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第一章

第1話:捨て子・パウリナ視点

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 私は親に愛される事なく、捨てられたのです。
 教会の前に捨てられたのは、親のせめてもの情けだったのでしょう。
 ですが、身元を確かめられる品は何一つなかったという事なので、暮らし向きが改善したら連れ戻す事は考えていなかったのでしょう。
 本気で捨てた、捨てるのに本気も嘘もないのですが、私と同じように捨てられた子の中には、親が後で自分の子供と分かるような品物を持たされている子もいる……

「やあ、パウリナ、元気だったかい、お土産だよ」

 私と同じ捨て子だったダヴィドが会いに来てくれました!

「お帰りなさい、ダヴィド、無事でよかったわ!」

 ダヴィドはとても努力家で、孤児院の子供たちの憧れです。
 最初は無理矢理徴兵された兵士でしたが、武勲を立てて次々と出世して、僅か十八歳で騎士に叙勲されるという、信じられない快挙を成し遂げたのです。
 ただ、ダヴィド自身は、自分の事をただの人殺しだと謙遜しています。
 でも、ダヴィドは滅多に人を殺しません。
 殺さずに人質にして、身代金を手に入れ、私達に差し入れしてくれるのです。

「今回も生きて帰ることができたよ。
 これもパウリナが毎日お祈りしてくれているからだよ。
 もう直ぐパウリナも成人だから、孤児院を出て結婚できるね」

 ゆっくりと近付いてきてくれたダヴィドが、優しく私の両手を自分の両手で包んでくれます。
 教会と孤児院の水仕事で荒れた私の手、しもやけとあかぎれのせいで、割れて血の流れる手、その手を何時も優しく包んでくれるのです。
 その優しい手のお陰で、私は教会から解放されるのです。

 教会の孤児院で育てられた捨て子は、死ぬまで教会で酷使されます。
 表向きは育ててくれたお礼という形になっていますが、現実は奴隷です。
 街の金持ちが金を積めば、売り払われる運命なのです。
 教会の言い訳は、養育費を回収しなければ、次の不幸な捨て子を育てられないというものですが、実際には孤児院運営を名目に貴族や金持ちから強引に献金を集めていますから、孤児院は集金のための道具なのです。

 私は顔に醜い痣があるので、神官の慰み者にされることも、金持ちや売春宿に売られることもありませんでしたが、辛く厳しい重労働をさせられてきました。
 そんな醜い私を、騎士に立身出世したダヴィドが、妻にしてくれるというのです。
 普通なら哀れみの慈悲だと思い卑屈になるのでしょうが、幼い頃から好きだと言ってくれて、優しくしてもらっていた私は、ダヴィドの愛を信じることができます。

 ダヴィドが命懸けの戦場で活躍してお金を集めてくれました。
 私を教会から買い取るために命を賭けてお金を蓄えてくれました。
 どれほど感謝しても感謝しきれません。
 聖女選定の儀式を終えなければ孤児院から出る事はできませんが、私のような醜い女が聖女に選ばれることはありませんから、来年にはダヴィドの妻になれます。
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