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本編
孤児の想い
しおりを挟む「おじさん、ごはんちょうだい」
「どうぞ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
子供達がちゃんと順番を待って食事を受け取っている。
わずかな時間しかなかったのに、よくしつけてくれたものだ。
「短時間で行儀を教えてくれたのだな」
「殿下が捕虜を助手に付けてくれたおかげでございます」
「捕虜の助手がそれほど役に立ったのか?」
「はい。悪い事をすると、魂を抜かれて人形にされてしまうと、目の前に罰を与えられた人間が現れましたから、魂を抜かれないように、いい人間になろうとしています」
「それは、余が恐怖政治を敷いたと言う事か?!」
「そうではございません。信賞必罰でございます」
複雑だ。
確かに信賞必罰と言えるかもしれないが、魅了は遣り過ぎだったかもしれない。
子供達には魂を抜かれていると思われたのだな。
確かに今の捕虜達には、自己による行動が出来ないから、魂がないのと同じだ。
だが五万もの捕虜を、反乱の恐れがあるのに自由にさせておくわけにもいけない。
「さあ、ご飯を食べ終わったら勉強だぞ」
「はい」
「やったぁ~」
「はやくおべんきょうおしえてぇ」
「さんすうがやりたい」
「えぇ~、じのべんきょうがしたいよ」
「はい、はい、はい、静かにしなさい。ちゃんと順番に全部教えてあげます」
「「「「「はぁ~い」」」」」
「それぞれ先生について勉強するのです」
「「「「「はぁ~い」」」」」
魅了の魔法で人を支配するのは、反省する点が多い。
人間としてやってはいけない事をしてしまった気がする。
だが、孤児院運営には役立っている。
捕虜の中で勉強のできる者を選抜して、孤児院で先生をさせる事にしたのだ。
魅了で支配して命令を与えているから、子供達を人質にして反乱を起こす心配がない。
本当の人格がどれほど卑怯であろうと、何の心配もなく仕事を任せられる。
最も多少の手間はある。
魅了の魔法が切れてしまわないように、最大でも七日以内に魅了をかけ直さなければならない。
その場その場の直接の指示は、魅了した者に指示を受ける上官を教えておけばすむ。
この孤児院に関しては、院長が捕虜達の指揮官だ。
万が一の事を考えて、騎士達には武装をさせている。
孤児達を攫おうとする者がいるかもしれないので、剣と動きやすい革鎧を装備させているのだ。
「せんせい、おはな」
小さい女の子が、手作りの花輪を捕虜先生の首にかけようとしている。
庭に咲いているありふれた花を集めて作ったのだろう。
この捕虜の本性が優しい人間であればいいのだが。
「殿下、次のご予定の時間です」
「分かった」
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