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本編
ティタノボア来襲
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余達は砦にいた人間族の冒険者を、五時間かけて全員尋問した。
特に砦主を任されていた代官の三男に対しては、彼個人が犯した罪と同時に、父である代官の犯罪はもちろん、砦から贈っていた賄賂を受け取った、王国重臣の犯罪も自白させた。
だが三男が公の場で証言を翻す可能性もあるので、客観的な証拠となる、砦から贈った賄賂の記録帳のありかを自白させた。
最初はないと言い張っていた三男だが、余が真実を話さずにはおられない、自白魔法をかけることで隠し場所を白状した。
魔法の長い歴史の中で、各時代に必要とされる魔法が研究されていた。
当然敵を倒すための攻撃魔法は研究されていたし、生き残るための防御魔法も研究されていたが、敵から情報を聞き出すために研究されたものもあるのだ。
そして生きていくうえで少しでも便利であるように、生活に必要な魔法も開発せれていたし、人間の一番の欲望である、食べると言う事に対する魔法も研究されていた。
「魔獣か?!」
「ふ、ふ、ふ、ふ、やっと起きやがったか」
「これで御前達もおしまいだ。俺達と一緒に魔獣の餌になるがいい」
「何をしやがった」
普段はロジャーが最初に怒り出すのだが、今のメンバーだとマーティンがその役柄になる。
家臣達は余が民と直接話すのを嫌うが、余自身は民と触れ合い話がしたい。
だが今回のような、穢れた罪人と話したいとは思わないので、魔法は余がかけたもののマーティンが尋問役をしてくれていたので、その流れでおかしなことを言いだした魔法使いと聖職者を問いただしていた。
「魔獣だよ、魔獣」
「そうだ魔獣だ。獣人のような穢れた者達を助けようとする御前達は、魔獣に喰い殺されるがいい」
どうもこの魔法使いと聖職者は、人種差別主義者のようだ。
この二人が個人的のそういう主義者ならまだいいが、聖職者が所属する教会や教団自体が人種差別に凝り固まっているのなら、王家の一員として見過ごす訳にはいかない。
「正直に言いな! さもないと鼻を削ぐよ」
姉御が三男の鼻に短剣を押し付けて話を聞き出そうとしている。
狂信者の可能性のある魔法使いと聖職者から話を聞き出すより、尋問していて臆病者と分かった三男から聞き出す方が早いと判断したのだろう。
「ティタノボアだ。こいつらが睡眠魔法で眠らせていたティタノボアが起き出したのだ」
ティタノボアが現れただと!
ティタノボアは魔獣の一種で、全長十五メートル、体重千二百キログラム、胴の最大直径一メートルと、その巨大さだけでも普通の人間猟師が太刀打ちできる相手ではない。
しかも魔獣と特有の強固な鱗と皮膚で全身が覆われているため、鋼鉄の武器であろうと全く通用しない上に、尋常ではない生命力を持つ魔獣のなかでも、蛇種の魔獣は恐ろしいほどの生命力を持ち、卵から孵ったばかりの幼生体の頭部を切断しても、数日生きているくらいだ。
いや、噂が本当だったとしたら、切断面をあわせておくと、元の状態に接合するほどの治癒能力があると言うのだから恐ろしい。
「どうしましょう、ベン男爵閣下」
さすがに男勝りの姉御も、ティタノボアが相手だと恐怖を感じるようだ。
「アーサー殿はどう思われるかな」
爺の期待には応えねばならんな。
「睡眠魔法で眠らせ、そこを一撃必殺の攻撃で仕留める」
「睡眠魔法で眠らせられると考えた根拠はなんですかな」
「ここにいる魔法使いと聖職者もそれなりの実力者だとは思うが、爺やパトリック達ほどだとは思えない。こいつらの睡眠魔法が通じるのなら、我らの睡眠魔法も通用するはずだ」
「悪くない判断ですが、こいつらが何か特殊な睡眠魔法を使った可能性もあります。その場合はどうなされますかな」
「身体強化魔法と防御魔法を使い、正攻法で倒す。万が一敵わない場合は、こいつらを餌にしてティタノボアを満腹にさせる。満腹になった後なら、睡眠魔法で眠らせられるかもしれない。こいつらも睡眠魔法を使う前には、ティタノボアに餌を与えていた可能性もある」
魔法使いと聖職者が青い顔をして唇をかみしめているから、余の言ったことがティタノボアに対する正しい睡眠魔法の使い方なのだろう。
「姉御は何時でも逃げだせるように、女達を励ましてくれ」
「ベン男爵閣下もそれで宜しいのですか?」
「構わん。姉御も我らと共に行動するのなら、これからは余に聞くのではなく、アーサー殿の指示に直ぐに従うように」
「はい」
爺にベッタリだった姉御だが、爺の叱責ともいえる言い方に感じる事があったのだろう。
少し顔を青くして、救出してから我らが尋問をしている間に、穢れを落とすべく水浴びで身を清めさせていた、被害者の女達を率いるべく移動していった。
「マーティンはこいつらが逃げ出せないように、厳重に縄をかけておいてくれ」
「御任せ下さい」
この場にいる穢れた連中は、既に最低でも両肩関節と両膝関節を破壊しているので、自力で逃げ出せるとは思えないが、腐っても魔法使いと聖職者なので、自分達の怪我を治して逃げだそうとする可能性もある。
両手両足を縛った上に、魔法を唱えられないように猿轡を噛ませなければいけない。
「行くぞ」
「「おう」」
爺とパトリックは決意に満ちた返事を返してくれる。
ダラダラと話していたようだが、それでも犯罪者とは言え冒険者を魔獣の犠牲にする心算などはなく、我々の感知能力で砦の中に入っていないと理解していた。
砦の土塁の高さは魔境の中という事もあり、並みの砦とは比較にならないくらい高く、十メートルもあるのだが、全長が十五メートルもあるティタノボアには無意味だった。
ティタノボアは幅十メートルの濠を楽々と渡り、十メートルの土塁から頭をもたげ、眠りに落ちている冒険者を飲み込もうとしていた。
「「「眠れ」」」
余と爺とパトリックは、日頃の訓練通りに全く同時に銅級睡眠魔法を唱えた。
普通の魔獣なら、我ら三人による三重の睡眠魔法で簡単に眠らせることが出来るのだが、生命力の強いティタノボアを眠らせることが出来なかった。
まあ一番弱い魔法なので、それほどショックを受けることはなかったが、ティタノボアの強さを実感することが出来た。
一般魔法の十倍の破壊力がある鉄級睡眠魔法や、百倍の破壊力がある銀級の睡眠魔法を試すことも出来るが、それよりも鋼鉄の武器が通用するか試すのが先だ。
「火炎」
爺が魔法で炎を創り出し、ティタノボアを幻惑する。
目眩ましとして使ったのだが、眼を見えないようにしたのではない。
蛇種は元々眼が退化しており、鼻先にある熱を感じる所で獲物を探すのだ。
だから光魔法では目眩ましとして通用せず、火炎魔法を使ってティタノボアの動きを一瞬留めたのだ。
そしてその一瞬の時間を使い、パトリックは名工が鍛え上げた業物の剣を振るい、斬首しようとしたのだ!
だがその行いも虚しく失敗した。
強固な鱗と皮膚に刃が立たず、渾身の破壊力も柔軟な筋肉と軟部組織に受け流されてしまった。
「眠れ」
俺はパトリックがティタノボアに逆襲されることが無いように、鉄級の睡眠魔法をティタノボアに放った。
「火炎」
爺もパトリックの安全を図るために、火炎魔法をティタノボアの鼻面に叩きつけた。
余と爺が作った時間を使い、パトリックは魔法袋の中に収めていた白銀の刃金を付けた剣を取り出し、刃金に魔力を流すことで魔力剣として使い、魔力剣がティタノボアに通用するか試すようだ。
刀身全てを白銀で鍛えた剣もあるのだが、それでは莫大な制作費がかかってしまうので、普通に白銀剣と言えば刃金だけ白銀製のモノを言う。
今この時に雄叫びの一つもあげれば絵になるのだろうが、常に実戦を想定して訓練してきた我々は、必要最低限の呟くような魔法詠唱以外に音を立てる事などない。
危険を察知した場合には足捌きでティタノボアの攻撃を避ける余裕を持ちながら、その中でも最大の破壊力を剣に込め、パトリックはティタノボアの首に魔力剣を叩きつけた。
特に砦主を任されていた代官の三男に対しては、彼個人が犯した罪と同時に、父である代官の犯罪はもちろん、砦から贈っていた賄賂を受け取った、王国重臣の犯罪も自白させた。
だが三男が公の場で証言を翻す可能性もあるので、客観的な証拠となる、砦から贈った賄賂の記録帳のありかを自白させた。
最初はないと言い張っていた三男だが、余が真実を話さずにはおられない、自白魔法をかけることで隠し場所を白状した。
魔法の長い歴史の中で、各時代に必要とされる魔法が研究されていた。
当然敵を倒すための攻撃魔法は研究されていたし、生き残るための防御魔法も研究されていたが、敵から情報を聞き出すために研究されたものもあるのだ。
そして生きていくうえで少しでも便利であるように、生活に必要な魔法も開発せれていたし、人間の一番の欲望である、食べると言う事に対する魔法も研究されていた。
「魔獣か?!」
「ふ、ふ、ふ、ふ、やっと起きやがったか」
「これで御前達もおしまいだ。俺達と一緒に魔獣の餌になるがいい」
「何をしやがった」
普段はロジャーが最初に怒り出すのだが、今のメンバーだとマーティンがその役柄になる。
家臣達は余が民と直接話すのを嫌うが、余自身は民と触れ合い話がしたい。
だが今回のような、穢れた罪人と話したいとは思わないので、魔法は余がかけたもののマーティンが尋問役をしてくれていたので、その流れでおかしなことを言いだした魔法使いと聖職者を問いただしていた。
「魔獣だよ、魔獣」
「そうだ魔獣だ。獣人のような穢れた者達を助けようとする御前達は、魔獣に喰い殺されるがいい」
どうもこの魔法使いと聖職者は、人種差別主義者のようだ。
この二人が個人的のそういう主義者ならまだいいが、聖職者が所属する教会や教団自体が人種差別に凝り固まっているのなら、王家の一員として見過ごす訳にはいかない。
「正直に言いな! さもないと鼻を削ぐよ」
姉御が三男の鼻に短剣を押し付けて話を聞き出そうとしている。
狂信者の可能性のある魔法使いと聖職者から話を聞き出すより、尋問していて臆病者と分かった三男から聞き出す方が早いと判断したのだろう。
「ティタノボアだ。こいつらが睡眠魔法で眠らせていたティタノボアが起き出したのだ」
ティタノボアが現れただと!
ティタノボアは魔獣の一種で、全長十五メートル、体重千二百キログラム、胴の最大直径一メートルと、その巨大さだけでも普通の人間猟師が太刀打ちできる相手ではない。
しかも魔獣と特有の強固な鱗と皮膚で全身が覆われているため、鋼鉄の武器であろうと全く通用しない上に、尋常ではない生命力を持つ魔獣のなかでも、蛇種の魔獣は恐ろしいほどの生命力を持ち、卵から孵ったばかりの幼生体の頭部を切断しても、数日生きているくらいだ。
いや、噂が本当だったとしたら、切断面をあわせておくと、元の状態に接合するほどの治癒能力があると言うのだから恐ろしい。
「どうしましょう、ベン男爵閣下」
さすがに男勝りの姉御も、ティタノボアが相手だと恐怖を感じるようだ。
「アーサー殿はどう思われるかな」
爺の期待には応えねばならんな。
「睡眠魔法で眠らせ、そこを一撃必殺の攻撃で仕留める」
「睡眠魔法で眠らせられると考えた根拠はなんですかな」
「ここにいる魔法使いと聖職者もそれなりの実力者だとは思うが、爺やパトリック達ほどだとは思えない。こいつらの睡眠魔法が通じるのなら、我らの睡眠魔法も通用するはずだ」
「悪くない判断ですが、こいつらが何か特殊な睡眠魔法を使った可能性もあります。その場合はどうなされますかな」
「身体強化魔法と防御魔法を使い、正攻法で倒す。万が一敵わない場合は、こいつらを餌にしてティタノボアを満腹にさせる。満腹になった後なら、睡眠魔法で眠らせられるかもしれない。こいつらも睡眠魔法を使う前には、ティタノボアに餌を与えていた可能性もある」
魔法使いと聖職者が青い顔をして唇をかみしめているから、余の言ったことがティタノボアに対する正しい睡眠魔法の使い方なのだろう。
「姉御は何時でも逃げだせるように、女達を励ましてくれ」
「ベン男爵閣下もそれで宜しいのですか?」
「構わん。姉御も我らと共に行動するのなら、これからは余に聞くのではなく、アーサー殿の指示に直ぐに従うように」
「はい」
爺にベッタリだった姉御だが、爺の叱責ともいえる言い方に感じる事があったのだろう。
少し顔を青くして、救出してから我らが尋問をしている間に、穢れを落とすべく水浴びで身を清めさせていた、被害者の女達を率いるべく移動していった。
「マーティンはこいつらが逃げ出せないように、厳重に縄をかけておいてくれ」
「御任せ下さい」
この場にいる穢れた連中は、既に最低でも両肩関節と両膝関節を破壊しているので、自力で逃げ出せるとは思えないが、腐っても魔法使いと聖職者なので、自分達の怪我を治して逃げだそうとする可能性もある。
両手両足を縛った上に、魔法を唱えられないように猿轡を噛ませなければいけない。
「行くぞ」
「「おう」」
爺とパトリックは決意に満ちた返事を返してくれる。
ダラダラと話していたようだが、それでも犯罪者とは言え冒険者を魔獣の犠牲にする心算などはなく、我々の感知能力で砦の中に入っていないと理解していた。
砦の土塁の高さは魔境の中という事もあり、並みの砦とは比較にならないくらい高く、十メートルもあるのだが、全長が十五メートルもあるティタノボアには無意味だった。
ティタノボアは幅十メートルの濠を楽々と渡り、十メートルの土塁から頭をもたげ、眠りに落ちている冒険者を飲み込もうとしていた。
「「「眠れ」」」
余と爺とパトリックは、日頃の訓練通りに全く同時に銅級睡眠魔法を唱えた。
普通の魔獣なら、我ら三人による三重の睡眠魔法で簡単に眠らせることが出来るのだが、生命力の強いティタノボアを眠らせることが出来なかった。
まあ一番弱い魔法なので、それほどショックを受けることはなかったが、ティタノボアの強さを実感することが出来た。
一般魔法の十倍の破壊力がある鉄級睡眠魔法や、百倍の破壊力がある銀級の睡眠魔法を試すことも出来るが、それよりも鋼鉄の武器が通用するか試すのが先だ。
「火炎」
爺が魔法で炎を創り出し、ティタノボアを幻惑する。
目眩ましとして使ったのだが、眼を見えないようにしたのではない。
蛇種は元々眼が退化しており、鼻先にある熱を感じる所で獲物を探すのだ。
だから光魔法では目眩ましとして通用せず、火炎魔法を使ってティタノボアの動きを一瞬留めたのだ。
そしてその一瞬の時間を使い、パトリックは名工が鍛え上げた業物の剣を振るい、斬首しようとしたのだ!
だがその行いも虚しく失敗した。
強固な鱗と皮膚に刃が立たず、渾身の破壊力も柔軟な筋肉と軟部組織に受け流されてしまった。
「眠れ」
俺はパトリックがティタノボアに逆襲されることが無いように、鉄級の睡眠魔法をティタノボアに放った。
「火炎」
爺もパトリックの安全を図るために、火炎魔法をティタノボアの鼻面に叩きつけた。
余と爺が作った時間を使い、パトリックは魔法袋の中に収めていた白銀の刃金を付けた剣を取り出し、刃金に魔力を流すことで魔力剣として使い、魔力剣がティタノボアに通用するか試すようだ。
刀身全てを白銀で鍛えた剣もあるのだが、それでは莫大な制作費がかかってしまうので、普通に白銀剣と言えば刃金だけ白銀製のモノを言う。
今この時に雄叫びの一つもあげれば絵になるのだろうが、常に実戦を想定して訓練してきた我々は、必要最低限の呟くような魔法詠唱以外に音を立てる事などない。
危険を察知した場合には足捌きでティタノボアの攻撃を避ける余裕を持ちながら、その中でも最大の破壊力を剣に込め、パトリックはティタノボアの首に魔力剣を叩きつけた。
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