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第一章
第15話:開墾
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アバディーン王国歴100年10月5日、アバディーン王国某所、深雪視点
カーツさんはとても良い人です。
私の我儘をできるだけ叶えようとしてくれます。
私の事を特別な存在と言ってくれますが、そんな事はありません。
自分の心の隙間を埋めたいから、良い事をしようとしているだけです。
それなのに、心から称えてくれるので、胸が痛みます。
自分の身勝手さ、醜さに、吐き気がします。
それなのに、特別扱いしてもらえるのを、心地良く感じてしまいます。
特別な力があるなら、この世界に長く残る事をやりたいと思ってしまいます。
「深雪さんの優しい心と偉業が永遠に残るような事をしましょう」
カーツさんが、私の醜い欲望を見抜いているかのように言いました。
一瞬心臓が止まるかと思うほど衝撃を受けました。
じわじわと血が流れるような痛みを心に感じます。
「深雪さんの優しい思いが伝われば、1人でも2人でも善良な人間が育つかもしれませんから、大々的に善行を広めましょう。
そうすれば、深雪さんに続く人が現れるかもしれません」
よかった、私の醜い欲望を見抜かれたわけではなかった。
できれば、特別な存在、聖女としてこの世界にいたい。
広く私の存在をこの世界に残したい!
「人が生きていくのに絶対必要なのは食糧です。
その食糧を作るには畑が必要ですから、聖女の力で開墾しましょう。
以前は、動物たちのために人里離れた乾燥地帯に湖を造りました。
今度は、人里の近くに湖を造り用水路を整備して、広大な耕作地を造ります」
カーツさんが助けてくれるのでしたら、何も怖い事はありません。
準備も全てカーツさんがしてくれました。
聖女らしく見える服装も用意してくれました。
この世界の聖女が純白のドレスを着るとは思ってもいませんでした。
限られた時間に観られるテレビでやっていた、シスターの服装着るのだとばかり思っていたので、最初は恥ずかしくて、着たくないと思ってしまいました。
ですが、私から言い出したので、着たくないとは口にできませんでした。
顔が熱くなって、耳まで真っ赤になっているのが自分で分かるくらい恥ずかしくて、逃げ出したかったけれど、我慢しました。
「深雪さん、以前説明した短縮の呪文は使わないでください。
この世界の人間は近づけませんが、遠くからは見えるようにします。
深雪さんが特別な存在で、この世界の人々を助けるために命懸けで神と交渉しているように見せます。
そうする事で、人々の心に恩と善良を芽生えさせたいのです。
恥ずかしがらずに、神と交渉しているように見せかけてください。
実際に唱える呪文は、僕が小さな声で言いますから、大きく口を開けて唱えているように見せかけてください」
『この世界を創り出した神々よ、創造者の責任感があるなら最後まで責任を取れ。
お前達の犠牲になった聖女深雪が、この世界を救おうとしているのだから、最大限の手助けをしろ。
深雪が自分の魔力を使う事なく、水を貯める深くて広い湖を造れ。
この世界の理を変えてでも、好きな場所に湖を造れるようにしろ』
私はカーツさんの言葉に続いて復唱しました。
形だけ口を動かすのではなく、本気で心を込めて大きな声で復唱しました。
人里離れた場所で何度かやった湖造りが、順調に始まりました。
『この世界を創り出した神々よ、創造者の責任感があるなら最後まで責任を取れ。
お前達の犠牲になった聖女深雪が、この世界を救おうとしているのだから、最大限の手助けをしろ。
深雪が自分の魔力を使う事なく、耕作に必要な用水路を造りだせ。
この世界の理を変えてでも、好きな場所に用水路を造れるようにしろ』
この呪文、用水路という単語を使ってこの世界の神々に対する脅迫は初めてです。
もしかしたら拒絶されるかもしれないと思いましたが、順調に造られています。
以前造った川と用水路では、それほど変わらないからかもしれません。
遠くにいる人々がとても驚いているのが分かります。
最初は疑い深く見ていた人たちが、跪いて何か祈っています。
この世界の人たちは、本当に悪人ばかりなのでしょうか?
少なくとも、私とは違って神々か精霊は信じているように見えるのですが?
もしかして、カーツさんがこの世界に人々を憎んでいるのでしょうか?
何か嫌な事をやられて、嫌いになってしまったのでしょうか?
ですが、それなら、私が頼んだからと言って、この世界の人たちを助ける開墾に手を貸してくれるのはおかしいですよね?
カーツさんが私の事を大切にしてくれているのは間違いありません。
ですが感じ方や考え方が違うのは確かでしょう。
何もかも鵜呑みにしてはいけないのかもしれません。
ただ、迂闊に異世界の人々を信じない方が良いのは確かです。
学校のクラスメートでも、みんな考え方が違います。
両親が揃った、普通の家庭の子だから考え方が違うのではありません。
同じ児童養護施設で育った子でも、全く考え方が違いました。
テレビでは、都道府県で全然考え方が違うと言っていました。
国同士の考え方の違いで戦争になるとも言っていました。
だったら異世界が日本と全く違うのは当然でしょう。
「深雪さん、村の人間が御礼を言いたいと言っていますが、断ります。
もっと何かさせてやろう、利用してやろうという欲望が透けて見えます。
この後何があっても驚かないでください。
いえ、深雪さんに見せるものではありませんね、馬たちの所に戻します」
カーツさんはとても良い人です。
私の我儘をできるだけ叶えようとしてくれます。
私の事を特別な存在と言ってくれますが、そんな事はありません。
自分の心の隙間を埋めたいから、良い事をしようとしているだけです。
それなのに、心から称えてくれるので、胸が痛みます。
自分の身勝手さ、醜さに、吐き気がします。
それなのに、特別扱いしてもらえるのを、心地良く感じてしまいます。
特別な力があるなら、この世界に長く残る事をやりたいと思ってしまいます。
「深雪さんの優しい心と偉業が永遠に残るような事をしましょう」
カーツさんが、私の醜い欲望を見抜いているかのように言いました。
一瞬心臓が止まるかと思うほど衝撃を受けました。
じわじわと血が流れるような痛みを心に感じます。
「深雪さんの優しい思いが伝われば、1人でも2人でも善良な人間が育つかもしれませんから、大々的に善行を広めましょう。
そうすれば、深雪さんに続く人が現れるかもしれません」
よかった、私の醜い欲望を見抜かれたわけではなかった。
できれば、特別な存在、聖女としてこの世界にいたい。
広く私の存在をこの世界に残したい!
「人が生きていくのに絶対必要なのは食糧です。
その食糧を作るには畑が必要ですから、聖女の力で開墾しましょう。
以前は、動物たちのために人里離れた乾燥地帯に湖を造りました。
今度は、人里の近くに湖を造り用水路を整備して、広大な耕作地を造ります」
カーツさんが助けてくれるのでしたら、何も怖い事はありません。
準備も全てカーツさんがしてくれました。
聖女らしく見える服装も用意してくれました。
この世界の聖女が純白のドレスを着るとは思ってもいませんでした。
限られた時間に観られるテレビでやっていた、シスターの服装着るのだとばかり思っていたので、最初は恥ずかしくて、着たくないと思ってしまいました。
ですが、私から言い出したので、着たくないとは口にできませんでした。
顔が熱くなって、耳まで真っ赤になっているのが自分で分かるくらい恥ずかしくて、逃げ出したかったけれど、我慢しました。
「深雪さん、以前説明した短縮の呪文は使わないでください。
この世界の人間は近づけませんが、遠くからは見えるようにします。
深雪さんが特別な存在で、この世界の人々を助けるために命懸けで神と交渉しているように見せます。
そうする事で、人々の心に恩と善良を芽生えさせたいのです。
恥ずかしがらずに、神と交渉しているように見せかけてください。
実際に唱える呪文は、僕が小さな声で言いますから、大きく口を開けて唱えているように見せかけてください」
『この世界を創り出した神々よ、創造者の責任感があるなら最後まで責任を取れ。
お前達の犠牲になった聖女深雪が、この世界を救おうとしているのだから、最大限の手助けをしろ。
深雪が自分の魔力を使う事なく、水を貯める深くて広い湖を造れ。
この世界の理を変えてでも、好きな場所に湖を造れるようにしろ』
私はカーツさんの言葉に続いて復唱しました。
形だけ口を動かすのではなく、本気で心を込めて大きな声で復唱しました。
人里離れた場所で何度かやった湖造りが、順調に始まりました。
『この世界を創り出した神々よ、創造者の責任感があるなら最後まで責任を取れ。
お前達の犠牲になった聖女深雪が、この世界を救おうとしているのだから、最大限の手助けをしろ。
深雪が自分の魔力を使う事なく、耕作に必要な用水路を造りだせ。
この世界の理を変えてでも、好きな場所に用水路を造れるようにしろ』
この呪文、用水路という単語を使ってこの世界の神々に対する脅迫は初めてです。
もしかしたら拒絶されるかもしれないと思いましたが、順調に造られています。
以前造った川と用水路では、それほど変わらないからかもしれません。
遠くにいる人々がとても驚いているのが分かります。
最初は疑い深く見ていた人たちが、跪いて何か祈っています。
この世界の人たちは、本当に悪人ばかりなのでしょうか?
少なくとも、私とは違って神々か精霊は信じているように見えるのですが?
もしかして、カーツさんがこの世界に人々を憎んでいるのでしょうか?
何か嫌な事をやられて、嫌いになってしまったのでしょうか?
ですが、それなら、私が頼んだからと言って、この世界の人たちを助ける開墾に手を貸してくれるのはおかしいですよね?
カーツさんが私の事を大切にしてくれているのは間違いありません。
ですが感じ方や考え方が違うのは確かでしょう。
何もかも鵜呑みにしてはいけないのかもしれません。
ただ、迂闊に異世界の人々を信じない方が良いのは確かです。
学校のクラスメートでも、みんな考え方が違います。
両親が揃った、普通の家庭の子だから考え方が違うのではありません。
同じ児童養護施設で育った子でも、全く考え方が違いました。
テレビでは、都道府県で全然考え方が違うと言っていました。
国同士の考え方の違いで戦争になるとも言っていました。
だったら異世界が日本と全く違うのは当然でしょう。
「深雪さん、村の人間が御礼を言いたいと言っていますが、断ります。
もっと何かさせてやろう、利用してやろうという欲望が透けて見えます。
この後何があっても驚かないでください。
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