。
少なくとも聖女深雪が安心できる程度にはこの世界を正す。
その状態を見せてから聖女深雪を地球に送り帰す。
問題は、聖女深雪の心の清らかさだ。
何の大義名分もなく、俺から隣国に攻め込むわけにはいかない。
だから、隣国から攻め込むように餌をまいたのだ。
最初からその心算だったわけではない。
聖女深雪の持つ、この世界の辛く哀しい記憶を消してから地球に帰す予定だった。
だが、聖女深雪の慈悲の心は俺の想像をはるかに超えていた。
単なる戦闘力では、俺は聖女深雪よりも上だろう。
だが、心の広さと強さはでは、俺は聖女深雪の足元にも及ばない。
そんな聖女深雪が安心して地球に帰れる状態にまでこの世界を変化させる。
(アバディーン王国軍のフリをして、国内奥深くまで誘い込め)
(((((はい!)))))
毎日食べられるだけ食べて、それを素材に魔力を高め血を造った
造った血を使い魔に与えて特級使い魔にまで成長進化させた。
それだけでなく、新たな下級使い魔もたくさん創り出した。
中級以上の使い魔には俺の血を与えなければいけないが、下級の使い魔なら魔力と魔法陣、核となる鳥獣と虫がいれば良い。
下級使い魔であろうと、無理矢理徴募された兵士が相手なら、万余の軍が相手でも1体で全滅させられるだけの戦闘力がある。
いや、並の騎士や徒士も同じだ。
万余の騎士や徒士がいても1体で全滅させてくれる。
問題は、並の人間を超える超人や亜人が敵軍にいる場合と、殺す事が許されない状況、今のような制限のある場合だ。
我が国に侵攻してきた軍は、1兵も死傷させる事なく、王都近くにまで誘い込まなければならない。
我が国、アバディーン王国と国境を接している国は、全て国内に誘い込んで逆侵攻の大義名分を手に入れなければいけない。
特にアバディーン王国よりも版図も広く人口も多い、大国インチャイラ王国が一方的に攻め込むようにしなかればいけない。
金や食糧なら幾らでも作り出せるが、失われた命を補う事ができない。
だから、民を殺させる事なく、王都近くにまで誘い込まなければならない。
都市や街の防衛は、圧倒的な実力がある上級から特級の使い魔に任せた。
隣国の軍を王都近くにまで誘い込むのは、上級精霊に匹敵する下級使い魔にまかせたが、とても上手くやってくれた。
下級使い魔は、シルソー王国軍10万兵に上手く負けたフリを演じてくれた。
シルソー王国の将軍は、追撃して戦果を拡大しようと考えたようで、周囲の都市や村を放置して国の中央部に誘い込まれてくれた。
どれだけ補給線が伸びても、我が国の都市や村から略奪すれば大丈夫だと考えているのだろう。
ベンジャミン王は、俺の事を恐れているのか、国内に侵攻する軍には同行しなかったが、これにはひと悶着あった。
10万兵を任された将軍は、旗頭でもあり人質でもあるベンジャミン王を、剣で脅してでも同行させようとしたのだ。
だが、死ねない永劫の生き地獄を経験しているベンジャミン王は、俺に敵対するくらいなら将軍に殺された方が楽だと考えたのだろう。
無理矢理連れて行くなら隙を見て死ぬと言い切った。
強行して本当に死なれてしまったら、我が国侵攻の大義名分が無くなってしまう。
それどころか、将軍が亡命した王を殺した事になる。
そんな事になったら、シルソー王国の正義を誰も信じなくなる。
将軍は、渋々ベンジャミン王を自国の王都に戻した。
少人数の護衛だけで国境周辺に置いて行くのが危険なのは誰にでも分かる。
種豚には分からなくても、普通の将軍なら、ベンジャミン王を殺して、アバディーン王国侵攻の大義名分を失わそうとする者がいる事くらい分かる。
殺さずに誘拐拉致する事ができれば、手に入れた国がアバディーン王国侵攻の大義名分を手に入れられる。
シルソー王国は大義名分を失い、即刻撤退するか、悪名を背負うのを覚悟で侵攻を続けなければいけなくなる。
その時に厳しい処分をされるのは、ベンジャミン王を奪われた将軍となる。
将軍がベンジャミン王を厳重な護衛をつけて自国の王都に送るのは当然だった。
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