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第一章
第13話:半信半疑・バーツ視点
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「兄上はそう申されますが、信じられません。
あの王弟殿下が初心で女性と話すのが苦手なんて、信じられるわけがありません。
それも、あんな事をなされた後でですよ。
アレグザンドラには平気で脅していたではありませんか」
やれ、やれ、なかなか信じてもらえないか。
まあ、万夫不当の猛将とか、天下無双の剛将とか呼ばれていたからね。
好きな令嬢には緊張して顔が強張り話しかけられないなんて、信じられないよな。
「アレグザンドラは国を蝕む獅子身中の虫だからだよ。
アレグザンドラは女性として見られていないんだよ。
国の敵、斃すべき相手として見られていたんだよ」
「信じられません、ええ、信じられませんとも。
アレグザンドラが美しい事は、姉である私がよく知っています。
ずっと比べられ陰口を言い続けられた私が誰より一番知っていますとも」
まいったな、心がこじれちまっているな。
まあ、確かに、アマーリエは兄の私から見ても美しくない。
いや、言葉を飾るのは止めよう。
エヴァンズ公爵家の権力がなければ結婚相手に困るくらいブスだ。
だが相手はあの王弟殿下なのだ。
「ああ、アマーリエは知らないだろうが、王弟殿下は特殊な眼をお持ちなのだ。
人間の心の美しさが見えてしまうのだよ。
だから王宮での社交には参加されなかったのだ。
アマーリエも社交の場にいる王侯貴族の汚さは知っているだろ。
姉なのだから、アレグザンドラの心の汚さも知っているだろ。
王弟殿下から見ればアレグザンドラは汚物同然なのだよ」
「まさか、王弟殿下にそんなお力があるのですか。
確かにそれならアレグザンドラを嫌うのは分かります。
分かりますが、信じられません」
困ったな、信じたいけど信じた後で騙されていたのが分かるのが怖いのだな。
ロバート王太子の裏切りや王侯貴族の陰口が心の傷になっているのだろうな。
その傷に触れられるのが怖いのだろう。
さて、どうしたモノだろう。
「なあ、アマーリエ、直ぐに信用しろとはもう言わない。
だが試してみてはどうだ。
私を信じて、王弟殿下と少し付き合ってみればいい。
もし私が嘘をついていたら、逃げればいいんだよ。
嘘をついてアマーリエを利用しようとした私の事など気にしないで、この国を捨てて逃げればいいんだよ。
それに、そうだな、もし私まで騙されていたなら、手伝うよ。
アマーリエが自由に生きられるように、この国から逃げるのを手伝うよ。
だから殿下とデートしてごらん」
「……分かりました。
兄上がそこまで言われるのなら、王弟殿下とデートしてみます」
やれ、やれ、手のかかる妹だ。
妹といい王弟殿下といい、厄介な性格の二人がこの国の支柱になるのか。
私が支えてやらないといけないな。
あの王弟殿下が初心で女性と話すのが苦手なんて、信じられるわけがありません。
それも、あんな事をなされた後でですよ。
アレグザンドラには平気で脅していたではありませんか」
やれ、やれ、なかなか信じてもらえないか。
まあ、万夫不当の猛将とか、天下無双の剛将とか呼ばれていたからね。
好きな令嬢には緊張して顔が強張り話しかけられないなんて、信じられないよな。
「アレグザンドラは国を蝕む獅子身中の虫だからだよ。
アレグザンドラは女性として見られていないんだよ。
国の敵、斃すべき相手として見られていたんだよ」
「信じられません、ええ、信じられませんとも。
アレグザンドラが美しい事は、姉である私がよく知っています。
ずっと比べられ陰口を言い続けられた私が誰より一番知っていますとも」
まいったな、心がこじれちまっているな。
まあ、確かに、アマーリエは兄の私から見ても美しくない。
いや、言葉を飾るのは止めよう。
エヴァンズ公爵家の権力がなければ結婚相手に困るくらいブスだ。
だが相手はあの王弟殿下なのだ。
「ああ、アマーリエは知らないだろうが、王弟殿下は特殊な眼をお持ちなのだ。
人間の心の美しさが見えてしまうのだよ。
だから王宮での社交には参加されなかったのだ。
アマーリエも社交の場にいる王侯貴族の汚さは知っているだろ。
姉なのだから、アレグザンドラの心の汚さも知っているだろ。
王弟殿下から見ればアレグザンドラは汚物同然なのだよ」
「まさか、王弟殿下にそんなお力があるのですか。
確かにそれならアレグザンドラを嫌うのは分かります。
分かりますが、信じられません」
困ったな、信じたいけど信じた後で騙されていたのが分かるのが怖いのだな。
ロバート王太子の裏切りや王侯貴族の陰口が心の傷になっているのだろうな。
その傷に触れられるのが怖いのだろう。
さて、どうしたモノだろう。
「なあ、アマーリエ、直ぐに信用しろとはもう言わない。
だが試してみてはどうだ。
私を信じて、王弟殿下と少し付き合ってみればいい。
もし私が嘘をついていたら、逃げればいいんだよ。
嘘をついてアマーリエを利用しようとした私の事など気にしないで、この国を捨てて逃げればいいんだよ。
それに、そうだな、もし私まで騙されていたなら、手伝うよ。
アマーリエが自由に生きられるように、この国から逃げるのを手伝うよ。
だから殿下とデートしてごらん」
「……分かりました。
兄上がそこまで言われるのなら、王弟殿下とデートしてみます」
やれ、やれ、手のかかる妹だ。
妹といい王弟殿下といい、厄介な性格の二人がこの国の支柱になるのか。
私が支えてやらないといけないな。
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