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14話
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「ヨウナス、フェリクス。
領地の生産力を増強したいの。
この前の謁見で二人の献策は聞いたけど、それぞれの策を同時に始めてもいいの?
それとも同時にやると弊害があるの?」
私は新たに召し抱えた二人の賢者に意見を求めました。
ヨウナスは北の賢者と呼ばれていた魔法使い。
フェリクスは西の賢者と言われていた魔法使い。
表に出ているこの国の学者では、一二を争う者たちです。
二人を家臣に迎えられたのは幸いでした。
彼らも自分の研究を実際の統治で試したい時期だったのでしょう。
多くの弟子を連れて家臣に加わってくれました。
彼らのお陰で領内の事が急速に分かってきました。
特にフセインの圧政で疲弊していた、ハミルトン公爵領の事が分かったのが大きかったです。
「ふむ。
同時にやってもいいが、資金には限りがある。
こればかりは我らが勝手に決めるわけにはいかん。
これは公爵閣下がなにを優先したいかにかかっておる。
領地の防衛を優先したいのなら、再生産には寄与しないが、戦闘用の家臣を増やさねばならん。
一方領内の生産力を増やしたいのなら、戦闘用の家臣を減らし、公爵家直営の工房を増やさねばならん」
最初に話しだしたヨウナスがいったん話をやめ、フェリクスに視線を向ける。
このまま最後まで自分が話していいのか、フェリクスが続きを話すのかの確認でしょう。
二人を同格の仕置家老としたので、互いに気を使っているようですね。
「後は俺が話そう。
まあ今ヨウナスが言ったのは、あくまでも分かりやすくするための極論だ。
実際には両方必要で、ようはバランス、配分の問題だ。
今の公爵家だと、戦力の増強は絶対に必要だ。
王家とロクスバラ侯爵家に備える必要がある。
だが国力の増強のためには、工房を立ち上げるための資金も必要だ。
特に、公爵閣下が見せてくれた書から得られた知識技術は、一刻も早く活用せねばならん」
フェリクスが強く言い切りました。
彼らのような賢者からみても、フセインが独占していた知識と技術は驚嘆に値するモノだったようです。
もしフセインがもっと知恵者だったら、自分の戦闘力と知識技術を融合させて、驚くほどの強大な力を得ていたでしょう。
ですがフセインは己の戦闘力に自信を持ち過ぎていたようです。
自分の力なら、知識技術など不要と考えていたのでしょう。
集めた知識や技術に関する書も、単なる希少品収集欲だけで蒐集していたのかもしれませんが、それがこの国の人たちには幸いしたのかもしれません。
「なにか起死回生の手段はありませんか?
投資金額を少なくして、回収できる利益が多い方法です。
大々的にできない小さなことでも構いません。
小さなことをコツコツと積み重ねても、モントローズ公爵領をよくしていくのです!」
領地の生産力を増強したいの。
この前の謁見で二人の献策は聞いたけど、それぞれの策を同時に始めてもいいの?
それとも同時にやると弊害があるの?」
私は新たに召し抱えた二人の賢者に意見を求めました。
ヨウナスは北の賢者と呼ばれていた魔法使い。
フェリクスは西の賢者と言われていた魔法使い。
表に出ているこの国の学者では、一二を争う者たちです。
二人を家臣に迎えられたのは幸いでした。
彼らも自分の研究を実際の統治で試したい時期だったのでしょう。
多くの弟子を連れて家臣に加わってくれました。
彼らのお陰で領内の事が急速に分かってきました。
特にフセインの圧政で疲弊していた、ハミルトン公爵領の事が分かったのが大きかったです。
「ふむ。
同時にやってもいいが、資金には限りがある。
こればかりは我らが勝手に決めるわけにはいかん。
これは公爵閣下がなにを優先したいかにかかっておる。
領地の防衛を優先したいのなら、再生産には寄与しないが、戦闘用の家臣を増やさねばならん。
一方領内の生産力を増やしたいのなら、戦闘用の家臣を減らし、公爵家直営の工房を増やさねばならん」
最初に話しだしたヨウナスがいったん話をやめ、フェリクスに視線を向ける。
このまま最後まで自分が話していいのか、フェリクスが続きを話すのかの確認でしょう。
二人を同格の仕置家老としたので、互いに気を使っているようですね。
「後は俺が話そう。
まあ今ヨウナスが言ったのは、あくまでも分かりやすくするための極論だ。
実際には両方必要で、ようはバランス、配分の問題だ。
今の公爵家だと、戦力の増強は絶対に必要だ。
王家とロクスバラ侯爵家に備える必要がある。
だが国力の増強のためには、工房を立ち上げるための資金も必要だ。
特に、公爵閣下が見せてくれた書から得られた知識技術は、一刻も早く活用せねばならん」
フェリクスが強く言い切りました。
彼らのような賢者からみても、フセインが独占していた知識と技術は驚嘆に値するモノだったようです。
もしフセインがもっと知恵者だったら、自分の戦闘力と知識技術を融合させて、驚くほどの強大な力を得ていたでしょう。
ですがフセインは己の戦闘力に自信を持ち過ぎていたようです。
自分の力なら、知識技術など不要と考えていたのでしょう。
集めた知識や技術に関する書も、単なる希少品収集欲だけで蒐集していたのかもしれませんが、それがこの国の人たちには幸いしたのかもしれません。
「なにか起死回生の手段はありませんか?
投資金額を少なくして、回収できる利益が多い方法です。
大々的にできない小さなことでも構いません。
小さなことをコツコツと積み重ねても、モントローズ公爵領をよくしていくのです!」
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