86 / 142
本編
アレクサンダー参上
しおりを挟む エステ王国軍の大規模魔法攻撃が、アリステラ王国王都騎士団に殺到し、一万を超える騎士が焼き殺されようとするその瞬間、圧倒的な魔力で作りだされた反射魔法が百カ所に出現した。
エステ王国軍が放ったはずの大規模魔法が、事もあろうにエステ王国軍の陣内に弾き返されたのだ。
エステ王国軍の陣内は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
圧倒的な防御魔法で護られた王都や国境の堅城を、完膚なきまでに破壊する為の魔法だ。
まともに受ければ人間など消し炭になってしまう。
いや、そこに人間がいた痕跡など、跡形もなくなってしまうほどの攻撃だ。
エステ王国軍陣内にいた人間は、一人残らず死に絶えた。
それどころか伝説の魔族でも、一般種は生き残ることは出来なかった。
生き残ることが出来たのは、高種の魔族だけだった。
いや、生き残ることが出来た高種魔族も、無傷とはいかなかった。
無傷で生き残っているのは、将種の魔族だけだった。
その将種魔族も、大幅に魔力を削られていた。
「爺、苦戦しているようだな」
「殿下! どうしてここに?!」
「爺がなかなか帰ってこないから、心配になって迎えに来たのだよ」
「ネッツェ王国は大丈夫なのですか?」
「魅了で支配下に置いた元々ネッツェ王国軍将兵を、最前線に配置したから大丈夫だ」
「そのような圧迫をかけたりしたら、ネッツェ王国を刺激する事になり、無用の戦闘を誘発してしまうことになりませんか?」
「パトリック達が最前線に陣取ってくれているから大丈夫だよ」
「そうですか。ですが心配です」
「爺から見れば、余やパトリックも、まだまだ嘴の黄色い若造でしかないのだな」
「いえいえ、殿下は立派な騎士であり冒険者です。他の者達が心配なだけです」
「爺にそう言って貰えるとうれしいよ」
「しかしながら、もう少し御自重して頂きたいです」
「魔族の実力が分からないうちは、最前線に出るなと言う事か?」
「はい」
「爺にしては考えが足りないな」
「どう言う意味でございますか!」
「怒ったかい? だが爺が悪いのだよ」
「私の何が悪いのですか?!」
「自分の実力と、自分が死んだ後の余の苦境を冷静に計算すべきだったな」
「・・・・・」
「実力の分からない魔族を合相手に、余と爺が連携して対峙する危険と、万が一爺が憤死するような事になった後で、爺を殺すことが出来るほどの魔族と、余が一人で対峙しなければいけなくなった危険だよ」
「私の考えが間違っておりました」
「分かってくれればいいよ」
「では、少々あざとくはありますが、殿下がここに来られて勝利を得られた以上、名声を広めることにいたしましょう」
「正妃殿下や王太子殿下に、悪印象を与えることにならないかい?」
「王都騎士団四万の忠誠心を買えるなら、十分な代償でございますし、悪印象を与えるとは限りません」
「分かったよ。少々恥ずかしいが、愛想を振りまくことにしよう」
「御分りの事とは思いますが、その時に治癒魔法も施されますように」
「分かっているよ」
「それと、もう攻撃魔法を御止めになられても大丈夫かと思われます」
「そうだね。もうエステ王国軍に生き残りはいないようだね」
エステ王国軍が放ったはずの大規模魔法が、事もあろうにエステ王国軍の陣内に弾き返されたのだ。
エステ王国軍の陣内は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
圧倒的な防御魔法で護られた王都や国境の堅城を、完膚なきまでに破壊する為の魔法だ。
まともに受ければ人間など消し炭になってしまう。
いや、そこに人間がいた痕跡など、跡形もなくなってしまうほどの攻撃だ。
エステ王国軍陣内にいた人間は、一人残らず死に絶えた。
それどころか伝説の魔族でも、一般種は生き残ることは出来なかった。
生き残ることが出来たのは、高種の魔族だけだった。
いや、生き残ることが出来た高種魔族も、無傷とはいかなかった。
無傷で生き残っているのは、将種の魔族だけだった。
その将種魔族も、大幅に魔力を削られていた。
「爺、苦戦しているようだな」
「殿下! どうしてここに?!」
「爺がなかなか帰ってこないから、心配になって迎えに来たのだよ」
「ネッツェ王国は大丈夫なのですか?」
「魅了で支配下に置いた元々ネッツェ王国軍将兵を、最前線に配置したから大丈夫だ」
「そのような圧迫をかけたりしたら、ネッツェ王国を刺激する事になり、無用の戦闘を誘発してしまうことになりませんか?」
「パトリック達が最前線に陣取ってくれているから大丈夫だよ」
「そうですか。ですが心配です」
「爺から見れば、余やパトリックも、まだまだ嘴の黄色い若造でしかないのだな」
「いえいえ、殿下は立派な騎士であり冒険者です。他の者達が心配なだけです」
「爺にそう言って貰えるとうれしいよ」
「しかしながら、もう少し御自重して頂きたいです」
「魔族の実力が分からないうちは、最前線に出るなと言う事か?」
「はい」
「爺にしては考えが足りないな」
「どう言う意味でございますか!」
「怒ったかい? だが爺が悪いのだよ」
「私の何が悪いのですか?!」
「自分の実力と、自分が死んだ後の余の苦境を冷静に計算すべきだったな」
「・・・・・」
「実力の分からない魔族を合相手に、余と爺が連携して対峙する危険と、万が一爺が憤死するような事になった後で、爺を殺すことが出来るほどの魔族と、余が一人で対峙しなければいけなくなった危険だよ」
「私の考えが間違っておりました」
「分かってくれればいいよ」
「では、少々あざとくはありますが、殿下がここに来られて勝利を得られた以上、名声を広めることにいたしましょう」
「正妃殿下や王太子殿下に、悪印象を与えることにならないかい?」
「王都騎士団四万の忠誠心を買えるなら、十分な代償でございますし、悪印象を与えるとは限りません」
「分かったよ。少々恥ずかしいが、愛想を振りまくことにしよう」
「御分りの事とは思いますが、その時に治癒魔法も施されますように」
「分かっているよ」
「それと、もう攻撃魔法を御止めになられても大丈夫かと思われます」
「そうだね。もうエステ王国軍に生き残りはいないようだね」
0
お気に入りに追加
233
あなたにおすすめの小説
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました
ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】
ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です
※自筆挿絵要注意⭐
表紙はhake様に頂いたファンアートです
(Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco
異世界召喚などというファンタジーな経験しました。
でも、間違いだったようです。
それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。
誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!?
あまりのひどい仕打ち!
私はどうしたらいいの……!?
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる