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本編
リントヴルム
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余達の前に現れたのはリントヴルムだった!
リントヴルムは魔境のボスと言われる魔獣の中でも金剛石級に位置付けられている。
ボス級は下から玉鋼級、金剛石級、緋緋色金、青生生魂と階級分けされている。
だが現在古竜はどの魔境でも確認されていないので、確認されているボスの中では二番目に強力な魔獣になる。
その身体は巨大な蛇に二本の前脚を備え、竜の頭を持っている。
緋緋色金級との根本的な違いは、ブレス攻撃が出来ないことだ。
冒険者にとって、ブレス攻撃があるとないとでは大きな違いがある。
だからと言って弱いと言うわけではなく、現に近づいて来るリントヴルムは、両前脚にブラッディベアーを確保し、口にもブラッディベアーを咥えている。
ブラッディベアーを捕食して食べているのだ。
たった一頭だけでも女冒険者達を追い詰める実力のあるブラッディベアーを、群れごとを襲い餌とするほどの強さを持っているのだ。
だがその程度で怯む余ではない!
女冒険者を助けると決めた時に、各種支援魔法と各種身体強化魔法は、四人でかけあっている。
「殺すな。両前脚と牙を斬り落とし、鱗と皮を剥ぎ取れ」
余が合図を送ろうとしたその時に爺が遮った。
「何故だ?!」
「万が一他のボス級が全て狩られていたりすると、魔境が解放されて魔獣が公爵領に溢れ出してしまいます。そんな事になれば領民が大きな被害を受けます」
「追い払うだけにしろと言う事か?」
「はい。ですが折角ですから、高値で売れる部位は斬り取らせてもらいましょう」
なるほど、これは余が考えなしだったな。
それに言葉遣いが命令口調になってしまった。
女冒険者達の前では問題がある言葉遣いだった。
だがまあ今回は問題ないようだ。
女冒険者達はリントヴルムの出現に茫然自失になっている。
「ロジャーが先陣をきり左右どちらでもいいから腕を斬り落とす。次にパトリックが残った腕を斬り落とし、アーサー殿が牙を斬り落とす。最後に私が鱗と皮を剥ぎ取る。誰かがしくじったら次の者が代わりを務める。いいか?」
「「「おう!」」」
ロジャーが迫りくるリントヴルムを迎え討とうと一気に走り出す。
余達もそれに続く。
女冒険者達は逃げる事も出来ずに呆然と見ている。
逃げるように指示するか?
いや、余達の目の届かないところで、また強力な魔獣に襲われるかもしれない。
このままでいてもらおう。
ロジャーが偽装の帯剣ではなく、魔法袋から愛剣を抜く。
余達が普段帯剣しているのは、士族が持っていてもおかしくない魔剣だ。
士族が持っていてもおかしくない魔剣とは、自分たちが狩った魔獣の牙や爪を刃金に使い、心金は衝撃を受けた時に剣が折れないように軟鉄が使われている。
そして剣が曲がらないように、刃金と心金を包む鋼鉄が側面を覆っている。
そして余達が普段帯剣している魔剣の刃金は、白金級魔獣の牙が使われている。
王都魔境や王都ダンジョンで真剣に鍛錬していれば、これくらいの装備を整えるのは可能だ。
だが余達は魔法袋から取り出した愛剣はその程度の魔剣ではない。
余は父王陛下から拝領した、刃金にリントヴルムの牙を埋め込み、刃金と側金の間に魔力を通す白銀を挟み、魔力剣としても使えるようにしてある宝剣を手にしている。
爺も余と同じ作りの剣を手にしているが、余と違うのは、刃金に使っているリントヴルムの牙を爺自ら狩って手に入れたものだと言う事だ。
パトリックが手にしている魔剣は、余と爺の魔剣よりは少し劣るが、刃金にキングアベアの牙が使われている。
キングベアは王都魔境のボスで、王都に安定した食料と富をもたらせてくれる魔境には欠かせられない存在だ。
殺してしまうと魔獣が王都魔境から溢れてしまうが、魔獣が増え過ぎても魔獣が溢れでてしまう。
だからキングベアは殺さないように、でも魔獣は常に狩らねばならない。
だからこそ王都に駐屯する騎士団はもちろん、王都に住む貴族士族卒族は、先輩の指導と管理の下で、王都魔境と王都ダンジョンで実戦訓練を行うのだ。
もっとも最近では、王侯貴族の王子公子で本気の実戦訓練を行う者は少なくなっている。
多くの陪臣士族卒族の護衛の下で、指揮訓練という体裁を取り、自分では戦わず陪臣に戦わせるだけの実戦訓練が普通になっている。
それでも余を始めとする少数の王侯貴族が本気で実戦訓練を行っているのは、祖父王陛下と父王陛下の努力の賜物だろう。
もしそうでなかったら、今の王家王国がどうなっていたか想像すると、恐ろしくなってしまう。
そうなのだ。
余達は爺の指導の下で、命懸けの実戦訓練を重ね、王都魔境に君臨するキングベアを殺すことなく、その牙や爪だけを斬り落とし、己の武器を創り出す素材にするくらいの実力をつけていたのだ。
ただ殺すだけなら、命懸けで挑めばいい。
だが自分達が死ぬことなく、戦う相手を間違っても殺さないような戦いをするには、相手に数倍する実力がなくてはならない。
そしてそれが出来るくらいの実力がなくては、王都の繁栄を支えるキングベアに挑むことは許させない。
余達はそれが許させるだけの強者なのだ。
今の王都には、王太子殿下と第二王子殿下以外の王侯貴族の中にはそのような者は一人もいないし、騎士団の所属する者にも一人もいない。
残念な事だが、堕落した王都の騎士団にはキングベアに挑める者がいないのだ。
だがそんな騎士団でも、常日頃から形式的とは言え王都魔境や王都ダンジョンで訓練を重ねているので、魔境とダンジョンが存在しないネッツェ王国の騎士団よりは遥かに強力なのだ。
そんな事を考えている間に、ロジャーがリントヴルムの間近に迫った!
リントヴルムは魔境のボスと言われる魔獣の中でも金剛石級に位置付けられている。
ボス級は下から玉鋼級、金剛石級、緋緋色金、青生生魂と階級分けされている。
だが現在古竜はどの魔境でも確認されていないので、確認されているボスの中では二番目に強力な魔獣になる。
その身体は巨大な蛇に二本の前脚を備え、竜の頭を持っている。
緋緋色金級との根本的な違いは、ブレス攻撃が出来ないことだ。
冒険者にとって、ブレス攻撃があるとないとでは大きな違いがある。
だからと言って弱いと言うわけではなく、現に近づいて来るリントヴルムは、両前脚にブラッディベアーを確保し、口にもブラッディベアーを咥えている。
ブラッディベアーを捕食して食べているのだ。
たった一頭だけでも女冒険者達を追い詰める実力のあるブラッディベアーを、群れごとを襲い餌とするほどの強さを持っているのだ。
だがその程度で怯む余ではない!
女冒険者を助けると決めた時に、各種支援魔法と各種身体強化魔法は、四人でかけあっている。
「殺すな。両前脚と牙を斬り落とし、鱗と皮を剥ぎ取れ」
余が合図を送ろうとしたその時に爺が遮った。
「何故だ?!」
「万が一他のボス級が全て狩られていたりすると、魔境が解放されて魔獣が公爵領に溢れ出してしまいます。そんな事になれば領民が大きな被害を受けます」
「追い払うだけにしろと言う事か?」
「はい。ですが折角ですから、高値で売れる部位は斬り取らせてもらいましょう」
なるほど、これは余が考えなしだったな。
それに言葉遣いが命令口調になってしまった。
女冒険者達の前では問題がある言葉遣いだった。
だがまあ今回は問題ないようだ。
女冒険者達はリントヴルムの出現に茫然自失になっている。
「ロジャーが先陣をきり左右どちらでもいいから腕を斬り落とす。次にパトリックが残った腕を斬り落とし、アーサー殿が牙を斬り落とす。最後に私が鱗と皮を剥ぎ取る。誰かがしくじったら次の者が代わりを務める。いいか?」
「「「おう!」」」
ロジャーが迫りくるリントヴルムを迎え討とうと一気に走り出す。
余達もそれに続く。
女冒険者達は逃げる事も出来ずに呆然と見ている。
逃げるように指示するか?
いや、余達の目の届かないところで、また強力な魔獣に襲われるかもしれない。
このままでいてもらおう。
ロジャーが偽装の帯剣ではなく、魔法袋から愛剣を抜く。
余達が普段帯剣しているのは、士族が持っていてもおかしくない魔剣だ。
士族が持っていてもおかしくない魔剣とは、自分たちが狩った魔獣の牙や爪を刃金に使い、心金は衝撃を受けた時に剣が折れないように軟鉄が使われている。
そして剣が曲がらないように、刃金と心金を包む鋼鉄が側面を覆っている。
そして余達が普段帯剣している魔剣の刃金は、白金級魔獣の牙が使われている。
王都魔境や王都ダンジョンで真剣に鍛錬していれば、これくらいの装備を整えるのは可能だ。
だが余達は魔法袋から取り出した愛剣はその程度の魔剣ではない。
余は父王陛下から拝領した、刃金にリントヴルムの牙を埋め込み、刃金と側金の間に魔力を通す白銀を挟み、魔力剣としても使えるようにしてある宝剣を手にしている。
爺も余と同じ作りの剣を手にしているが、余と違うのは、刃金に使っているリントヴルムの牙を爺自ら狩って手に入れたものだと言う事だ。
パトリックが手にしている魔剣は、余と爺の魔剣よりは少し劣るが、刃金にキングアベアの牙が使われている。
キングベアは王都魔境のボスで、王都に安定した食料と富をもたらせてくれる魔境には欠かせられない存在だ。
殺してしまうと魔獣が王都魔境から溢れてしまうが、魔獣が増え過ぎても魔獣が溢れでてしまう。
だからキングベアは殺さないように、でも魔獣は常に狩らねばならない。
だからこそ王都に駐屯する騎士団はもちろん、王都に住む貴族士族卒族は、先輩の指導と管理の下で、王都魔境と王都ダンジョンで実戦訓練を行うのだ。
もっとも最近では、王侯貴族の王子公子で本気の実戦訓練を行う者は少なくなっている。
多くの陪臣士族卒族の護衛の下で、指揮訓練という体裁を取り、自分では戦わず陪臣に戦わせるだけの実戦訓練が普通になっている。
それでも余を始めとする少数の王侯貴族が本気で実戦訓練を行っているのは、祖父王陛下と父王陛下の努力の賜物だろう。
もしそうでなかったら、今の王家王国がどうなっていたか想像すると、恐ろしくなってしまう。
そうなのだ。
余達は爺の指導の下で、命懸けの実戦訓練を重ね、王都魔境に君臨するキングベアを殺すことなく、その牙や爪だけを斬り落とし、己の武器を創り出す素材にするくらいの実力をつけていたのだ。
ただ殺すだけなら、命懸けで挑めばいい。
だが自分達が死ぬことなく、戦う相手を間違っても殺さないような戦いをするには、相手に数倍する実力がなくてはならない。
そしてそれが出来るくらいの実力がなくては、王都の繁栄を支えるキングベアに挑むことは許させない。
余達はそれが許させるだけの強者なのだ。
今の王都には、王太子殿下と第二王子殿下以外の王侯貴族の中にはそのような者は一人もいないし、騎士団の所属する者にも一人もいない。
残念な事だが、堕落した王都の騎士団にはキングベアに挑める者がいないのだ。
だがそんな騎士団でも、常日頃から形式的とは言え王都魔境や王都ダンジョンで訓練を重ねているので、魔境とダンジョンが存在しないネッツェ王国の騎士団よりは遥かに強力なのだ。
そんな事を考えている間に、ロジャーがリントヴルムの間近に迫った!
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