誘拐拉致召喚された日本出身の聖女が、国を救ったら用なしと婚約破棄追放されそうだから、助ける事にした。

克全

文字の大きさ
上 下
16 / 44
第一章

第16話:討伐

しおりを挟む
アバディーン王国歴100年10月15日、レンウィック公爵領、カーツ視点

「ウォオオオオ、奪え、何もかも奪え」
「好機だぞ、聖女も討伐軍もいない今が好機だぞ」
「殺せ、殺せ、一人残らず殺せ、手柄をたてたら徒士になれるぞ!」
「ぎゃっはははは、城の中には良い女が山ほどいるぞ!」

 醜い隣国の兵士が公爵領に攻め込んで来た。
 聖女深雪を追放した事で、王都だけでなく国も守っていた結界が無くなった。

 俺が地球の神々に今回の追放劇を知らせた事で、腐敗獣討伐の為だからと、誘拐拉致召喚の懲罰を先延ばしにしていた地球の神々が動いた。

 他の世界の魂を無断で盗む異世界間召喚は、神々の世界では大罪だ。
 これを罰せず見て見ぬふりをする事は、自分の世界の魂を盗まれても文句を言えない事になる。

 だからこの世界の神々は、地球の神々の喧嘩を売っただけではすまないのだ。
 あらゆる世界の神々から盗人のレッテルを貼られる、とてつもない悪事なのだ。
 地球の神々と戦う事になったら、全ての神々が地球に味方する。

 世界の管理を任せていた精霊がやった事だと言っても許されない。
 そんな言い訳を許したら、全ての世界の神々が、精霊がやったと言い訳して、他の世界の魂を盗めることになってしまう。

 だからこの世界の神々は、地球に神々にひたすら謝るしかない。
 俺の要求を拒む事ができない。
 聖女深雪に賠償してから地球に戻すしか生き残るすべがない。

『この世界を管理する神々に問う、隣国の兵が俺の領地を攻めているのは、性根の腐ったお前達の差し金なのか?
 だとしたら宣戦布告と受け取って戦いを始めるが、良いんだな!』

「申し訳ありません、カーツ様。
 最下級精霊が管理を誤ったのでございます。
 今直ぐ撤退させますので、どうか御容赦願います。
 御詫びは後日、納得していただける物を持参させていただきます」

 また自分で謝らず、手先の精霊に謝らせて済ませる気だ。
 この世界の神々は完全に俺の事を舐めている。

 俺が舐められるだけなら良いが、このままだと聖女深雪に対する賠償まで手を抜いて良いと思うだろう。

 この世界の神々は、そういう思いあがった連中だ。
 人間の事を、手下の精霊に管理させている、生殺与奪の権利がある虫けら同然だと思っている。

 怒りの感情のまま、俺の魂の中核となっている生命力を高める。
 生物の寿命を決めている命数、命力を攻撃に使うべく生命力を高める。

 同時に、怒りの感情を気力を高める事に振り向ける。
 世界を構成する力の1つ、気力は人間の感情、精神力で増減させられる。
 気力に関しては前世から鍛えているので、直ぐに体内で練り上げられる。

 更にこの世界に来てから覚えた魔力を攻撃用に集める。
 元からある魔力を自分の経絡を巡回させる事で増やすだけでなく、この世界に満ちている魔力を身体の中に取り入れて、攻撃用の魔力に転換する。

 三つの力を、消化吸収系の内臓に循環させる事で身体を強化する。
 経絡の正しい流れに沿って送った三つの力を、チャクラと経穴に貯めている。

 生まれてから今日まで貯めて来た命力と魔力に、今高めた命力と気力、周囲から集めた魔力と合流させ練り上げる事で確かな塊にする。

『俺の命力、気力、魔力の全てを使ってこの世界を狂わす元凶を討つ!
 ゴッド・キラー』

 俺の心の決意と共に、命力、魔力、気力が相互に強化し合った攻撃が、この世界の神々がいる上位次元に放たれた。

『ギャアアアアア』

 この世界を激しく揺さぶるほどの振動が高位の次元から伝わっていた。
 確実に五柱の神を滅殺した手応えがある。

 これで残った神々も俺を舐めなくなるだろう。
 聖女深雪に対する賠償に手を抜く事も無くなるはずだ。

「……カーツ様、これはいったい……」

「お前のような使いっ走りに頭を下げさせて終わりにしようとした神々を滅ぼした。
 神々の処罰を受ける前に、俺に滅ぼされたくないのなら、さっさと責任を果たせ。
 今直ぐ撤退などと舐めた口をきいていないで、全て滅ぼせ!
 管理していた精霊共々隣国を跡形も残さず滅ぼせ!」

「あ、いえ、その、そうは申されましても」

「我が領民以外、四肢を潰して身動きできないようにしろ!
 ワン・ハンドレッド・ミリオン・マジック・ボルト」

 俺の怒りと共に一億の魔力弾が隣国の侵略者に殺到した。
 楽に即死させてやる気などないので、手足をグチャグチャに潰してやった。

 失血死のような楽な死に方はさせたくないので、出血しないようにした。
 腹空や胸部の傷だと、内部の大量出血で楽に死んでしまうかもしれないので、手足に限定して破壊した。

「残った魔力弾は近くにいる精霊を殺せ!
 魔力弾がある限り、異次元まで精霊を追って殺せ!
 それでも余る魔力弾は、高次元の神々に喰らわせてやれ!」

「ギャアアアアア」

 目の前にいた精霊が、数百の魔力弾を喰らって消滅した。
 人間用に魔力を絞って創った魔力弾だから、精霊用に創り出した魔力弾ほどの殺傷能力はない。

 最上位精霊を滅殺するなら一万くらいの魔力弾が必要だろう。
 とてもこの世界にいる全ての精霊を滅ぼす数ではない。
 だがそれは最初から分かっていた事だ。

 だがこれで、愚かな精霊たちも俺が本気だと分かったはずだ。
 俺に精霊どころか神々すら滅ぼす力があると分かったはずだ。
 もう二度と他国の侵略者をこの国に入れないだろう。

 万が一、聖女深雪が、この国が他国に侵略されていると知ったら、また助けたいと言い出すかもしれない。

 これ以上聖女深雪が傷つくかもしれない事は起こさせない。
 その為なら神々と戦う事になっても構わない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...