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第一章
第11話:溜息
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アバディーン王国歴100年9月24日、魔境、カーツ視点
「神々から魔術をもらえたのは、この世界を救うためですよね?
だったらここを出て世界を救わないといけないと思うのです」
聖女深雪に頼まれて魔術を教えた後に、こう言われて心から反省した。
何故俺は深雪が借りを作ったと思うような呪文を考えてしまったのだ!
深雪の優しい性格を考えたら、こうなると思い浮かべないといけなかった!
「そんな事はないよ、さっきも言ったろ、魔術は神々の償いだと」
「はい、カーツさんの言う通りなのかもしれません。
でも、私はそれほど酷い事をされたとは思っていません。
児童養護施設の友達に会えなくなったのは少し寂しいですが、カーツさんの御陰でそれほど辛くも悲しくもありません。
だからこれだけの魔術を授けてもらうと、もらい過ぎだと思うのです」
「いや、いや、本当にもらって当然の大した事のない魔術だから。
こんな腐り切った世界に連れてくるのは、もの凄い悪事だから」
「この世界の大半は腐り切っているかもしれませんが、カーツさんの御陰で辛い思いも悲しい思いもしていないですから。
ああ、そうか、この世界に役に立つには、ここを出てカーツさんに守られながら何かしないといけないのですね?
そうか、カーツさんに迷惑をかけてまでこの世界の役に立つ訳にはいきませんね」
参ったな、こんな風に言われると、手伝うのは嫌だと言えないよ。
それに、深雪がこの世界のために働くこと自体は問題ない。
問題になるのは、この世界のために働く事で深雪が辛い思いをしたり悲しい思いをしたりする事だ!
深雪を襲うような連中は事前に皆殺しにしておかないといけない。
猛獣に限らず、性根の腐った人間も皆殺しにしておく。
深雪に悲しい思いをさせるモノも排除しておかなくてはいけない。
五代王になってから酷政が続いたので、人の心が荒んでいる。
人殺しや盗みに何の罪悪も感じない人間がとても多い。
深雪のような優しい人間は、そんな人間を見ただけで心を痛める。
まして、深雪の優しさにつけ込んで利を得ようとした連中が現われ、深雪が騙され誰かを傷つける事があったら、以前のように深く激しい心の傷になる。
そんな連中も皆殺しにしておいた方が良いのだろうが、流石に躊躇う。
元々は連中が悪いのではなく、神々、精霊たち、為政者が悪いのだ。
俺もその為政者側に転生している。
その気になれば、この国くらいは正す事ができたのに、幼い頃に少しだけ良くしようとしただけで、自分がそこまでやる必要はないと放置した。
自分が努力して来なかったのに、同じ様に努力せず、この国の腐敗に身を任せただけの人間を殺すのは気が引ける。
特に、為政者側なら兎も角、平民側を処分するのは気が引ける。
だが、俺には平民よりも深雪の方が大切だ。
深雪を優先したうえで、性根の腐った平民を処分しない方法は無いか?
「そうか、深雪さんはとても優しいな。
深雪さんがそこまで言うのなら、何かこの世界を救う方法を考える。
ただし、深雪さんが絶対に傷つかない方法だぞ」
「ありがとうございます、カーツさんが考えてくださった通りにします」
「それと、1つだけ絶対に守ってもらいたい事がある」
「何でしょうか?」
「この世界の人間には絶対に接触しない」
「何故ですか、この世界の人間に接触したら問題があるのですか?」
「1つは病気だ、この世界の人間は、深雪さんが免疫を持っていない病原菌をもっているから、迂闊に接触すると死んでしまう」
「そんな、魔術でも治せない病気があるのですね!
魔術があると聞いて、どんな病気やケガも平気だと思っていました」
「確かに大抵の病気やけがは魔術で治る。
深雪さんの世界では治らない癌も、この世界の魔術を使えば治る。
だが、深雪さんの世界、日本が克服した病原菌のワクチンがまだないのだ。
天然痘のワクチンはあるが、破傷風のワクチンはない。
狂犬病も助からないんだ。
日本人の深雪さんが特に気をつけないといけないのは、可愛い姿をした動物だ。
迂闊に手を出して噛まれたら、酷く苦しんで死ぬことになる」
「そう、なのですね、可愛い動物も気をつけないといけないのですね。
私の周りに馬を放してくれているのはその為ですか?
安全な馬を放つ事で、危険な動物が近づかないようにしてくれているのですか?」
「結果的にそうなっただけで、考えてやった訳じゃないよ。
あの子たちの御陰で、毒蛇や毒虫、肉食獣や病原動物が近づかないのは本当だが、偶然の産物だよ」
「うふふふふ、偶然だったのですね、だったら素敵な偶然ですね」
「……もし人間と話せなくて悲しいのなら、ゴーレム軍馬に話しかければいい。
あいつは元々人間なので、普通に会話ができるよ」
「そうなのですか?!
元人間なのに、人間のゴーレムではなく馬のゴーレムに入れたのですか?!」
そう言われてしまうと、俺って物凄い悪人じゃないか!
「深雪さんに言われて初めて気づいたよ。
馬車を引くゴーレム馬が必要だったから、その辺にいた怨霊を適当に入れたんだが、オリバーが人型ゴーレムの方が良いと言うなら創り直すよ。
今なら深雪さんの馬車を引きたい軍馬がたくさんいるからね」
「はい、そうしてあげてください」
「神々から魔術をもらえたのは、この世界を救うためですよね?
だったらここを出て世界を救わないといけないと思うのです」
聖女深雪に頼まれて魔術を教えた後に、こう言われて心から反省した。
何故俺は深雪が借りを作ったと思うような呪文を考えてしまったのだ!
深雪の優しい性格を考えたら、こうなると思い浮かべないといけなかった!
「そんな事はないよ、さっきも言ったろ、魔術は神々の償いだと」
「はい、カーツさんの言う通りなのかもしれません。
でも、私はそれほど酷い事をされたとは思っていません。
児童養護施設の友達に会えなくなったのは少し寂しいですが、カーツさんの御陰でそれほど辛くも悲しくもありません。
だからこれだけの魔術を授けてもらうと、もらい過ぎだと思うのです」
「いや、いや、本当にもらって当然の大した事のない魔術だから。
こんな腐り切った世界に連れてくるのは、もの凄い悪事だから」
「この世界の大半は腐り切っているかもしれませんが、カーツさんの御陰で辛い思いも悲しい思いもしていないですから。
ああ、そうか、この世界に役に立つには、ここを出てカーツさんに守られながら何かしないといけないのですね?
そうか、カーツさんに迷惑をかけてまでこの世界の役に立つ訳にはいきませんね」
参ったな、こんな風に言われると、手伝うのは嫌だと言えないよ。
それに、深雪がこの世界のために働くこと自体は問題ない。
問題になるのは、この世界のために働く事で深雪が辛い思いをしたり悲しい思いをしたりする事だ!
深雪を襲うような連中は事前に皆殺しにしておかないといけない。
猛獣に限らず、性根の腐った人間も皆殺しにしておく。
深雪に悲しい思いをさせるモノも排除しておかなくてはいけない。
五代王になってから酷政が続いたので、人の心が荒んでいる。
人殺しや盗みに何の罪悪も感じない人間がとても多い。
深雪のような優しい人間は、そんな人間を見ただけで心を痛める。
まして、深雪の優しさにつけ込んで利を得ようとした連中が現われ、深雪が騙され誰かを傷つける事があったら、以前のように深く激しい心の傷になる。
そんな連中も皆殺しにしておいた方が良いのだろうが、流石に躊躇う。
元々は連中が悪いのではなく、神々、精霊たち、為政者が悪いのだ。
俺もその為政者側に転生している。
その気になれば、この国くらいは正す事ができたのに、幼い頃に少しだけ良くしようとしただけで、自分がそこまでやる必要はないと放置した。
自分が努力して来なかったのに、同じ様に努力せず、この国の腐敗に身を任せただけの人間を殺すのは気が引ける。
特に、為政者側なら兎も角、平民側を処分するのは気が引ける。
だが、俺には平民よりも深雪の方が大切だ。
深雪を優先したうえで、性根の腐った平民を処分しない方法は無いか?
「そうか、深雪さんはとても優しいな。
深雪さんがそこまで言うのなら、何かこの世界を救う方法を考える。
ただし、深雪さんが絶対に傷つかない方法だぞ」
「ありがとうございます、カーツさんが考えてくださった通りにします」
「それと、1つだけ絶対に守ってもらいたい事がある」
「何でしょうか?」
「この世界の人間には絶対に接触しない」
「何故ですか、この世界の人間に接触したら問題があるのですか?」
「1つは病気だ、この世界の人間は、深雪さんが免疫を持っていない病原菌をもっているから、迂闊に接触すると死んでしまう」
「そんな、魔術でも治せない病気があるのですね!
魔術があると聞いて、どんな病気やケガも平気だと思っていました」
「確かに大抵の病気やけがは魔術で治る。
深雪さんの世界では治らない癌も、この世界の魔術を使えば治る。
だが、深雪さんの世界、日本が克服した病原菌のワクチンがまだないのだ。
天然痘のワクチンはあるが、破傷風のワクチンはない。
狂犬病も助からないんだ。
日本人の深雪さんが特に気をつけないといけないのは、可愛い姿をした動物だ。
迂闊に手を出して噛まれたら、酷く苦しんで死ぬことになる」
「そう、なのですね、可愛い動物も気をつけないといけないのですね。
私の周りに馬を放してくれているのはその為ですか?
安全な馬を放つ事で、危険な動物が近づかないようにしてくれているのですか?」
「結果的にそうなっただけで、考えてやった訳じゃないよ。
あの子たちの御陰で、毒蛇や毒虫、肉食獣や病原動物が近づかないのは本当だが、偶然の産物だよ」
「うふふふふ、偶然だったのですね、だったら素敵な偶然ですね」
「……もし人間と話せなくて悲しいのなら、ゴーレム軍馬に話しかければいい。
あいつは元々人間なので、普通に会話ができるよ」
「そうなのですか?!
元人間なのに、人間のゴーレムではなく馬のゴーレムに入れたのですか?!」
そう言われてしまうと、俺って物凄い悪人じゃないか!
「深雪さんに言われて初めて気づいたよ。
馬車を引くゴーレム馬が必要だったから、その辺にいた怨霊を適当に入れたんだが、オリバーが人型ゴーレムの方が良いと言うなら創り直すよ。
今なら深雪さんの馬車を引きたい軍馬がたくさんいるからね」
「はい、そうしてあげてください」
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