第十六王子の建国記

克全

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本編

手加減

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「爺、余が城を増強しても、他の貴族士族に与えられるのだろうな?」
「まず間違いなくそうなります」
「それは面白くないな」
「はい。後任の者が喜ぶだけでございます」
「爺が命じられているのは、エステ王国軍の撃退だけだったな」
「はい。ですからこのまま帰還することも事の不可能ではありませんが・・・・・」
「不可能ではないが、上手い手ではないだろうな」
「はい。少なくとも国境線までは進撃すべきかと思われます」
「だが勝手に進撃しても、後々揚げ足取りの材料にされるのではないか」
「はい。その可能性もありますので、王都に早馬を送って、今後の方針を確認しております」
「余としては、爺にはボニオン魔境騎士団に戻って欲しいのだが」
「はい。私もそれを希望しておりますので、帰還願を添えて使者を送りました」
「さて、余はどうするべきか?」
「一刻も早く、ネッツェ王国方面の防備に戻るべきだと思われます」
「そうだな。だがここまで来たのだから、アゼス魔境に少し寄り道して、食糧補給をしていこうと思う」
「ボニオン魔境とサウスボニオン魔境だけでは、不足でございますか?」
「余が沢山狩ると、魔境騎士や狩人が困るし、魔獣や魔蟲が枯渇してしまう可能性がある」
「確かにそうですね。殿下が魔境資源の枯渇を心配せずに狩りが出来るのは、ドラゴン魔境かアゼス魔境だけでございますね」
「だからまだ大規模な狩りが行われていない、アゼス魔境で狩れるだけ狩ろうと思う」
「しかし殿下が魔境狩りに集中されてしまうと、ネッツェ王国方面の事が分からなくなるのではありませんか」
「う~ん。だが直接ここに来て、短時間戦っただけで、他に寄り道もしていないぞ。一日二日の余裕はあると思うぞ」
「ならば魔境やダンジョン奥に入るのは止めて、ただただ食糧確保の為に、魔境の浅い場所で銅級や鉄級を狩るのに集中してくださいますか?」
「だがそれでは、アゼス魔境周辺の獣人族が困るのではないか」
「では獣人族が狩りに入らない程度の、ほどほどの場所で狩りをなされてください」
「う~ん。狩る速度が変わらないのなら、玉鋼級の下級ボスや金剛石級の下級属性竜を狩ってもいいのではないか?」
「そんな事をすれば、民や捕虜に配給する食糧が不足するのではありませんか?」
「いやそれが、ここ最近の戦いの御陰か、日に日に魔力が大幅に増加し、魔法袋の容量も増えているのだ」
「やれやれ、いったいどれくらい増えられたのですか?」
「多い日で五割、少ない日でも二割は増えている」
「私がこの前御聞きしていた容量から、どれくらい増えておられるのですか?」
「五倍ほどだな」
「ますます化物じみてきましたな・・・・・」
「化物は酷い表現だな」
「決して王妃殿下や王太子殿下に知られないようになされませ」
「今更もう無駄だろう」
「そうかもしれませんね・・・・・」
「では余は狩りに行くから、伝言があれば早馬で知らせてくれ」
「どちらにでございますか」
「アゼス魔境の獣人村と、ボニオン魔境騎士団城の両方だよ」
「やれやれ、アゼス魔境に日参される御心算ですね」
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