華国後宮物語

克全

文字の大きさ
上 下
3 / 7
第一章

第3話:対決

しおりを挟む
「仲徳の申す通りじゃ、朕は一族や家臣に誑かされたりはせん。
 家臣に分際で朕に対する献策を遮るなど許される事ではない。
 公台は黙って控えておれ。
 仲徳、お前は公台と子高に論戦をさせろと言うのだな」

「はい、皇帝陛下。
 ただその前に姚袁微の父親となっている姚袁公路に話を聞かなければなりません。
 姜謝公台殿の申す事も完全に間違いではありません。
 皇室を腐敗させ国を滅ぼさないために、高位高官の娘を皇帝陛下の妻妾にしない。
 それはとても大切な事でございます。
 事情のいかんを問わず厳罰に処さなければいけません。
 ただ理由を聞き罪を決めるのは皇帝陛下だけの権限でございます。
 家臣共の政争の道具にさせてよいモノではありません。
 まずは論戦の前に真実を確かめてください」

 仲徳殿下は本当に公正無私な方なのでしょうね。
 皇族として皇室の繁栄を何より一番大切に考えておられるのでしょう。
 昨今の次期皇帝を狙う皇子達に派閥争いに一石を投じたいのでしょう。
 いえ、皇帝陛下の厭政をやんわりと諫言しているようにも感じます。
 もしかしたら皇帝陛下もその事に気がついておられるのかもしれません。

「そうか、それでは姚袁公路を呼びださねばならぬな。
 それとも仲徳が既に呼びだしているのか」

 やはり皇帝陛下も気がついておられるようです。
 文武百官が緊張しているのがよくわかります。
 太和殿が私を詰問しようとしていた時以上に殺気に満ちています。
 姜謝公台様ですら何も言えなくなっています。
 ここで間違った言葉を一つでも口にしたら、皇帝陛下の逆鱗に触れてしまう。
 誰もがその事に気がついているのです。

「いえ、私はそのような事はしていません。
 しかし姜謝公台殿が姚袁公路を呼びだしていました。
 それどころか母と呼ばれている女や弟妹まで強制的に控えさせております。
 姚袁微を問い詰めるのに家族を人質に取る。
 これで公平な証言が得られるでしょうか」

「まことか、姜謝宮」

「恐れながら全ては皇帝陛下の御為でございます。
 建国皇帝陛下の決められた根本法を護るためでございます」

 皇帝陛下が姜謝公台様の諱を呼び捨てにされました。
 本心から怒っておられるのが手に取るように分かります。
 地獄の閻魔大王の裁判の場に引き出されているような緊張感があります。
 自分が皇帝陛下の逆鱗に触れてしまったと分かっているのに、それでも震える事無く言い訳できる姜謝公台様は凄いです。
 
 でも、この状況を作りだした仲徳殿下の方が怖いです。
 わずか九歳でこんな事ができるとは信じられません。
 仲徳殿下は誰の味方なのでしょうか。
 皇室を護ろうとしているのは分かります。
 私の事を断罪する気はないようですが、姚孫子高様を断罪する気なら、私も一緒に罪を問われることになります。

 姜謝公台様を断罪する気なら、私は罪に問われないでしょう。
 でもこれを好機に姚孫子高様と姜謝公台様を一緒に取り除く心算なら、私も巻き込まれてしまいます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

手のひら返しが凄すぎて引くんですけど

マルローネ
恋愛
男爵令嬢のエリナは侯爵令息のクラウドに婚約破棄をされてしまった。 地位が低すぎるというのがその理由だったのだ。 悲しみに暮れたエリナは新しい恋に生きることを誓った。 新しい相手も見つかった時、侯爵令息のクラウドが急に手のひらを返し始める。 その理由はエリナの父親の地位が急に上がったのが原因だったのだが……。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

家族から見放されましたが、王家が救ってくれました!

マルローネ
恋愛
「お前は私に相応しくない。婚約を破棄する」  花嫁修業中の伯爵令嬢のユリアは突然、相応しくないとして婚約者の侯爵令息であるレイモンドに捨てられた。それを聞いた彼女の父親も家族もユリアを必要なしとして捨て去る。 途方に暮れたユリアだったが彼女にはとても大きな味方がおり……。

婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む

柴野
恋愛
 おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。  周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。  しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。 「実験成功、ですわねぇ」  イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

政略結婚のハズが門前払いをされまして

紫月 由良
恋愛
伯爵令嬢のキャスリンは政略結婚のために隣国であるガスティエン王国に赴いた。しかしお相手の家に到着すると使用人から門前払いを食らわされた。母国であるレイエ王国は小国で、大人と子供くらい国力の差があるとはいえ、ガスティエン王国から請われて着たのにあんまりではないかと思う。 同行した外交官であるダルトリー侯爵は「この国で1年間だけ我慢してくれ」と言われるが……。 ※小説家になろうでも公開しています。

婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました

鈴宮(すずみや)
恋愛
 公爵令嬢ポラリスはある日、婚約者である王太子シリウスと、親友スピカの浮気現場を目撃してしまう。信じていた二人からの裏切りにショックを受け、その場から逃げ出すポラリス。思いの丈を叫んでいると、その現場をクラスメイトで留学生のバベルに目撃されてしまった。  その後、開き直ったように、人前でイチャイチャするようになったシリウスとスピカ。当然、婚約は破棄されるものと思っていたポラリスだったが、シリウスが口にしたのはあまりにも身勝手な要求だった――――。

【完結】結婚してから三年…私は使用人扱いされました。

仰木 あん
恋愛
子爵令嬢のジュリエッタ。 彼女には兄弟がおらず、伯爵家の次男、アルフレッドと結婚して幸せに暮らしていた。 しかし、結婚から二年して、ジュリエッタの父、オリビエが亡くなると、アルフレッドは段々と本性を表して、浮気を繰り返すようになる…… そんなところから始まるお話。 フィクションです。

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話

下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。 主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...