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第一章
第4話:想定外
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悪女アイリンに誘導され、ツビンズ公爵と正妻は、死神辺境伯との結婚話を回避するための相談に没頭していた。
公爵の地位と権力、王妹の立場と影響力、この二つを駆使して回避する事を考えたが、今回は条件が悪すぎた。
隣国が死神辺境伯を味方に付けようと、王女を嫁がせる策謀を巡らせているのだ。
死神辺境伯が隣国の家臣となってこの国に剣を向けたら、この国はよくて隣国の属国、悪くすれば完全に併合されてしまう。
「陛下に姫がいればいいのですが、いない以上私の娘を養女にして嫁がせるしかないのですよね、これは確かに難しいですわね」
決して無能ではないツビンズ公爵の話を聞いて、ウリヤーナは眉をひそめた。
彼女も王女として政治向きの教育は受けているから、愚かではない。
悪女アイリンに誘導されてしまい、子供可愛さに愚かな行動もとるが、それも愛情の裏返しである。
もっとも、その愛情も高慢な王族の身勝手な思考を基礎にしているのだが。
「三代前か四代前か、薄くても王家の血を継ぐ令嬢を陛下の養女にして嫁がせるしかないが、それでは隣国に比べてあまりに格落ちだな」
話せば話すほど、アイリン以外適任者がいない事に気が付く。
もう一人でも二人でも、カザフ王国に有能な将軍や騎士団長がいればよいのだが、残念ながら凡百の将軍や団長しかいない。
決して無能でも弱将でもないのだが、あまりにも死神が突出しているのだ。
死神がどの国の仕えるかで、大陸の勢力が大きく変わってしまう状況なのだ。
「いっそあの時捨てたパウリナを呼び戻しますか?
王家の血が濃けれいいのですから、別に顔に醜い痣があっても大丈夫でしょう。
美しい顔の女がよければ、後宮の女官をつけてやればいいのです」
ウリヤーナが母親とも言えない身勝手な事を口にした。
まあ、そもそも、畜生腹の双子を生んだのが恥ずかしいと、一人を殺そうとしたほど身勝手な性格の女だ。
重臣筆頭の王都家老が、決死の覚悟で「残した姫様が亡くなられる事もあります。殺すのではなく捨てましょう」と止めなければ、本当に母親の手で殺されていた。
こういう場合は、普通姉を残して妹を捨てるのだが、顔に醜い痣がある姉を、まるで汚物のように捨てさせた。
だか冷酷で身勝手なのは、ウリヤーナだけではなくツビンズ公爵も同じだ。
「せめて名前を授けて差し上げては」という王都家老バトウの言葉に耳を貸さず、侍女の古着にくるんだだけで教会の前に捨てさせたのだ。
そんな身勝手に捨てたパウリナを、今度も身勝手に取り戻そうと話がついたその時に、とんでもない話を王都家老バトウが持ち帰って来た。
「大変でございます、公爵閣下、奥方様。
パウリナ様が、パウリナ様が聖女に選ばれられました。
どうか、どうか、どうか直ぐにお出迎えを!」
公爵の地位と権力、王妹の立場と影響力、この二つを駆使して回避する事を考えたが、今回は条件が悪すぎた。
隣国が死神辺境伯を味方に付けようと、王女を嫁がせる策謀を巡らせているのだ。
死神辺境伯が隣国の家臣となってこの国に剣を向けたら、この国はよくて隣国の属国、悪くすれば完全に併合されてしまう。
「陛下に姫がいればいいのですが、いない以上私の娘を養女にして嫁がせるしかないのですよね、これは確かに難しいですわね」
決して無能ではないツビンズ公爵の話を聞いて、ウリヤーナは眉をひそめた。
彼女も王女として政治向きの教育は受けているから、愚かではない。
悪女アイリンに誘導されてしまい、子供可愛さに愚かな行動もとるが、それも愛情の裏返しである。
もっとも、その愛情も高慢な王族の身勝手な思考を基礎にしているのだが。
「三代前か四代前か、薄くても王家の血を継ぐ令嬢を陛下の養女にして嫁がせるしかないが、それでは隣国に比べてあまりに格落ちだな」
話せば話すほど、アイリン以外適任者がいない事に気が付く。
もう一人でも二人でも、カザフ王国に有能な将軍や騎士団長がいればよいのだが、残念ながら凡百の将軍や団長しかいない。
決して無能でも弱将でもないのだが、あまりにも死神が突出しているのだ。
死神がどの国の仕えるかで、大陸の勢力が大きく変わってしまう状況なのだ。
「いっそあの時捨てたパウリナを呼び戻しますか?
王家の血が濃けれいいのですから、別に顔に醜い痣があっても大丈夫でしょう。
美しい顔の女がよければ、後宮の女官をつけてやればいいのです」
ウリヤーナが母親とも言えない身勝手な事を口にした。
まあ、そもそも、畜生腹の双子を生んだのが恥ずかしいと、一人を殺そうとしたほど身勝手な性格の女だ。
重臣筆頭の王都家老が、決死の覚悟で「残した姫様が亡くなられる事もあります。殺すのではなく捨てましょう」と止めなければ、本当に母親の手で殺されていた。
こういう場合は、普通姉を残して妹を捨てるのだが、顔に醜い痣がある姉を、まるで汚物のように捨てさせた。
だか冷酷で身勝手なのは、ウリヤーナだけではなくツビンズ公爵も同じだ。
「せめて名前を授けて差し上げては」という王都家老バトウの言葉に耳を貸さず、侍女の古着にくるんだだけで教会の前に捨てさせたのだ。
そんな身勝手に捨てたパウリナを、今度も身勝手に取り戻そうと話がついたその時に、とんでもない話を王都家老バトウが持ち帰って来た。
「大変でございます、公爵閣下、奥方様。
パウリナ様が、パウリナ様が聖女に選ばれられました。
どうか、どうか、どうか直ぐにお出迎えを!」
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