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第一章

第2話:聖女・パウリナ視点

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 教会は聖女を選定しています。
 本気で聖女がいると思ってるわけではありません。
 聖女を選定するのも、教会による金儲けの一つです。
 教会から聖女に認定されれば、貴族令嬢が輿入れする時に箔がつきます。
 早い話が、嫁入り道具の一つになってしまっています。

「パウリナ、準備をしなさい」

 私が聖女選定を受ける順番が来ました。
 選ばれる事のない、金儲けの聖女選定に真実味を見せるための、単なる儀式です。
 はるか遠い昔には、本当に聖女が現れたこともあるそうですが、信じられません。
 神や聖女がおられるのなら、このような世の中ではないはずなのです。
 教会が金儲けのために偽者の聖女を選ぶような世の中には……

「おい、ぼやぼやするな、教皇猊下はお忙しいんだぞ!」

 おべっかに忙しい神官が偉そうに怒鳴り散らします。
 教皇の眼に留まって、司祭から司祭長に取立ててもらいたいのでしょう。
 普通なら教皇が私達のような孤児の聖女選定を行うはずがないと思うでしょう。
 でも、全ての選定に教皇が係わらないと、金をもらって偽聖女を選定する時に疑いが生まれてしまうのです。

 当代の教皇は特に金に汚く、まだ教会の力が小さかった時に、本当に資金に困った教会が、苦肉の策で偽聖女を認定した事があったそうです。
 歴代の教皇も、流石に偽聖女を立てて資金を得るのは避けていたそうですが、当代の教皇が頻繁に認定して私腹を肥やしているそうです。
 ですがあまりに数が多いと疑われるので、その分聖女選定の数を増やして、選定の回数が多いから聖女も多く見つかっていると言い訳しているのです。

「ほら、全員であそこに行くんだ、ぼやぼやするな!」

 追い立てられるように、真新しい白い貫頭衣を着せられた孤児院の者達が、普段は絶対に立ち入る事に許されない部屋に入れられました。
 煌びやかな衣装を着た高位の神官達がそろっていますが、以前聞いた噂では、枢機卿や大司教長はほとんどいないそうです。
 お金にならないこのような聖女選定には、教皇派の下っ端、教皇に媚び諂って階位をもらった、腰巾着達がやらされているそうです。

「さっさとやって終わるぞ」

 恐らく教皇が嫌々やっているのでしょうが、叩頭している私には姿が見えません。
 噂では、教会に伝わる錫杖で選定される者の肩を叩くのだそうです。
 もし本当の聖者や聖女がいれば、聖光で神殿全体が光り輝くのだそうです。
 偽者の聖女を作る時は、神官や修道女を総動員して掲げたランプで、偽の聖光をでっちあげるそうです。

 集まった人間を錫杖で叩くために、足早に移動する足音が近づきます。
 いよいよ私の順番です。
 これが終われば、私は教会から解放され、ダヴィドのお嫁さんになれるのです!
 私の肩が叩かれた瞬間、眼を瞑ってダヴィドの顔を思い浮かべていた私に、眼が眩むような光が襲ってきました。
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